はぐくみ基金のデメリットが”やばい”といわれているのはなぜ?


”はぐくみ基金”は怪しいのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
福祉はぐくみ企業年金基金(通称:はぐくみ基金)についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、中小企業や福祉業界を中心に導入が進んでいるはぐくみ基金ですが、一部では「デメリットがやばい」という声も聞かれます。この記事では、そうした噂の背景や実態、そして誤解されている点について詳しく検証していきたいと思います。
はぐくみ基金とは
はぐくみ基金とは、正式名称を「福祉はぐくみ企業年金基金」といい、2018年4月に厚生労働省の認可を受けて設立された企業型の年金制度です。元々は福祉や医療などのエッセンシャルワーカー向けに福利厚生や資産形成支援を目的として創設されましたが、現在では様々な業種の企業が導入しています。
簡単に言うと、従業員が自分の給料から一定額を積み立てて退職金を作る仕組みです。掛け金は給料の20%まで積み立てることができ(最低1,000円から)、年2回積立額の変更が可能となっています。確定給付企業年金(DB)に分類され、元本が保証されているのが特徴です。
ネットで「やばい」と言われる主な理由
1. 上限額の引き下げ
2023年8月1日から掛金の上限額が大きく変更されました。従来は最大100万円まで積み立て可能でしたが、新ルールでは40万円に引き下げられたのです。YouTubeなどでは「最強の退職金制度がついにルール大改悪」という表現で話題になっていました。
特に月収200万円以上の高所得者にとっては、これまで100万円まで積み立てられていたのが40万円までしか積み立てられなくなったため、「やばい」と感じる要因になっているようです。この改定は、節税目的や社会保険料の削減目的での利用者が増えてきたため、本来の福利厚生的な意味合いから乖離してきたことが背景にあると言われています。
2. 運用益の低さ
はぐくみ基金は元本保証である反面、運用益がそれほど高くないというデメリットがあります。約1.05%ほどとの記載もあり、「銀行に預けておくよりは良い程度」という評価もあります。資産を積極的に増やしたい人にとっては物足りないと感じる部分かもしれません。
特に新NISA(少額投資非課税制度)など他の投資手段と比較した場合、「増やす」という観点ではメリットが薄いと指摘する声もあります。
3. 手続きの煩雑さと時間
受け取り時の手続きの煩雑さも「やめたほうがいい」と言われる理由の一つです。退職時に受け取るためには3枚程度の書類記載が必要で、退職する会社の上司と話をしなければならないという手間がかかります。
また、実際に資金を受け取るまでに時間がかかる点も指摘されています。ある方の体験では、退職日から2ヶ月半ほどかかったとのことです(6月末退職で8月中旬振込)。急にお金が必要になった場合に対応できない点が欠点とされています。
4. 年金への影響
毎月の社会保険料が減ることで、将来的に厚生年金や失業手当が減る可能性があります。これは給与の額面が変わるためで、長期的には公的年金の減少というデメリットにつながる恐れがあります。
誤解されがちな点の検証
1. 「やばい」と言われる理由は制度自体の問題なのか
多くの「やばい」という評価は、制度自体の欠陥というよりも、個人の状況や会社の導入方法、説明の仕方に起因することが多いようです。ある訪問看護リハビリステーションのブログでは、「正直なところ現状はぐくみ基金に関しては良い制度ではありますが伝え方が非常に重要」と指摘しています。
特に、強制加入と誤解されるような説明をすると、従業員の反発を招くことがあるようです。任意加入であることを明確にし、メリット・デメリットを正しく伝えることが重要と言えるでしょう。
2. 税制優遇の本当の価値
社会保険料や税金の減額効果は非常に大きく、月額の手取りが増える可能性があります。例えば、30歳・給与30万円の場合、掛金2万円で月額約5千円、掛金4万円で月額約1万円、掛金6万円で月額約1万5千円の減額効果があるとされています。
また、退職時に受け取る際にも退職所得控除が適用されるため、通常の給与所得と比べて税負担がかなり軽減されます。例えば、30年勤めた場合、2,160万円の積立に対して税金は約56万円(税率2.6%)と非常に優遇されているとの試算もあります。
3. 元本保証の安全性
投資初心者や、リスクを取りたくない人にとっては、元本保証という特徴はむしろおすすめポイントとなります。株式などの投資と異なり、元本割れのリスクがないため、確実に資産を形成したい人には適している可能性があります。
良い評判と導入メリット
1. 企業にとってのメリット
はぐくみ基金の導入により、企業側には次のようなメリットがあると言われています。
- 法定福利費の軽減:従業員の社会保険料負担が減ることで、会社側の負担も軽減されます(労使折半のため)。
- 採用力の強化と離職防止:退職金制度の充実が人材獲得や定着につながります。ある施設では導入後の離職率が約4.5ポイント改善したという事例もあります。
- 掛金の実質的な負担を抑制:「前払い退職金制度」と組み合わせることで、会社側の実質的な負担を抑えることができます。
株式会社ベター・プレイスによると、はぐくみ企業年金の平均加入率は65.2%(2021年4月現在)と高く、従業員からの評価も良好なようです。
2. 従業員にとっての利点
従業員にとっても、次のような利点があります。
- 柔軟な受給タイミング:退職時だけでなく、育児や介護で一時的に休職する場合にも、積立金の一部または全部を受給することが可能です。
- 税制優遇効果:社会保険料と所得税の双方で節税効果が期待でき、手取り額を有効に活用できます。
- 元本保証の安心感:運用に関する知識や手間がなくても、安全に資産形成ができます。
また、iDeCoのように受け取りに年齢制限がなく、退職や休職があれば受け取ることができるため、資金が必要な時に柔軟に対応できるという点もやばくないメリットと言えるでしょう。
実際に利用すべき人・やめとけと言われる人
加入をおすすめする人
- 給与に余裕があり銀行に預けている人:税制優遇を活かした効率的な資産形成ができます。
- 貯金が苦手な人:給与から自動的に積み立てられるため、強制的に貯蓄ができます。
- リスク回避型の投資家:元本保証で安全に資産形成したい人に適しています。
- 中小企業の従業員:大企業と比べて退職金制度が充実していない場合に、自分で退職金を用意する手段となります。
おすすめしない人
- もうすぐ仕事を辞める人かつ会社に不信感がある人:税制優遇よりも会社との手続きややり取りに手間がかかるため労力に見合わない可能性があります。
- 掛金をあまりかける気がなく面倒くさがりな人:手続きが増えるため、関心がなかったり忘れてしまう人には不向きかもしれません。
- もうすぐ定年なのに制度が導入になった人:加入期間が短いと十分なメリットを得られない可能性があります。
- 他に良い投資を行っている人:新NISAなど他の投資手段で運用している場合は、手取りが減る分を考慮する必要があります。
- 生活がぎりぎりの人:毎月の手取り額が減るため、日々の生活が困窮している場合は厳しいかもしれません。
ルール変更の影響と対策
2023年8月1日からの上限額引き下げ(100万円→40万円)は、高所得者にとって大きな変化ですが、経過措置も設けられています。8月までに100万円で加入していた人は、そのまま継続することが可能なようです。
ただし、一度掛金を下げると上限額まで戻せなくなるため注意が必要です。また、現在40万円以下の掛金を設定している人は、次回の改定タイミング(4月や10月)で一度だけ40万円を超える金額に引き上げることが可能とのことです。
他の退職金・年金制度との比較
はぐくみ基金以外にも、企業が導入できる退職金制度はいくつかあります。
- 確定拠出年金(企業型DCやiDeCo):従業員自身が掛金の運用方法を選択できる個人型の年金制度です。
- 中小企業退職金共済制度:国が運営する公的な共済制度です。
はぐくみ基金は企業型DCやiDeCoとも併用が可能ですが、他の制度でかけられる上限が減額となります。新NISA(年間360万円まで投資可能)と組み合わせるなど、バランスよくリスク分散することが理想的かもしれません。
実際の導入状況と評判
はぐくみ基金は多くの企業や団体に推奨されており、福祉や保育、医療以外の業界や業種、会社や法人も導入しています。株式会社ベター・プレイスによると、企業年金・退職金制度の充実が従業員満足度向上・離職率低下につながったという声もあるようです。
特に人手不足が深刻化している中小企業や福祉業界において、従業員に安心して働いてもらうための「お金の福利厚生」として評価されているとのことです。
まとめ:はぐくみ基金の真相
はぐくみ基金についてネットで「やばい」と言われる理由を検証してきましたが、多くは制度自体の問題というよりも、個人の状況や会社の導入・説明方法に起因するものと考えられます。
確かに上限額の引き下げや運用益の低さ、手続きの煩雑さなどのデメリットは存在します。しかし、税制優遇効果や元本保証の安全性、柔軟な受給タイミングなど、多くのおすすめポイントもあります。
重要なのは、自分の状況や目的に合っているかどうかを見極めることでしょう。給与に余裕があり、リスクを取りたくない人や、強制的に貯蓄する仕組みが欲しい人には適している可能性が高いです。一方で、もうすぐ退職予定の人や、他の投資で積極的に資産形成している人には、あまりメリットがないかもしれません。
はぐくみ基金は2018年に設立されてまだ歴史が浅く、今後も動向に注視が必要です。しかし、多くの企業で導入され、平均加入率も65.2%と高いことから、一定の評価を得ている制度と言えるでしょう。個人で入ることはできず、会社が導入を選択した場合に検討する制度ですので、メリット・デメリットを理解した上で、自分に合った選択をすることが大切です。
もし会社ではぐくみ基金の導入が検討されている場合は、単に「やばい」という噂に惑わされず、自分の状況に照らし合わせて判断することをおすすめします。税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも良いでしょう。将来の資産形成は、一つの制度だけに頼るのではなく、複数の手段を組み合わせてバランスよく行うことが理想的です。
参考情報:はぐくみ基金導入の手続き
企業がはぐくみ基金を導入する際には、厚生年金適用事業所であることが前提条件となります。また、制度導入費として30万円ほどかかることも考慮する必要があります。
導入後は従業員への説明会なども開催され、掛金額は各従業員が自由に選択できます(最低1,000円から、給料の20%まで)。
詳細については福祉はぐくみ企業年金基金の公式ホームページや、導入支援を行っている株式会社ベター・プレイスのウェブサイトで確認することができます。
最終的には、はぐくみ基金は「やばい」というネガティブな評価だけではなく、多くの利点もある制度です。自分の状況や目的に合わせて、賢く活用することで、将来の資産形成や退職後の生活に役立てることができるでしょう。
