ソフトバンクの社債は”危険”なのでやめたほうがいいといわれているのはなぜ?


”ソフトバンク社債はやめとけ”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
本当にソフトバンク社債は”やばい”のか、デメリットとメリットから真相に迫る
ソフトバンクグループが発行する社債(ソフトバンク社債)についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。「危険」「やめとけ」といったネガティブな評判が一部で見られる一方で、高利回りで人気の投資先としても知られています。今回は、その背景にある理由や誤解の可能性も含めて、多角的な視点から検証していきます。
ソフトバンク社債とは?その特徴と人気の理由
ソフトバンク社債とは、ソフトバンクグループ株式会社が発行する債券のことを指します。社債とは、企業がビジネスの拡大や設備投資などを目的として、投資家から広く資金を借りる手段として発行する借用証書のようなものです。
ソフトバンクグループ株式会社は、1981年9月3日に設立され、孫正義氏が代表取締役を務める純粋持株会社です。1254社もの子会社を傘下に置き、携帯キャリアであるソフトバンク株式会社をはじめ、IT・AI・半導体・ロボット事業・投資事業などの様々な事業を行う会社の株式を取得(投資)し、配当金や売却益などで利益を得ています。
個人向け社債として希少な存在
ソフトバンクグループの個人向け社債は、国内の社債市場において特異な位置を占めているようです。日本の社債市場は基本的に機関投資家中心の市場であり、個人向け社債の発行は限られています。鉄道会社などが単発で個人向け社債を発行することはありますが、コンスタントに同じ企業が個人向け社債を発行するケースは稀です。
そのような中で、ソフトバンクグループは「日本で個人向け社債をコンスタントに発行する稀有な企業」と言われています。このような希少性も相まって、発行されるとすぐに売り切れる人気商品となっているようです。
高い利回りが魅力
ソフトバンク社債が注目を集める最大の理由は、その高い利回りにあると言われています。メガバンクの定期預金が0.01%程度の超低金利時代において、ソフトバンクグループの個人向け社債は2〜3%台の利率を提供していることが多いようです。
例えば、2024年11月に発行されたソフトバンクグループ株式会社第64回無担保社債(愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド)では、年利率が2.85%〜3.45%(税引前)という仮条件が設定されていました。また、2025年4月に予定されている社債では、5年債で3%〜3.6%の利率が仮条件として設定されているようです。
これは定期預金の金利の数百倍に相当し、個人投資家にとって非常に魅力的な投資先と言えるでしょう。実際、「銀行預金と比べてかなりの高金利なうえ、他社が発行する個人向け社債の金利が1%前後であることを考えれば、この高金利は嬉しい」という専門家の意見もあります。
ソフトバンク社債が「危険」と言われる理由
一方で、ソフトバンク社債について「投資は危険」という声も少なくないようです。なぜ、このように評判が分かれているのでしょうか。
信用リスクへの懸念
社債投資における最大のリスクは、発行体の信用リスク、つまり発行企業が倒産するリスクです。ソフトバンクグループの社債については、その信用力に対して懸念を示す声があるようです。
ソフトバンクの社債は信用格付機関から「A-(格付投資情報センター)」や「A(日本格付研究所)」の評価を受けています。これは「信用力は高いが、環境変化に注意が必要」というレベルとされています。携帯電話事業を手掛ける「ソフトバンク株式会社」の財務基盤は比較的安定していますが、親会社である「ソフトバンクグループ株式会社」は投資事業を行っており、負債が多い点には注意が必要だと指摘されています。
劣後債というリスク要因
ソフトバンクグループが発行する社債の中には、「劣後債」と呼ばれる特殊な債券も含まれています。劣後債とは、普通の社債より元本および利息の支払い順位が低いために、その分、利率が通常よりも高い債券のことです。
例えば、2021年5月にソフトバンクグループは個人向け劣後債を発行しました。この劣後債は発行額4050億円、年限35年、当初5年は固定金利で、その後変動金利となる条件でした。
劣後債は償還までの期間が長く、30年超の長期債や永久債なども少なくありません。もっとも「期限前償還条項」という、発行時に決められた最初のタイミングで、発行体の企業が元本を返してしまう権利(ファーストコール)が付いているケースがほとんどだと言われています。
ただし、償還を先送りできる権利は発行企業にあります。発行企業が資金繰りに窮したり、市場環境に変化が起こったりするなどの変化があれば、期日前償還をやめる可能性もあるとされています。投資家にとってはより条件の良い投資先に乗り換える機会を失ったり、換金できないリスクに見舞われたりする可能性があります。
社債型種類株式という特殊な商品
さらに混乱を招いている要因として、「社債型種類株式」という特殊な商品の存在があるようです。2023年秋のソフトバンクに続いて、2024年に入って楽天グループも「社債型種類株」を発行することが報じられました。
社債型種類株とは、その名の通り「株」です。しかし、普通株と違って基本的に値上がりせず、会社が成長しても配当は増えず、さらに議決権もないという特徴があります。また、いつまでも返ってこないかもしれないリスクや、配当可能利益がなければ配当されないリスク、倒産した場合に戻ってくる順位が低いというリスクも指摘されています。
「ソフトバンク株式会社 第2回社債型種類株式」は厳密には株式であり、金利は発生しません。金利相当の金額を配当としており、投資家は配当により実質的な利益を得るという仕組みになっているようです。
借金の借り換えに対する懸念
ソフトバンクグループの資金調達方法に対して、「借金を借金で返すことを続けていたらどこかで経営が破綻するのでは?」という懸念も示されています。
2024年2月には、ソフトバンクグループが3月15日に5500億円規模の個人向け普通社債を発行することが報じられました。この発行額はソフトバンクグループの個人向け社債としては過去最大規模であり、調達する資金は既発債の償還に充てる予定とされていました。
さらに2025年4月には、6000億円の社債を個人投資家向けに発行する計画が明らかになりました。これもリテール債としては過去最大規模とされており、使途はリテール債と外債の償還、傘下の英半導体設計会社アーム・ホールディングス株取得の際の未払い金に充てるとされています。
巨額投資の影響
ソフトバンクグループは2025年1月、人工知能(AI)インフラ整備に今後4年で5000億ドル(約73兆円)を投じる「スターゲート・プロジェクト」を発表しました。さらに4月には対話型AIのChatGPT(チャットGPT)を開発した米オープンAIへの最大400億ドルの追加出資も明らかになりました。
このような巨額投資が財務に及ぼす影響が懸念され、同社の信用力に低下圧力がかかっているという指摘もあります。実際、信用リスクを表すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)5年物は2025年4月4日、約329ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と2023年5月以来の高水準となっていたと報じられています。
ソフトバンク社債の誤解と実態
「危険」と言われる一方で、ソフトバンク社債についての誤解や、実際にはやばくない側面もあるようです。ここでは、そうした点について見ていきましょう。
社債と株式のリスクの違い
社債と株式のリスクの違いについて誤解がある可能性があります。ある投資家の意見によれば、「株式のリスクと債券のリスクは基本的に同じ」であり、「株式が0になるのは企業が潰れた時、債券が0になるのは企業が潰れた時」で、どちらも同じだと説明されています。
しかし、株式の値幅のリスク(標準偏差)は需給で決まり元本割れの可能性があるのに対し、債券は満期で償還されるまで定期的なインカムゲインがあり、満期まで企業が潰れなければ元本割れはしないという違いがあるようです。
また、「企業はキャッシュフローが回れば良いし満期までに利益を出せれば問題ありません」という意見もあり、純粋に「借金を借金で返している」という側面だけで危険視するのは誤解の可能性があります。
格付けからみる信用力
ソフトバンク社債の格付けはさまざまですが、例えば「ソフトバンク株式会社第27回無担保社債(社債間限定同順位特約付)」の格付けは「A+(R&I)/AA-(JCR)」となっており、「信用力が高いとされる水準」と説明されています。
格付けは債券の元本償還や利払いの確実性をはかるために参考となる情報であり、投資適格とされるBBB以上の格付けを得ていることは、一定の信用力を有していることを示しているとも言えるでしょう。
劣後債への投資判断
劣後債については、「期日前償還の不確実性という劣後債のリスクをきちんと理解した上で購入すれば、劣後債は機関投資家のみならず個人投資家にとっても良い運用先」という専門家の意見もあります。
ただし、「日本において劣後債の歴史はまだ浅く、本格的に発行され始めたのは5~6年前くらいから」であり、「期日前償還という慣行はあるものの、今後も必ずそうなるとは限らない」という点には注意が必要だとされています。
財務状況の改善要因
ソフトバンクグループの財務状況については、「またも孫マジックが発動して財務が生き返った」という意見もあります。特に「アーム爆裂しましたから」という指摘があるように、傘下の英半導体設計会社アーム・ホールディングスの株価上昇が財務改善に寄与している可能性が示唆されています。
ソフトバンク社債のメリットとおすすめポイント
ソフトバンク社債には、リスクだけでなく多くのメリットもあるようです。ここでは、そうした点について詳しく見ていきましょう。
安定した収益の可能性
社債は株のように値動きを気にする必要がなく、預貯金よりも金利が高いという特徴があります。定期的にリターンを受け取り、計画的に運用したい投資家におすすめの金融商品と言えるでしょう。
例えば、ソフトバンクグループの個人向け社債を100万円購入した場合、毎年約2〜3万円の利息収入が得られ、満期までにソフトバンクグループがデフォルト(債務不履行)にならない限り、満期には元本の100万円がそっくりそのまま返ってくるという仕組みになっています。
また、「日本政府や日本銀行が2%のインフレを目指している中にあっては、この商品を保有していればインフレヘッジの役割も果たしてくれます」という専門家の意見もあります。
購入しやすさ
ソフトバンクグループの個人向け社債は、発行額も取扱証券会社も多いという特徴があるようです。一般的な個人向け社債の場合、発行額は数百億円程度で、取扱証券会社もせいぜい2〜3社ですが、ソフトバンク社債は数千億円規模で10社以上の証券会社で取り扱われることが多いようです。
2025年4月に予定されている社債も、野村証券、大和証券、SBI証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券、岡三証券、東海東京証券、岩井コスモ証券、水戸証券、西日本シティTT証券といった多くの証券会社で取り扱われる予定とされています。
このように多くの証券会社で取り扱われているため、個人投資家からすれば容易に購入できるのがメリットとも言えるでしょう。
少額から投資可能
ソフトバンク社債は、比較的少額から投資できるという特徴もあります。例えば「ソフトバンク株式会社第27回無担保社債(社債間限定同順位特約付)」は10万円以上、10万円単位でお申し込みいただけるとされ、「比較的少額から始められますので、債券デビューにもおすすめです」と紹介されています。
一方、「ソフトバンクグループ株式会社第64回無担保社債(愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド)」は100万円以上、100万円単位での申し込みとなっているようです。商品によって最低投資額は異なりますが、他の投資商品に比べて比較的少額から始められる点は魅力と言えるでしょう。
将来のリターンの予測可能性
社債は一般的に、利率や運用期間があらかじめ決まっているため、将来のリターンを把握できるという利点があります。「ソフトバンク株式会社第27回無担保社債」の説明では、「今後7年間でいつどのくらいのリターンが受け取れるか把握できます」と説明されています。
株式投資などと比較して、将来の収益が予測しやすい点は、計画的な資産運用を行いたい投資家にとってメリットと言えるでしょう。
発行企業の安定した事業基盤
ソフトバンク株式会社は、モバイル事業を中核とする「コンシューマ事業」、LINEヤフーなどの「メディア・EC事業」、6,300万人超の登録ユーザー数を有するPayPayなどの「ファイナンス事業」、そのほか「エンタープライズ事業」「ディストリビューション事業」の5つの主要な領域で事業を展開しています。
このような多角的な事業展開は、一つの事業が不振になったとしても全体としての収益を確保できる可能性を高め、投資先としての安定性に寄与していると考えられます。
専門家の見方と今後の展望
最後に、専門家の見方や今後の展望について見ていきましょう。
「ウィン・ウィン」の関係
大和証券のチーフクレジットアナリストである大橋俊安氏は、「現在の劣後債の発行環境は発行体にとっても投資家にとっても『ウィン・ウィン』の状態」だと述べています。
発行企業にとっては、「負債を増やし財務を悪化させることによる格下げを防ぎながら資金調達できるメリット」があり、投資家にとっては「低金利の長期化で運用難の中、相対的に利回りの高い劣後債は数少ない高利回りの投資先」というメリットがあるとされています。
投資判断のポイント
投資判断に際しては、ファイナンシャル・マネジメント代表の山本俊成氏は「普通預金にあまっているおカネがある人、この金利よりも低い商品に投資している人は、購入する価値が十分にある」と述べています。
一方で、社債型種類株については「投資家は、社債型種類株に投資する際はリスクを補って余りあるだけのリターンはどれくらいなのか、つまり適正価格はいくらかといった点をきちんと検討する必要がある」という指摘もあります。
また、劣後債については「発行条件には、ファーストコールに償還されなかった場合の条件なども記載されている」ため、「企業に期日前償還を実施するインセンティブがどの程度あるのか、こうした条件をきちんと確認した上で購入する必要がある」とされています。
「大きすぎてつぶせない」企業になったのか
ソフトバンクグループについては、「携帯事業に加えてインフラ(Arm, Zホールディングス、PayPay銀行など)が国レベルでここまで大きくなり、孫会長がアメリカと強いコネクションを持っている状況では、政府からみたらもはや『大きすぎてつぶせない』企業となってしまったのでしょうか?」という質問も投資家から寄せられています。
この点については明確な答えはありませんが、ソフトバンクグループが日本経済において重要な位置を占めていることは間違いないでしょう。このような状況は、社債投資のリスク評価にも影響を与える可能性があります。
まとめ:ソフトバンク社債は本当に危険なのか
ソフトバンク社債が「危険」「やめとけ」と言われる理由には、信用リスクへの懸念、劣後債という特殊な商品性、借金の借り換えに対する懸念、巨額投資の影響などがあることがわかりました。
一方で、高い利回り、購入しやすさ、少額から投資可能といった利点もあります。また、社債と株式のリスクの違い、格付けからみる信用力、財務状況の改善要因などを考えると、必ずしも「危険」とは言い切れない側面もあるようです。
投資判断に際しては、リスクとリターンのバランスをしっかりと見極め、自分の投資目的やリスク許容度に合わせて検討することが重要でしょう。特に劣後債や社債型種類株式といった特殊な商品については、その性質やリスクを十分に理解した上で投資判断を行うことが求められます。
結論として、ソフトバンク社債は適切な理解と判断のもとでは、やばくない投資先の一つとして検討する価値があると言えるでしょう。ただし、投資はあくまで自己責任ですので、自分自身の判断で行うことをおすすめします。高利回りの魅力に惹かれるだけでなく、発行体の財務状況や将来性、商品の特性などを総合的に判断することが大切です。
ソフトバンク社債は、リスクを理解した上で上手に活用すれば、ポートフォリオの一部として有効な投資対象となる可能性があります。ぜひ、この記事を参考に、あなた自身の投資判断の一助としていただければ幸いです。
