外資保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

外資保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”外資保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について掘り下げて解説します

外資系保険会社についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、プルデンシャル生命やジブラルタ生命などの外資系保険会社について「やばい」という評判が広がっています。特に外貨建て保険に関する批判的な意見が目立ちますが、一方で高い評価を得ている側面もあるようです。この記事では、外資系保険会社が「やばい」と言われる背景には何があるのか、それは誤解から生じているものなのか、良い評判も含めて客観的に検証していきます。

外資系保険会社の基本情報

まず、外資系保険会社とは何かについて理解しておきましょう。外資系保険会社とは、外国の企業や投資家が一定以上の出資をしている保険会社のことを指します。一方、日系保険会社は日本国内で設立され、一般的に日本に本社を置く保険会社です。

しかし、外国資本の入った会社であるかどうかに関わらず、外資系・日系の保険会社ともに、日本の法規制のもとで営業を行っているため、根本的な違いは少ないと考えられています。

外資系と日系の大きな違いとして、保険商品の販売形式があるようです。日系保険会社では、一つの保険契約に関連する特約を付けて、セットとして販売するケースが多いのに対し、外資系保険会社は、一つひとつの保険契約を分け、それぞれを単品として販売している会社が多いという特徴があります。

外資系保険会社が”やばい”と噂される主な理由

1. 外貨建て保険の為替リスクと元本割れの問題

外資系保険会社が「やばい」と言われる最も大きな理由の一つに、外貨建て保険の為替リスクがあります。外貨建て保険は、米ドルや豪ドルなどの外貨で保険料を払い込み、外貨で保険金や解約返戻金などを受け取る保険です。

為替リスクとは、為替相場の変動により、保有する外貨建資産を円に換算した額が変化して、損失や利益が生じる不確実性のことをいいます。たとえば、10万ドルの保険金を受け取れるとき、1ドル=110円の場合の日本円換算の保険金は1100万円ですが、1ドル=105円になると日本円換算の保険金は1050万円になってしまいます。

問題なのは、外貨建て保険の勧誘を受ける際に「元本保証」だと勘違いするような説明を受けるケースがあることです。しかし実際には、外貨建て保険には為替リスクがあるため、円高が進むと日本円換算での保険金・解約返戻金等は元本割れする可能性があります。

この点について、ある相談事例では「外貨建養老保険の募集にあたり、契約概要等を提示のうえ、『満期保険金は10万米ドルで、この金額は保証されています。現在のレートによるとちょうど1,000万円ですね』と説明したところ、為替レートの変動により、満期時の受取金額を円に換算した金額が900万円であったため苦情となった」というケースが報告されています。

2. 高い手数料や諸費用の実態

外貨建て保険では、払い込んだ保険料から様々な諸費用が差し引かれます。保険契約の締結・維持、死亡保障などに係る費用や、10年以内などに解約した場合の解約控除費用、年金で受け取る場合の管理費用などが含まれます。

また、日本円で保険料を払ったり保険金等を受け取ったりした場合は為替手数料(外貨との両替にかかる手数料)がかかります。日本経済新聞の記事によると、保険会社が銀行に支払う外貨建て一時払い生命保険の手数料率は、平均で約7%(2015年度上期)で、投資信託の購入時手数料が平均2%強であるのと比べてかなり高いとされています。

この高い手数料が、お客様の保険料から充てられるため、その分、保険の収益性が落ちるという問題があるようです。

3. 営業方法に関する批判

外資系保険会社、特にプルデンシャル生命やジブラルタ生命などでは、フルコミッション制(完全歩合制)の営業体制を取っているため、営業担当者に厳しいプレッシャーがかかっているという指摘があります。

一部の営業担当者による紹介型の営業スタイルで、しつこい勧誘があるという声も聞かれます。「保険営業マンに外貨建て保険を勧められたけど入るか迷っている」という相談が多いことからも、営業面での課題が見られるようです。

また、プルデンシャル生命保険では、一部の営業担当者による不適切な投資勧誘も問題となりました。生命保険とは関係のない私募ファンドやFXへの投資に勧誘し、金銭トラブルが発生したケースもあったようです。

4. 商品の複雑さと説明不足

外貨建て生命保険に関する苦情調査の結果によると、「説明不十分」が69%と全体の3分の2以上を占めており、この「説明不十分」のうち、「元本割れリスク」にかかる内容が3分の1程度を占めているとされています。

外貨建て生命保険の苦情件数は、調査を開始した2012年以降、一貫して増加しており、2018年には2,543件と調査開始時に比べ約4倍となっています。また、苦情を年齢別でみると60歳代以上が圧倒的に多く、さらに80歳以上では本人以外の親族等からの苦情が突出しているという特徴があります。

商品の仕組みは複雑で、パンフレットや提案書を一度読んだだけでは理解できないという問題点も指摘されています。注意する点について一応記載はされているものの、文字が小さかったり、言い回しが難しかったり、その保険会社独自の用語であったりと、とにかく難解であるという批判があります。

5. 解約時の流動性の低さ

外貨建て保険は流動性が低いという問題点も指摘されています。保険会社は、販売会社に支払った手数料を運用による収益から回収するため、手数料が高いと回収するのに長い期間が必要になります。そのため、契約後10年くらいの間に解約すると、契約者に高いペナルティーがかけられる仕組みになっているようです。

早期に解約すると解約返戻金の元本割れは避けられないため、20~30代の働く女性など、これから結婚、出産、マイホーム購入といったお金がかかるライフイベントが予定されている人には不向きな商品だという指摘もあります。

6. 日本からの撤退リスク

外資系保険会社は、もともと海外に拠点を置く会社であるため、日本での採算が取れない場合、日本から撤退する恐れがあるという点も懸念材料として挙げられています。

ただし、保険業法に基づいて一定の契約者保護が図られ保険契約も守られるため、契約自体がなくなることはありませんが、その後のサポートや相談・対応などが受けにくくなることがあるとされています。

外資系保険会社の良い評判と実際のメリット

ここまで「やばい」と噂される理由について見てきましたが、外資系保険会社には多くのメリットや良い評判もあります。以下では、その点について検証していきます。

1. オーダーメイドの保険設計が可能

外資系保険会社では保険契約が個別に分かれているため、自分に必要な保険だけを選んで加入することができる場合が多いです。これにより、必要な保障のみのシンプルな契約にできるため、保険料は主契約に特約が付いたパッケージ型の保険より抑えることも可能になります。

「1商品につき1契約」とする形式が多い外資系の保険会社は、欲しい保障内容の契約だけをする使い方も可能で、オーダーメイドに保険契約できる魅力があるようです。

2. 保険料が抑えられる可能性

外資系保険会社は、日本の生命保険会社が多くの女性営業員(生保レディ)を雇用し、定期訪問や手厚いサポートを提供するのに対し、少数精鋭の営業体制をとっているため、国内の従業員数が少なく、人件費が抑えられていることも、価格が安い理由の一つとされています。

自分で契約したい保障内容をピックアップできるので、無駄を省きやすく保険料をコントロールしやすいという利点もあります。ただし、外資系でも従業員を多く抱える大手は、規模の小さい会社と比較すると同じ保障でも保険料は高めに設定されていることもあるため、一概に外資系=保険料が安いとも言い切れないようです。

3. 資産形成機能の高さ

現在の日本はマイナス金利の影響により、円建ての貯蓄型生命保険は昔ほど資産形成機能に優れていないのが現状です。一方、米ドルなどは日本円よりも金利が高いため、外貨建て保険は貯蓄性に優れているケースが多いとされています。

プルデンシャル生命では、外貨建て保険という他社にはあまり見られない独特な保険商品が使えるため、外貨投資に興味ある人は資産として保険を持つこともできるという評価もあります。

ただし、先述したように為替リスクがあることや、為替手数料がかかることなどには注意が必要です。

4. 契約後の対応やサポートの質

プルデンシャル生命は、業績やサービスなど高い評判がある一方で、営業や対応に関して悪い評判もあるというバランスのとれた評価が見られます。

良い口コミとしては「プルデンシャル生命は業績ベースでしっかりした経歴があるので安心できる」「高い評価もあり、サポートも充実していた」という声が聞かれます。

また、丁寧な対応とサポート、親身なアドバイス、オリコン顧客満足度調査での高評価といった良い評判も多く見られるようです。

5. 営業マンによる勧誘の少なさ

国内の生保会社と比較して、外資系の営業マンの勧誘は少ないのが一般的だと言われています。国内大手では、生保レディと呼ばれるような女性の営業員も多くいますが、外資系の営業は男性が多いように思われるという特徴もあるようです。

ただし、先述したように、一部では営業マンの勧誘がしつこいという批判もあるため、営業担当者の個人差もあるものと考えられます。

外資系保険と外貨建て保険に関する誤解

外資系保険会社や外貨建て保険に関しては、いくつかの誤解も存在しているようです。これらの誤解を解くことで、より客観的な判断ができるでしょう。

1. 「外資系だから保険金が下りにくい」という誤解

「外資系は保険がおりにくい」という噂がありますが、これは誤解であるようです。「外資系だから保険がおりないとか、おりにくいということは全くありません」と専門家は述べています。

保険金が支払われるかどうかは、約款に定められた支払い条件に該当するかどうかで決まるものであり、外資系か日系かという点は関係ないと考えられます。

2. 「外貨建て保険は元本保証」という誤解

外貨建て保険の勧誘を受ける際に「元本保証」だと勘違いするような説明を受けるケースがあるようですが、これは大きな誤解を招く恐れがあります。

外貨建て保険には為替リスクがあるので、日本円換算では元本を割る可能性がある保険商品です。窓口などで「元本保証」であるような説明を受けたとしても、それはあくまでも米ドルや豪ドルなどの外貨ベースでの「元本保証」であり、円高が進めば日本円換算での保険金・解約返戻金等は元本割れする可能性があることをしっかりと認識しておく必要があります。

3. 「外資系保険会社はすべて同じ」という誤解

外資系保険会社と一言で言っても、会社によって特徴や商品ラインナップ、営業スタイルなどは大きく異なります。例えば、プルデンシャル生命とアフラック、マニュライフ生命など、それぞれの会社で強みとする保険商品や営業手法は異なるため、一括りに「外資系保険会社」として評価することには無理があるでしょう。

4. 「保険会社が破綻したら保険金が受け取れない」という誤解

外資系保険会社が日本から撤退する懸念について言及されることがありますが、保険業法に基づいて一定の契約者保護が図られ保険契約も守られるため、契約自体がなくなることはないと考えられます。

ただし、その後のサポートや相談・対応などが受けにくくなることがあるという点には注意が必要でしょう。

外資系保険会社選びのポイント

外資系保険会社の商品を検討する際は、以下のポイントに注意することで、より良い選択ができるでしょう。

1. 商品の内容と仕組みをしっかり理解する

外貨建て保険は「外貨で保険料や保険金が設定されている」「円高・円安の影響を受けるため、円換算した保険料や保険金等が変動する」「為替手数料がかかる」といった仕組みを契約者側がきちんと理解する必要があります。

特に、外貨建て保険の勧誘を受けた際には、「元本保証」という言葉に惑わされず、為替変動によるリスクについてしっかりと説明を受け、理解することが重要です。

2. 自分のニーズに合った保険を選ぶ

外資系保険会社は、単品型の保険商品を多く取り扱っていることから、自分のニーズに合わせてオーダーメイドの保険を組むことができるというメリットがあります。

ただし、そのためには保険の知識が必要であり、どの保障が必要で、どの保障が不要かを自分で判断する必要があります。自分の知識に自信がない場合は、複数の保険会社や保険商品を比較検討できる保険の専門家に相談することも一つの選択肢でしょう。

3. 解約返戻金や手数料について詳しく確認する

外貨建て保険は、特に短期間で解約するとペナルティが課されることが多いため、契約時には解約返戻金の推移や手数料についてしっかりと確認することが重要です。

また、為替手数料や保険関係費用など、様々な諸費用がかかることも念頭に置いておく必要があります。

4. 為替リスクを許容できるかどうかを考える

外貨建て保険は為替リスクがあるため、円高になった場合に日本円換算で元本割れする可能性があります。そのリスクを許容できるかどうかをしっかりと考えた上で加入を検討することが重要です。

為替リスクが心配な場合は、円建ての保険商品や他の金融商品を検討するのも一つの選択肢でしょう。

5. 営業担当者の説明を鵜呑みにしない

保険の営業マンに勧められたから加入するのは危険だという指摘もあります。外貨建て保険などの複雑な商品については、営業担当者の説明だけでなく、自分でも調べたり、第三者の意見を聞いたりすることが重要です。

特に高齢者の場合は、親族等にも保険加入について理解してもらうことが大切だとされています。

まとめ

外資系保険会社が「やばい」と噂される主な理由には、外貨建て保険の為替リスクと元本割れの問題、高い手数料や諸費用の実態、営業方法に関する批判、商品の複雑さと説明不足、解約時の流動性の低さ、日本からの撤退リスクなどが挙げられます。

一方で、オーダーメイドの保険設計が可能、保険料が抑えられる可能性、資産形成機能の高さ、契約後の対応やサポートの質、営業マンによる勧誘の少なさといった良い評判やメリットも存在しています。

外資系保険会社や外貨建て保険に関する批判の中には、誤解や情報不足から生じているものもあるようです。最終的には、商品の内容と仕組みをしっかり理解し、自分のニーズに合った保険を選び、解約返戻金や手数料について詳しく確認し、為替リスクを許容できるかどうかを考え、営業担当者の説明を鵜呑みにしないという姿勢が重要だと言えるでしょう。

保険は長期間にわたる契約であり、その間に為替相場や金利環境、個人の生活状況なども変化します。そのため、短期的な視点だけでなく、長期的な視点で自分に合った保険を選ぶことが大切です。また、外資系保険会社に限らず、保険選びは個人のライフプランやニーズによって最適な選択が異なるため、様々な情報源から客観的に判断し、必要に応じて複数の保険会社や商品を比較検討することが望ましいでしょう。

最後に、外資系保険会社については「やばい」という噂と実際のサービスの間にはギャップがあることも多いようです。一部の評判や批判だけでなく、多角的な視点から情報を収集し、自分自身の状況やニーズに合った保険を選ぶことが最も重要だと言えるでしょう。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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