外貨建て保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

外貨建て保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”外貨建て保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について掘り下げて解説します

外貨建て保険についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、「外貨建て保険はやめたほうがいい」「危険すぎる」といった批判的な声が目立つ一方で、「実際に儲かった」「円建てよりも高い利回りが魅力」といった肯定的な意見も見られます。この記事では外貨建て保険が「やばい」と言われる理由とその真相について、専門家の意見や実際の口コミをもとに多角的に検証していきます。

外貨建て保険とは何か

外貨建て保険とは、保険金や解約返戻金の原資を外貨で運用する保険のことです。具体的には日本円を米ドルやユーロ、豪ドルなどの外貨に交換して運用する点に特徴があります。基本的に保険料の支払いや保険金の受け取りも外貨で行われますが、日本円で行う特約が設定されるケースも多いようです。

外貨建て保険には主に以下のような種類があります。

  1. 外貨建て終身保険 – 万が一の保障が一生涯にわたって続く保険です。途中で被保険者が亡くなったり、所定の高度障害状態になった場合に、死亡・高度障害保険金が支払われます。
  2. 外貨建て個人年金保険 – 保険料を支払うと一定の年齢に達したときに年金を受け取れる保険です。受取方法には、一定期間の受け取りが可能な「確定年金」と、一生涯にわたって受け取れる「終身年金」があります。
  3. 外貨建て養老保険 – 保険期間中に被保険者が亡くなったときは死亡保険金が、満期まで生存したときは満期保険金が支払われる保険です。

外貨建て保険が注目されている背景には、日本の長引く低金利環境があります。日本では預貯金や円建て保険でほとんど資産が増えない状況が続いていますが、外国の通貨は日本円よりも金利が高い傾向にあるためです。これにより、外貨建て保険は円建て保険と比較して「高い利回り」や「効果的な資産形成」が期待できるとされているようです。

外貨建て保険が”やばい”と言われる理由

外貨建て保険が「やばい」あるいは「やってはいけない」と言われる理由はいくつか存在します。これらの問題点を詳しく見ていきましょう。

1. 為替リスクによる元本割れの可能性

外貨建て保険に関する最大の懸念点は、為替リスクです。これは為替相場の影響を受けて、円に換算したときの保険金額や解約返戻金額、年金額が増減することを意味します。

例えば、保険料1万ドル、保険金1万1000ドルの契約をイメージしてみましょう。

  • 契約時の為替が1ドル=140円なら、一時払い保険料は140万円です
  • 1ドル=140円を維持した場合、円換算時の保険金は154万円となり利益が生じます
  • しかし1ドル=120円まで円高が進んだ場合、保険金は132万円となり8万円の損失が生じます
  • さらに1ドル=100円まで円高が進むと、保険金は110万円となり30万円もの損失になります

このように、円高が進行した場合、払い込んだ保険料よりも受け取る保険金が少なくなる「元本割れ」のリスクがあるのです。大手電機メーカー勤務の40代男性の事例では、「円高トレンドに切り替わってしまった」ことで、現在は解約すると元本割れの状態になっているとのことです。

2. 費用や仕組みがわかりにくい

外貨建て保険の仕組みは比較的複雑であり、十分に理解せずに契約すると思わぬ損失を被る可能性があります。特に以下の点が指摘されています。

為替手数料: 外貨建て保険では、日本円と外貨を両替するときに為替手数料がかかります。この手数料は保険会社や商品によって異なりますが、往復では相当額の費用がかかることがあります。

市場価格調整(MVA): 外貨建て保険には市場価格調整や利率変動型という仕組みが設けられている場合があります。これらは市場金利の変動を保険金や解約返戻金に反映させる仕組みです。これにより、外貨ベースでも受け取れるお金が変動し、円貨ベースでは為替リスクでさらに変動することになります。

早期解約控除: 契約から一定期間内に解約すると、解約返戻金が大幅に減少することがあります。検索結果によれば、「契約から10年未満の早期解約によるペナルティーで、返戻金は一段と少なくなってしまい、50万円近くを溶かす計算になる」というケースも報告されています。

3. 苦情件数の急増

外貨建て保険に対する苦情が近年急増しているという事実も、「やばい」と言われる理由の一つでしょう。

生命保険協会の調査結果によると、外貨建て保険に関する苦情は2017年度に1888件だったのが、2018年には2543件に増加しています。また、国民生活センターの調査では、2018年に消費者センター等に寄せられた相談は538件で、2014年と比べて約3倍以上となっているとのことです。

さらに深刻なのは、直近の6年間で苦情件数が実に4倍も増えているという点です。これは外貨建て保険の販売件数が増えていることも一因とされていますが、商品理解の不足や不適切な販売手法も大きな要因と考えられています。

4. 販売方法の問題

外貨建て保険の販売方法にも問題が指摘されています。検索結果によれば、苦情の多くは「元本割れになるリスクを十分説明していなかった」ことに起因しているようです。

中には「元本保証を約束され外貨建て保険に契約したが、元本保証ではなかった」というケースもあります。しかし、外貨建て保険において円ベースでの元本が保証されることはありません。「元本割れはしない」という説明は、あくまでドルの保険料とドルの保険金を比べた場合であって、円に換算したらどうなるかまで説明していないのは不適切と言わざるを得ないでしょう。

また、特に高齢者を対象にした販売において問題が多いようです。国民生活センターの調査によると、相談件数の約半数が70歳以上の人からのものであり、「高齢の親宛に保険証券が届いたが本人は加入した覚えがない」など認知能力の低下に起因したトラブルも報告されています。

外貨建て保険の良い評判とメリット

一方で、外貨建て保険には肯定的な意見やメリットも存在します。実際に利益を得た人も多く、適切に活用すれば資産形成に役立つ可能性があります。

1. 円建て保険よりも高い利回りの可能性

日本よりも金利の高い国の保険は、日本の保険に比べて保険料が安くなる傾向があります。同額の死亡保障の終身保険の保険料が、外貨建てだと安くなることがあり、同じ保険料ならより大きな死亡保障、より多い年金を契約できる可能性があるのです。

具体的な数字で見ると、2019年7月時点での長期金利の指標である10年物国債の利回りは、日本国債が-0.117%なのに対して、アメリカ国債は2.110%と大きな開きがありました。この金利差が、外貨建て保険の魅力の一つとなっていると言えるでしょう。

2. 外貨建て保険で儲かった人の口コミ

検索結果では、実際に外貨建て保険で利益を得た人の声が紹介されています。

  • 「払い済み保険にして置いておいた保険が急激な円安になり、利益が出た」
  • 「1ドル96円の円高に開始し、解約時には1ドル126円となり利益確定した」
  • 「1ドル109円から145円になり、170万円のプラスで利益が出た」
  • 「円安となり2年弱で約150万円増えた」
  • 「200万円の契約後、一旦は50万円の含み損だったが円安になり20万円の利益が出た」

これらの事例からわかるように、円安傾向が続いた場合や、円高時に契約して円安時に解約した場合には、かなりの利益を得ることができる可能性があるようです。

3. 資産の多様化手段として

外貨建て保険は、円資産一辺倒の資産ポートフォリオに外貨建て資産を加えることで、為替変動リスクを分散させる手段としても活用できます。特に「円安になるまで保険会社に預けておく」といった柔軟な対応ができれば、為替リスクをある程度コントロールすることも可能です。

また、外貨のまま受け取ることで、「子供の留学費用や海外旅行に使う」といった目的にも活用できるとされています。

外貨建て保険に関する誤解と真実

外貨建て保険に関しては、誤解も多いように思われます。ここでは、よくある誤解とその真実について整理してみましょう。

誤解1: 外貨建て保険は元本保証である

これは大きな誤解です。外貨建て保険は外貨ベースでは元本保証に近い性質を持つ場合がありますが、円に換算したときには為替レートの影響を受けるため、円ベースでの元本は保証されていません

外貨建終身保険の場合、外貨ベースの保険金額は契約時に決定し、将来に受け取れる解約返戻金もほぼ確定しています。しかし、円で受け取るためには日々変動する為替レートで換算する必要があり、円高になれば元本割れのリスクがあるのです。

誤解2: 外貨建て保険は投資商品である

外貨建て保険は本来、保障を目的とした保険商品です。しかし、運用利回りの高さから投資商品として誤解されることがあります。保険である以上、保険料の一部は保障のコストに充てられるため、純粋な投資商品と比較すると運用効率は劣る面があります。

ファイナンシャルプランナーの有田美津子さんによれば、「外貨建て保険を何本も契約している人もいる。無駄な保険契約を見直すところから、相談がスタートするケースは少なくない」とのことです。

誤解3: 外貨建て保険はすべての人に向いていない

外貨建て保険が「やってはいけない」と言われる理由の一つとして、商品への理解不足が挙げられます。しかし、商品の仕組みや為替リスクを正しく理解し、自分の加入目的に合っていれば、外貨建て保険は選択肢として検討する価値がある商品と言えるでしょう。

特に、外貨建て保険は「長期的な積み立てや据え置きができる状況」で活用すべきであり、短期間で解約する可能性が高い場合は避けたほうが良いとされています。

外貨建て保険の損益分岐点と為替リスク

外貨建て保険を検討する際に重要なのが「損益分岐点」です。これは、どの程度の為替レートであれば損失が発生せず、利益を得られるかを示す指標です。

例えば、1ドル=140円で契約した場合、受取時に1ドル=140円以上であれば利益が生じる可能性が高く、それ以下では損失が発生する可能性が高まります。検索結果では以下のような具体例が示されています。

保険金の円換算(1万1000ドル)の場合:

  • 1ドル=100円:110万円(−30万円の損失)
  • 1ドル=120円:132万円(−8万円の損失)
  • 1ドル=140円:154万円(+14万円の利益)
  • 1ドル=160円:176万円(+36万円の利益)
  • 1ドル=180円:198万円(+58万円の利益)

この表からわかるように、契約時より円高になると損失が生じ、円安になると利益が生じる傾向があります。したがって、円安傾向が続くことを予想する場合や、円高のタイミングで契約することが重要と言えるでしょう。

ただし、為替相場の予測は非常に難しいため、一時払いで外貨建て保険を購入することは「実質的に外貨へ一度にまとまった金額を投資することになり、円がいちばん安い水準のときに外貨を買ってしまうリスクがある」とも指摘されています。このリスクを軽減するために、「5年以上の期間をかけて保険料を月払い、年払いすること」が推奨されているようです。

外貨建て保険の出口戦略

外貨建て保険を契約した後の「出口戦略」も重要なポイントです。満期や解約時にどのように資金を受け取るかによって、最終的な利益や損失が大きく変わってくる可能性があります。

検索結果によれば、満期金の受け取り方法には主に以下の2つがあります。

1. 円転して受け取る

円に換算して受け取る場合、受け取り時の為替レートによって金額が大きく変わります。円安であれば有利ですが、円高であれば不利になります。

重要なポイントとして、「必ず受け取る必要はありません。円安になるまで保険会社に預けておくとよいでしょう」と指摘されています。つまり、タイミングを見て受け取ることで、為替リスクをある程度コントロールできる可能性があるということです。

2. 外貨のまま受け取る

多くの外貨建て保険は、契約通貨建てのまま受け取ることができます。ただし、この場合は「銀行の外貨預金口座を保有しておく必要」があります。

外貨のまま受け取るメリットとしては、子供の留学費用や海外旅行に使えることや、「外貨で受け取り後、他の外貨建て保険商品で運用することも選択肢に入れる」ことが挙げられています。

特に外貨預金口座としては、SMBC信託銀行(プレスティア)などの外貨に強い銀行が推奨されています。プレスティアは「外貨といえばプレスティア」と自負しており、外貨の専門性、外貨建ての運用商品の充実、海外送金の対応力などに優れているとされています。

外貨建て保険に向いている人と向いていない人

外貨建て保険はすべての人に適しているわけではありません。検索結果から、以下のような特徴が見えてきます。

外貨建て保険に向いている人

  • 長期的な視点で資産形成を考えられる人: 外貨建て保険は長期的な積み立てや据え置きができる状況で活用すべきとされています。
  • 為替リスクを理解し、許容できる人: 為替変動によって元本割れする可能性があることを理解し、そのリスクを受け入れられる人に向いています。
  • 円建て資産以外にも分散投資したい人: 資産ポートフォリオの一部として外貨建て資産を持ちたい人にとっては選択肢となり得ます。

外貨建て保険に向いていない人

  • 短期間で解約する可能性が高い人: 早期解約すると大きな損失が発生する可能性があるため、数年以内に資金が必要になる可能性がある人には不向きです。
  • 為替リスクに対して不安がある人: 円高になった場合の元本割れリスクを受け入れられない人は避けるべきでしょう。
  • 投資や為替の仕組みを理解できない人: 「投資や為替が理解できない方は、外貨建て保険は契約しないようにしましょう」と明確に指摘されています。

外貨建て保険を検討する際のチェックポイント

最後に、外貨建て保険を検討する際のチェックポイントをまとめてみましょう。検索結果から、以下のような点が重要と思われます。

1. 商品の仕組みと為替リスクを理解する

外貨建て保険を契約する前に、商品の仕組みと為替リスクについて十分に理解することが必要です。特に「保険料を払い込む場合や、保険金・解約返戻金を円で受け取る場合、為替相場の変動によって、払込額や受取額が増減し、損失が生じることがある」という点を認識しておくべきでしょう。

2. 販売担当者の説明を評価する

保険会社や銀行の担当者から外貨建て保険を勧められた場合、「まず担当者がきちんと説明をする誠意があるかどうかを見極めることが大切です。為替リスクについて分かりやすい説明もなく、元本保証だと勧めてきたら要注意です」と指摘されています。

3. 契約期間と解約ペナルティを確認する

外貨建て保険は長期的な視点で契約すべき商品です。「継続して支払いができることを確認」し、早期解約時のペナルティについても確認しておくことが重要です。

4. 為替手数料と各種コストを確認する

外貨建て保険には為替手数料がかかります。この手数料は「保険会社や商品によって異なります」ので、事前に確認しておくべきでしょう。また、その他の費用についても理解しておく必要があります。

5. 段階的な投資を検討する

一度に大きな金額を投資するのではなく、「5年以上の期間をかけて保険料を月払い、年払いすること」が推奨されています。また、いきなり外貨建て保険に多額の資金を投入するのではなく、「外貨建て保険の前に、月数千円~数万円から外貨預金や外貨建ての投資信託を経験してみること」も良い方法とされています。

まとめ

外貨建て保険が「やばい」と噂される背景には、為替リスクによる元本割れの可能性、費用や仕組みの複雑さ、苦情件数の増加、販売方法の問題など、様々な要因があるようです。特に、商品の理解不足や不適切な販売手法による誤解が大きな問題となっているようです。

一方で、円建て保険よりも高い利回りの可能性や、実際に利益を得た人々の事例からも分かるように、適切に活用すれば資産形成に役立つ可能性もあります。外貨建て保険は特定の状況や特定の人々には適していると言えるでしょう。

最終的には、自分の資産形成の目的や投資期間、リスク許容度などを総合的に判断して、外貨建て保険が自分に合っているかどうかを見極めることが重要です。また、契約前には必ず商品の仕組みと為替リスクについて十分に理解し、販売担当者の説明を慎重に評価することをお勧めします。

さらに、一部の専門家は「外貨の経験がない方は、外貨預金や外貨建て投資信託で経験を積んでから外貨建て保険を検討する」というアプローチを提案しています。この段階的なアプローチにより、外貨建て商品のリスクとリターンを実感してから判断することができるでしょう。

いずれにせよ、「やばい」という噂に惑わされず、正確な情報と自分の状況に基づいて判断することが、賢明な選択につながると考えられます。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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