財形貯蓄は”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?


”財形貯蓄はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
本当に財形貯蓄はやばいのか、デメリットとメリットから真相に迫る
財形貯蓄についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。給与天引きで自動的に貯蓄できる仕組みとして長年利用されてきた財形貯蓄ですが、近年では「財形貯蓄はやめたほうがいい」「財形貯蓄はヤバイのでやめとけ」といった意見も見られます。このような評判は事実に基づくものなのか、それとも誤解から生じているのかを、メリットとデメリットの両面から検証していきます。
財形貯蓄の基本的な仕組み
財形貯蓄は「勤労者財産形成促進法」に基づき、国と企業が連携して従業員の資産形成を支援する制度です。給与からの天引きで自動的に積み立てていく点が最大の特徴とされています。財形貯蓄を利用するためには、勤務先が財形貯蓄制度を導入している必要があり、全ての会社員が利用できるわけではないようです。
財形貯蓄の3つの種類
財形貯蓄には以下の3種類があり、それぞれ目的や特徴が異なります。
1. 一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、貯めたお金を自由に使える貯蓄です。車の購入や旅行、結婚式の費用や引っ越しなど、多目的に使えるのが特徴とされています。一年間積み立てた後は払い出しが自由になりますが、普通預金と同じように利息に対して約20%の税金がかかると言われています。
2. 財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、住宅の建設・購入・リフォームを目的とした貯蓄制度です。購入する住宅は新築・中古どちらでもよく、戸建て・マンションともに対象となるようです。基本的には5年以上の積み立てが必要ですが、条件を満たす住宅の場合は5年未満でも払い出しが可能とされています。550万円までの貯蓄は利子が非課税になるというメリットがあります。
3. 財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、老後の資金づくりを目的とした積立貯蓄です。受け取りは満60歳以降から5年以上~20年以内となります。他の2種類の財形貯蓄と併用可能で、財形住宅貯蓄と合算して550万円までは利子が非課税とされています。
「財形貯蓄はやめたほうがいい」と言われる主な理由
では、なぜ財形貯蓄は「やめたほうがいい」と言われることがあるのでしょうか。その主な理由を見ていきましょう。
1. 金利が低すぎる問題
財形貯蓄が批判される最大の理由は、金利の低さにあると言われています。現代の低金利時代では、特に資産形成という観点からは「資産形成には不向き」と評価されることが多いようです。
金利が低いため、非課税措置を受けられても、その恩恵があまり感じられないという指摘もあります。たとえば、金利0.002%で100万円を預けたときの利子は1年間でわずか20円程度であり、非課税になるのはおよそ4円と極めて小さな金額になると言われています。
また、仮に金利0.1%とした場合、月に約1.2万円を積み立てて限度額いっぱいの約550万円を預けたとしても利子は約11万円です。これに対して、同じ期間・金額で投資信託を行った場合、利子は約450万円になる可能性があると試算されています。
2. 自由に引き出せないデメリット
財形貯蓄は「自由に引き出せない」という大きな欠点があると指摘されています。特に急な出費が必要になった場合、すぐに資金を引き出せないため、緊急時の対応が難しくなる可能性があるようです。
また、引き出し・解約手続きが面倒であるという声も多く、会社を通して申請しなければならない手間があると言われています。勤務先に金額と用途を書いた書類を提出しなければならず、お金の使い道を勤務先に知られたくないという人にとっては、これも大きなデメリットとなる可能性があります。
3. 税制優遇が限定的である
財形貯蓄の非課税措置については、以下のような限界があると指摘されています。
- 非課税の対象は利息部分のみで、元本には非課税の恩恵がない
- 対象の財形は「住宅財形」「年金財形」のみで、一般財形は対象外
- 非課税限度額は550万円(住宅財形と年金財形の合算)と上限がある
特に現在の低金利環境では、非課税の恩恵を受けにくいと言われており、「iDeCoのような拠出金の所得控除制度がない」という点も財形貯蓄のデメリットとして挙げられています。
4. 退職時の解約問題
「会社を退職すると解約が必要」になる点も大きな問題とされています。特に住宅財形や年金財形では退職時に税制優遇が取り消され、利息部分が課税対象となる可能性があるとのことです。
転職が一般的になってきた現代社会では、長期間同じ会社に勤める前提の財形貯蓄は不便に感じる人が増えているようです。転職によってステップアップを考えている人にとっては、企業とのつながりが強い財形貯蓄が邪魔になることもあるとの指摘もあります。
5. より効率的な貯蓄・運用方法の存在
財形貯蓄よりも効率的に資産を増やせる方法として、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)、高金利の定期預金などが挙げられています。これらの代替手段と比較すると、財形貯蓄の魅力が薄れてしまうと言われています。
特に、株式会社Wizleapの代表取締役である谷川昌平氏のように、金融の専門家からも「財形貯蓄は本当にやめたほうがいいのか?」という問いかけがなされています。結論として、「貯金額や資金を今以上に増やしたいと考えている方は財形貯蓄はやめた方がいいです」としながらも、「コツコツと貯金を行いたい方にはおすすめの制度です」と、利用者の目的によって判断が分かれることを示唆しています。
財形貯蓄のメリット
「やめたほうがいい」「ヤバイ」と言われる財形貯蓄ですが、実はメリットもあります。以下にその主なポイントをご紹介します。
1. 手間をかけずに確実に貯められる
財形貯蓄の最大のメリットは、給与天引きで自動的に貯蓄できることです。企業の協力を得て給与から一定額が貯蓄に回される仕組みなので、貯金したくてもなかなかできないという人でも、確実にお金を貯めることができます。
また、引き出すためには手続きが必要で簡単には引き出せないため、ついつい使ってしまう人でも貯金が続けられるという利点があります。「先取り貯蓄」として、先に貯蓄分を確保して残ったお金で生活するので、必ず貯蓄ができる点は大きな魅力です。
2. 財形持家融資制度が利用可能
財形貯蓄を1年以上利用していて残高が50万円以上ある場合は「財形持家融資制度」を利用できます。これは、貯蓄残高の10倍(上限4,000万円)の範囲内で住宅取得やリフォームのための資金を借りることができる制度です。
最大35年と長期間かつ低利で借りることができるほか、子育て世代や中小企業に勤めている場合などにはさらに金利優遇を受けられる場合もあるようです。これは財形住宅貯蓄だけでなく、3つの財形貯蓄のいずれを利用している人にも適用される特典です。
3. 利子が非課税となる
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は合わせて元利合計550万円に達するまで利子が非課税です。一般的な投資信託や不動産投資では利子に税金がかけられるので、得られる利益が少なくなります。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は利子が非課税になるので、積み立てた資金以上のリターンを全額受け取れることは魅力と言えるでしょう。
ただし、元利合計550万円を超えると、すべての利子が課税対象となるので注意が必要です。
4. 企業による特典がある場合も
財形貯蓄を利用する人に対して奨励金を支給するなど、財形貯蓄のモチベーションが上がるような仕組みを採用している企業もあるようです。このような企業特典があれば、普通預金で貯めるよりも効率的に資産形成ができる可能性もあります。
財形貯蓄が向いている人・向いていない人
財形貯蓄の特徴を踏まえると、どのような人に向いているのか、あるいは向いていないのかを考えることができます。
財形貯蓄が向いている人
以下のような特徴を持つ人には、財形貯蓄がおすすめといえます。
- 自分で貯金するのが苦手な人 給与天引きで自動的に貯蓄できるため、自分の意思に頼らずに貯金を継続できます。
- マイホーム購入や老後のために計画的に貯めたい人 目的別の財形貯蓄を利用することで、計画的に資金を準備することができます。特に財形持家融資制度を利用したい人にはおすすめです。
- リスクを避けて長期的に貯蓄したい人 投資のようなリスクを取りたくない人には、元本保証型の財形貯蓄が向いています。
- お金があるとつい使ってしまう人 引き出しにハードルがあるため、衝動的な出費を防ぐことができます。
九州ろうきん(九州労働金庫)などの金融機関では、「貯蓄のコツは、お金を見ないこと。財形貯蓄は、お給料やボーナス(一時金)からの天引きだから手間いらず」と説明しています。また、「職場が窓口で手続きカンタン」「お利息に税金のかからない非課税扱い」といった点もアピールされています。
財形貯蓄が向いていない人
一方、以下のような人には財形貯蓄はやめたほうがいいかもしれません。
- より効率的に資産を増やしたい人 財形貯蓄よりも効率よくお金を増やす方法を求める人は、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、他の選択肢を検討した方が良いでしょう。
- 突然の出費に備えたい人 財形貯蓄は引き出しに手間がかかるため、急な出費に対応したい人には向いていません。
- 転職・退職の可能性がある人 退職時に財形貯蓄の継続が難しくなるため、頻繁に転職を考えている人には不向きです。
- 勤務先に貯めたお金の用途を知られたくない人 財形貯蓄は払い出しの際に会社に用途を伝える必要があるため、プライバシーを重視する人には向いていないかもしれません。
財形貯蓄の代わりに検討すべき貯蓄・投資方法
財形貯蓄に代わる、より効率的な資産形成の方法としては、以下のようなものが挙げられています。
1. NISA(少額投資非課税制度)
NISAは投資で得た利益(配当金や譲渡益)が非課税になる制度です。現在は新NISAに移行し、年間の投資枠が拡大され、非課税期間も無期限になっています。財形貯蓄よりも幅広い金融商品に投資でき、長期的な資産形成に向いているとされています。
2. iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税、受取時も税制優遇があるという三重のメリットを持つ年金制度です。財形貯蓄と比較して税制優遇が手厚く、自分で運用商品を選べる点が特徴です。
3. 企業型DC(企業型確定拠出年金)
企業型DCは、企業が社員のために掛金を拠出し、社員自身が運用する年金制度です。iDeCoと同様の税制優遇があり、財形貯蓄よりもリターンが期待できる可能性があります。
4. 高金利の定期預金
リスクを抑えつつも、財形貯蓄よりも高い金利を求める場合は、高金利の定期預金を検討することもできます。特にネット銀行などでは、比較的高めの金利を提供していることもあります。
実際に利用している人の声
財形貯蓄を実際に利用している人の中には、メリットを実感している声もあります。アセットマネジメントOne株式会社のブログによれば、「新卒入社時より一般財形貯蓄を始め、現在も継続している」という筆者は、「放っていても勝手にお金が貯まっていく」ことが良かった点だと述べています。
約6年間で「気づけばそれなりのまとまった金額」になっており、「普段使いの口座で貯めようとしていたら、全額とは言わないまでもいくらかは自分へのご褒美と称して使っていた」可能性があったようです。
また、勤め先で「財形貯蓄利用者に対して奨励金が支給される制度」があったため、「普通預金で貯めていくよりは効率的に資産形成ができる」と感じていたとのことです。
ただし、投資と比較すると「リターンには物足りなさを感じてしまう」とも述べており、「もう少し効率よく資産を増やしたい」と考えるようになったとのことです。
財形貯蓄に関するよくある質問
財形貯蓄が550万円を超えたらどうなる?
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の合計が550万円を超えると、超過分の利子は非課税対象外となり、通常の20.315%の税率で課税されます。そのため、非課税のメリットを最大限に活用するためには、550万円の範囲内で運用するのが効率的だと言われています。
やめるタイミングは?
財形貯蓄をやめるべきタイミングについては、以下のような場合が考えられます。
- より効率的な資産運用方法を見つけた場合
- 転職や退職を予定している場合
- 貯蓄目標を達成し、資金を使う予定がある場合
ただし、「やめる」という選択肢だけでなく、他の資産形成方法と併用するという選択肢もあります。例えば、財形貯蓄で基本的な貯蓄を行いつつ、余裕資金でNISAやiDeCoを活用するという方法も考えられます。
財形貯蓄は”やばくない”?再評価の視点
「財形貯蓄はやばい」という評判がある一方で、実は目的や状況によっては非常に優れた制度だという見方もあります。特に以下のような点で、財形貯蓄は再評価される価値があるでしょう。
1. 強制的に貯蓄できるシステム
プレジデントオンラインの記事によれば、財形貯蓄の最大の強みは「給与天引き」という点にあります。「最初から”なかったもの”と思って生活するから、自然にお金が貯まる」という仕組みは、貯蓄が苦手な人には大きな味方になります。
2. 心理的ハードルの低さと高さ
財形貯蓄は「会社で申し込むため、始めるときの敷居は低く、逆におろすときは担当者の目が気になって二の足を踏みがち」という特徴があります。これは貯蓄を続ける上で、意外な利点になることもあるようです。
3. 会社倒産のリスクがない
「会社が倒産したら財形もパーになるのでは?」という不安を持つ人もいますが、これは誤解です。財形貯蓄は「会社を窓口として外部金融機関に預託するしくみなので、会社が倒産してもゼロになることはない」とされています。これは社内預金とは異なる重要なポイントです。
4. 住宅ローンの優遇
財形貯蓄を行っていると「財形持家融資制度」を利用できるというのは、住宅取得を考えている人にとって大きなおすすめポイントです。特に、最大35年という長期間で低利の融資を受けられる点は、一般的な住宅ローンと比較しても魅力的といえるでしょう。
まとめ:財形貯蓄は目的次第でおすすめの制度
財形貯蓄は”やめたほうがいい”という評判がある一方で、その特性を理解し適切に活用すれば、優れた貯蓄方法となり得ます。
金利の低さや引き出しの制約、転職時の継続性など、確かにデメリットはあります。しかし、「給与天引きで自動的に貯まる」という最大の利点は、貯蓄が苦手な人にとって非常に心強い味方となります。
財形貯蓄が向いているのは、以下のような人です。
- 自分で貯金するのが苦手な人
- 手元にお金があるとつい使ってしまう人
- 将来の住宅購入や老後に向けて計画的に貯めたい人
- リスクを避けて安全に貯蓄したい人
一方、以下のような人は別の貯蓄・投資方法を検討した方が良いかもしれません。
- より効率的に資産を増やしたい人
- 自由にお金を引き出したい人
- 転職や退職の可能性が高い人
最終的には、自分の目標や生活スタイル、リスク許容度に合わせて判断することが重要です。財形貯蓄を批判する声もありますが、それは誤解や情報不足から生じていることもあります。正しい情報を得た上で、自分に最適な資産形成の方法を選びましょう。
金融関連メディアの情報も参考にしながら、長期的な視点で財形貯蓄の活用を検討してみてはいかがでしょうか。財形貯蓄が”やばい”のではなく、使い方次第では非常に有効な資産形成ツールになり得るということを理解しておくことが大切です。
