共済保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

共済保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”共済保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について解説

共済保険が”やばい”と噂される原因についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。共済保険に対する評判はさまざまで、メリットを高く評価する声がある一方で、「やばい」と表現されるほど厳しい批判も見られます。この記事では、共済保険の良い面と悪い面の両方を検証し、噂の真相に迫っていきます。

共済保険とは何か?仕組みと種類

共済保険の基本的な仕組み

共済保険とは、組合員同士が掛け金を出し合って助け合う相互扶助の仕組みです。国語辞典によれば「共済」は「共同して助け合うこと」、「共済組合」は「組合員がお金を出し合って助け合う組合」と定義されています。

共済の最大の特徴は、株式会社である民間保険会社とは異なり、非営利事業として運営されていることです。利益を株主に還元するのではなく、余剰金が発生した場合は「割戻金」として組合員に還元される仕組みになっています。

共済に加入するためには、一般的に組合員になる必要があり、出資金(1,000円程度)を支払います。ただし、この出資金は共済を解約して組合を脱退する際に返却されるため、実質的な負担にはならないとされています。

主な共済の種類

日本で広く知られている共済には、主に以下の4種類があります。

  1. 県民共済(都道府県民共済):全国生活協同組合連合会が厚生労働大臣から共済事業の許可を得て運営。東京都では都民共済、大阪府では府民共済と呼ばれることもあります。
  2. 全労済:全国労働者共済生活協同組合連合会が運営する共済事業です。
  3. コープ共済:日本コープ共済生活協同組合連合会が運営しており、地域の生協(コープ)が窓口となっています。
  4. JA共済:全国共済農業協同組合連合会が運営し、地域のJA(農協)が窓口となっています。農家組合員でなくても出資金を払うことで「准組合員」として加入できるケースもあります。

共済保険が「やばい」と言われる主な理由

1. JA共済自動車保険の事故対応に関する問題

JA共済の自動車保険(クルマスター)に関しては、特に事故対応について厳しい評価が見られます。インターネット上の口コミサイトなどでは以下のような声が寄せられているようです。

事故対応の遅さと質の問題 「バイクで直進中に右折車両が後輪に接触、転倒して骨折。病状が安定したので休業補償の話と入院中の経費を請求したのですが、来月ぐらいに連絡しますから約半年連絡なし」

「追突事故被害者です。警察からも100:0の人身事故と認められて私には全く非がありません。ぶつけてきた相手の保険がJAのため、現在進行形で対応してもらってますが、全く誠意が感じられません」

担当者による対応の差 「担当者にもよるのか、事故対応は良くなかった。知識のレベルもまちまちのようだ」

「基本的にはまじめで親切だが、担当者によって保険の知識に差があるような気がする」

これらの評価から、JA共済が自動車保険や事故処理の専門業者ではなく、農業協同組合の一事業として運営されていることが関係している可能性があると指摘されています。

被害者と加害者で評価が分かれる傾向 「加害者には良いかもしれませんが、被害者にとっては、対応が遅く平気で嘘をつく最悪な共済保険です」

「被害者の為にも普通の保険会社に入って欲しいです」

JA共済が契約者の利益を優先するあまり、被害者への対応が不十分になっているケースがあるのではないかという声も見られます。

2. 保障内容の限界

都民共済(県民共済)などの共済保険については、民間の生命保険と比較して保障内容に限界があるという指摘があります。

死亡保障の少なさ 「都民共済のデメリット①保障内容は民間の保険に劣る。例えば死亡保障ですが、交通事故による死亡で2,000万円、不慮の事故による死亡で1,600万円、病気等による死亡で400万円となっています」

埼玉県民共済についても、「病気で死亡なら1口(2000円コース)なら病気での死亡は400万円。これではお墓とお葬式で終わってしまいます」という指摘があります。

終身保障の欠如 「都民共済のデメリット②終身保障が用意されていない」

終身保険のような一生涯の保障がないため、高齢になってからの保障が心配されています。

3. 年齢による保障内容の変化

共済保険の多くは、年齢が上がるにつれて保障内容が変化(減少)するという特徴があります。

60歳以降の保障減少 都民共済では「60歳以降は、入院保障型には加入できず、熟年入院型に移行することになります」。60歳~65歳では保障内容が減少し、65歳以降はさらに減少する仕組みになっています。

埼玉県民共済についても「60歳を超えるとプランが変わり、熟年型共済となり、ガタッと支払われる保険料(死亡保障の額が)が下がります。何と病気での死亡保険額が65-70歳なら100万円に、70-75歳なら50万円になります」という指摘があります。

高齢者への保障不足 「都民共済のデメリット③高齢になった時の保障は物足りない」

年齢とともに病気のリスクは高まりますが、保障額は逆に下がるため、高齢者にとって保障が不十分になる可能性があると指摘されています。

4. セーフティネットに関する不安

共済には民間保険会社のような公的なセーフティネットがないという指摘もあります。

「都民共済の事業は、助け合い精神に基づく非営利事業です。また、誰もが掛金一律・保障一律とすることで、1人当たりの掛金が低く抑えられています。ただし、共済事業なので、公的なセーフティーネットはありません」

「JA共済(農協)のデメリット①セーフティネットへの不安」というように、共済の安全性について不安視する声もあるようです。

共済保険の良い評判・メリット

一方で、共済保険には多くのメリットもあり、高い評価を得ている側面もあります。

1. コストパフォーマンスの良さ

掛け金の安さ 「共済のメリットは①掛金が安い②病気でも加入しやすい」

「JA共済(農協)のメリット①掛け金が少ない」

民間の保険会社と比較して、共済は非営利で運営されているため掛け金が安くなる傾向があるとされています。

割戻金制度 「都民共済のメリット②割戻金を受け取ることができる」

「県民共済にずっと加入しています。月々の保険料も補償内容の割に比較的割安ですし、毎年1回保険料の割り戻しがありますので、これも魅力です。だいたい毎年30%程度保険料の割り戻しがあり、保険料が戻ってくるので、ちょっと得した気分になります」

割戻金制度によって実質的な掛け金負担がさらに軽減されることがメリットとして挙げられています。

年齢・性別に関わらず一定の掛け金 「都民共済のメリット①掛け金が割安で、年齢や性別に関わらず一定」

「メリット2:年齢に関係なく保険料は皆同じ」

民間保険では年齢や性別によって保険料が変わることが多い中、共済では一定の掛け金で加入できることが評価されています。

2. 加入のしやすさ

緩和された告知内容 「医療保険より、告知内容が緩和されているケースがあるため、医療保険ではだめだった方でも共済なら加入できる可能性があります」

「メリット4:加入の際の診査が比較的やさしい」

健康状態に不安がある方でも、民間の医療保険に比べて加入しやすい傾向があるとされています。

3. 実際の利用者からの良い評判

迅速な保険金支払い 「昨年、ちょっとした手術をして2週間ほど入院し、その後2週間自宅療養たことがあります。その際に加入していた医療保険と県民共済に保険金を申請したのですが、県民共済の保険金が一番早く振り込まれました」

「主人が大腸検査で内視鏡にてポリープを日帰り手術したときです。昔から入っていた大手の保険会社が13.000円掛けで、保険金40.000円でした。都道府県民共済は、主人4000円の掛け金ですが、割り戻し金があるので実質2.500円なのに約80.000円(入院日額14.500円×2日+手術50.000円)もの共済金が、すぐに振り込まれました」

少ない入院日数でも給付 「都民共済のメリット③たった1日の入院でも保障してくれる」

1日の入院でも保障してくれる点が評価されています。民間の医療保険では入院日数に制限があるケースがあります。

教職員共済の良い評価 「勤務中に学校でケガをしてしまい、3週間ほど病院に通うことに…。少し落ち込んでいましたが、総合共済の傷害共済金をいただき、気分が晴れ、嬉しい気持ちになれました。とても早く共済金が振込まれてびっくりしました」

「家の前の木を切り倒した際、思ったより高さがあり、木の先端がお隣のフェンスを直撃し、大きく破損させてしまいました。大変申し訳なく、弁償を考えました。共済担当の方に事の次第を話して相談したところ、総合共済で補償できるかもしれないとのこと。早速、書類を記入し申請したところ、なんと全額補償されたのです」

共済と民間保険の違いと選び方

共済と民間保険の主な違い

共済と民間保険には、いくつかの基本的な違いがあります。

1. 管轄している省庁が違う 「①管轄している省庁が違う」 共済は厚生労働省や農林水産省が管轄しているのに対し、民間保険は金融庁が管轄しています。

2. セーフティネットの違い 「②破綻の際に加入者を守るセーフティネットがあるかないか」 民間保険には生命保険契約者保護機構などのセーフティネットがありますが、共済にはそのような制度がありません。

3. 職業審査の有無 「③職業審査があるかないか」 民間保険では職業によって加入制限や保険料が変わることがありますが、共済ではそのような審査がないケースが多いとされています。

4. 保険料の設定方法 「④保険料が年齢によって変わるか一定か」 民間保険では年齢によって保険料が変わりますが、共済では年齢に関係なく一定の掛け金であることが多いようです。

共済が向いている人の特徴

共済保険は以下のような方に向いているとされています。

病気がある方や高齢者 「共済のメリットは①掛金が安い②病気でも加入しやすい」 告知内容が緩和されていることから、既往症がある方でも加入しやすい傾向があります。

コストを重視する方 「月々の掛け金がとても安い」 非営利事業であり、割戻金もあることから、コストパフォーマンスを重視する方に向いています。

シンプルな保障を求める方 シンプルな保障内容で、必要最低限の保障を求める方には共済が向いている可能性があります。

民間保険が向いている人の特徴

一方、民間保険は以下のような方に向いているとされています。

若い方や家族持ちの方 「県民共済よりも民間の生命保険の方がおすすめな人」 死亡保障をしっかりと確保したい家計の主な収入源となる方には、民間の生命保険の方が向いている場合があります。

カスタマイズされた保障を求める方 「ポイント1:民間の医療保険は種類豊富で特約もカスタマイズ可能」 自分のニーズに合わせて保障内容を細かくカスタマイズしたい方には、民間保険の方が選択肢が豊富です。

終身保障を求める方 「貯蓄性のある保険商品に加入しておきたい方へ」 一生涯の保障や貯蓄性を重視する方には、民間の終身保険が向いている場合があります。

共済保険に関する誤解と注意点

誤解1:共済は農家や特定の職業の人だけが加入できる

JA共済については、「農協の方だけしか加入できないと思われがちのJA共済ですが、実際は農家組合員じゃなくても加入できます。出資金を払うことで組員と同様の事業利用できる「准組合員」になるか、特定の範囲のみで利用可能な「員外利用」があります」という説明があります。多くの共済は一般の方でも加入可能です。

誤解2:共済だけで保障は十分

「県民共済だけで大丈夫なのか不安な方へ」

「県民共済一本なんて方、かなり危険ですよ、65歳以上生きたら無保険ですよ。今まで払い込んだお金、全てパーです」

共済だけで保障が十分かどうかは、個人の状況によって異なります。特に家族の生活を支える立場の方や、高齢になってからの保障を重視する方は、共済だけでは不十分な場合があるとされています。

注意点1:保障内容の変化

「通院の補償』がカット!今まででしたら、月4,000円コースで交通事故で1通院あたり4,000円出ていたのが廃止!少なくとも入院しないと保険金が出なくなりました」

共済の保障内容は時代とともに変化しています。以前は通院保障があったものが廃止されるなど、加入時と保障内容が変わっている可能性があるため、定期的な確認が必要とされています。

注意点2:火災共済の制限

「共済は法律で地震保険を付帯できないので、これまた保険請求機会が少ない保険なのです。家が燃えることは皆無でも、地震で家財が損傷する、これは長ーい35年ローンの支払期間に十分あり得ます」

火災共済については、法律で地震保険を付帯できないという制限があります。そのため、地震リスクがある地域では、民間の火災保険に地震保険を付帯することを検討した方が良い場合もあるようです。

総合的な分析と結論

共済保険が「やばい」と言われる背景

共済保険が「やばい」と言われる背景には、主に以下のような要因があるようです。

  1. JA共済自動車保険の事故対応: 特に被害者側からの評価が厳しく、対応の遅さや不誠実さを指摘する声が目立ちます。担当者による対応の差も課題とされています。
  2. 保障内容の限界: 民間保険と比較して死亡保障額が少ない、終身保障がないなどの限界があります。
  3. 年齢による保障減少: 60歳や65歳を超えると保障内容が大幅に減少し、高齢者にとって不十分になる可能性があります。
  4. セーフティネットの不在: 民間保険のような公的なセーフティネットがないことへの不安があります。

共済保険の評価できる点

一方で、共済保険には以下のような評価できる点もあります。

  1. コストパフォーマンス: 掛け金の安さ、割戻金制度、年齢・性別に関わらず一定の掛け金など、コスト面での優位性があります。
  2. 加入のしやすさ: 告知内容が緩和されており、健康状態に不安がある方でも加入しやすい傾向があります。
  3. 迅速な保険金支払い: 実際の利用者からは保険金の支払いが迅速だったという良い評価も見られます。
  4. 1日からの入院保障: 入院初日から保障される点も評価されています。

共済と民間保険の適切な選択

共済保険と民間保険のどちらが良いかは、個人のニーズや状況によって異なります。以下のような観点から選択するとよいとされています。

  • 若い方や家族持ちの方: 死亡保障を重視するなら民間保険が向いている場合が多い
  • 高齢者や既往症のある方: 告知が緩和された共済が加入しやすい
  • コスト重視の方: 掛け金の安さを重視するなら共済が有利
  • カスタマイズ重視の方: 細かな保障設計を望むなら選択肢の多い民間保険が向いている
  • 終身保障を求める方: 一生涯の保障を求めるなら民間の終身保険を検討

まとめ

共済保険が「やばい」と噂される背景には、一部の共済(特にJA共済自動車保険)の事故対応に関する問題や、保障内容の限界などの要因があるようです。しかし、すべての共済保険に同じ問題があるわけではなく、コストパフォーマンスの良さや加入のしやすさなど、評価できる点も多く見られます。

共済保険と民間保険はそれぞれ特徴が異なるため、どちらが良いかを一概に判断することはできません。重要なのは、自分のニーズや状況に合った保険・共済を選ぶことです。そのためには、両者の特徴を理解し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討するとよいでしょう。

保険や共済は万が一の時の備えであり、どのような保障が必要かは個人によって異なります。「共済保険がやばい」という噂に惑わされず、自分に合った選択をすることが大切です。

この記事では、インターネット上の口コミや評判、各共済のウェブサイト情報などを参考に分析を行っています。ただし、共済保険や民間保険の詳細な内容は常に変更される可能性があるため、最新の情報は各共済や保険会社に直接お問い合わせいただくことをお勧めします。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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