オフピーク定期券の”デメリット”がやばいといわれているのはなぜ?

オフピーク定期券の”デメリット”がやばいといわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”オフピーク定期券はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します

オフピーク定期券は本当に”やばい”のか、デメリットとメリットから真相に迫る

JR東日本が提供する「オフピーク定期券」についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。通常より15%安く購入できるというメリットがある一方で、「デメリットがやばい」「使うと損する」といった否定的な声も多く見られます。果たして本当にデメリットが大きいのでしょうか?それとも誤解から批判が生まれているのでしょうか?実際の利用者の声や専門家の見解を交えながら、オフピーク定期券の実態に迫ります。

オフピーク定期券とは?基本情報と仕組み

オフピーク定期券とは、JR東日本が「混雑緩和」と「働き方改革」の推進を目的として導入した、平日朝のピーク時間帯以外のオフピーク時間帯のみに利用できる割安な通勤定期券です。最大の特徴は、通常の通勤定期券よりも約15%割安で購入できる点です。2023年3月18日から販売が開始され、当初は10%割引でしたが、2024年10月1日からは15%割引に拡大されました。

対象エリアとピーク時間帯

オフピーク定期券の対象エリアは、JR東日本の電車特定区間で、東京駅を中心に、大宮(埼玉県)、取手(茨城)、千葉・千葉みなと(千葉)、久里浜・羽沢横浜国大(神奈川)、奥多摩・高尾(東京)までとなっています。ただし、対象の路線は、山手線や埼京線、京浜東北線など、東京・埼玉・神奈川・茨城を含む、16路線279駅のみであり、すべての路線・駅で利用できるわけではありません。

ピーク時間帯は駅によって異なりますが、主な駅のピーク時間帯は以下のとおりです。

  • 大宮駅:06:45〜08:15
  • 横浜駅:07:00〜08:30
  • 渋谷駅:07:20〜08:50
  • 新宿駅:07:30〜09:00

これらのピーク時間帯はすべて1時間30分の枠であり、最も早い駅では6:25から、遅くとも9:00までにピーク時間帯は終了します。

利用条件と制限

オフピーク定期券はSuicaまたはモバイルSuicaでのみ利用可能で、対象券種は通勤定期券のみとなっています。通学定期券、グリーン定期券、FREXおよびFREXパルは対象外です。ただし、障害者割引や特定者割引は対象となります。

また、JR線と私鉄・地下鉄線にまたがるSuica通勤定期券(連絡定期券)でも、JR線の適用区間内についてはオフピーク定期券を購入できます。

ネットで噂される”デメリット”の実態

オフピーク定期券についてはネット上でさまざまな意見が交わされており、特に「デメリットがやばい」という声が目立ちます。その主な理由を見ていきましょう。

1. ピーク時間帯利用時の割高な料金

最も批判が集中しているのが、ピーク時間帯に利用した場合の扱いです。オフピーク定期券をピーク時間帯に利用すると、定期券として使えず、通常運賃がSuicaから引き落とされます。つまり、わずか数回ピーク時間帯に乗車するだけで、定期券の割引分のメリットが打ち消されてしまうのです。

あるネット上の声では「3~4回ピーク時に使うともうアウト」「15%じゃあ…」と失望感を表しています。確かに15%の割引額と比較して、数回の通常運賃を払うことになれば、結果的に損をする可能性が高いと言えます。

2. 遅延時の対応がない

電車の遅延などによって、やむを得ずピーク時間帯に乗車せざるを得ない場合でも、特別な対応は行われません。例えば、いつもより早く出勤しようとしたのに、前の電車が遅延して次の電車に乗ったらピーク時間帯に入ってしまった場合でも、通常運賃が引き落とされます。

これは利用者にとってやばいデメリットと言えるでしょう。自分ではコントロールできない要因で追加料金が発生するリスクがあるためです。

3. 企業の通勤手当制度との不整合

多くの会社では通勤手当として定期券代を支給していますが、オフピーク定期券を選択した場合、その分しか通勤手当が支給されないケースが一般的です。「JRは『オフピーク定期券はおトク』って宣伝してますが、おトクな場合って普通定期の通勤手当を貰いながらオフピーク定期券で通勤して差額を懐に入れるか(うちの会社では禁止されています)」という声もあります。

つまり、多くの場合、オフピーク定期券の恩恵を受けるのは会社側であり、従業員個人ではないという現実があります。「CMでは、15%OFFとコストも強調しているが、ほとんどのケース、得するのは、会社であり、個人ではない!個人に金銭的メリットはない!」という指摘もあります。

4. 勤務形態との相性の問題

フレックスタイム制や時差出勤が導入されていない企業では、オフピーク定期券の恩恵を受けることが難しいでしょう。「オフピーク定期券とかほとんどの人間は会社など社会に時間を合わせて行動するから、ピークというものがあるわけであって、そういう人たちが定期券を購入する」という意見もあります。

これは「実質ただの値上げでやり方が汚い」と批判する声にもつながっています。つまり、大多数の人は勤務時間の都合で通勤時間を自由に選べないのに、安い定期券の条件として利用時間帯を制限するのは不公平だという見方です。

企業側から見たオフピーク定期券の課題

企業側から見ても、オフピーク定期券の導入には様々な課題があります。

1. 就業規則変更の手続きが煩雑

企業がオフピーク定期券を導入するためには、就業規則の変更が必要になることがあります。「駅すぱあと 通勤費Web」によると、企業側の対応として「社員一人一人についてオフピーク定期券に対応できるか、乗車駅とピーク時間帯をリストアップする必要があり」「社内の時差通勤の運用ルールを策定し」「ピークタイム通勤したときのイレギュラー精算も内規で定め」「運用ルールを踏まえて就業規則を変更」などが必要とされています。

就業規則を変更するには、労働基準監督署に「変更後の就業規則」「就業規則変更届」、従業員に説明して同意を得た上で「労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書」を提出する必要があります。これは企業にとって大きな負担となり得るため、「そう簡単に『安い定期券が出ました。いろいろ条件がありますがこっちにします』とはならない」という現実があります。

2. 交通費精算の管理負担増加

オフピーク定期券を導入すると、ピーク時間帯に利用した場合の交通費精算が必要になり、企業の管理担当者の負担が増えます。「交通費精算に特化したクラウドサービス『駅すぱあと 通勤費Web』によると、オフピーク定期券に関する企業側の対応としては、『社員一人一人についてオフピーク定期券に対応できるか、乗車駅とピーク時間帯をリストアップする必要があり』」といった対応が必要になります。

これは「会社支給のオートチャージSuicaとしても、管理部門の手間が増える」という課題につながります。

オフピーク定期券に関する誤解と真相

オフピーク定期券については、いくつかの誤解も見受けられます。ここでは、そうした誤解と真相を整理してみましょう。

誤解1:通勤混雑の緩和に効果がある

JR東日本はオフピーク定期券を「混雑緩和」と「働き方改革」の推進のために導入したとしていますが、実際にはその効果は限定的であるようです。「『オフピーク定期券』には2つの期待があった。1つは通勤ピーク時間帯の混雑緩和。もう1つは通勤需要の回復による増収だ。しかしいまのところどちらも失敗した」という厳しい評価があります。

実際、「購入者は、そもそもラッシュ時間帯以外に乗車していた人がほとんどで、混雑緩和の効果が期待していたほど見られていない」と指摘されています。これは単に既存のオフピーク通勤者が安い定期券に乗り換えただけで、ピーク時間帯の利用者の行動変容にはつながっていないということを示唆しています。

誤解2:15%割引で必ずお得になる

オフピーク定期券が通常より15%安いのは事実ですが、これが必ずしもお得になるとは限りません。前述のように、ピーク時間帯に数回利用するだけで割引分のメリットが打ち消されてしまいます。「3~4回ピーク時に使うともうアウト」という声が示すように、実際のメリットは利用パターンに大きく依存します。

また、「普通定期の通勤手当を貰いながらオフピーク定期券で通勤して差額を懐に入れる」ことを禁止している会社も多く、その場合は個人にとっての金銭的メリットはなくなります。

誤解3:すべての駅で利用できる

オフピーク定期券はJR東日本のすべての路線・駅で使えるわけではなく、対象路線は限られています。また、発着駅がオフピーク定期券の対象であっても、線路が適用区間外の場合はオフピーク運賃が適用されず、オフピーク定期券の販売も行われないという制限があります。

例えば、「湘南地区から東京へ通勤している。こっち方面だと、大船から東京側がオフピーク定期が使える地域になる」という利用者の例では、「大船駅から自宅側が対象エリア外」であるため、完全に活用することができなかったという体験が紹介されています。

オフピーク定期券の”やばくない”メリットと利点

ここまでデメリットを中心に見てきましたが、オフピーク定期券には確かに魅力的なメリットもあります。特定の条件下では非常におすすめできるサービスと言えるでしょう。

1. 実質的な交通費削減

通常の定期券と比較して15%安く購入できるというのは大きな利点です。例えば、6ヶ月分の定期券購入で考えると、区間によっては1万円以上の節約になります。

具体的な例として、赤羽駅から新宿駅までのオフピーク定期券(6ヶ月分)の価格を見てみると、通常の通勤定期券が33,480円であるのに対し、オフピーク定期券は28,290円となっており、5,190円もの差額があります。

さらに、2024年3月からは、オフピーク定期券を購入するたびに定期券購入金額の最大約5%分のJREポイントが付与されるようになりました。これを利用すれば、最大約20%も交通費がお得になる可能性があります。

2. 通勤ストレスの軽減

ピーク時間帯を避けて通勤することで、混雑した電車での通勤というストレスから解放されるというメリットもあります。特に東京のような大都市では朝の通勤ラッシュは非常に過酷で、身体的にも精神的にも大きな負担となります。オフピーク定期券を利用することで、より快適な通勤環境を手に入れることができるでしょう。

3. 柔軟な働き方の促進

オフピーク定期券は「働き方改革」の推進という側面も持っています。時差出勤やフレックスタイム制の導入を企業に促すきっかけとなり、より柔軟な働き方の実現につながる可能性があります。

実際に、「通勤時間の柔軟性を高め混雑時間をさけた通勤を可能にすることにより、働きやすさ・従業員エンゲージメント向上を図れます」というメリットが指摘されています。

4. 特定のライフスタイルとの相性の良さ

すでにピーク時間外に通勤している人や、フレックスタイム制を活用している人にとっては、オフピーク定期券は純粋にお得なサービスと言えます。「フレックス勤務が使えて、子供が学校に出発する時間より後に出発するのでピーク時間の後になるからちょうどいい」というユーザーの声もあります。

土日は終日定期券として利用可能であるため、週末に定期券区間内を頻繁に移動する人にとっても有利です。

おすすめできる人・状況

オフピーク定期券は、以下のような人や状況におすすめできます。

  1. フレックスタイム制を導入している企業に勤める人:出勤時間を自由に選べるため、ピーク時間帯を避けた通勤が容易です。
  2. すでにピーク時間外に通勤している人:「普段からピーク時に乗車していないから」という理由でオフピーク定期券を選択している人もいます。すでにライフスタイルがオフピーク定期券に合っている場合は、デメリットを気にする必要はありません。
  3. 通勤手当が実費精算の企業に勤める人:オフピーク定期券の額で通勤手当が支給され、かつピーク時の追加料金も会社負担となる場合は、利用者にリスクがなくメリットのみを享受できます。
  4. 副業や多拠点勤務などの柔軟な働き方をしている人:決まった時間に通勤する必要がない働き方をしている人にとっては、オフピーク定期券は有効な選択肢となります。
  5. 交通費を自己負担している自営業者など:会社からの通勤手当に縛られていない場合、純粋に交通費の節約になります。

効果的な活用方法と注意点

オフピーク定期券を最大限に活用するためのポイントをいくつか紹介します。

1. 自分の通勤パターンとピーク時間帯の確認

まず、自分の通勤に使用する駅のピーク時間帯を正確に把握しましょう。駅によってピーク時間帯が異なるため、自分の利用駅の時間帯を確認することが重要です。

また、自分が月にどれくらいピーク時間帯に乗車する可能性があるかを考慮し、オフピーク定期券のコスト削減効果が打ち消されないかを計算してみるとよいでしょう。

2. 会社の通勤手当制度の確認

オフピーク定期券を検討する際は、自社の通勤手当制度を確認することが重要です。特に、以下の点に注意しましょう。

  • オフピーク定期券を選択した場合の通勤手当支給額
  • ピーク時間帯に乗車した場合の追加料金の扱い(会社負担か自己負担か)
  • 通勤手当の精算方法(実費精算か定額支給か)

3. 勤務形態との調整

可能であれば、勤務時間をオフピーク時間帯に合わせて調整できないか、会社と相談してみるのも一つの方法です。「朝だけテレワーク&オフピーク通勤という働き方もある」という提案もあります。

特に、コロナ禍以降、多くの企業でテレワークや時差出勤が導入されており、こうした制度を活用することでオフピーク定期券のメリットを最大化できる可能性があります。

4. 注意すべき制限事項

オフピーク定期券には以下のような制限事項があるため、注意が必要です。

  • ピーク時間帯は「入場時」に判定される
  • 他の定期券との併用は基本的にできない
  • 通学定期券やグリーン定期券には適用されない
  • すべての路線・駅で使えるわけではない

結論:オフピーク定期券は誰にとって”やばい”のか

オフピーク定期券の評価は、利用者の状況や勤務形態、企業の通勤手当制度などによって大きく変わってきます。

確かに、「デメリットがやばい」と言われるように、ピーク時間帯の利用で追加料金が発生する点や、遅延時の対応がない点、企業側の手続きの煩雑さなど、改善すべき課題は多いと言えるでしょう。特に「3~4回ピーク時に使うともうアウト」という現実は、多くの人にとって利用価値を大きく下げる要因となっています。

しかし一方で、すでにピーク時間外に通勤している人やフレックスタイム制を活用している人、テレワークと組み合わせて通勤回数を減らしている人にとっては、純粋に「おすすめ」できる利点のあるサービスと言えます。「通常の通勤定期券よりも約15%割安になり、通勤手当のコスト削減となります」という点は、特定の条件下では大きな魅力となります。

最終的に、オフピーク定期券が「やばい」かどうかは、個人のライフスタイルと企業の制度次第であると言えるでしょう。デメリットを理解した上で、自分の状況に合わせて判断することが重要です。

また、今後の改善点としては、「ピーク時、通常の定期料金との差額を請求されるならオフピーク定期券にするのだが、IC普通運賃を請求されるなら、メリットよりデメリットの方が大きい。まだ、オフピーク時の乗車でポイント還元してもらえた方が良い」という意見もあります。こうした利用者の声を反映して、サービスが進化していくことを期待したいところです。

オフピーク定期券は、働き方改革やテレワークの普及など、社会の変化とともに進化していく可能性を秘めたサービスです。現時点では一部の人にとっては「やばい」デメリットがあるものの、今後の改善によってより多くの人にとって「やばくない」メリットを提供できるサービスになる可能性も十分にあると言えるでしょう。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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