団信保険が”やばい”といわれているのはなぜ?


”団信保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について解説
住宅ローンを組む際に加入する「団体信用生命保険(団信)」についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。「団信がやばい」という噂が広がる一方で、実はかなりお得な保険だという声もあります。本記事では、団信の仕組みから、ネガティブな評判の真相、そして見逃されがちなメリットまで、総合的に解説していきます。住宅購入を検討されている方はぜひ参考にしてください。
団体信用生命保険(団信)とは何か
団信とは、住宅ローンの返済中に契約者が亡くなってしまった、あるいは重大な障害を負ってしまったという場合に、ローン残額の肩代わりをしてもらえる住宅ローン専用の保険のことです。ローン契約者に万一の事態が発生しても、契約者家族が経済的に困窮することのないようにするための生命保険と言えるでしょう。
「フラット35」など一部例外はありますが、多くの住宅ローンでは団信に加入することが前提となっているようです。ただ、明確に「保険料」という形で団信の保険料を支払うのではなく、金利に上乗せするケースが多いため、契約者自身、自らが団信に加入している意識が薄いこともあるようです。
団信には主に次の3つの形態があります。
- 通常の団体信用生命保険:ローン契約者が死亡あるいは高度障害状態になったときに残債が完済される
- 三大疾病特約付き団体信用生命保険:通常の条件に加え、「三大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)で所定の状態」になったときに残債が完済される
- 八大疾病特約付き団体信用生命保険:上記の条件に加え、さらに五疾患(糖尿病、高血圧症、肝硬変、慢性膵炎、慢性腎不全)になったときに残債が完済される
団信保険が”やばい”と言われる理由
保障内容が限定的
団信の基本的な保障は死亡時と高度障害状態のみであり、それ以外の疾病や状態は保障対象外となっていることが多いようです。特に注意すべきは、うつ病などの精神疾患は通常の団信では保障されないということです。特約なしの団信では「一生、常に介護を要する」程度の障害を受けた場合だけが対象とされているようです。
また住宅ローン返済分の保障だけしかつかないことが多く、診断給付金や入院給付金、手術給付金、通院給付金など、働けなくなった際のリスクはその他の保険でカバーしておく必要があるとされています。
告知義務違反のリスク
団信の加入時には健康状態などについての告知が必要ですが、この告知に虚偽があると重大なリスクが生じます。団信で告知義務違反をすれば万一の際に保険金が金融機関に支払われず、残された家族の生活に大きな負担が生じる可能性が高くなるとされています。
特に注意すべきは、告知義務違反による契約の解除は一般的に「責任開始日から2年」とされていますが、違反内容が故意であり、悪質な詐欺とみなされれば、経過年数に関係なく契約は取り消されることがあるということです。最悪の場合、住宅ローンの一括返済を求められ、それに応じられなければ家を手放す必要が出てくるケースもあるようです。
契約上の制限と柔軟性の欠如
団信に関する大きな制限のひとつに、団信は住宅ローン契約時にしか加入できないという点があります。死亡以外のリスクが心配になったからといって、返済が始まったあとに保障内容を変更することはできないようです。
さらに、団信は住宅ローンとセットで加入するため、「ローン残高が少なくなってきたので、もう団信は解約したい」と考えても、団信だけを解約することはできません。同様に、途中から団信を追加する、付加することもできないという制限があるようです。
健康状態による加入制限
健康状態によっては団信に加入できないケースがあります。持病があっても加入がしやすい民間の生命保険に比べ、団信も一種の生命保険であるため、加入の際には事前の告知が必要になります。生命保険ほど審査は厳しくありませんが、病気の既往歴や持病によっては団信に入れないこともあるようです。
住宅ローンの審査に無事通過しても、健康状態によっては団信を引き受ける保険会社の審査に通らず団信に入れないことがあります。そうなると、金融機関が団信加入を融資条件としている場合、住宅ローンの契約ができなくなる可能性もあるようです。
銀行担当者の不手際によるトラブル事例
銀行担当者の不手際により、団信に関するトラブルが発生するケースも報告されています。例えば、ある実例では契約時点では加入可能だった八大疾病特約が、契約内容の変更に伴い加入できなくなったにもかかわらず、銀行側からの適切な説明がなかったというケースがあるようです。
団信保険の良い評判・メリット
家族への負担軽減効果
団信の最大のメリットは、契約者が万一の時に借金の返済義務がなくなることです。契約者が死亡した場合や重大な障害を負った際には、保険会社が契約者やその家族に代わって残債を払う仕組みになっており、契約者家族に経済的負担がかからないとされています。
コストパフォーマンスの良さ
団信は一般の生命保険に比べて「あり得ないくらいお得な保険」と評価されることもあります。その理由は「団信の構造上、保険会社が支払う保険金が少なくて済むから」とされています。
団信は住宅ローンを借りるときにしか加入できず、健康懸念がほぼない若い方が数多く加入します。また、住宅ローン審査では返済能力調査が行われるため、定年間近の年齢になると審査が厳しくなって借りられない人も一定数いるため、年代が高い方の割合が減るとされています。
例えば、55歳でがんの罹患率は0.69%ですが、がん団信の金利はそれを大きく下回ることがあります。55歳で2000万円の住宅ローンの残債があった場合、がんになって住宅ローンがチャラになる期待値は約13.8万円ですが、がん団信をつけた住宅ローン金利は約10万円程度となり、もらえる保険金の期待値が、その保障をキープするためのコストを上回るケースもあるようです。
特約による保障の拡充
近年ではネット銀行を中心に保障内容を拡充した団信が増えており、顧客の選択肢が広がっています。例えば、ソニー銀行の「がん団信50」では、金利の上乗せなしで「がんの診断確定時に住宅ローン残高の50%」を保障しています。さらに保障を充実させたい人は、金利を年0.1%上乗せするだけでがんの確定診断時に「住宅ローン残高の100%+100万円」を保障してくれる「がん団信100」を契約することもできるようです。
これらの特約は民間の「がん保険」より断然有利とされています。民間の生命保険会社で販売している「がん保険」は、がんと診断された場合に、一時金として100万円〜200万円程度が支払われるだけですが、「がん保障団信」は、がんと診断された場合、住宅ローン残高がゼロ円となり、住宅ローン残高が5000万円であれば、5000万円の残債がすべてなくなるという非常に大きな保障となります。
税制上のメリット
通常生命保険が満期になったことなどで一時金を取得した場合、一時所得として所得税を申告する必要が出てきますが、団信の場合は所得税の納税義務は発生しません。
確かに、契約者が死亡あるいは重大な障害になった場合に債務が免除されることになり、一見「債務免除益」という利益が契約者に生じることになりますが、死亡を起因として残債が免除された場合、被相続人の債務が相続人に承継される前に軽減されることになるので、相続人に対する所得税の課税関係は生じないとされています。また、障害を理由に残債が免除された場合も、その免除益が身体の障害に起因したものであるため、所得税の課税関係は発生しないとされています。
団信保険に関する誤解
「団信だけで十分」という誤解
「団信に入れば生命保険はいらない」と考える方は少なくありませんが、そこには大きな誤解があるようです。基本的な団信の保障は、あくまで住宅ローンの返済の免除であり、一般的な生命保険のように、決まった金額が保障されるわけではありません。
債務者が亡くなると団信の適用によりローンの返済が免除されるのに加えて、国から遺族年金が支給されますが、それだけでは生活費まで穴埋めできないと考えた方がよいでしょう。仮に債務者の年収が500万円、住宅ローン返済が年120万円(月10万円)とすると、団信によりローンの返済(年120万円分)は免除されますが、残りの減収分(年380万円)は補填されません。遺族年金だけでこの減額分を補うのは難しいケースがほとんどとされています。
また、債務者ではない夫婦どちらかが亡くなった場合、団信は適用されません。共働き世帯であれば、世帯年収が大きく減る可能性があります。死亡保険、医療保険、就業不能保険、老後や教育資金を貯めるための保険など、それぞれの役割を担う保険は、別途必要との指摘もあります。
保障範囲に関する誤解
団信で保障されることと、保障されないことをきちんと理解していないと、いざという時に困ることがあるようです。例えば、特約なしの団信では「回復の見込みがある」と見なされれば、現状働けなくても団信は下りず、残債ゼロにはならないケースがあります。特約ありの団信でも保険金の支払い条件が細かく決まっており、そこから外れると団信は下りないとされています。
また、団信は契約者に何かあったとき無申請で自動的に下りるものではありません。保険金が下りる条件に適合しても、金融機関に連絡しない限り保険金の支払いが行われるものではないため、保険金が下りる条件に合致するような事態が起きたときは、なるべく速やかに金融機関に連絡と申請を行う必要があるようです。
おすすめの団信を提供している金融機関
団信の内容は金融機関によって異なります。オリコン顧客満足度ランキングによると、団体信用生命保険の充実さでおすすめの住宅ローンとして以下の金融機関が挙げられています。
- ソニー銀行(74.5点)
- 金利ががん団信を付けても安い点が評価されている
- ネットで完結できるので審査結果が早い
- auじぶん銀行(74.5点)
- 審査書類が画像アップロードで提出できる
- 遅くまで電話対応可能で共働き世帯に便利
- 団信+保障のプランが豊富
- 愛知銀行(73.8点)
- 手続きの迅速さが評価されている
- 関西みらい銀行(73.5点)
- 金利が低く団信保険の内容も良いと評価されている
- 住信SBIネット銀行
- 充実した団信に追加費用無しで加入できるという評価がある
- 金利の安さも評価されている
団信加入時の注意点
団信に加入する際には、以下の点に注意することが重要とされています。
1. 正確な告知をする
病歴・健康状態を記憶だけで書かず、かかりつけの病院やお薬手帳で自身の通院・投薬歴をしっかり確認することが推奨されています。記憶ではなく、事実を告知することが大切です。
2. 疑問点は保険会社に確認する
告知に関して少しでも不安や疑問があるときは、Webで検索するのではなく、団信の引受保険会社に直接確認するほうが確実とされています。
3. 病歴が複雑な場合はあいまいにしない
病歴が何年にもわたっていたり、該当する傷病が複数あったりして複雑な場合は、あいまいにしないように気をつけることが重要です。
4. 契約に臨む前に保障範囲を検討する
団信の特約を付帯できるタイミングは住宅ローン借入時のみであるため、契約に臨む前にどこまでの保障が必要かをよく検討しておくことが重要とされています。
まとめ:団信保険は”やばい”のか?
団信保険が「やばい」と言われる背景には、保障内容の限定性や告知義務違反のリスク、契約上の制限など、いくつかの懸念事項があることが分かりました。特に、死亡・高度障害以外の病気や状態では保障が適用されないことが多く、告知内容に不備があると最悪の場合住宅を失うリスクもあるようです。
一方で、団信保険には家族への負担軽減効果やコストパフォーマンスの良さ、税制上のメリットなど、見逃せない利点もあります。特に近年は特約による保障の充実や、がん団信など特化型の商品も増えており、選択肢が広がっています。
団信保険が「やばい」かどうかは、その人の状況や知識によって異なるでしょう。重要なのは、団信の仕組みやメリット・デメリットを正しく理解し、自分のニーズに合った選択をすることです。また、団信だけで万全というわけではなく、別途生命保険や医療保険の必要性も検討するべきと言えるでしょう。
住宅ローンと団信は長期にわたる大きな契約です。複数の金融機関の団信内容を比較検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、慎重に選択することをおすすめします。
