保険代理店は”やばい”、”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?

保険代理店は”やばい”、”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”保険代理店がヤバイ”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します

本当に保険代理店は”やばい”のか、デメリットとメリットの両面から真相に迫る

保険代理店が「やばい」「やめたほうがいい」と言われる理由についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、保険業界に関する様々な情報がインターネット上で飛び交っており、特に保険代理店に対するネガティブな評判や懸念の声が目立つようになっています。しかし、そのような評判は事実に基づいているのでしょうか、それとも一部の誤解から生じているのでしょうか。本記事では保険代理店の実態について多角的に検証していきます。

保険代理店とは何か

保険代理店は、保険会社と契約を結び、その保険会社の商品を販売する業者です。主な業務内容としては、以下のようなものがあります。

  • 利用者に対する保険商品の紹介:利用者のニーズに応じて、最適な生命保険や損害保険を提案する業務
  • 保険契約に関する手続きの代行:保険契約の締結や解除、契約内容の変更などを保険会社に代わって行う業務
  • 保険金や給付金の請求サポート:契約者に代わって、保険金を適切に受けられるようにサポートする業務

保険代理店には、1社のみの取り扱いをする「専属代理店」と複数の保険商品を取り扱う「乗合代理店」があります。また、保険販売を専業とする「専業(プロ)代理店」と、小売や自動車整備業などその他の業務と兼営する「副業代理店」に分類されるようです。

保険代理店が「やばい」と言われる主な理由

1. インセンティブと手数料の問題

保険代理店が「やばい」と言われる最も大きな理由の一つに、インセンティブや手数料の問題があるようです。保険代理店は保険会社から販売手数料をもらって成り立っており、利益を優先する可能性があると言われています。

「保険代理店は販売手数料が高いことがデメリットです。販売手数料はそもそも顧客ではなく、保険会社が払うもので直接保険料などに影響はありません。しかし、保険会社が広告費と同じく費用をかけている部分なので、保険代理店に委託している保険会社は保険料が間接的に割高になっている場合があるので注意が必要です」と指摘されています。

さらに、販売額に応じた手数料率という問題もあるようです。「生命保険代理店のみならず損害保険代理店でも、年間、半期、四半期など一定期間の保険料が多いほど手数料のテーブルが増え、少ないと減る仕組みになっています」。これにより、大規模な保険代理店は手数料率が実質100%(年間の保険料が全額初年度手数料となる)になることもあるとされています。

2. 説明不足や強引な営業によるトラブル

保険代理店の従業員は基礎的な知識を持っていても、知識の量には差があるようです。そのため、「後になって聞いていない内容があったなど説明不足が生じることもあり、トラブルに発展してしまうことも多い」です。

また、「契約を取りたいという一心から強引な営業を行う方もいると問題視されている」とも言われています。このような営業態度は消費者からの信頼を損なう原因となっているようです。

3. 担当者によるサービス品質のばらつき

「担当者によってサービスの質が異なる場合があるのは、お金を払って利用する以上デメリットといえます」。資格や経験の違いによって担当者間でサービスの質にばらつきがあるため、消費者にとっては不安要素となるようです。

「担当者の知識量や経験値にムラがあるというのも、保険代理店のデメリットの一つ」であり、「担当者によって、説明の得意不得意や商品を熟知している度合いが異なるため、すべての保険代理店が希望に沿ってくれるわけではありません」。

4. 保険会社と代理店の構造的な問題

保険業界では、保険会社と代理店の間に構造的な問題があるとされています。「保険会社は自社の契約情報を集めても顧客の全体像が見えず、代理店が顧客情報を一元的に管理している状態となっている。このことは、顧客への影響力において代理店が保険会社よりも優位に立つ構造を示している」。

また、「保険比較推奨販売の不徹底」「代理店の大規模化」「代理店監査(点検)の不適切性」などの要因が相互に影響を及ぼし、不正行為を行いやすい環境を生んでいるとも指摘されています。

5. 過度な便宜供与の問題

最近では、「生命保険会社が、自社商品の取扱いのある保険代理店に対して『広告料の提供』『出向者の派遣』などによる便宜供与の度が過ぎる」という問題が指摘され、金融庁が調査を実施しているようです。

「来店型の保険代理店では、店頭に掲示する広告に保険会社が出稿し、一般的な広告料からかけ離れて高額の広告料を支払っていました。保険会社から保険代理店への出向については、保険会社が出向者の給与を負担していれば過度な便宜供与とされるでしょう」。

保険代理店の評判と口コミ:実際には良い評価も

一方で、保険代理店に対して良い評価をしている利用者も多くいるようです。オリコン顧客満足度ランキングによると、多くの保険相談ショップが高い評価を得ています。

良い評判の例

「ほけんの110番」や「保険クリニック」、「ほけんの窓口」などの保険相談ショップは、オリコン顧客満足度ランキングで上位にランクインしており、特に「スタッフの対応」や「スタッフの提案力」などの項目で高い評価を受けているようです。

利用者からは以下のような声が寄せられています。

  • 「数あるところから本当に自分に合った保険を探してくれる」
  • 「分かりやすく何度も説明して頂けて嬉しかった」
  • 「質問したい内容をあらかじめ伝えていたので、スムーズに、話が進められたし、予定していなかった保険についても、質問するとすぐに提案してもらえて良かった」
  • 「たくさんの商品の情報があり、適切な物を勧めてくれた。こちらの希望に加え、こんなことも考慮に入れた方がいいとのアドバイスもあった」

特に「おとなの自動車保険」に関しては、「やばい」という評価は誤解から生じている可能性があるとされています。「検索結果からは、事故対応やオペレーターの対応で高評価を与えている顧客も多数いることが確認できました。『迅速な事故対応』『オペレーターの丁寧な対応』に感謝する声が多く、『保険金の不払いや電話の対応が悪い、「最悪」「使えない」などの否定的な評判はほとんどない』とも報告されています」。

保険代理店に関する誤解

保険代理店についての誤解もあるようです。例えば以下のような「神話」が挙げられています。

  1. 「独立系保険代理店として成功するためには、保険のバックグラウンドが必要」 – 実際には、保険の知識に精通していることは強みになりますが、対人スキル、コミュニケーション能力、問題解決能力なども重要な要素です。
  2. 「保険代理店は販売することだけを気にする」 – すべての営業担当者が型にはまったわけではなく、クライアントサービスを重視する代理店も多いようです。
  3. 「保険代理店は単なる仲介者であり、コストを高くしている」 – 実際には、保険代理店はクライアントのニーズに最も適した補償範囲について知識を提供し、価値を付加しているとされています。
  4. 「外向的な人だけが良い保険代理店になる」 – 見込み客によって求める対応は異なり、静かで傾聴力のある代理店を好む人もいるようです。

保険代理店業界の現状と課題

業界の動向

保険代理店の数は減少傾向にあるようです。「生命保険代理店の数は2015年度〜2019年度にかけて減少傾向にあり、特に個人の保険代理店は、57,786店(2015年)から49,631店(2019年)へ約14%減少しています。また、損害保険を取り扱う保険代理店の数も、2010年度から2019年度にかけて202,098店(2010年)から172,191店(2019年)へ15%弱減少しています」。

一方で、「2007年12月に保険商品の窓口販売が全面解禁されて以降、様々な保険会社の商品を扱う乗合代理店(保険ショップ)が増加しています」。大手の保険相談ショップは駅前や大型ショッピングセンターに店舗を設けて、複数の保険を比較販売する手法を用いているようです。

倒産の増加

2023年上半期(1月から6月まで)の保険代理業の倒産は16件(前年同期比166.6%増)であり、前年同期と比べると2.6倍に急増したそうです。「上半期としては2004年、2006年と同水準となり、リーマン・ショック時をしのぐ過去最悪ペースとなっています」。

倒産原因のうち、最多は「販売不振」の14件(構成比87.5%)だったようです。「コロナ禍前よりネット販売や同業大手との競合で売上高が減少したことに加えて、コロナ禍による来客数の減少によって業績不振となりました」。

保険代理店で働くことが「やめたほうがいい」と言われる理由

保険代理店で働く保険営業マンについても、「やめとけ」と言われることがあるようです。その主な理由としては以下が挙げられています。

1. ノルマの厳しさ

「保険営業はやめとけ」と言われる理由の1つとして、保険会社からのノルマが厳しいという点が挙げられます。「ノルマが厳しく転職を検討している人の理由として挙げられるのは、上司からの指導が過度なプレッシャーに感じてしまう心の負担です」。

また、「保険営業は成果主義の要素が強く、顧客から契約を獲得できなければ給料が低くなるのも『やめとけ』と言われる理由です」。

2. 経費の自腹負担

「営業活動に必要な経費が自腹である点も『保険営業はやめとけ』と、敬遠される理由の1つです。保険営業マンは移動費やお茶代、接待費、名刺代、プレゼント代など仕事で発生する費用を自分で支払います」。これにより、経済的な負担が増大する可能性があるようです。

3. 法規制による制約の多さ

「保険営業は顧客と対面で提案が必要だったり各種法律に従う必要があったり、さまざまな制約のなかでの仕事をしています」。「保険業法や金融商品取引法などの法律がかかわる点も営業活動では負担になる」と言われています。

また、「イベントを自分自身で開催することや、SNSなどを利用して情報提供をすること、所属する会社名を明確にして活動することは禁止されている会社はあり、そうした点も積極的に活動したくてもできないという制約にもなっているようです」。

4. 収入の不安定さ

「保険営業の多くは『固定給+歩合』です。業績により歩合の部分は変動することから、毎月の収入が安定せず、そのことで自身の生活の安定をはかれないと悩む人はいるようです」。

5. 顧客開拓の困難さ

「多くの保険営業が顧客開拓の手段として主に活用しているのは、知人や知り合い経由の紹介です。しかし、誰もが簡単にさまざまな情報へアクセスできる時代になった今、そうした販売チャネルは壊れつつあります」。特にデジタルネイティブ世代のお客様と出会うには、従来の方法では限界を感じる人が増えているようです。

保険代理店を選ぶポイント

保険代理店を利用する際は、以下のポイントに注意することで、良い代理店を選べる可能性が高まるようです。

1. 複数の保険会社の商品を比較しているか

複数の保険会社の商品を取り扱っており、それらを客観的に比較して提案してくれる代理店を選ぶことが重要です。ただし、「乗り合い代理店なら、お客さんにとって1番良い商品を勧めてくれるなんて間違い」という指摘もあり、代理店の選定基準や推奨理由についても確認することが大切でしょう。

2. 担当者の資格や経験

「取り扱っている保険会社や保険商品にくわえて、担当者の顔写真や資格の有無、得意な分野、口コミなどを入念に調べておくことが肝心です」。担当者の知識や経験によってサービスの質が大きく異なる可能性があります。

3. アフターフォローの充実度

「なかには、複数の保険会社を比較して検討できなかったり、契約後のアフターフォローが手薄になったりする代理店もあります」。契約後のサポート体制についても事前に確認しておくと良いでしょう。

4. 口コミや評判

インターネットの口コミサイトやSNSなどで実際の利用者の声を確認することも有効です。「運営会社の評判や口コミも確認しておくことだ。インターネットや口コミサイトでの評判を参考にし、信頼できる保険代理店を見極めよう」と提案されています。

結論:保険代理店は「やばい」のか?

保険代理店が「やばい」「やめたほうがいい」と言われる背景には、インセンティブや手数料の問題、説明不足や強引な営業、担当者によるサービス品質のばらつき、保険会社と代理店の構造的な問題などがあるようです。また、保険代理店で働く保険営業マンにとっては、ノルマの厳しさや経費の自腹負担、法規制による制約、収入の不安定さなどが「やめたほうがいい」と言われる理由になっているようです。

しかし一方で、多くの利用者から高い評価を受けている保険代理店も存在し、「数あるところから本当に自分に合った保険を探してくれる」「分かりやすく何度も説明してくれる」などの良い評判も見られます。保険代理店に関する誤解や神話も存在しており、一概に「やばい」とは言えない面もあるようです。

重要なのは、自分のニーズに合った保険代理店を選ぶことと、その代理店の推奨理由や手数料体系について理解しておくことでしょう。インターネットの口コミや評判を参考にしつつ、複数の保険代理店を比較検討することで、より良いサービスを受けられる可能性が高まると言えそうです。

保険代理店業界は現在、大きな変革期にあるとも言われています。代理店の数は減少傾向にある一方で、乗合代理店(保険ショップ)は増加しているようです。今後も業界の動向を注視しながら、消費者はより慎重に保険代理店を選ぶ必要があるでしょう。

参考文献

本記事は様々な情報源からの報告に基づいていますが、保険代理店に関する全ての情報が網羅されているわけではありません。個々の状況によって異なる場合もありますので、実際に保険を検討する際には、複数の情報源から情報を集め、専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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