日経平均が”やばい”といわれているのはなぜ?


”日経平均への投資はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
本当に”やばい”のか、日経平均のデメリットとメリットから真相に迫る
ライター:財務アナリスト 山田太郎
2025年4月の日経平均株価についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。先週からSNSやネット掲示板では「日経平均がやばい」「投資はやめたほうがいい」といった声が急増しており、多くの投資家の間で不安が広がっているようです。この記事では、なぜそのような評判が広がっているのか、それが誤解に基づくものなのか、様々な角度から検証していきます。
「日経平均株価がやばい」と言われる現状
2025年4月4日、日経平均株価は前営業日比917円75銭安の33,818円18銭と大幅に続落しました。一時的に心理的な節目とされる34,000円を割り込み、昨年8月以来の安値水準となったのです。この下落を受けて、ネット上では「日経平均株価がやばい」「NISAはやめたほうがいい」といった声が数多く見られるようになりました。
SNS上では以下のような投稿が目立ちます。
- 「トランプ関税の影響でここまで下がるとは…。輸出関連銘柄は今はおすすめしないかも。」
- 「銀行株も厳しい状況。金利低下でさらに悪化する可能性もありそう。」
- 「34,000円割れは去年以来。買い時かもしれないけど、まだ様子見したほうがいいかも。」
「日経平均株価がやばい」と言われる主な理由
1. トランプ大統領の「相互関税」政策による影響
今回の株価下落の最大の要因と言われているのは、アメリカのトランプ大統領が発表した「相互関税」政策です。トランプ大統領は各国に対して24%の関税措置を発表し、これにより世界的な景気後退懸念が強まったと言われています。この影響でアメリカ市場でも主要指数が大幅に下落し、その流れが日本市場にも波及したようです。
2. 円高進行によるマイナス影響
リスク回避として円買いが進み、1ドル=145円台まで円高が進行しました。これは輸出関連企業にとって大きな打撃となり、特に自動車や電機メーカーなど輸出依存度の高い業種で売りが目立ったと報告されています。トヨタ自動車や日産自動車、ソニーグループなどの大手輸出企業の株価が特に大きく下げたようです。
3. 銀行株や半導体関連株の下落
長期金利低下による銀行株の売りや、米国ハイテク株安を受けた半導体関連銘柄の下落も、日経平均を押し下げる要因となりました。三菱UFJフィナンシャル・グループや東京エレクトロン、ソフトバンクグループなどの主要銘柄の下落が指数全体に大きな影響を与えたと言われています。
4. 2024年8月の「日本版ブラックマンデー」の記憶
多くの投資家が2024年8月5日の「日本版ブラックマンデー」のトラウマを引きずっているようです。この日、日経平均株価は前週末と比べて12.4%下落し、過去最大の下落幅を記録しました。この時の記憶が鮮明なうちに再び大幅下落が起きたことで、投資家心理がより悪化している可能性があります。
5. 新NISA制度への懸念
2024年から始まった新NISA制度についてもネット上では様々な批判的意見が見られます。特に「NISAが暴落でやばい」「やめたほうがいい」という声が多く聞かれます。
新NISAのデメリットとして次のような点が指摘されています。
- 暴落時の資産価値の急減
- 損益通算ができない制度上の欠点
- 短期的な投資には向いていない特性
「日経平均株価がやばい」という誤解を検証する
ここまで見てきたように、確かに日経平均株価は短期的に大きく下落しており、不安を感じる投資家が多いことは事実です。しかし、歴史的な視点や株式市場の特性を考慮すると、「やばい」という評価は必ずしも正確ではないかもしれません。
誤解1:「暴落=投資がやばい」という短絡的な考え
暴落が起きたからといって、投資自体に問題があるわけではありません。過去の株式市場を振り返ると、S&P500の推移でも、ブラックマンデー、リーマンショック、コロナショックなど、数年に1度のペースで暴落は発生しています。しかし、それらの暴落後も市場は回復し、長期的には上昇トレンドを維持していると言われています。
2024年8月の暴落についても、その後数日で大幅に株価が回復したと報告されており、一時的な混乱に過ぎなかった可能性があります。
誤解2:「暴落時には売却すべき」という考え
暴落時に「慌てて売却する」ことは、専門家から最もやってはいけない行動として挙げられています。なぜなら、売却してしまうと、その時点で損失が確定し、その後の市場回復の恩恵を受けられなくなるからです。歴史的に見ても、下がり続けた相場はないとされています。
この「狼狽売り」と呼ばれる行動を避けるべき理由は、売却のタイミングを誤りやすい点にあります。株価が急落したあとは、数ヶ月から数年で回復するケースが一般的です。一時の感情で売却してしまうと、その後の株価上昇の機会を逃し、損失を確定させてしまう可能性が高くなると言われています。
誤解3:「今の日本株は割高」という見方
「日経平均株価が史上最高値を更新」と報道されており、「日経平均は上がり過ぎだ、バブルだ」と考える方が多くいらっしゃるようです。しかし、実際の指標を見ると日本株はバブルではないと考えられます。
日経平均PER(指数ベース)は24.0倍(2024年3月27日時点)となっており、先進国の平均PERが18倍前後と考えると、確かに若干割高な水準と言えるでしょう。しかし、日本企業がこれまでにBPS(1株あたり純資産)を積み上げてきたことを考えると、むしろ適正に評価されはじめているとも言えます。
また、日経平均PBRは2.20倍(2024年3月27日時点)ですが、先進国の平均PBRは2.9倍です。日本企業のPBRは先進国の平均と比べてまだ過小評価されているという見方もできます。
誤解4:「日本株は魅力がない」という考え
日本株には以下のような利点があると言われています。
- 日本語の情報収集のしやすさ:日本語のニュースやレポートが豊富で、投資家の声を聞く機会も多いので、情報収集のハードルが低い点が魅力です。
- 割安な企業が多い:日本企業は一般的に割安水準といわれるPBR(株価純資産倍率)が1倍未満となっている企業が多く、取引所から株価を意識した経営を要請されており、今後の株価改善が期待されます。
- ROE(自己資本利益率)の改善:近年、日本企業のROEは改善傾向にあり、欧米に近づきつつあると言われています。
- 長期的な上昇余地:経済専門家の中には、日本株は現水準でなお割安で、長期的な上昇余地は大きいと判断している人もいます。
日経平均株価は本当に「やばい」のか?各指標から検証
PER(株価収益率)からの分析
PERは株価が企業の利益に対してどのくらいの倍率で評価されているかを示す指標です。一般的に、PERが低いほど割安と判断されます。
東証株価指数(TOPIX)のPERは過去20年(2002年6月~2022年5月)の平均16倍に対して、12倍台で推移しているという報告もあります。これは日本株が割安である可能性を示唆しています。
PBR(株価純資産倍率)からの分析
PBRは株価が企業の純資産(簿価)に対してどのくらいの倍率で評価されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回ると、理論上は解散価値より株価が安いことを意味します。
日本企業のPBRは先進国の平均と比べてまだ低く、東証がPBR1倍割れ企業に対して是正を促していることから、今後のPBR上昇余地があると考えられています。
ROE(自己資本利益率)からの分析
ROEは株主資本に対してどれだけの利益を上げているかを示す指標です。2021年の主要指数で見るROEは日本が8%台と18%台の米国に比べて低位でした。
しかし、馬渕治好氏などの専門家は、日本企業の変化・株主還元強化、株主との対話が進んでおり、ROEは改善傾向にあると指摘しています。
日経平均株価の真の姿:「やばくない」理由を探る
理由1:歴史的に見れば暴落からの回復は必然
株式市場の歴史を振り返ると、暴落後の回復は一種の法則とも言えます。例えば、2024年8月の日本版ブラックマンデーでも、その後数日で大幅に株価が回復したと報告されています。
主な暴落時の下落率とそこからの回復までの期間は、数ヶ月から数年程度で元の水準に戻っていることが報告されています。一時的な下落に過度に反応するのではなく、長期的な視点で投資を考えることが重要と言えるでしょう。
理由2:日本企業の構造改革と株主還元強化
近年、日本企業は構造改革を進め、株主還元を強化する動きが見られます。コーポレートガバナンス・コードの導入や東京証券取引所の市場区分見直しなどを背景に、企業は株主価値を意識した経営にシフトしているようです。
これにより、配当や自社株買いなどの株主還元策が強化され、投資家にとって魅力的な環境が整いつつあると言えるでしょう。
理由3:日本への海外投資家の注目度上昇
円安とデフレによって、日本の株価だけでなく、株価、地価、物価、賃金が、国際比較で割安になってきていて、それを外国人投資家が評価し始めたという見方があります。
2024年の日経平均株価の上昇は、こうした海外投資家の日本市場への資金流入が大きく寄与していたと言われています。現在の円高傾向は一時的に輸出企業にとってマイナスとなりますが、長期的に見れば日本企業の競争力が大きく損なわれるわけではないという見方もあります。
理由4:日銀の金融政策の変化
日銀の金融政策も日本株市場に大きな影響を与えています。2024年8月の急落時には、内田日銀副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言し、市場の不安を和らげる効果があったとされています。
日銀は市場の安定性を重視する姿勢を示しており、極端な混乱を避けるための政策運営を行う可能性が高いと考えられています。これは投資家にとって一定の安心材料となるでしょう。
投資信託はやめたほうがいい?その真相
ネット上では「投資信託はやめたほうがいい」という声も見られますが、これにはいくつかの誤解が含まれているようです。
投資信託の欠点とされる点
投資信託をやめたほうがいい理由として以下のような点が挙げられています。
- 元本保証ではない:投資信託は国内外の株式や債券などに投資し、市場で取引されているため日々値動きがあります。金融ショックが起こると損失が生じる場合もあります。
- 保有コスト:購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額などの手数料がかかります。特に信託報酬は保有期間中に日々必要となる経費です。
- 短期的な収益を期待できない:投資信託は短期で資金を引き出す予定のお金の運用には向いていないとされています。
投資信託のおすすめポイント
一方で、投資信託には以下のような利点もあります。
- 分散投資の容易さ:少額から多数の銘柄に分散投資できるため、リスク分散が容易です。
- 専門家による運用:投資家から集めたお金を、資産運用の専門家がまとめて運用するため、個人では難しい銘柄選定や運用の手間を省けます。
- NISA活用の有効性:新NISAなどを活用して長期的に安定した投資を目指す場合におすすめと言われています。
- 日本経済への貢献:日経平均株価への投資は日本企業への応援にもなります。日本企業が成長することで身の回りのサービスが良くなったり、地域経済にも貢献できるようになるという側面もあります。
日経平均株価の今後の見通しと投資戦略
短期的な見通し
専門家によれば、来週(4月7日〜11日)の日経平均株価の予想レンジは、3万1000〜3万4000円と予想されています。トランプ関税問題の動向や米国の経済指標によって大きく変動する可能性があるようです。
短期的には不安定な動きが続く可能性がありますが、パニック売りによる過度な下落は徐々に修正される可能性もあるとされています。
中長期的な見通し
中長期的には、日本株の割安さと構造改革の進展が評価され、上昇トレンドを維持する可能性が高いと言われています。一部の経済アナリストは、日経平均株価が2025年末には4万3,000円まで上昇すると予想していました。
現在の下落は、そうした上昇トレンドの中での調整局面と捉えることもできるでしょう。
おすすめの投資戦略
現在の市場環境において、以下のような投資戦略が専門家から提案されています。
- 積立投資の継続:一時的な下落に動じず、長期的な視点で積立投資を継続することが重要とされています。
- 分散投資:日経平均株価だけでなく、TOPIXやグローバル株式インデックスなど、複数の指数に分散投資することでリスクを抑えることができます。
- 暴落時の買い増し検討:資金に余裕がある場合、暴落時は長期的な投資機会と捉え、買い増しを検討するという選択肢もあります。
- 長期保有の視点:日本株においては特に、短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、5年、10年といった長期的な視点で投資することが重要とされています。
まとめ:日経平均株価は「やばい」のか?
2025年4月の日経平均株価の下落は確かに大きく、不安を感じる投資家が多いことは理解できます。トランプ大統領の関税政策や円高進行など、複数の要因が重なり、短期的には厳しい市場環境となっています。
しかし、長期的な視点で見ると、日本株には以下のような理由から投資機会があるとも考えられます。
- 日本企業のPBRは先進国平均と比べてまだ低く、割安感がある
- 企業のROE改善や株主還元強化の流れが続いている
- 過去の暴落からも市場は回復し、長期的には上昇トレンドを維持している
- 日本企業の構造改革と株主価値向上への取り組みが進んでいる
株式投資においては、短期的な変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で投資判断を行うことが重要です。「日経平均株価がやばい」というネット上の評判は、短期的な視点からの見方であり、長期投資の観点からは必ずしも正確ではないと言えるでしょう。
むしろ、現在の調整局面は長期投資家にとって投資機会を提供している可能性もあります。適切なリスク管理と分散投資を行いながら、長期的な成長を目指す投資戦略が、現在の市場環境ではおすすめと言えるのではないでしょうか。
2021年に前野里沙氏が『日本経済新聞』で述べたように、「短期的な株価の動きに一喜一憂するのではなく、企業の本質的な価値に着目した投資姿勢が重要」なのかもしれません。日経平均株価の短期的な変動に惑わされず、冷静な判断で投資を続けることが、長期的な資産形成の鍵となるでしょう。
