雇用保険被保険者資格喪失届の記入例についてわかりやすく解説

雇用保険被保険者資格喪失届の記入例についてわかりやすく解説
ライター:関野 良和

雇用保険被保険者資格喪失届の記入例についてわかりやすく解説

雇用保険被保険者資格喪失届についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。従業員の退職時に必要となる手続きの中でも、特に重要な書類である雇用保険被保険者資格喪失届。この書類の記入ミスは元従業員の失業給付に影響を与えるため、人事担当者は正確な知識を持っておく必要があります。今回は実際の記入例を中心に、提出が必要なケースや提出期限、添付書類などを詳しく解説していきます。

雇用保険被保険者資格喪失届とは

雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が離職したときなどに企業が提出する書類です。雇用保険の被保険者でなくなったことを届け出るための重要な手続きとなります。

雇用保険に加入していた従業員が何らかの理由で加入条件に該当しなくなった場合に提出するもので、提出が遅れると従業員が基本手当(失業給付)を受給できないなどの不利益を被ることがあるため、提出期限までに作成して届け出る法的義務が事業主に課されています。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出は、対象となる労働者ではなく、その人を雇用していた企業の義務となっています。企業は、従業員が雇用保険の資格を失った日の翌日から10日以内に、所轄のハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなければなりません。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要なケース

雇用保険被保険者資格喪失届は、以下のようなケースで提出が必要となります。

  1. 従業員が退職したとき: 従業員が退職したときには、退職日の翌々日から10日以内に提出が必要です。
  2. 週の所定労働時間が20時間未満となったとき: 継続的に、週の所定労働時間が20時間未満へと変更された従業員は、雇用保険の加入対象外となります。なお、労働時間の減少が一時的なものであれば、雇用保険の資格は失われないので、雇用保険被保険者資格喪失届の提出は不要です。
  3. 従業員が死亡したとき: 従業員が亡くなった場合も提出が必要です。死亡した場合の退職日がいつになるかという法律上の定義はありませんが、会社の就業規則に定められています。多くは死亡日をもって退職日となります。
  4. 従業員が法人の役員になったとき: 会社の役員(取締役、監査役等)は、原則として雇用保険の加入対象とならないためです。
  5. 従業員が他社に出向したとき: 従業員が他社に出向した場合は、出向元に雇用関係のある在籍出向と出向先に雇用関係のある転籍出向の2つがあり、どちらに雇用関係が発生しているかによって、雇用保険被保険者資格喪失届の提出の要否が変わります。
  6. 従業員が倒産により会社の被保険者でなくなったとき: 倒産による事業停止で従業員を解雇した後、速やかに事業主が雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなければなりません。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限と罰則

雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限は、従業員が雇用保険の被保険者でなくなった日の翌日(退職の場合は退職日の翌々日)から10日以内です。

10日を過ぎてからハローワークに提出しても届出は受理されますが、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が遅れると離職票の交付も遅れ、元従業員は失業保険(失業手当)の受給手続きが遅れてしまいます。また、雇用保険被保険者資格喪失届が提出されていなければ、再就職先での雇用保険の資格取得手続きもできません。

さらに、雇用保険被保険者資格喪失届の提出をしなかったり、虚偽の提出をしたりすると、雇用保険法違反となり、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金の対象になります。

雇用保険被保険者資格喪失届の入手方法

雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークのホームページからダウンロードすることができます。「様式のみ印刷」と「内容を入力して印刷」のいずれかを選択して印刷することが可能です。

印刷時には以下の点に注意が必要です。

  • 第1面と第2面の両方を印刷する(片面印刷でも両面印刷でも可)
  • A4の白色用紙に等倍(倍率100%)で印刷する
  • 「内容を入力して印刷」を選択した場合でも、個人番号のように出力後に手書きする箇所がある
  • OCRで読み取るため読取時の基準マーク(用紙の端の3点の■)が印刷できていることを確認する
  • 印刷面が指定されている紙を使用する場合は指定された印刷面に印刷していることを確認する
  • 印刷した様式が用紙に対して極度に傾いていないことを確認する
  • 印刷した様式の文字や枠線にかすれがないことや2重に印刷されていないことを確認する

正しく印刷されていないと受理してもらえない場合があるため、事前に印刷設定を確認するとともに、印刷後にも再度確認することが大切です。

雇用保険被保険者資格喪失届の記入例と書き方

雇用保険被保険者資格喪失届は鉛筆またはシャープペンシルで記入します。ネット上でダウンロードしてパソコンで入力して印刷する場合でも手書きする箇所があるため、記入ミスをしないように注意が必要です。

以下、主要な記入項目について詳しく解説します。

氏名変更届の部分を二重線で消す

雇用保険被保険者資格喪失届は氏名変更届も兼ねている用紙です。喪失届として使う場合には用紙上部の「氏名変更届」の部分を二重線で消して使います。

1. 個人番号(マイナンバー)

平成28年1月から雇用保険被保険者資格喪失届に個人番号が記入項目として追加されました。マイナンバーを記入します。従業員にマイナンバーを提出してもらう際には、利用目的を伝えるだけでなく、番号確認と本人の身元確認を必ずおこなってください。

従業員がマイナンバーの提出を拒否する場合には、「本人事由によりマイナンバー届け出不可」と記載しておく必要があります。

平成28年以降はマイナンバーの記述が必須となっています。マイナンバー(個人番号)がない場合は受理されませんので、注意しましょう。

2. 被保険者番号

雇用保険加入時にハローワークから交付された雇用保険被保険者証の被保険者番号を確認し、同じ番号を記入します。

ただし、1981年7月6日以前に被保険者番号を発行されている場合は現在の交付番号と異なるため、下10桁の番号のみを記載し、残り1桁は空欄にしておきます。

3. 事業所番号

雇用保険の事業所番号を記入します。事業所番号は、適用事業所台帳(雇用保険適用事業所設置届事業主控)や雇用保険被保険者資格取得届等確認通知書に記載されているので確認してください。

4. 資格取得年月日

退職する従業員が、雇用保険の資格を取得した年月日を記入します。

5. 離職等年月日

退職する従業員が、雇用保険の被保険者としての資格を失う日を記入します。具体的には、退職日が該当します。

病気や怪我などが原因で、長期にわたり欠勤していた場合は、労働者として拘束していた最後の日を、死亡による喪失の場合は、死亡年月日を記入します。

なお、健康保険・厚生年金の資格喪失日は退職日の翌日になりますが、雇用保険の離職等年月日は「退職日」です。退職日はまだ被保険者資格を保有しており、間違いやすいポイントですので、覚えておきましょう。

6. 喪失原因

退職する従業員が、雇用保険の資格を喪失する原因について、該当する番号を記入します。

「1」は死亡や出向元への復帰などといった「離職以外」、「2」は「離職」の場合に該当します。

7. 氏名・生年月日

被保険者の氏名とフリガナ、生年月日を記入します。生年月日は和暦で記入します。

8. 性別

被保険者の性別を記入します。男性の場合は「1」、女性の場合は「2」とします。

9. 離職理由

離職理由については、事業主と従業員がしっかりと確認をして、退職後にトラブルが起きないようにすることが大切です。

従業員が退職後にハローワークで基本手当を申請する場合、退職理由によって手当の内容が変わります。例えば会社倒産が退職理由であれば基本手当の支給日数が増えますし、自己の責に帰すべき重大な理由によって解雇された場合であれば最初の3ヵ月間は基本手当は支給されないことになります。

ただし退職理由について事業主と従業員の主張が異なる場合は、ハローワークが事実関係を調査した上で判断します。

10. 備考

特記事項がある場合に記入する欄です。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法

雇用保険被保険者資格喪失届は記入用紙で提出する他、郵送やインターネット上でのオンライン申請での提出も可能です。

提出先

雇用保険被保険者資格喪失届の提出先は、所轄のハローワーク(公共職業安定所)です。

郵送での雇用保険被保険者資格喪失届は、事業所がある地域を管轄しているハローワークが提出先となります。

添付書類

手続きには雇用保険被保険者資格喪失届以外にも、喪失を確認するための確認書類(添付書類)を提出しなければいけません。提出時には以下の書類も必要となります。

  • 雇用保険被保険者証
  • 離職証明書(退職理由が会社都合であるなど失業給付を受給する可能性がある場合)
  • 雇用保険被保険者資格取得届(次の就職先が決まっている場合)
  • 退職事由を確認する書類(退職届や解雇予告通知書など)

離職票の発行有無によって必要な添付書類が異なるため注意が必要です。

提出する確認書類(添付書類)が多いことに加え、提出期限も短いので、必要な書類は事前に揃えておきましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届と離職票の関係

雇用保険の喪失手続きのなかでも離職の場合は、雇用保険被保険者資格喪失届に雇用保険被保険者離職証明書を添付するケースがほとんどです。離職証明書には、賃金台帳や退職理由を確認できる書類の添付が必要なため事前に確認し、手続きを行いましょう。

退職する旨を会社側に伝えると、退職のための準備が始まります。その際、「離職票の発行は必要か」と聞かれるため、離職票が必要な場合はその旨を伝えましょう。離職票の発行を希望しない場合は、代わりに雇用保険被保険者資格喪失確認通知書がもらえます。

雇用保険被保険者資格喪失確認通知書は、雇用保険の被保険者資格が喪失されたことを証明する書類です。書面には雇用保険の加入日や資格喪失日、被保険者番号、生年月日、喪失理由、事業所番号などが記載されています。

なお、退職するすべての方がもらえるわけではなく、雇用保険被保険者離職票-1、-2を受け取る場合には発行されません。

雇用保険被保険者資格喪失届と健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の違い

退職時には雇用保険だけでなく、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届も提出する必要があります。これらの書類は提出先や提出期限が異なるため、注意が必要です。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届は、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を喪失する手続きであり、提出期限は事実発生から5日以内、提出先は年金事務所や事務センターです。

一方、雇用保険被保険者資格喪失届は、被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に、会社を管轄するハローワークに提出します。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出期限は、資格を喪失した日の翌日から5日以内です。期間が短いため、迅速に処理しなければなりません。

よくある質問と注意点

提出が遅れた場合はどうなりますか?

10日を過ぎてからハローワークに提出しても、届出は受理されます。しかし、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が遅れると離職票の交付も遅れるため、元従業員は失業保険(失業手当)の受給手続きが遅れてしまいます。また、雇用保険被保険者資格喪失届が提出されていなければ、再就職先での雇用保険の資格取得手続きもできません。

雇用保険被保険者資格喪失確認通知書はいつもらえますか?

雇用保険被保険者資格喪失確認通知書をもらうタイミングは、退職をした日の翌日から2週間以内が多いようです。なぜなら、会社は該当者が退職した日の翌日から10日以内に雇用保険の資格喪失手続きをしなければならないからです。

すでに退職しているため郵送が一般的ですが、2週間経っても手元に届かない場合は、ミスや手続き忘れなどの可能性もあるため、会社に確認しましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出は電子申請でもできますか?

はい、雇用保険被保険者資格喪失届は記入用紙で提出する他、郵送やインターネット上でのオンライン申請での提出も可能です。

また、2020年4月より一部の法人事業所では上記届出の電子申請が義務化されている点にも注意が必要です。

退職理由は重要ですか?

はい、非常に重要です。離職理由については、事業主と従業員がしっかりと確認をして、退職後にトラブルが起きないようにすることが大切です。

従業員が退職後にハローワークで基本手当を申請する場合、退職理由によって手当の内容が変わります。例えば会社倒産が退職理由であれば基本手当の支給日数が増えますし、自己の責に帰すべき重大な理由によって解雇された場合であれば最初の3ヵ月間は基本手当は支給されないことになります。

まとめ

雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が退職したときなどに企業が提出する重要な書類です。この書類の提出が遅れると従業員の失業給付に影響するため、提出期限(退職日の翌々日から10日以内)を守ることが大切です。

記入の際は、「氏名変更届」の部分を二重線で消す、個人番号(マイナンバー)を記入する、被保険者番号や事業所番号を正確に記入するなど、各項目に注意して記入しましょう。特に離職等年月日や離職理由は、失業給付の受給資格や受給日数に関わる重要な項目です。

提出の際には、雇用保険被保険者証や離職証明書などの添付書類も必要となりますので、事前に準備しておくことが重要です。また、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届との違いも理解し、それぞれの提出先や提出期限に注意しましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届の手続きを正確に行うことで、退職した従業員がスムーズに次のステップに進めるようサポートすることができます。人事担当者として、この重要な手続きを確実に行い、従業員と会社の双方にとって良好な関係を維持しましょう。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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