農林中央金庫は”危ない”、”危険”といわれているのはなぜ?

農林中央金庫は”危ない”、”危険”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”農林中央金庫はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します

本当に農林中央金庫は危ないのか? デメリットとメリットから真相に迫る

農林中央金庫の「危ない」「危険」という噂の真相:口コミと評判から見る実態

農林中央金庫(のうりんちゅうおうきんこ)についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、農林中央金庫が「危ない」「危険」と言われる情報がインターネット上で散見されています。JAグループの中央機関として、農業・漁業などの第一次産業を金融面から支える重要な役割を担うこの金融機関ですが、実際のところはどうなのでしょうか。本記事では、ネット上の口コミ情報や専門家の見解をもとに、農林中央金庫の現状と将来性について、良い面・悪い面の両方から包括的に分析してみたいと思います。

「危ない」「危険」と言われる主な理由

巨額の運用損失問題

農林中央金庫が「危ない」と言われる最大の理由は、直近の巨額損失です。2025年3月期には1.5兆円規模の赤字に沈む見込みであることが公表されており、状況によっては赤字が2兆円近くになる可能性も示唆されています。この巨額損失は、ネット上の口コミでも頻繁に言及されており、「運用損失が大変な赤字となっており、評価し難い」という声が多く見られます。

特に注目すべき点は、他のメガバンクが過去最高益に近い利益を記録している中で、農林中央金庫だけが「独り負け」の状況にあることです。これについて、ある口コミでは「最近大きな赤字を出したため、都道府県JAに偉そうなことを言えなくなった感がある」と指摘されています。

このような巨額損失の背景には、米国債を中心とした運用戦略の失敗があるようです。「最近はグローバルマーケットにプレゼンスを発揮しているので世界規模での成長が見込まれる」という期待がある一方で、「アセットの管理に課題があり、リーマンショックと金利上昇の今2度に渡り危機的状況にある」という厳しい指摘もあります。また「収益構造が投資部門に偏り、米国金利の影響を受けやすい点が課題」という声もあります。

ガバナンス上の問題

農林中央金庫のガバナンスについても懸念の声が上がっています。農水省による検証会では、「農協などが集めた貯金をどのように運用するかという方針を決める理事会に市場運用経験者が少なかった」「米国金利の上昇局面で米国債を機動的に売却できないなど組織体制に不備があった」「理事が生え抜き職員のみで、専門性の高い外部の理事の意見を聞くことができなかった」などの問題点が指摘されています。

口コミからも「危険な投資商品をすぐに買い、ジョブローテがあるゆえにそのことに対し危機感も抱きづらい環境」という声が挙がっており、組織としての意思決定プロセスやリスク管理体制に課題があるようです。また「ビジネスモデルに限界を感じていると思う。JAへの配当の捻出、人件費の高騰など、従来どおりの仕組みを維持するために精一杯」という指摘もあります。

さらに、農水省の検証会では政治的な配慮から意図的に議論が避けられている問題もあるようで、真の意味でのガバナンス改革が進むかどうかは不透明な状況にあるようです。

ビジネスモデルの持続可能性

農林中央金庫のビジネスモデル自体の持続可能性についても疑問が投げかけられています。口コミには「運用事業一本で収支を安定させるのには限界があると感じる。融資事業や手数料事業を拡大させるべき」という指摘があります。また「運用先が海外に集中しているため、ビジネスモデルに行き詰まりを感じている」という声もあります。

第一次産業との関連性についても「農家の高齢化などにより怪しい部分がある」「少子高齢化で第一次産業が衰退しつつある中、将来性は高いとは言えない」といった懸念が示されています。「そもそも、会社としてのソリューションの幅が狭いので、シンジケートローンの3番手などになることが多いらしく、変革を牽引はできないのでは無いか」という厳しい見方もあります。

こうした構造的な問題から「農林中金の赤字は飯馬な内容です」「今年、赤字を出ていたことや、農業の将来性を考えると事業は縮小していくと思う」という悲観的な見方が少なからず存在しています。

これらの懸念は誤解なのか?

運用損失の背景と対策

農林中央金庫の巨額損失については、市場環境の変化という外部要因も大きく影響しています。特に米国の金利上昇は予測が難しく、多くの金融機関が影響を受けました。ある口コミでは「国際業務を行う銀行の自己資本比率は8%を超えていなくてはならないという規制がある。だから損切りをして財務の健全性を確保する。同時に今後より収益を確保できるものに投資する」という冷静な分析もあります。

また「局所的な赤字だけをピックアップして批判するのは長期的な視点での投資ができない人の特徴」「むしろきっちり損切りできるだけ有能ではある」という見方もあり、現在の損失が必ずしも農林中央金庫の経営能力の欠如を意味するわけではないという意見もあります。

さらに「農林中央金庫は毎年配当も含めて3000億円ほどJAに分配。そして各JAの判断で農家に対して肥料価格高騰時などの差額補填などが行われている」という指摘もあり、単年度の損益だけでなく、長期的な役割や貢献も考慮する必要があるようです。

農林中央金庫の特殊な立ち位置と役割

農林中央金庫は一般の銀行とは異なる特殊な位置づけを持っています。「JAバンクの関係が強固であるため、逆風にも耐える力がある」という見方があり、「民間企業とは異なり、一次産業の為の銀行という法律に基づいた銀行のようで、安定した経営基盤が築かれている」という声もあります。

また「民間ではあるが、もともと政府機関的役割が強いので安定している。地域とのつながりも強く取り引き相手がいなくなることはない」「国が関わっていることもあり、事業がつぶれることはない」という安定性を強調する意見も見られます。

こうした特殊な立ち位置から「金融機関ではあるが、事業形態が農林水産業と密接に関わる機関であり、生活に必要不可欠な存在であるため、将来性は高い」という前向きな評価もあります。農林中央金庫は純粋な営利企業ではなく、公共性の高い役割を担っているという点は、評価の際に考慮すべき重要な要素と言えるでしょう。

農林中央金庫の良い評判

雇用環境の良さ

農林中央金庫の雇用環境については非常に高い評価が多く見られます。特に給与水準については「非常に高い。30代で年収は1000万を超える」という声が複数あります。「農林中央金庫の行員の給料は30歳で1本超え」という指摘もあり、金融業界の中でも高水準の給与が提供されているようです。

福利厚生も充実しており、「社宅制度がとても充実していて生活コストを抑えられる点や、有休も取りやすく、働きやすさを実感しました」「借り上げマンションに1万円以下の金額で住める」など具体的なメリットが挙げられています。「格安で社宅に住める点・業務量に対して給料が高い点に惹かれて入社されている人が多い」という声もあります。

ワークライフバランスについても良好な評価が多く、「繁忙期はあるものの、基本的には定時退社も多く、有休も取りやすいため、プライベートの時間を大切にできました」「テレワークを部分的に認めるなど柔軟な対応ができる」といった声があります。「働かなくても年収が上がっていく」「福利厚生がいい」という評価もあり、全体として恵まれた労働環境があると言えるでしょう。

このような好待遇から「この会社に骨を埋めるつもりでいる方にとっては、待遇や福利厚生やワークライフバランス等を考慮すると、長く働きやすいいい環境」という評価もあります。

社会的意義と第一次産業への貢献

農林中央金庫で働くことの意義として、社会貢献や第一次産業への関与を挙げる声も多くあります。「農業や地域金融の発展に携わる中で、社会に直接貢献できる実感があり、大きなやりがいを感じました」という声があり、「JAのセントラルバンクとして、第一次産業に貢献できる」という点が評価されています。

「第一産業に貢献できる点で、私自身はやりがいを感じられそう」という意見もあり、特に農業や地域の発展に関心がある人にとっては、やりがいを感じられる職場環境があるようです。

また「第1次産業はなんだかんだ言ってなくならないものだし、JA等組織形態からみても需要は高いままだと思う。将来性は揺るがないのではないか」という前向きな見方もあります。農林水産業が人間の生活に欠かせない産業である以上、それを支える農林中央金庫の役割も継続的に重要性を持つという認識があるようです。

組織風土と人間関係

農林中央金庫の組織風土や人間関係についても良好な評価が多く見られます。「チャレンジしたいことがあれば周囲が背中を押してくれる文化。また、新たな取り組みを評価する傾向にある」という声があり、挑戦を支援する文化があるようです。

また「競争がないので、職員は良い人が多い。地頭も良い人が多いため、コミュニケーションでのストレスはそこまでない」「銀行の中では、穏やかな人が多いと思いますし、ガツガツって感じも薄い」という声もあり、比較的ストレスの少ない職場環境が形成されていると考えられます。

「まわりは穏やかな人ばかりだった。仕事も丁寧に教えてくれたり、雑談などもあった」という評価もあり、特に協調性を重視する人にとっては居心地の良い職場かもしれません。

農林中央金庫の投資信託「おおぶね」シリーズについて

「やばい」と言われる理由

農林中央金庫が個人投資家向けに販売する投資信託「おおぶね」シリーズについても、一部で「やばい」という声が上がっているようです。主な理由としては「『おおぶね』の手数料と運用利回りが割に合わないから」「『おおぶね』の投資先である米国市場の見通しが暗いから」という点が挙げられています。

特に運用実績については、「長期厳選投資 おおぶね」の5年リターンが+16.79%であるのに対し、同分類の平均は+18.54%、S&P 500(配当込み・円建て)は+22.6%と、ベンチマークや同類商品と比較して劣後している点が指摘されています。「おおぶねグローバル(長期厳選)」や「おおぶねJAPAN(日本選抜)」についても同様に、同分類の平均を下回るパフォーマンスとなっています。

実際のパフォーマンスと「やばくない」側面

ただし、おおぶねシリーズのパフォーマンスについては「可もなく不可もなく」という評価もあり、決して「やばい」ほど悪いわけではないという見方もあります。リスク面では同分類平均よりも低めの傾向があり、安定性を重視する投資家には一定のメリットがあるかもしれません。

また、おおぶねシリーズの投資方針は「短期的な株価の変動に踊らされず、将来的に継続して利益を生みだせる企業への投資」という長期的な視点に基づいており、短期的なパフォーマンスだけで評価することは適切ではないという指摘もあります。

今後の見通しについては「概ね追い風ではあるが、第2次トランプ政権発足などのイベントもあり半々」という分析もあり、必ずしも悲観的な見通しだけではないようです。長期投資の視点から見れば、現時点でのパフォーマンスの差は将来的に逆転する可能性もあるでしょう。

農林中央金庫の現状と展望:バランスの取れた見方

農林中央金庫については「危ない」「危険」という懸念がある一方で、多くの「利点」も存在します。経営面での課題はあるものの、雇用環境の良さや社会的意義、組織風土の良さなどは高く評価されています。また公共性の高い役割を担う金融機関として、一般の銀行とは異なる評価軸で見る必要もあるでしょう。

ある口コミでは「農林中央金庫は忖度貸し付けだから借りた方も楽観的になりがち。緊張感のある銀行の方が良いのかもしれない」という指摘がある一方、「JAバンクの強固な基盤」を評価する声もあります。このように、見る角度によって評価は大きく分かれるようです。

投資信託「おおぶね」シリーズについても、単純に「やばい」とは言えず、投資方針や投資家のニーズに応じて「おすすめ」できる場面もあるでしょう。特に長期的な視点で安定した資産形成を目指す投資家には、検討の余地がある商品と言えるかもしれません。

最終的には、農林中央金庫もJAグループも「第一次産業はなんだかんだ言ってなくならないものだ」という根本的な前提に立っており、日本の食料安全保障や地域経済を支える重要な役割を今後も担っていくと考えられます。短期的な運用損失があったとしても、長期的な視点では社会的にも経済的にも重要な存在であり続けるでしょう。

金融機関として「やばくない」水準まで経営改善を進め、第一次産業の発展に貢献していくためには、ガバナンス改革や収益構造の多様化など、積極的な変革が必要になるかもしれません。それでも「JAの強固な基盤」や「政府機関的役割の強さ」を考えると、農林中央金庫の存在自体が危機に瀕しているとは考えにくく、今後も日本の金融システムと第一次産業を支える重要な機関であり続けると考えられます。

今回の巨額損失から学び、より強固なリスク管理体制と多様な収益源を確立することで、農林中央金庫が真の意味で第一次産業の発展に貢献できる金融機関として再生することを期待したいと思います。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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