保険証の水色が”やばい”といわれているのはなぜ?

保険証の水色が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”水色の保険証がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について掘り下げて解説してみました

日本の健康保険制度において、保険証の色が「水色」であることを否定的に捉える風潮が一部で見られるのです。しかし、実際にはこのような認識は誤解に基づくものとされ、保険証の色自体が持つ意義や背景を正確に理解する必要があります。具体的な情報を基に、ネット上の噂の真相や真実の関係性を分析します。

保険証の色が「水色」と評判される背景と原因

保険証の色が「やばい」と評される理由は、主に「水色=協会けんぽ=中小企業や低収入層」という連想から生まれたと考えられます。以下に具体的な要因を整理します。

①「協会けんぽ=中小企業」の固定観念

協会けんぽは中小企業の従業員や自営業者が加入する健康保険制度であり、加入者数が4,000万人以上と日本で最も広く普及した制度です。水色の保険証は協会けんぽの標準的な色として知られていますが、この事実が「水色=中小企業」という誤った結びつきを生んでいると指摘されています。

実際には、協会けんぽに加入している人々の中には、年収が大企業の社員を上回るフリーランスや役員クラスも含まれています。例えば、IT業界の高収入フリーアナウンサーや起業家など、収入面では優位な立場の人々も協会けんぽの水色保険証を持つことがあります。

②「組合健保=大企業」の相対的評価

組合健保(赤・ピンク系の色)は700名以上の従業員を持つ大企業が独自に運営する健康保険制度です。このため、赤やピンクの保険証を持つ人は「大企業勤務・高収入」というイメージが強く、逆に協会けんぽの水色が「非大企業」という対比的な評価を受ける傾向が見られます。

ただし、実際には大企業でも協会けんぽに加入するケースがあります。例えば、トヨタ自動車やその他の大企業グループの一部企業が協会けんぽを選択している状況も報告されています。さらに、組合健保の保険証色も企業ごとに異なり、赤やピンク以外の色も存在します。

③「保険証マウント」の蔓延

SNS上で「保険証の色で職業や収入を推測する」という行為が「保険証マウント」と呼ばれ、特に若年層の間で話題になることがあります。このような風潮が「水色=低評価」という偏見を助長していると指摘されています。

医療従事者や保険エキスパートからは、このような行為が「職業や収入だけで人間の価値を判断する浅はかさ」と強く批判されています。実際、保険証の色は医療機関での手続き効率化や見分けやすさを目的としたものであり、個人の価値判断に役立つ情報ではないと断言されています。

保険証の色の真実と誤解の構造

保険証の色が「やばい」と評価される背景には、制度上の誤解や情報の断片的な伝播が影響しています。具体的な事実関係を整理します。

①保険証の色は「保険者の任意設定」

保険証の色は各健康保険組合や共済組合が独自に決定しており、法的な基準や年収・職業との直接的な関連はありません。例えば、協会けんぽは水色や青を用いることが多いですが、地域や時代によってオレンジ色など他の色も使用されています。

特に組合健保では、企業ごとに異なる色を採用するケースが多く、赤やピンク以外の色(例:紫やグレー)も存在します。さらに、同じ組合健保内でも紙の保険証とマイナ保険証の色が異なることも報告されています。

②保険者番号が真の識別基準

保険証の色よりも重要な情報は「保険者番号」の最初の2桁です。01は協会けんぽ、06は組合健保、31は国家公務員共済組合など、加入している保険制度を正確に表すことができます。

例えば、組合健保の保険者番号が06である場合でも、保険証の色が水色であることがあります。逆に協会けんぽの01でも、企業ごとに赤やピンクの保険証を発行するケースも存在します。このことから、色だけで保険制度を判断することは根本的に誤りです。

③公務員や高収入層も水色保険証を所持

水色の保険証は公務員や教育関係者にも広く採用されています。例えば、東京都職員共済組合や公立学校教職員の共済組合など、公務員向けの保険証も水色の場合があります。

さらに、協会けんぽに加入している人々の中には、自営業者やフリーランスとして年収が大企業の社員を上回る人々も含まれています。このような事例から、水色が「低収入層」を示す色という認識は完全な誤りです。

ネット上での「水色保険証否定」の実態

保険証の色に関するネットでの議論は、主に若年層のSNSコミュニティで見られます。具体的な言説の内容とその背景を分析します。

①「水色=中小企業」という固定観念の強さ

「水色の保険証を持つ人は中小企業勤務」という認識が根強いようです。例えば、ある匿名掲示板では「水色だとやばいから大企業に入るのに必死」などの投稿が見られます。ただし、これらの主張は保険証の色と企業規模の相関を誤認したものです。

実際、協会けんぽに加入する中小企業も、業界によっては収入面で大企業を上回る場合があります。IT業界のスタートアップ企業や専門職の個人事業者など、従業員数が少ないものの収益性の高い企業も存在します。

②「保険証マウント」の心理的背景

保険証の色で他人を評価する行為には、自己の社会的地位を確認したいという心理が働いている可能性があります。これは「自己肯定感の低い人が、他者を否定することで自己を高める」というメカニズムと関連していると指摘されています。

例えば、ある女性のインタビューでは「大企業の赤い保険証を持つ友人に劣等感を感じ、水色の保険証を隠すことに抵抗がある」という声が挙がっています。しかし、このような思考は「保険証の色が人間の価値を決定する」という誤った前提に基づいています。

③マイナ保険証普及への抵抗感

2024年12月以降、従来の健康保険証が廃止されマイナ保険証が必須となる予定ですが、その普及率は低い状況です。この背景には、情報漏洩への懸念や従来の保険証への慣れ親しみが挙げられています。

特に、マイナ保険証の色が水色である場合、「従来の保険証と同じように扱われる」という懸念が一部で発生しています。ただし、保険証の色自体は制度変更の影響を受けず、従来通りです。

保険証の色に関する真実の関係性

保険証の色が「やばい」と評価される誤解を解消するため、制度上の真実を整理します。

①保険証の色は「保険者の任意設定」のため、年収や職業を示さない

保険証の色は、全国健康保険協会や各組合健保が独自に決定したものです。例えば、協会けんぽは民営化後に水色や青を採用していますが、これは「中小企業」という意味ではなく、単に色の見分けやすさを考慮した結果です。

組合健保でも、企業ごとに異なる色を使用することが許可されています。例えば、ある大企業の組合健保は紫色の保険証を発行しており、赤やピンクだけでなく様々な色が存在します。

②保険者番号が真の識別基準

保険証の色よりも重要な識別情報は「保険者番号」の最初の2桁です。01は協会けんぽ、06は組合健保、31は国家公務員共済組合など、加入している保険制度を正確に表します。

例えば、組合健保(06)の保険証が水色である場合でも、企業規模や待遇面では協会けんぽ(01)と異なります。逆に協会けんぽでも、企業によって赤やピンクの保険証を発行するケースがあります。

③水色保険証を持つ者の実態

水色の保険証を持つ人々の実態は多様です。具体的な例を挙げると:

  • 中小企業の社長や役員:従業員数が少ないものの収益性が高い企業の経営者
  • 高収入フリーランス:ITエンジニアやデザイナーなど、個人事業で年収が大企業の社員を上回る人々
  • 公務員や教職員:東京都職員共済組合や公立学校教職員の共済組合が水色の保険証を発行
  • 大企業の従業員:経営戦略上、組合健保ではなく協会けんぽを選択する企業の従業員

これらの事例から、水色が「低所得層」を示す色という認識は完全な誤りです。

保険証の色に関する誤解の解消に向けた提言

保険証の色が「やばい」と評価される問題は、制度上の誤解や情報の断片的な伝播が原因です。改善に向けた具体的な提言を以下に整理します。

①保険制度の正確な認識の普及

保険証の色ではなく、保険者番号や加入制度を正確に理解することが重要です。例えば、組合健保(06)と協会けんぽ(01)では、保険料や給付内容が異なります。特に、組合健保は企業の福利厚生に依存するため、保険料が低く給付内容が充実している傾向があります。

逆に協会けんぽは、自己負担率が高いものの、加入者の収入が安定していない場合でも公平な保険料体系を提供します。自営業者やフリーランスにとって、協会けんぽは重要な社会保障制度として機能しています。

②「保険証マウント」への批判的見方

保険証の色で他人を評価する行為は、人間の価値を表面的な情報で判断する浅はかさを示すものです。医療従事者からは、このような行為が「患者の心身の健康に悪影響を与える」と指摘されています。

例えば、ある病院のスタッフは「保険証の色より、患者が適切な治療を受けられるかが重要」と強調しています。実際、保険証の色が治療内容や医療費の負担に影響することはありません。

③マイナ保険証の普及促進策

マイナ保険証の普及率が低い背景には、情報漏洩への懸念や操作の複雑さが挙げられています。政府や保険者は、以下の対策を検討すべきです。

  • プライバシー保護の強化:マイナ保険証の利用範囲を明確にし、情報漏洩リスクを軽減
  • 利便性の向上:マイナ保険証と従来の保険証の併用を可能にする制度設計
  • 教育キャンペーン:保険証の色や制度の違いを正確に周知する啓発活動

特に、水色の保険証を持つ人々が「マイナ保険証が必須になることで不利益を被る」という懸念が一部で見られます。このような誤解を解消するため、制度変更の背景とメリットを明確に伝えることが重要です。

結論:保険証の色は人間の価値を決定しない

保険証の水色が「やばい」と評価される問題は、制度上の誤解や情報の断片的な伝播が原因です。真実は、保険証の色は保険者の任意設定であり、年収や職業を示すものではないということです。

水色の保険証を持つ人々の中には、中小企業の社長や高収入フリーランス、公務員や教育関係者など、多様な背景を持つ人が含まれています。このような事実を踏まえ、保険証の色で他人を評価する行為は、人間の価値を表面的な情報で判断する浅はかさと言えるでしょう。

今後、保険制度の正確な理解を深め、個人の価値を保険証の色ではなく、その人の能力や実績で評価する社会を作ることが重要です。特に、若年層がSNS上で「保険証マウント」をする現象に対し、メディアや教育機関が適切な啓発活動を行う必要があります。

最終的に、保険証の色は医療機関での手続き効率化や見分けやすさを目的としたものであり、個人の社会的地位や収入を示す情報ではありません。この認識を広く社会に浸透させることが、保険証の色にまつわる誤解の解消につながると考えられます。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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