ドル建て保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

ドル建て保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”ドル建て保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について解説

ドル建て保険についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、外貨建て保険、特にドル建て保険に関する否定的な評判が広がっているようです。「やばい」という表現で語られることもある背景には、複数の要因が絡み合っているようです。

ドル建て保険とは何か

ドル建て保険とは、保険料の支払いや運用、保険金の受け取りを米ドルで行う保険商品です。日本で超低金利が続く中、円よりも金利の高いドルで運用されることから注目を集めてきました。主な種類としては、ドル建て終身保険、ドル建て養老保険、ドル建て個人年金保険などがあるようです。

“やばい”といわれる主な原因

1. 為替リスクによる元本割れの可能性

ドル建て保険が「やばい」と言われる最大の理由として、為替リスクがあるようです。為替レートの変動により、受け取る保険金や解約返戻金の円換算額が、支払った保険料の総額を下回る可能性があるとされています。

例えば、円安時(1ドル=150円など)に保険料を支払い、受取時に円高(1ドル=100円など)になっていた場合、ドルの価値は相対的に下がるため、運用益を加味しても支払った総保険料よりも受け取れる金額が少なくなってしまうリスクが高まるようです。

ある試算によれば、保険金額10万ドルで1ドルあたり150円の時は約1500万円となりますが、1ドルあたり100円になると約1000万円になるとされています。

2. 手数料が高く分かりにくい

ドル建て保険には、円建て保険には存在しない複数の手数料がかかるといわれています。例えば、以下のような手数料が発生するようです。

  • 為替手数料:円とドルを交換する際に発生
  • 解約控除:早期解約時のペナルティ
  • 保険関連費用:契約管理や運営にかかる費用

これらの手数料は商品説明の細かい文字で記載されていたり、分かりにくい表現で説明されていたりするため、契約者が十分に理解できないケースが多いとされています。

3. 契約者の理解不足と説明不足

金融庁の調査によると、外貨建て保険の契約者から「元本が減るとは聞いていなかった」との苦情が多く寄せられているようです。また、契約からわずか4年間で約6割が解約しているという調査結果も報告されています。

こうした状況の背景には、販売する側の説明不足と契約する側の理解不足があると指摘されています。商品の仕組みが複雑で、パンフレットや提案書を一度読んだだけでは理解しづらいという問題もあるようです。

ある記事では、「価格変動があるとは知らなかった」「元本保証があると思っていた」「費用の負担があることを理解していなかった」「そもそも生命保険であることを知らなかった。定期預金だと思っていた」といった苦情が紹介されています。

4. 早期解約によるペナルティ

契約から10年未満の早期解約によるペナルティーにより、解約返戻金が大幅に減少するケースがあるようです。ある事例では、50万円近くを損失するという計算になったとの報告もあります。

為替相場の変動により「元本割れ」の状態になった場合、早期解約のペナルティーが加わることで、さらに損失が拡大する可能性があるとされています。

金融のプロはどう見ているのか

一部の金融の専門家からは「保険以外の金融知識豊富なFPなら、貯蓄型保険は資産形成に向いてないので勧めない」という意見も見られます。

また、ある記事では「保障面・貯蓄面どっちとも入るメリットがない」「保障は『かけすて』、貯蓄はNISAなど『保険以外』にするだけで、ドル建て保険より優れた無駄のない備えができる」という主張もあるようです。

ドル建て保険のメリットとされる点

一方で、ドル建て保険には以下のようなメリットもあるとされています。

  • 日本の低金利環境に比べて、ドル建て資産の運用で比較的高い利回りが期待できる可能性がある
  • 円建て資産とドル建て資産を併せ持つことで、為替相場の変動によるリスクから資産全体の価値を守る効果が期待できる
  • 一定の保障を確保しながら外貨で資産運用ができる

どのような人に向いているのか

ドル建て保険は、以下のような人に向いている可能性があるとされています。

  • 為替リスクを理解し、許容できる人
  • 長期的な視点で資産運用を考えている人
  • すでに円建ての資産を十分に持っており、資産の一部をドル建てで持ちたい人
  • 将来的に海外での生活や支出が予想される人

反対に、以下のような人には向いていない可能性が高いと言われています。

  • 為替リスクを許容できない人
  • 短期間での解約を考えている人
  • 元本保証を重視する人
  • 金融商品に関する知識や理解が不足している人

まとめ

ドル建て保険が「やばい」と言われる背景には、為替リスクによる元本割れの可能性、高く分かりにくい手数料体系、契約者の理解不足と説明不足、早期解約時のペナルティなど、複数の要因があるようです。

一方で、商品自体が悪いわけではなく、ドル建て保険の商品の仕組みや特徴を理解し、リスクを許容した上で保有するのであれば問題はないという見方もあります。

重要なのは、契約前にドル建て保険の特性やリスクを十分に理解し、自分の資産運用の目的や許容できるリスクレベルに合っているかを慎重に検討することのようです。必要に応じて中立的な立場のファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも一つの選択肢と言えるでしょう。

結局のところ、ドル建て保険が「やばい」かどうかは、個人の状況やリスク許容度、運用目的によって異なるものと考えられます。一概に良い悪いではなく、自分自身にとって適切な選択かどうかを見極めることが大切なのではないでしょうか。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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