損害保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

損害保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”損害保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について解説

損害保険が「やばい」と言われることについてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。SNSやレビューサイトでは「保険会社がやばい」「対応がやばい」といった声が散見されますが、その背景には様々な要因があるようです。今回は損害保険に対する批判的な意見や不満の原因、そして業界の実態について多角的に検証していきます。

損害保険業界を取り巻く現状

損害保険は私たちの日常生活や企業活動におけるリスクを軽減するための重要な金融サービスです。自動車保険、火災保険、賠償責任保険など様々な種類があり、予期せぬ事故や災害から私たちの財産や生活を守る役割を担っています。

しかし近年、損害保険業界には様々な問題が浮上しているようです。2023年に発覚したビッグモーター事件では、自動車修理工場と保険代理店を兼業する企業による不正請求問題が明るみに出ました。この問題では、一部の損害保険会社が保険代理店としての取扱件数を過度に重視し、不適切な査定の簡略化や入庫紹介を行い、不正請求を助長させていたという指摘もあります。

このような事件の影響もあり、「損害保険がやばい」という評判が広がっているのかもしれません。それでは具体的に、どのような点が「やばい」と言われているのか、詳しく見ていきましょう。

「やばい」と噂される主な原因

1. 保険料に関する不満

損害保険、特に自動車保険に関しては「思ったより安くない」「継続すると割高になる」という不満の声が見られます。ソニー損保の自動車保険に関する調査では、以下のような傾向があるとされています。

  • 大手損保会社と比較すると半額近く安い
  • 他のネット型自動車保険と比較すると平均的もしくはやや高い傾向がある
  • 2年目以降は高くなることもある

「ソニー損保の車保険料めちゃ上がるねんけどなんで。事故投球使ってないねんけど」といったSNS上の投稿も見られるようです。

自動車保険の保険料が値上がりする主な理由としては、事故を起こして保険を使用した場合に等級が下がり、事故有係数が適用されるためとされています。しかし、事故を起こしていないにもかかわらず保険料が上がるケースもあり、これが不満につながっているようです。

2. 事故対応に関する不満

損害保険に対する「やばい」という評価の中で最も多く見られるのが、事故対応に関する不満です。特に「おとなの自動車保険」に関しては、事故対応の悪さを指摘する声が目立ちます。

具体的には以下のような不満が挙げられています。

  • 「加入時には良いことを言いながら、いざ事故があると対応が変わる」
  • 「担当者が頻繁に変わり、同じ説明を何度もする必要がある」
  • 「連絡が遅い、または来ない」
  • 「解決までに長期間(5ヶ月以上)かかるケースもある」

別のレビューサイトでも「連絡は遅いし、対応も悪い最悪な保険会社です」「連絡が来ないのでこちらから電話をしましたが、繋がらず、繋がっても担当者が毎回変わり同じ説明を何度もするという最低最悪な対応」といった厳しい意見も見られます。

しかし、すべての保険会社が同様というわけではなく、事故対応の満足度が高い保険会社も存在します。ある調査によると、AIG損害保険、ソニー損保、日新火災海上保険などは事故対応の満足度が高いとされています。

3. 保険金支払いに関する問題

損害保険が「やばい」と言われる要因の一つに、保険金の支払い渋りや支払い拒否があります。これは「払い渋り」とも呼ばれ、保険金の支払い査定が厳しいことを指します。

過去には保険業界全体で「保険金支払漏れ」や「保険金不払い」の問題が発生し、社会問題となりました。これには、保険契約者からの保険金請求がなかったため一部の保険金を支払っていなかった「保険金支払漏れ」と、保険契約者からの保険金請求に対し不適切に不払いを決めていた「保険金不払い」が含まれています。

火災保険に関しては、保険金が不払いになる理由として以下のようなケースが挙げられています。

  • 損害の原因を経年劣化と判定される
  • 重過失・法規違反・故意で発生した損害
  • 地震・噴火・戦争で損害が発生した場合
  • 自然災害が多発している時期
  • 業者の過失
  • 鑑定会社や鑑定人の不適切な対応
  • 保険金の申請期限超過

これらの問題に対処するためには、そんぽADRセンターの利用や登録鑑定人の変更、保険会社の担当者変更、弁護士への相談などの方法があるとされています。

4. 損害保険業界の構造的問題

2023年に発覚したビッグモーター事件は、損害保険業界の構造的な問題を浮き彫りにしました。この事件では、自動車修理業者であるビッグモーターが故意に自動車に傷をつけることで保険金請求の対象となる修理費用を水増しし、損保ジャパンがそれを黙認していたとされています。

この問題の本質は、「修理業者と保険販売業者が同じでは顧客に対して利益相反が起こる」という点です。本来、保険会社は修理見積もりをチェックし、不正な請求に応じないようけん制する役割がありますが、自動車修理業者が保険も販売すると、このけん制機能が緩むとされています。

損保ジャパン側は、修理見積に対して査定せずに支払うことで迅速な支払いを実現したものの、チェック機能がゼロになったため、何を請求しても保険金が支払われる状況になってしまったようです。

これにより、被害者は自動車点検や修理を依頼した車の所有者だけでなく、自動車保険の契約者全体に悪影響を及ぼしている可能性があります。損害保険は業界全体で保険料収入と保険金支払いのバランスをとる必要があるため、不正請求により損害額が多くなると、他の契約者の保険料も値上がりする可能性があるのです。

この問題を受けて、金融庁は2024年に「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を開催し、報告書を公表しています。

損害保険会社の評判とランキング

損害保険会社の評判は、各社によって大きく異なります。ここでは、評価サイトなどで公表されている情報をもとに、高評価を受けている会社と評判の良くない会社について紹介します。

高評価を受けている損害保険会社

オリコン顧客満足度ランキングによると、火災保険では「ソニー損害保険」が6年連続で総合1位を達成しています。利用者からは以下のような好評の声が寄せられています。

  • 「ネットだけで申し込みが完了すること。内容が分かりやすいこと。補償に対して料金が安いことです。」(40代/男性)
  • 「以前の損保会社より掛け金をセーブできた、内容が解りやすかった。手続きがスムースに進んだ。」(60代以上/男性)
  • 「雹や水害など不要な補償をカットできる。元々保険料が安いが他社と比べてさらに安くなった。」(60代以上/男性)

また、みん評による損害保険会社の口コミ・評判(総合)ランキングでは、2023年10月時点で以下のような結果となっています。

  1. SBI損保(評価3.20)
  2. 東京海上日動火災保険(評価3.15)
  3. 損保ジャパン(評価3.14)
  4. あいおいニッセイ同和損保(評価3.13)
  5. アクサダイレクト(評価3.09)

事故対応の満足度が特に高い自動車保険会社としては、AIG損害保険、ソニー損保、日新火災海上保険などが挙げられています。

評判の良くない損害保険会社

一方で、苦情件数の多い損害保険会社も存在します。損保各社の苦情件数(2022年1月~3月)によると、以下のような状況です。

  • 東京海上火災保険:8,944件
  • 損害保険ジャパン:8,622件
  • あいおいニッセイ同和損害保険:6,280件
  • 三井住友海上火災保険:4,966件
  • ソニー損害保険:4,150件

ただし、苦情件数は保険料収入(契約者数に比例)によっても変わるため、単純に苦情件数の多さだけで評価することはできません。また、苦情が多いということは「加入者が多く、信頼されている」とも考えられるため、一概に危ない会社とは言えないとされています。

損保ジャパンの火災保険に関しては、「保険料については他社と比較しても遜色なく、補償内容と保険料のバランスが良いと感じた。ただ飛び抜けて良いという印象は無い。」といった評価がある一方で、「保険料が5年分一括なのか、毎年払いなのか、月払いなのかはっきり表示されない」「カタログに書いてある内容でも銀行では申し込み(見積)出来ない内容があった」などの不満の声も見られます。

損害保険選びのポイント

「やばい」と噂される損害保険会社に加入しないためには、自分に合った保険を選ぶことが重要です。以下に損害保険選びの主なポイントを紹介します。

1. 自分に合った保険タイプの選択

自動車保険を例にとると、大きく分けて「ダイレクト型(ネット型)」と「代理店型(対面型)」の2種類があります。

ダイレクト型は以下のような特徴があります。

  • インターネットや電話での申し込み
  • 代理店を介さないため手数料が少なく保険料が安い傾向
  • 自分で補償内容を選ぶ必要がある

一方、代理店型は以下のような特徴があります。

  • 保険代理店を通じて対面で契約
  • 専門家のアドバイスを受けられる
  • ダイレクト型に比べると保険料はやや高め

「保険料の安さを重視するならダイレクト型、サービスの手厚さを重視するなら代理店型」という選び方が一般的なようです。

2. 必要な補償内容の見極め

損害保険は対応するリスクの種類によって選ぶべき保険が異なります。日常生活では以下のようなリスクがあります。

物的リスク 自然災害や偶然の事故などによって所有する財物に損害が生じるリスク。自動車保険の車両保険、火災保険、地震保険などが対応します。

人的リスク 本人や家族が病気やケガ、事故などにより負傷・死亡することで経済的損失を被るリスク。自動車保険の人身傷害保険や傷害保険などが対応します。

賠償リスク 本人や家族が他人の財物を破壊したり、他人を死傷させたりすることによって法律上の損害賠償責任義務を負うリスク。自動車保険の対人賠償責任保険や対物賠償責任保険、個人賠償責任補償特約などが対応します。

企業活動においても、企業財産のリスク、従業員のリスク、賠償責任のリスクなど様々なリスクが存在し、それぞれに対応する保険があります。自分や企業のリスク状況に合わせて必要な補償を選ぶことが大切です。

3. 保険会社の信頼性・安定性の確認

保険会社の信頼性・安定性を判断する指標として、「ソルベンシーマージン比率」と「信用格付け」があります。

ソルベンシーマージン比率 保険金支払い能力を示す指標で、200%以上あれば「保険金支払いの確実性が高い」とされています。数値が高いほど安定している証拠とされますが、極端に高すぎる場合は効率が悪いとも言われます。

信用格付け 格付け会社による保険会社の財務健全性の評価です。「AAA」「AA」「A」などのランクで示され、上位のランクほど信頼性が高いとされています。

これらの指標を参考にしつつ、口コミや評判も合わせて検討することで、信頼できる保険会社を選ぶことができるでしょう。

まとめ:損害保険が「やばい」という噂の真相

損害保険が「やばい」と噂される背景には、保険料の高さや上昇、事故対応の悪さ、保険金支払いに関する問題、業界の構造的問題など、様々な要因があることがわかりました。

しかし、すべての損害保険会社が「やばい」というわけではなく、高い評価を得ている会社も多く存在します。ソニー損保は火災保険の顧客満足度で6年連続1位を獲得し、SBI損保や東京海上日動火災保険、損保ジャパンなども総合的な評価が高いとされています。

ビッグモーター事件のような不祥事は業界全体の信頼を損なう要因となりますが、これを機に業界の透明性や健全性が高まれば、より良いサービスの提供につながる可能性もあります。

損害保険選びでは、自分のニーズに合った保険タイプと補償内容を選び、保険会社の信頼性・安定性も確認することが重要です。インターネットの口コミや評判も参考になりますが、一部の声だけに惑わされず、総合的に判断することをおすすめします。

最後に、損害保険は私たちの生活や企業活動のリスクを軽減するための重要なサービスです。「やばい」という評判に惑わされず、自分に合った保険を選び、万が一の際に適切な補償を受けられるよう、契約内容をしっかり理解しておくことが大切です。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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