個別株に投資するのは”やめとけ”といわれているのはなぜ?

個別株に投資するのは”やめとけ”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”個別株はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します

個別株投資は本当に”やばい”のか、デメリットとメリットから真相に迫る

個別株投資についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。「個別株はやめとけ」というフレーズをSNSや投資関連のサイトで目にする機会が増えていますが、これは本当に正しい助言なのでしょうか。それとも誤解や偏った見方から生まれた言説なのでしょうか。今回は、個別株投資に対する批判的な意見と肯定的な意見の両方を検証し、投資初心者の方が適切な判断を下せるよう、客観的な情報をお届けします。

個別株が「やめとけ」と言われる主な理由

1. リスクの高さ

個別株投資はリスクが高いため「やめとけ」という意見が多く見られます。個別株投資では特定企業に依存するため、その企業の業績悪化や不祥事があると株価の下落をまともに受けてしまいます。

例えば、景気後退や金融危機が発生した場合、個別株の価格は大きく下落するリスクがあります。また、流動性が低い銘柄は、希望するタイミングで売却できずに損失が出やすくなる傾向があるようです。

2. 分散投資の難しさ

個別株投資のリスクを軽減するためには分散投資が重要ですが、個人投資家にとって適切な分散を実現することは容易ではありません。

検索結果によると、株式投資における分散効果は20銘柄程度で薄れてくると言われていますが、個人が20銘柄以上の個別株を適切に管理するのは難しいとされています。また、銘柄の分散だけでなく、業種、時価総額、地域による分散なども考慮する必要があり、幅広い知識が求められます。

3. 銘柄選びの難しさ

個別株投資で成功するためには、値上がりする可能性が高い銘柄を見つける必要がありますが、これは非常に難しいと言われています。

多くの個人投資家は、ネットニュースやSNSなどで「億を稼いだ」などの成功例を見て個別株投資に興味を持ちますが、実際にそのような大成功を収める人は本当に一握りだけだと言われています。

4. 売買タイミングの見極めの難しさ

個別株投資では、いつ買って、いつ売るかの判断が重要です。しかし、この売買タイミングを見極めることは非常に難しいと言われています。

特に、個人投資家は心理的な影響を受けやすく、ニュースや市場心理に惑わされて冷静な判断ができなくなりがちです。これにより、高値で買い、安値で売るという最悪のシナリオに陥るリスクがあります。

5. 情報収集と分析の負担

個別株投資では、企業のビジネスモデルや業績を分析して自分で投資先を決めなければならないため、時間と労力がかかります。

投資信託はプロに任せられるので「ほったらかし」でも大丈夫な面がありますが、個別株投資の場合は投資した後も決算やIRニュースのチェックなどのフォローが欠かせないと言われています。

6. 心理的ストレス

個別株投資は、価格変動によって大きな心理的ストレスやプレッシャーを感じることがあります。

株価が下落すると冷静な判断ができなくなり、「底値だから買い増し」といった感情的な判断をしがちです。また、含み損を抱えていると精神的に辛い状態が続くこともあるようです。

7. インデックスに勝てない現実

多くの研究によれば、長期的には個別株投資でインデックス(市場平均)のリターンを上回ることは非常に難しいと言われています。

個別株を通じて市場平均以上の高いリターンを狙うことはできますが、リスクも比例して高くなるため、リスク調整後のリターンでは必ずしも優位とは言えないようです。

8. 相続の複雑さ

個別株投資は相続時の手続きが複雑になる可能性があります。

複数の銘柄を保有している場合、相続手続きが煩雑になりやすいため、家族に負担をかけたくない人にとっては欠点となりえます。

個別株投資の失敗事例:アキュセラ大暴落

個別株投資の危険性を示す具体的な事例として、2016年に多くの投資家を泣かせたアキュセラ・インク(当時の証券コード:4589、現在は上場廃止)の事例があります。

アキュセラ・インクは眼疾患治療薬を開発するバイオベンチャーで、2016年1月に1,000円程度だった株価が3か月で3倍近くにまで上昇していました。多くの投資家が「加齢黄斑変性という、加齢に伴う失明の可能性もある難病の治療薬の開発」という将来性に期待して投資していたようです。

しかし、2016年5月25日の後場に株価が急落し、翌26日には「主要評価項目を達成するには至らなかった」、つまり「新薬開発が頓挫した」という予定外の発表がありました。これにより、アキュセラ・インク株は6営業日連続のストップ安という大暴落を記録したとのことです。

この事例は、個別株、特にバイオベンチャーのような新薬開発に取り組む企業への投資がいかにリスクが高いかを示しています。期待していた新薬の開発が失敗したという一報で、株価が一気に暴落してしまうというリスクがあるのです。

個別株投資のメリットと良い評判

しかし、個別株投資には「やめとけ」と言われるほどのデメリットだけでなく、魅力的なメリットも存在します。以下では個別株投資の良い評判やメリットについて見ていきましょう。

1. 大きなリターンを得られる可能性

個別株投資の最大のメリットは、大きく儲けられるチャンスがあることです。個別株であれば、1年程度で倍以上株価が上がる場合もあります。

指数に連動するインデックス投資では得られないような高いリターンを狙えるという点は、個別株投資の大きな魅力と言えるでしょう。

2. 株主優待がもらえる

日本の個別株投資の魅力の一つに、株主優待があります。これは投資信託では得られない個別株投資ならではのメリットです。

株主優待には、自社製品や割引券、商品券などさまざまな種類があり、これを目的に投資する「株主優待投資」という投資スタイルを取る投資家も少なくないようです。

3. 信託報酬のようなコストがかからない

個別株投資では、投資信託でかかる「信託報酬」のような継続的なコストがありません。

投資信託の信託報酬は年間0.5%〜2.0%程度と決して少なくない負担になりますが、個別株の現物取引では購入時の手数料だけで、保有し続ける限りは追加コストが発生しません。長期保有を前提とする場合、このコスト面でのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

4. 売買の柔軟性が高い

個別株投資では、自分で板を見ながらタイミングを見計らった注文が出せるという柔軟性があります。

投資信託は1日1回算出される基準価額で取引する必要があり、リアルタイムでの売買ができませんが、個別株ならば市場が開いている時間内であればいつでも売買可能です。

5. 自分で銘柄を選ぶ自由度

個別株投資の最大の長所は、どの銘柄を保有するか、各銘柄をどのようなウェートで保有するかを自分で決められることです。

インデックス投資をはじめとする他人に運用を委託する投資では、不本意な銘柄のポートフォリオを保有しなければならないことがありますが、個別株投資ではそのような心配がありません。

6. 趣味として楽しめる

個別株投資は「趣味として面白い」という側面もあります。企業分析や株価のチェックといった活動は、単なる金銭的リターンを超えた知的好奇心を満たす楽しみがあるようです。

ある専門家は「証券会社を退職した後に、個別株投資を『老後の趣味』の一つにするつもりで楽しみにしている」と述べています。

個別株投資はやばくない?実際の調査結果

ここまで個別株投資の「やめとけ」と言われる理由とメリットを見てきましたが、実際の投資家の声はどうなのでしょうか。

SBI証券の利用者に対するアンケート調査によると、多くの利用者が個別株取引に対して肯定的な評価をしています。例えば、「手数料がいらないから本当にありがたいしデータも分かりやすく優待配当情報も明確なので今後の計画立てやすく毎日楽しんでます」という50代女性の声や、「コスト面で選びました。一度の株取引にかかる手数料が、一日10万円以内であれば、何度取引しても合計103円で済みます」という30代男性の声があります。

また、「スマホは非常に操作しやすく、取り扱っている株が多いです。それに手数料も非常に安くて助かっております」という40代男性の声もあります。

これらの声を見ると、個別株投資は「やばい」投資手法ではなく、コスト面や操作性、情報の分かりやすさなどの点で利点があると感じている投資家が多いことがわかります。

個別株投資と投資信託の使い分け戦略

個別株投資と投資信託はそれぞれ長所と短所があり、どちらかだけを選ぶのではなく、両者を使い分けるという戦略も有効です。

ある投資家は「日本株は個別株」、「米国株は投資信託」と分けて投資を行っているそうです。日本株については成長性の高い個別株中心に投資し、株主優待目的の株も保有しているとのこと。一方、米国株については長期的に右肩成長が続いていることから「S&P500」や「NASDAQ100」に連動する投資信託を保有しているとのことです。

米国株に関しては「決算書を理解するのが難しい」「夜間に株価をチェックするのが大変」「優待がもらえない」などの理由から個別株投資は控えているという例も紹介されています。

このように、自分の投資目的や運用方法に応じて、個別株投資と投資信託を使い分けることも一つの方法とされています。

初心者に人気の個別株デビュー銘柄

では、個別株投資を始めようと考えている初心者はどのような銘柄を選べばよいのでしょうか。楽天証券の調査によると、初めて日本株を取引した人たちのデビュー銘柄ランキングでは、以下のような銘柄が人気のようです。

  1. ソフトバンク(9434)
  2. 日本電信電話(9432)
  3. JX金属(5016)
  4. 楽天グループ(4755)
  5. オリエンタルランド(4661)
  6. ヤマダホールディングス(9831)
  7. NF日経高配当50(1489)
  8. 三菱UFJフィナンシャルG(8306)
  9. トヨタ自動車(7203)
  10. メタプラネット(3350)

これらの銘柄は知名度が高く、日常生活でも身近な企業が多いことが特徴です。また、初心者にとっては業績が安定していて配当利回りが高い銘柄や、将来性が期待できる成長株などが人気のようです。

ミニ株はおすすめしないのか?

個別株投資を少額から始める方法として「ミニ株」がありますが、これについても「おすすめしない」という意見があります。そのデメリットとしては以下のような点が挙げられています。

  1. 取引できる証券会社や銘柄が限られる
  2. リアルタイムで取引できない
  3. 指値注文ができない
  4. 手数料が割高になりやすい
  5. 議決権や株主優待が受けられないことが多い
  6. 少額で手軽に始められる分、無計画な売買とずさんな運用管理をしてしまいがち

一方で、ミニ株には以下のようなメリットもあります。

  1. 少額で取引できる
  2. 分散投資しやすい

SBI証券では1株から株を購入できるため「少額から始めたい初心者に良い」という良い評判・口コミが集まっているようです。

個別株投資のおすすめの始め方

個別株投資に挑戦してみたいと思っても、「やめとけ」という声に躊躇している方もいるかもしれません。しかし、以下のような方法で始めれば、リスクを最小限に抑えながら個別株投資の利点を活かすことができるでしょう。

1. 少額から始める

いきなり大金を投じるのではなく、自分が損失を許容できる範囲の資金で始めることが重要です。SBI証券などでは1株から購入できるサービスもあるので、少額から始めることも可能です。

2. 分散投資を心がける

1つの銘柄に集中投資するのではなく、複数の業種や銘柄に分散して投資することでリスクを軽減できます。ただし、分散しすぎると管理が難しくなるので、初心者は5〜10銘柄程度から始めるのが良いでしょう。

3. 長期投資の視点を持つ

短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期的な成長性や配当などに着目して投資することが重要です。「デイトレード」のような短期売買は高度なスキルが必要なので、初心者は避けた方が無難かもしれません。

4. 情報収集の習慣をつける

投資対象企業の決算情報やニュース、業界動向などを定期的にチェックする習慣をつけることが大切です。ただし、SNSやネット掲示板の情報は偏っている可能性があるので、鵜呑みにしないよう注意が必要です。

5. インデックス投資と併用する

個別株投資だけでなく、インデックス投資も併用することで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えながら、個別株投資の楽しさや高いリターンの可能性も享受できます。例えば、資産の7〜8割をインデックス投資に、残りを個別株投資に配分するという方法が考えられます。

口コミは参考にしつつも自分で判断を

近年、投資判断において口コミやレビューを参考にする人が増えています。ある調査によると、約8割もの人が商品選びの際に商品レビューを参考にしているとのことです。

口コミやレビューは実際の利用者の生の声として貴重な情報源ですが、投資の世界では個人の投資目的や資金状況、リスク許容度などによって最適な方法は異なります。そのため、他人の評価や意見は参考程度にとどめ、最終的には自分自身で判断することが重要です。

また、クチコミマーケティングに関する研究によると、ポジティブな内容のレビューが71.4%と半数以上を占め、ネガティブな内容のレビューは12.6%程度となっているそうです。つまり、ネガティブな口コミは少数派である可能性が高いことも覚えておく必要があるでしょう。

個別株投資のリスクヘッジ方法

個別株投資にはリスクがあることは間違いありませんが、以下のような方法でリスクをヘッジすることが可能です。

1. 複数の業種に分散する

特定の業種に集中して投資すると、その業種全体が不振に陥った場合に大きな損失を被る可能性があります。異なる業種の銘柄に分散投資することで、このリスクを軽減できます。

2. 大型株と中小型株のバランスを取る

大型株は比較的安定していますが、爆発的な成長は期待しにくい面があります。一方、中小型株は変動が大きいものの、大きな成長の可能性を秘めています。両者をバランスよく組み合わせることで、安定性と成長性の両立を図ることができます。

3. 配当株を組み入れる

株価が下落してもある程度の配当が期待できる銘柄を組み入れることで、トータルリターンの安定化を図ることができます。NF日経高配当50(1489)などのETFも、配当重視の投資家には人気があるようです。

4. ドルコスト平均法を活用する

一度に大きな金額を投資するのではなく、定期的に一定額を投資していく「ドルコスト平均法」を活用することで、価格変動リスクを軽減できます。SBI証券などではクレジットカードを使った積立投資も可能で、ポイントも貯まるとして好評のようです。

NISAを活用した個別株投資

2024年から新NISAが始まり、個別株投資にも活用できます。新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」がありますが、個別株投資は「成長投資枠」で行うことになります。

SBI証券のNISAに関する良い評判としては、「NISA口座の使いやすさ」や「NISAで購入できる銘柄の多さ」などが挙げられているようです。

NISAを活用することで、個別株投資で得た利益に対する税金(通常は約20%)を非課税にできるため、長期的な資産形成に大きなメリットがあります。特に、高配当銘柄や成長期待の高い銘柄をNISA枠で保有することで、税引後のリターンを最大化することができるでしょう。

結論:個別株投資は「やめとけ」ではなく「知って取り組め」

ここまで個別株投資が「やめとけ」と言われる理由と、実際のメリット・良い評判について検証してきました。確かに個別株投資にはリスクや難しさがありますが、だからといって完全に「やめとけ」というわけではないようです。

むしろ、以下のような点を理解した上で取り組めば、個別株投資は資産形成の有効な手段になりうると考えられます。

  1. リスクとリターンのバランスを理解する
  2. 自分の投資目的やリスク許容度に合わせた戦略を立てる
  3. 分散投資でリスクを軽減する
  4. 長期的な視点で投資する
  5. 継続的に学び、情報収集を怠らない

個別株投資は「やばい」投資方法ではなく、正しい知識と戦略を持って取り組めば、インデックス投資では得られない高いリターンや株主優待などの利点を享受できる魅力的な投資手法と言えるでしょう。

もちろん、全ての人に個別株投資が向いているわけではありません。時間や労力をかけられない方や、株価変動に対して心理的なストレスを感じやすい方には、インデックス投資の方が向いているかもしれません。

最終的には、「やめとけ」「おすすめ」といった他人の評価に惑わされず、自分自身の状況や目標、性格に合った投資方法を選択することが重要です。投資は自己責任で行うものですから、十分な知識を身につけ、慎重に判断することをおすすめします。

まとめ:個別株投資を成功させるためのポイント

最後に、個別株投資を成功させるためのポイントをまとめます。

  1. 少額から始める:いきなり大金を投じるのではなく、少額から始めて徐々に経験を積む
  2. 分散投資を心がける:複数の業種や銘柄に分散して投資し、リスクを分散させる
  3. 長期投資の視点を持つ:短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な成長性に着目する
  4. 情報収集の習慣をつける:投資対象企業の情報や業界動向を定期的にチェックする
  5. インデックス投資と併用する:資産の一部をインデックス投資に配分し、ポートフォリオ全体のリスクを抑える
  6. 税制優遇制度を活用する:NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用して税引後のリターンを最大化する
  7. 自分の投資スタイルを確立する:他人の真似ではなく、自分に合った投資スタイルを見つける

個別株投資は、正しい知識と戦略を持って取り組めば、資産形成の有効な手段になります。「やめとけ」という声に惑わされず、しっかりと学び、自分自身で判断することが大切です。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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