オルカンは”おすすめしない”といわれているのはなぜ?


”eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
本当に”オルカンはやばい”のか、デメリットとメリットから真相に迫る
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。新NISA制度のスタートとともに爆発的な人気を集めるオルカンですが、同時に「おすすめしない」という声も見られます。果たしてオルカンの真の実力はどうなのでしょうか?メリットとデメリット、そして誤解されている点について、投資のプロフェッショナルとして中立的な視点から解説します。
オルカンとは?基本情報を理解しよう
オルカンとは、三菱UFJアセットマネジメント株式会社が運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称です。「オール・カントリー」が略されて「オルカン」と呼ばれるようになりました。
このファンドは、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)に連動した投資成果を目指すインデックスファンドで、先進国23カ国と新興国24カ国の株式市場に上場する中・大型株が投資対象となっています。つまり、このファンド1本で世界中の株式に分散投資ができるというわけです。
オルカンの人気と実績
オルカンは「投信ブロガーが選ぶFund of the Year 2023年」で第1位を獲得し、2019年から5年連続で受賞を果たしています。2024年の新NISA制度スタート後は資金純流入ナンバーワンが続き、純資産総額は約3.1兆円(2024年5月時点)にも達し、さらに4兆円を超える勢いとなっています。
投資対象の構成
オルカンの投資対象は世界47カ国の約2,800以上の銘柄で構成されています。しかし、ここで注目すべき点は、投資先の約60%がアメリカ企業に集中しているという事実です。これは時価総額加重平均型の指数を採用しているため、時価総額の大きなアメリカ企業が必然的に高い比率を占めることになるためです。
オルカンが「おすすめしない」と言われる理由
インターネット上でオルカンについて調べると、「オルカンはおすすめしない」「S&P500のほうがいい」という意見を見かけることがあります。では、なぜそのような評価がされているのでしょうか?主な理由を見ていきましょう。
1. アメリカ株に過度に集中している
オルカンは全世界株式型と銘打っていますが、実際には投資対象の約60%がアメリカ企業に集中しています。これでは真の意味での分散投資になっていないのではないか、という批判があります。
特に、すでにアメリカ株に投資している投資家にとっては、オルカンに投資することで銘柄が重複するリスクがあると言われています。
2. 分散しているのにリスクが低くなっていない
全世界株式型のファンドは、組み入れ銘柄数が多いにも関わらず、あまりリスクが低く抑えられていないと指摘されています。例えば、2020年のコロナショック時の値動きを比較すると、オルカンとS&P500の下落幅にあまり差がなかったというデータもあります。
これは、S&P500がアメリカの大型株だけで構成されているのに対し、オルカンには新興国株や中型株といったリスクの高い銘柄も含まれているためと考えられます。
3. リターンが期待通りでない
リスクが高い新興国株などにも投資しているのであれば、リターンも高くなることを期待する投資家も多いでしょう。しかし、過去のパフォーマンスを見ると、「全世界株式」よりも「S&P500」のほうがリターンは高かったというデータがあります。
具体的には、2019年9月26日〜2024年10月4日のオルカンのトータルリターンは年率18.99%であり、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の年率22.53%より低い結果となっています。
4. 為替の影響を受けやすい
オルカンは為替の影響を受けやすいというデメリットも指摘されています。日本円を基準通貨として海外株式投資を行う場合、円安であれば為替差損が発生する可能性があります。
2024年8月にオルカンが約17%下落した主な要因の一つとして、円高の進行が挙げられています。円高が進むと海外資産の円換算額が目減りするため、投資信託の基準価額が下落してしまうのです。
5. 成長性の低い国も含まれる
オルカンには成長率が低い国や経済的に不安定な地域にも投資されるというデメリットがあります。成長率が低い国が構成比率として大きな比重を占めているわけではありませんが、投資先に含まれていることは事実です。
これにより、「S&P500のように成長性の高い米国企業だけに投資したほうが良いのではないか」という意見も見られます。
オルカンへの誤解と実際のメリット
一方で、オルカンに対する批判や「おすすめしない」という意見の中には、誤解や偏った見方も含まれています。実際のメリットや良い評判も見ていきましょう。
1. 真の分散投資の価値
「最強の指数とは、現時点で誰も見向きもしていない、かつ今後の成長が著しいテーマの株価指数となるでしょう。しかし、未来を確実に予測することは不可能」という意見があります。つまり、将来どの市場が最も成長するかを予測することは難しいからこそ、幅広く分散投資することには意味があるのです。
オルカンは約50カ国、およそ3000銘柄に投資していることから、ある国の経済が不調の時に別の国の好景気が資産の減少を抑えてくれる「分散効果」が期待できます。
2. 低コストという大きな利点
オルカンが人気の理由の一つに、保有中にかかる信託報酬の安さがあります。オルカンの信託報酬は年0.05775%と業界最低水準であり、長期投資においてコストの低さは非常に重要な要素です。
また、オルカンには純資産総額が増えると実質的に負担する信託報酬率が少しずつ下がる「受益者還元型信託報酬」の仕組みもあり、今後さらにコストが低減する可能性もあります。
3. 新NISA制度との相性の良さ
オルカンは新NISA制度のつみたて投資枠・成長投資枠の両方で投資可能であり、非課税で長期運用できる点が大きな魅力です。2024年1月から始まった新NISAでは、株式や投資信託の配当金や分配金、値上がりして売却した利益が非課税になるという大きなメリットがあります。
「新NISA」で投資する銘柄は「全世界株式のみ」で問題ないとする意見も多く、初心者にとって手軽に世界分散投資ができるオルカンは非常に便利な選択肢と言えます。
4. 自動的なリバランス機能
オルカン投資は、投資信託やETFを通じて自動的にポートフォリオがリバランスされるため、ポートフォリオの管理が苦手な方に向いているとされています。ただし、インデックスファンドの自動調整機能については誤解もあるようです。
5. 実績と運用実績の安定性
2024年1月にオルカンを15,000円分購入して約6か月放置しただけで、約3,000円の含み益が出たという個人投資家の例もあります。もちろん、これは特定の期間における結果であり、将来の運用成績を保証するものではありませんが、新NISAでの非課税メリットと相まって魅力的な結果と言えるでしょう。
オルカンとS&P500の比較
オルカンとの比較対象として最もよく挙げられるのが、S&P500(米国株式インデックス)です。両者の違いを明確にすることで、オルカンの特徴がより理解しやすくなるでしょう。
投資対象の違い
- オルカン:先進国23カ国と新興国24カ国の約3000銘柄
- S&P500:米国の大型株500銘柄
リターンの違い
過去のデータではS&P500のほうがリターンが高い傾向にあります。
- オルカン:年率18.99%(2019年9月26日〜2024年10月4日)
- S&P500:年率22.53%(同期間)
コストの違い
両者とも低コストですが、微妙な差があります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 信託報酬: 年率0.05775%
- 隠れコスト: 年率0.053%
- 合計実質コスト: 年率0.11075%
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- 信託報酬: 年率0.09372%(将来的に下がる可能性あり)
- 隠れコスト: 年率0.011%
- 合計実質コスト: 年率0.105%
リスク分散の観点
理論上は、オルカンのほうが地域分散という点でリスク分散に優れていると言えます。しかし、実際の暴落時の値動きを見ると、分散効果が十分に発揮されていない場合もあるようです。
オルカンが向いている人、向いていない人
これまでの情報を踏まえると、オルカンが向いている人と向いていない人を以下のように整理できます。
オルカンが向いている人
- 全世界に分散投資したい人
- 自動的なリバランスを希望する人
- 投資初心者で簡単に世界分散投資を始めたい人
- 長期的な視点で投資をしたい人
- 新NISAの非課税メリットを活用したい人
オルカンが向いていない人
- 短期的に高いリターンを求める人
- 為替リスクを避けたい人
- すでにアメリカ株に大きく投資している人
- 成長性の低い国への投資を避けたい人
「やばい」という評価は誤解から生まれている
ネット上では時に「オルカンはやばい」といった極端な評価を見かけることがありますが、これは投資商品に対する理解不足や誤解から生まれていることが多いようです。
実際、オルカンは株式100%で投資するため、債券を組み入れた投資信託などに比べると、上下の変動は激しくなります。2024年8月には約17%の下落を経験するなど、株式市場の変動に敏感に反応します。
しかし、これは株式投資の性質であって、オルカン固有の問題ではありません。「オルカンは安定的に上昇する」という誤解があるとすれば、それは修正されるべきです。
「やめたほうがいい」という意見は必ずしも正しくない
オルカンを「やめたほうがいい」という意見も見られますが、投資の目的や投資期間、リスク許容度などによって適切な投資先は異なります。
オルカンは長期投資向けの商品であり、短期的な値動きだけで評価するのは適切ではないでしょう。「オルカンをやめとけ」という極端な意見よりも、自分の投資スタイルに合っているかどうかを冷静に判断することが重要です。
オルカンの欠点と対処法
オルカンの欠点として指摘されている点に対して、どのように対処できるかも考えてみましょう。
1. アメリカ株への集中リスク
アメリカ株に約60%が集中しているという欠点に対しては、他の地域に特化した投資信託を組み合わせることで調整できます。例えば、新興国株式や日本株式のインデックスファンドを追加することで、地域バランスを変えることができます。
2. 為替リスク
為替リスクが気になる場合は、為替ヘッジ型の投資信託を検討するか、円建て資産との比率を調整することで対応できます。
3. リターンの低さ
S&P500と比較してリターンが低いことが欠点だと感じる場合は、オルカンとS&P500を併用するという手もあります。例えば、オルカンで基本的な世界分散を行いつつ、S&P500で米国株のウェイトを高めるという方法です。
「おすすめ」できる理由もたくさんある
これまで見てきたように、オルカンには「おすすめしない」と言われる理由もありますが、「おすすめ」できる理由もたくさんあります。
- 低コストである
- 1本で世界分散投資ができる手軽さ
- 新NISA制度との高い親和性
- 自動的なリバランス機能
- 実績と評価の高さ
特に投資初心者にとっては、オルカン1本だけでグローバルな分散投資が実現できる利点は非常に大きいと言えるでしょう。
オルカンは「やばくない」むしろおすすめできる選択肢
結論として、オルカンは決して「やばい」投資商品ではなく、むしろ多くの投資家にとっておすすめできる優れた選択肢と言えます。
特に、長期的な資産形成を目指す投資家や、投資初心者にとっては、オルカンの持つ低コストで世界分散投資ができるというメリットは非常に魅力的です。
もちろん、投資にはリスクがつきものであり、株式市場の変動による基準価額の変動や為替リスクなどは避けられません。しかし、それはオルカン固有の問題ではなく、株式投資全般に言えることです。
重要なのは、オルカンの特性をしっかりと理解したうえで、自分の投資目的やリスク許容度に合っているかどうかを判断することでしょう。
まとめ:オルカンの評価を正しく理解する
オルカンについてネット上の評判を調査すると、「おすすめしない」という意見と「おすすめ」という意見の両方が見られます。しかし、その多くは投資商品に対する理解の違いや、投資目的の違いから生じていることがわかります。
オルカンの利点としては、低コスト、世界分散投資の手軽さ、新NISA制度との親和性などが挙げられます。一方、欠点としては、アメリカ株への集中、為替リスク、S&P500と比較したリターンの低さなどがあります。
これらの情報を総合的に判断すると、オルカンは特に長期投資を考える投資家や、投資初心者にとって非常に有用な投資信託だと言えるでしょう。ただし、投資は自己責任で行うものですので、自分自身でしっかりと調査・研究したうえで判断することが大切です。
「オルカンに投資するべきか」という問いに一律の回答はありません。それぞれの投資家が自分の状況や目標に合わせて、最適な判断をすることが重要です。この記事が、そのための一助となれば幸いです。
