「eMAXIS Slim」は”おすすめしない”といわれているのはなぜ?


”eMAXIS Slimはヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します
本当に”やばい”のか、eMAXIS Slimのデメリットとメリットから真相に迫る
eMAXIS Slimについてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。新NISAの開始と共に注目を集めるeMAXIS Slimシリーズですが、「おすすめしない」という声もネット上で見かけることがあります。本当にデメリットだらけの投資信託なのでしょうか?それとも誤解から生じた評判なのでしょうか?三菱UFJ国際投信が運用するこの人気ファンドの実態について、客観的な視点で分析していきます。
eMAXIS Slimとは?基本情報の整理
eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)は、三菱UFJ国際投信が運用しているインデックスファンドシリーズです。業界最低水準の運用コストを目指し、国内外のさまざまな資産に投資できる多彩なラインナップが特徴です。特に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、新NISA制度開始後に非常に人気を集めている商品と言われています。
現在、eMAXIS Slimシリーズは全15種類あり、株式型、債券型、リート型、バランス型の4つのカテゴリーに分類されています。特に注目を集めるeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は2025年1月時点で純資産総額が6兆7908億円にも達し、過去最大の純資産総額を更新したと報告されています。
「おすすめしない」と言われる理由とは?
ではなぜ、これほど人気のファンドでありながら「おすすめしない」という評判があるのでしょうか?検索結果から浮かび上がってくる主なデメリットを見ていきましょう。
1. 投資先の偏り – 分散のようで実は集中投資?
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、全世界に分散投資をするように見えて、実際には投資先が偏っているという欠点があるようです。「全世界」と銘打っていますが、現在の投資比率を見ると、アメリカが62.1%を占めており、実質的にはアメリカ株に大きく依存していると言われています。
国・地域別の投資比率を見ると、以下のような状況です。
- アメリカ:62.1%
- 日本:5.5%
- イギリス:3.3%
- フランス:2.8%
- カナダ:2.6%
- スイス:2.2%
- ドイツ:2.0%
- インド:1.7%
- オーストラリア:1.7%
- 台湾:1.6%
「これでは実質的に米国株に投資しているのと大差はありません」という意見も見られます。特に、アメリカ経済に何か問題が発生した場合、ポートフォリオ全体が大きな打撃を受ける可能性があるということが、やめたほうがいいと考える理由の一つのようです。
2. 為替リスクの影響が大きい
次に指摘されているデメリットは、為替リスクの問題です。eMAXIS Slim S&P500やオルカンは為替ヘッジを行っていないため、円高になると資産価値が目減りするリスクがあるとされています。
例えば、S&P500のドル建てチャートと円建てチャートを比較すると、最高値からの下落率に大きな違いがあります。
- ドル建てチャートの下落率:約8.5%
- 円建てチャートの下落率:17.9%
このように、為替の変動によって実際の運用成績が大きく左右されるため、「今後円高に向かうと考えている方にとっては、eMAXIS Slimは魅力的ではない可能性があります」という指摘があります。
3. アクティブ運用派には物足りない
eMAXIS Slimシリーズは、基本的にはパッシブ運用(市場平均のパフォーマンスに追従する運用方法)を行っています。そのため、市場平均を上回るリターンを積極的に狙うアクティブ運用を好む投資家にとっては、物足りなく感じられるかもしれません。
アクティブ運用とは、運用者自身の分析と予測に基づいて市場平均を上回るリターンを目指す運用手法です。一方、eMAXIS Slimのようなパッシブ運用は、指標(インデックス)に連動することを目指すものです。より積極的に高いリターンを追求したい投資家にとっては、やばいと感じる部分かもしれません。
4. 短期的な利益には不向き
eMAXIS Slimは長期投資を前提とした商品設計になっており、短期間で大きな利益を得るには向いていないとされています。インデックス運用の特性上、市場全体の成長に連動するため、短期間での爆発的なリターンは期待できません。
短期的な利益を求める投資家にとっては、やめとけと言われる理由の一つかもしれません。
eMAXIS Slimの良い評判と利点
一方で、eMAXIS Slimには多くの利点があり、ネット上では好意的な評価も多く見られます。
1. 業界最低水準の運用コスト
eMAXIS Slimの最大の魅力は、業界最低水準の運用コスト(信託報酬)です。例えば、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬は2025年1月25日より0.09372%から0.08140%に引き下げられました。
インデックスファンドにおいては、運用コストが低いほど長期的なリターンに好影響を与えます。eMAXIS Slimシリーズは定期的に信託報酬の引き下げを行っており、「常に最もお得に運用できる銘柄であり続ける」方針を持っていると言われています。
また、「受益者還元型信託報酬」という仕組みも採用しており、純資産総額が増えるほど信託報酬が安くなるという仕組みがあります。例えば、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の場合:
- 1兆円未満の部分:0.08140%
- 1兆円以上3兆円未満の部分:0.077%
- 3兆円以上5兆円未満の部分:0.07590%
- 5兆円以上10兆円未満の部分:0.07579%
- 10兆円以上の部分:0.07568%
このように、スケールメリットを活かした運用が可能になっています。
2. 純資産総額の増加によるメリット
eMAXIS Slimシリーズは純資産総額が右肩上がりで増加しています。例えば、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は6兆7908億円、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は5兆4055億円の純資産総額に達しています。
純資産総額が大きいファンドには以下のようなメリットがあります。
- 繰上償還のリスクが小さくなる
- スケールメリットによって今後も信託報酬が引き下がる可能性がある
大きな資金を運用することで、取引コストの削減やより効率的な運用が可能になるため、投資家にとっては大きなおすすめポイントと言えるでしょう。
3. 優れたトラッキングエラー
eMAXIS Slimシリーズは、ベンチマーク(指数)との乖離(トラッキングエラー)が相対的に小さいことが評価されています。インデックスファンドにとって、トラッキングエラーが小さいことは優秀な証と言われています。
トラッキングエラーとは、インデックスファンドがベンチマークの動きをどれだけ正確に追従できているかを示す指標です。eMAXIS Slimシリーズは同じカテゴリー内でも相対的にトラッキングエラーが小さく、効率的な運用が行われていると言えるでしょう。
4. 充実したラインナップ
eMAXIS Slimシリーズは全15種類のファンドを提供しており、国内外の株式、債券、リート、バランス型など幅広い投資対象をカバーしています。これにより、投資家は自分の投資スタイルや目標に合わせて選択することができます。
特に投資初心者にとっては、選択肢が多いことはやばくないと言えるでしょう。自分のリスク許容度や投資目標に合わせてファンドを選べるため、より柔軟な資産形成が可能になります。
eMAXIS Slimシリーズの主要ファンド比較
eMAXIS Slimシリーズの中でも特に人気の高い2つのファンド、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の特徴を比較してみましょう。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のメリット・デメリット
メリット:
- 銘柄に加え、投資地域の両面で分散投資することで、価格変動リスクを抑えやすい
- アメリカや他の先進国に加え、これから経済成長する新興国などの成長も取り込んで資産運用できる
デメリット:
- 投資地域の分散がされているとはいえ、60%は米国に集中している
- 特定の地域の好景気がファンドの運用成績に反映しづらい
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)のメリット・デメリット
メリット:
- 米国が世界経済の中心でいるメリットを全面的に享受できる
- 米国は先進国ながら人口も増え続けているので、今後の経済成長も期待できる
デメリット:
- 投資地域の分散ができていないため、相対的に価格変動リスクが大きい
- 世界経済の中心がアメリカではなくなった場合のリスクヘッジが効かない
実は、この2つのファンドはよく似ているという指摘もあります。eMAXIS Slim オルカンの約60%は米国株式が占めているため、値動きはほぼ同じになる傾向があるようです。違いとしては、eMAXIS Slim オルカンのほうが値動きの幅が少し小さく、eMAXIS Slim S&P500のほうが少し大きくなる程度と言われています。
どんな人に相性が良いのか?
eMAXIS Slimシリーズは、特に以下のような投資家と相性が良いとされています。
- 低コストで運用したい人:信託報酬のパーセンテージは長期投資では非常に重要です。0.1%の違いでも長期運用では大きな差となります。eMAXIS Slimシリーズの低コストは大きな魅力です。
- 気苦労少なく運用したい人:eMAXIS Slimシリーズは幅広く分散投資が可能で、価格変動リスクを抑えつつ、着実に利益を積み上げることができます。
- 成長性を重視したい人:特にeMAXIS Slim オルカンやS&P500は、GAFAMをはじめとするビッグテック企業による成長の恩恵を受けられます。また、米国は先進国の中では人口増加が続いている数少ない国であり、経済成長が期待できます。
一方で、以下のような投資家には相性が悪い可能性があります。
- 米国の成長性に疑いを持っている人:覇権国家としての米国にも様々な問題があります。経済格差の拡大や思想の分断が進み、米ドルの基軸通貨としての地位も危うくなっているという見方もあります。そのような状況で60%や100%という高い比率で米国に投資することに不安を感じる人には、他の資産クラスへの分散投資も検討すべきでしょう。
- もっと大きなリターンを得たい人:インデックスファンドは市場平均以上のリターンを得ることはできません。より高いリターンを求める投資家は、新興国集中投資やグロース株投資など、リスクは高いものの潜在的リターンも大きい選択肢も検討すべきかもしれません。
eMAXIS Slimに関するよくある質問と回答
ネット上ではeMAXIS Slimに関する様々な疑問が見られます。代表的なものをいくつか紹介します。
eMAXISとeMAXIS Slimの違いは?
三菱UFJ国際投信にはeMAXISシリーズとeMAXIS Slimシリーズの2種類があります。運用会社とファンドの中身は同じですが、販売体系が異なります。eMAXISシリーズは店舗型の窓口販売で購入でき、eMAXIS Slimシリーズはネット証券やネット銀行で購入できるという違いがあります。
人件費や店舗管理費などのコストがかかるeMAXISシリーズの方が運用コスト(信託報酬)が高く、ネットで購入できるeMAXIS Slimシリーズは運用コストが低いという特徴があります。
eMAXIS Slimシリーズは分配金が出るファンドですか?
この点については、検索結果からは明確な回答が得られませんでしたが、一般的にeMAXIS Slimシリーズは分配金再投資型のファンドが多いとされています。
eMAXIS Slimシリーズは全てつみたて投資枠の対象商品ですか?
eMAXIS Slimシリーズは全15種類中9種類がつみたてNISA対象商品となっています。
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
- eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
- eMAXIS Slim 先進国株式(含む日本)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
- eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
eMAXIS Slimと他のインデックスファンドの比較
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と同じS&P500指数に連動する他のファンドと比較してみましょう。
銘柄名/信託報酬 | トータルリターン(1年) | トータルリターン(3年) |
---|---|---|
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) /0.08140% | 16.10% | 21.61% |
たわらノーロード S&P500 /0.09372% | 16.02% | – |
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド /0.0938% | 16.11% | 21.54% |
iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド /0.0938% | 16.06% | 21.44% |
iFree S&P500インデックス /0.198% | 15.91% | 21.43% |
つみたて米国株式(S&P500) /0.22% | 15.94% | 21.45% |
NZAM・ベータ S&P500インデックス /0.22% | 15.81% | 21.32% |
Smart-i S&P500インデックス /0.242% | 15.81% | 21.21% |
このように、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は低い信託報酬を維持しながらも、トータルリターンでは優れたパフォーマンスを示しています。信託報酬が低いことが長期的なリターンに直結することが分かります。
「おすすめしない」という評判は本当か?真相
ここまでeMAXIS Slimシリーズのデメリットと利点を見てきましたが、「おすすめしない」という評判は本当なのでしょうか?
実際には、eMAXIS Slimシリーズは多くの投資家にとって非常におすすめの投資信託と言えるでしょう。特に以下のような点が評価されています。
- 業界最低水準の運用コスト:長期投資において、コストは非常に重要な要素です。eMAXIS Slimシリーズは業界最低水準の信託報酬を維持し、さらに引き下げる努力を続けています。
- 豊富なラインナップ:15種類の多様なファンドから選ぶことができ、投資家のニーズに合わせた柔軟な投資が可能です。
- 高い運用実績:トラッキングエラーが小さく、ベンチマークにしっかりと追従する優れた運用実績を持っています。
- 純資産総額の増加:多くの投資家から支持されており、純資産総額の増加によってさらなるコスト削減や運用効率の向上が期待できます。
ネット上で「おすすめしない」という評判があるのは、一部のデメリットが過大に評価されている可能性があります。例えば、
- 「投資先が偏っている」という指摘については、全世界株式ファンドであっても米国企業が世界の時価総額の大部分を占めている現実を反映したものであり、必ずしもネガティブな要素ではありません。
- 「為替リスク」については、グローバル投資においては避けられない要素であり、長期投資の観点では短期的な為替変動は均されていく傾向があります。
- 「アクティブ運用と相性が悪い」という点は、むしろパッシブ運用の特性であり、長期的には多くのアクティブファンドがインデックスに負けるという研究結果もあります。
結論:eMAXIS Slimは多くの投資家におすすめの選択肢
eMAXIS Slimシリーズは、長期的な資産形成を目指す投資家、特に投資初心者にとって非常に優れた選択肢と言えるでしょう。低コスト、優れた運用実績、豊富なラインナップなど、多くの利点を持っています。
もちろん、すべての投資家に完璧に合うファンドは存在せず、eMAXIS Slimシリーズにも一定のデメリットはあります。しかし、それらのデメリットは多くの投資家にとって許容範囲内であり、長期的な資産形成という目的においては、そのメリットがデメリットを大きく上回ると考えられます。
ネット上の「おすすめしない」という評判は、特定の投資スタイルや短期的な視点からの評価である可能性が高く、長期的な資産形成を目指す多くの投資家にとっては、eMAXIS Slimシリーズは依然として非常におすすめの選択肢と言えるでしょう。
投資は自己責任で行うものですが、eMAXIS Slimシリーズは、その低コストと優れた運用実績から、長期投資における有力な選択肢の一つとして、今後も多くの投資家から支持され続けるものと思われます。
参考にする際は、自分の投資目標やリスク許容度に合わせて、最適なファンドを選択することをお勧めします。
