無保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

無保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”無保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について解説

無保険が「やばい」と言われる現状についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。道路を走る10台に1台は無保険車という驚きの実態から、被害者・加害者それぞれの立場で直面する深刻なリスクまで、無保険問題の全容を明らかにします。

無保険の実態と種類

「無保険」と一言で言っても、実際にはいくつかの状態が存在するようです。具体的には「自賠責保険に加入しているが、任意保険に未加入の状態」のケースと、「自賠責保険、任意保険の両方とも未加入の状態」のケースがあります。

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は法律で加入が義務付けられている強制保険である一方、任意保険はその名の通り任意で加入するものです。しかし、自賠責保険だけでは補償範囲や金額が限られているため、多くのドライバーは任意保険にも加入しているのが一般的と言われています。

思いのほか多い無保険車の割合

損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」による2018年3月末時のデータによると、もっとも加入割合が高いと思われる「対人保証」「対物保証」の加入割合は、どちらも約74%とされています。つまりこの数字だけを見れば、驚くべきことに10台のうち2〜3台が任意保険に加入していないということになるのです。

また、別のデータでは「日本国内では、自動車共済と自動車保険の普及率は88.4%」というものもあります。これは言い換えれば、任意保険に未加入の車両が全体の約10%を占めているということです。いずれにしても、私たちが日常的に目にする車の中に、相当数の無保険車が存在していることが分かります。

例えば明石海峡大橋の1日平均の交通量、約37,000台(平成30年度時)で考えると、1日で約5,000台の通過車両が無保険の可能性があるということになるようです。この数字を見ると、無保険車との事故に遭遇するリスクが決して低くないことが理解できます。

無保険が”やばい”理由 ― 加害者側の視点

無保険の状態で運転することは、本人にとって非常に大きなリスクを伴います。その理由を詳しく見ていきましょう。

厳しい法的罰則

まず、加入が義務付けられている自賠責保険に未加入の場合、法律違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。これは決して軽い罰則ではありません。

また、車検が切れている状態(無車検)での運転も6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金という罰則があります。車検と自賠責保険は多くの場合セットで更新するため、無車検状態は無保険状態を伴うことが多いと言われています。

無車検運行と無保険運行の両方で検挙された場合、刑法の併合罪に基づき「1年6ヵ月以下の懲役または80万円以下の罰金」が科せられる可能性があるようです。

莫大な金銭的負担のリスク

無保険状態で事故の加害者になった場合、被害者に対する損害賠償金を全て自己負担で支払う必要があります。通常であれば、自賠責保険の保険金で賄えない分を任意保険でカバーできますが、未加入の場合はその安全網がありません。

交通事故による損害賠償額は、被害の程度によっては数千万円、場合によっては1億円を超えることもあります。例えば高次脳機能障害の事例では、2億円を超える賠償金が認められたケースもあるようです。

これほどの高額な賠償金を個人で支払うことは非常に困難であり、多くの場合、長期間にわたる返済や、最悪の場合は自己破産につながる可能性もあると言われています。

国からの代位請求リスク

もし加害者が自賠責保険に未加入で、被害者が政府保障事業制度を利用した場合、国(国土交通省)が加害者に代わって被害者に補償します。しかし、その後、加害者には国から代わりに補償した金額を返還するよう要求があります。

応じない場合は訴訟に発展することもあり、裁判所の判決に従って財産を差押えられることもあるようです。つまり、無保険であることで国との法的トラブルにまで発展するリスクがあるということです。

無保険が”やばい”理由 ― 被害者側の視点

次に、無保険車との事故の被害者となった場合のリスクについて見ていきましょう。

適切な賠償金を受け取れない可能性

加害者が無保険の場合、被害者は適切な慰謝料を受け取れない可能性があります。自賠責保険のみに加入している場合でも、自賠責保険から損害賠償金の支払いを受けられるものの、その金額は限られています。

自賠責保険の補償限度額は以下の通りです。

  • 傷害:最高120万円
  • 死亡:最高3,000万円
  • 後遺障害:最高4,000万円

実際の損害額がこれらの限度額を超える場合、不足分を加害者本人に請求しなければなりませんが、加害者に支払い能力がない場合、その回収は非常に困難になると言われています。

車両損害の補償が受けられない

自賠責保険や政府保障事業からの損害賠償は、いずれも死亡やケガなどの人身傷害に限定されています。車両や物の損害などの対物賠償については補償されないため、車の修理費用や買い替えに関する賠償金は受け取れません。

例えば、追突された被害者の車の修理費が50万円かかる場合でも、加害者が任意保険未加入で自賠責保険のみの場合、その修理費用は自賠責保険からは一切支払われないことになります。

示談交渉の難航と賠償金回収の困難さ

通常、事故の相手が任意保険に加入している場合、自身と相手の保険会社同士で示談交渉を行います。しかし、もらい事故など自分に過失がまったくないケースでは、被害者の保険会社は加害者と示談交渉を行うことができません。

その結果、被害者自身が加害者と直接交渉せざるを得なくなります。専門知識がない当事者同士の交渉は難航することが多く、最悪の場合、相手との連絡が途絶えてしまうこともあるようです。

実際に「相手方は当初は誠実に対応すると言っていましたが、次第に連絡がとれなくなり、修理費用を回収することが危うくなってきました」といった事例も報告されています。

無保険事故の実例と対応

無保険車との事故は実際にどのような経過をたどるのでしょうか。いくつかの実例を見てみましょう。

事例1:弁護士介入で全額回収に成功

ある事例では、信号待ちをしていた被害者がよそ見運転していた加害者の車に追突されました。被害者に怪我はなかったものの、車の修理費用が50万円程度かかる見込みでした。

加害者は任意保険に加入しておらず、当初は誠実に対応すると言っていましたが、次第に連絡がとれなくなりました。そこで被害者は弁護士に依頼し、加害者に内容証明郵便を送付して損害全額の支払いを求めました。

それでも支払いがなかったため、簡易裁判所に民事訴訟を提起したところ、期日前に加害者から連絡があり、請求額を全額支払うという申し出があったようです。実際に数日後に支払いが確認できたため、訴えを取り下げることになりました。

事例2:高次脳機能障害の高額賠償事例

より深刻な事例として、高次脳機能障害を負った30代男性の無保険車事故があります。被害者は3級の高次脳機能障害に併合1級の認定を受け、無保険車傷害保険金と加害者本人からの賠償を合わせて2億円を超える高額賠償を獲得しています。

このケースでは、被害者が無保険車との事故に備えた保険に加入していたため、被害者側の保険から約1億6,000万円の保険金を先行して受け取り、その上で加害者本人にも賠償を求めたとのことです。

事例3:無保険が原因の医療受診遅延による死亡例

別の角度からの事例としては、経済的な理由から国民健康保険料が払えずに「無保険」状態だったなどの理由で医療機関での受診が遅れ、死亡した人が2016年に28都道府県で58人に上ったという報告があります。

死亡した人のうち無保険は22人、保険料を滞納し全額自己負担となる「資格証明書」の発行を受けていたのは7人、滞納で有効期間が短くなる「短期保険証」を持っていたのは5人だったとされています。

具体例として、保険料が払えず保険証の有効期限が切れていた60代の無職男性は経済的に困窮し、所持金は100円、携帯電話が止められていた状態で、手遅れの状態で入院し19日目に死亡したケースが報告されています。

口コミに見る保険会社の対応問題

無保険問題を考える上で、保険会社の事故対応についても触れておく必要があります。実際のところ、一部の保険会社には「やばい」という評判が立っているようです。

JA共済自動車保険の評判

インターネット上では、JA共済の自動車保険に対して厳しい評価が散見されます。特に目立つのが事故対応に関する不満だと言われています。

具体的な口コミとしては、「バイクで直進中に右折車両が後輪に接触、転倒して骨折。病状が安定したので休業補償の話と入院中の経費を請求したのですが、来月ぐらいに連絡しますから約半年連絡なし」といった声が寄せられているようです。

また「追突事故被害者です。警察からも100:0の人身事故と認められて私には全く非がありません。ぶつけてきた相手の保険がJAのため、現在進行形で対応してもらってますが、全く誠意が感じられません」といった評価もあるとのことです。

一方で、保険料の安さや地域密着型のサービスを評価する声も多く、一概に「良い」「悪い」と断言できるものではないようです。

大人の自動車保険(セゾン自動車火災保険)の評判

セゾン自動車火災保険が提供する「おとなの自動車保険」についても、一部で「やばい」という噂が広がっているようです。

口コミサイトには「おとなの自動車保険の事故後の対応、あり方が凄い悪い」という声が投稿されています。具体的には「加入時には良いことを言いながら、いざ事故があって、警察連絡、大人の保険事故報告、担当者より電話あり、搭乗者保険と人身傷害保険の対応を致します」と初期対応は良かったものの、「休業損害においての担当者が変わり、男性、そして、代理人弁護士窓口?そして、1か月過ぎに、損害リサーチ調査、未だに、保険会社、また、代理人からの経過報告等なし」というように、その後の対応に不満を感じているケースがあるようです。

別の口コミでも「連絡は遅いし、対応も悪い最悪な保険会社です」「連絡が来ないのでこちらから電話をしましたが、繋がらず、繋がっても担当者が毎回変わり同じ説明を何度もするという最低最悪な対応」「結局5ヶ月も待ったのにまだ解決されない」といった厳しい意見も寄せられているとのことです。

匿名の保険会社に関する口コミ

ある口コミサイトでは、具体的な保険会社名を挙げずに「史上最悪の保険会社」と題した投稿がありました。この投稿では「過失割合が10:0だと、一方的に保険金を払わない方向で、処理しようとする史上最悪の保険会社です。被害者がケガをしていても、そうです」と厳しい批判がなされています。

また「被害者のことなど何も思っていない、自分の成績(早い処理、保険金を払わない)だけ、考えている社員が多いです」「物損担当から紹介された修理会社で、修理をしてはいけません。適当に修理されてしまう可能性があります。また、修理費用が安いとケガの治療が認められません」といった具体的な指摘もあるようです。

この投稿者はさらに「本当にひどい対応でした。交通事故による治療費を全額、こちらで負担しました。過失割合10:0でもそういう処理をしてくる会社です」と述べており、その後のやり取りで当該保険会社がM住友海上であることを明かしています。

無保険車との事故への備え

無保険車との事故リスクに対して、私たちはどのような備えをしておくべきでしょうか。

無保険車傷害保険の活用

万が一無保険の相手と事故を起こしてしまったときに頼りになるのが、「無保険車傷害保険」です。これは、万が一相手が無保険だった場合、自分の保険契約を使って補償できるもので、今では多くの自動車保険に自動付帯されるようになったと言われています。

無保険車傷害保険は、無保険車との事故によって死亡または後遺障害を負った場合に、自賠責保険などで支払われる金額を超える損害について、契約している保険金額を限度に補償する保険です。これにより、加害者の支払い能力に関わらず、一定の補償を受けることができるようです。

弁護士特約の重要性

交通事故が起きてしまったら、示談交渉などの難しい交渉を求められることがあります。特に相手が無保険の場合には、最悪裁判となるケースも考えられるようです。

こうなると、一般人ではなかなか難しくなってしまうため、弁護士に依頼することになりますが、弁護士に依頼するためには相応の費用が必要です。そこで、多くの任意保険で用意されている「弁護士特約」を付けておけば、高額になりがちな弁護士費用を補償してもらえ、安心して弁護士に難しい交渉を代わってもらうことができると言われています。

実際の事例でも、弁護士の介入により無保険の加害者から全額の賠償金を回収できたケースがあることから、この特約の重要性が理解できます。

事故現場での正確な情報収集

万が一事故に遭遇した場合、相手が無保険かどうかにかかわらず、以下の情報を必ず確認しておくことが重要だと言われています。

  • 事故相手の連絡先
  • 車両のナンバーと車種
  • 自賠責保険証明書の有無と番号確認

これらの情報は写真を撮るなどして記録を残しておくことも大切です。万が一、必要な情報が不明な場合、後々の手続きが複雑化し、解決までにさらに時間がかかる可能性があるようです。

自賠責保険への被害者請求と政府保障事業の活用

加害者と示談交渉が難航したり連絡が取れなくなったりした場合は、被害者が直接、加害者が加入している保険会社に対して請求することができます。この手続きを「被害者請求」と呼びます。

また、万が一相手が自賠責保険にも加入していなかった場合、被害者は政府保障事業に請求することが可能です。この制度は、無保険車やひき逃げ事故などの被害者を救済するため、国が加害者に代わって、てん補する仕組みとなっています。

ただし、これらの制度を利用しても、補償内容は自賠責保険と同等のため、車両の損害や十分な慰謝料などを得られないケースも多いことを理解しておく必要があるでしょう。

まとめ:無保険が”やばい”と言われる真相

私たちがこれまで見てきた通り、無保険が「やばい」と言われる理由は多岐にわたります。加害者側のリスク、被害者側のリスク、双方にとって大きな問題をもたらす可能性があることが分かりました。

加害者としての立場では、法的罰則、莫大な金銭的負担、国からの代位請求など、人生を大きく左右しかねない深刻なリスクがあります。

被害者としての立場では、適切な賠償金を受け取れない可能性、車両損害の補償が受けられないこと、示談交渉の難航や賠償金回収の困難さなど、事故後の生活を脅かす要素が数多く存在します。

日本では10台に1台は無保険車が走っているという実態を考えると、決して他人事ではない問題と言えるでしょう。

無保険車との事故に備えるためには、無保険車傷害保険や弁護士特約などの適切な保険選びが重要です。また、万が一事故に遭遇した場合には、正確な情報収集や法的手続きの理解が助けになるでしょう。

自動車保険は単なる出費ではなく、自分自身と家族、そして社会全体を守るための重要な安全網です。無保険による様々なリスクを理解し、適切な備えをしておくことが、私たち一人ひとりに求められているのではないでしょうか。

引き続き、交通安全と適切な保険加入の重要性について、社会全体での理解が深まることを願います。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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