金投資信託は”おすすめしない”といわれているのはなぜ?

金投資信託は”おすすめしない”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”金投資信託はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します

本当に金投資信託は”やばい”のか、デメリットとメリットから真相に迫る

金投資信託についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。「手数料が高すぎる」「おすすめしない」といった否定的な意見がある一方で、「少額から始められる」「保管の手間が省ける」といった肯定的な声も見受けられます。本記事では、これらの評判の背景にある事実と誤解を整理し、金投資信託が本当に「やめたほうがいい」のか、それとも効果的な投資手段となり得るのかを多角的に検証していきます。

金投資信託とは?基本を理解する

金投資信託とは、投資家から集めた資金をもとに、金や金関連資産に投資する投資信託です。金の現物を直接保有するのではなく、金価格に連動するように運用される商品が一般的です。

主に以下の2つのタイプがあります。

金価格連動型のファンド:金の現物価格に連動するように設計されたもの 金鉱株ファンド:金を採掘する企業の株式に投資するもの

金は古くから安定した価値を持つ「安全資産」として認識されており、インフレ対策や資産分散の手段として注目されています。投資信託という形で金に投資することで、現物を直接購入する場合とは異なるメリットとデメリットがあるようです。

なぜ「やめとけ」「おすすめしない」と言われるのか?

金投資信託について否定的な意見が広がる背景には、いくつかの理由があるようです。ここではそれらを詳しく見ていきましょう。

1. 手数料が高いと言われている

金投資信託に対する批判の最も大きな理由の一つが、手数料の高さです。投資信託には信託報酬や管理費用がかかります。これにより、金の現物やETFと比較して、長期的にはリターンが目減りする可能性があると指摘されています。

たとえば「三菱UFJ国際-三菱UFJ 純金ファンド」という投資信託では、信託報酬が年率0.99%程度かかります。一方、SBI証券で販売金額ランキング1位である「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の信託報酬は年率0.0938%です。この差は長期運用において大きな影響を与える可能性があります。

また、eMAXISSlim米国株式(S&P500)の信託報酬は0.0968%ですが、金投資信託のSmart-iゴールドファンド(為替ヘッジなし)では0.2750%と約3倍の開きがあるのです。

金ETFの管理費用(信託報酬含)は概ね0.5%~2%強と銘柄によって負担が異なりますので注意が必要です。仮に運用によって利益が出たとしても、手数料によって実質的な利回りが大きく下がってしまう可能性があります。

2. インカムゲインが期待できない

金は資産保全の手段としては優れていますが、株式や債券のような配当金や利息は生み出しません。金投資信託を長期保有しても、インカムゲインを得ることはできないという点が「やばい」と言われる理由の一つのようです。

金投資信託は、配当や利子収入を発生しないため、インカムゲインを望む投資者には不向きです。金は物理的な資産であり、保有するだけでは利益を生み出しません。株式や債券のように定期的な収入を得られる資産とは異なり、価格の上昇を待つしかないため、収益性を重視する投資家や投資戦略には合わないでしょう。

銀行預金であれば少ないながらも利息が発生し、株式投資なら配当金を受け取ることができますが、金はそれ自体が金銭を生み出す資産ではないため、インカムゲインを期待することはできません。

3. 金そのものを保有しない

金投資信託では、現物の金を保有するわけではありません。これにより、物理的な金の所有に伴う「安心感」や「資産の実体」を得られないため、金投資のメリットが薄れると感じる人もいるようです。

実物資産としての金の特性を重視する投資家にとっては、この点がデメリットとなり得ます。金の現物を直接所有することで得られる安心感や、有事の際の換金性などが失われる可能性があると言われています。

4. 価格の動きが複雑になる

金価格に連動するファンドであっても、必ずしも現物価格と完全に一致するわけではありません。運用コストや為替変動の影響を受け、金価格と乖離する場合があるようです。

これにより、投資家が期待するパフォーマンスが得られない可能性があり、「おすすめしない」という評価につながっていると考えられます。特に為替ヘッジの有無によって運用結果が大きく変わることもあるようです。

5. 短期間での利益を期待しにくい

金投資信託は、一般的に短期間での売買には適していないと言われています。投資信託では「基準価額」と呼ばれる1口あたりの値段が1日1回計算されるため、リアルタイムで値段をチェックして短時間で売買を繰り返すのには向いていないようです。

デイトレードのように数時間単位の売買で儲けを出したい方には適していないという指摘があります。この点から、短期的な利益を求める投資家にとっては「やめとけ」と言われる理由となっているようです。

6. つみたてNISAを利用できない

投資信託を毎月一定額購入して積み立てていく場合、非課税制度の一種であるつみたてNISAを利用できることがありますが、金の投資信託では利用できないことが多いようです。

つみたてNISAの対象は、金融庁の定めた基準をクリアした公募投資信託と上場投資信託(ETF)に限られており、金の投資信託は対象外となっているケースが多いと言われています。これにより、税制上のメリットを享受できないという欠点があります。

投資信託に関するよくある誤解

金投資信託についての評価を正確に行うためには、投資信託そのものに関する誤解を解消することも重要です。以下によくある誤解とその真相をご紹介します。

1. 販売額ランキング上位のファンドが良い商品とは限らない

「販売額ランキング上位のファンドは、みんなが買っているので良い商品なのでしょう」という考え方は誤解だと言われています。よく売れている商品が良い商品とは限りません。むしろ、大手金融機関の販売ランキング上位の商品は手数料が高く効率的な資産運用には適さない商品ばかりだという指摘もあります。

家電製品のランキングなど消費者が商品やサービスの質を判断できるものを対象としたランキングであれば、「よく売れている商品=良い商品」となる傾向にありますが、投資信託の場合はそうならないことが多いようです。投資信託の質をきちんと判断できる一般の利用者はほとんどいないからです。

よく売れている商品のランキングは金融機関が売りたい商品・売りやすい商品を売った結果だと心得ておくべきだと言われています。

2. 投資信託の基準価額は資金流入が多くても上がるわけではない

「投信の基準価額は資金流入額が多いほど、多くの人が買うので上がるはず」という考え方も誤解です。多くの人が買っても基準価額は上がりません。

これは投資信託初心者には本当によくある勘違いだと言われています。株式のように発行されている株式数が短期間で変わらない投資対象であれば、需要と供給によって価格が決まります。買いたい人が多ければ株価は上昇します。

投資信託の場合は投資対象となっている株式や債券の評価額が上がらない限り基準価額は上がりません。資金の流入が多くなればなるほど上がるのは、純資産額です。

純資産額が急増すると、逆に基準価額は上がりにくくなる可能性もあるので注意が必要です。

3. インデックス・ファンドは基準価額の水準と優劣は関係ない

「インデックス・ファンドは基準価額が高いほうが優秀」という考え方も誤解だと言われています。基準価額の水準と投資信託の優劣は関係ありません。

たとえば、国内株式の代表的な指数であるトピックス(TOPIX)との連動を目指すインデックス・ファンドでも9,500円程度のものから26,000円を超えるものまであります。アクティブ・ファンドでも基準価額が3万円台となっている商品に対して割高なのではと感じて投資を躊躇する方も多くいますが、単に運用を開始した時期と分配方針の違いで価格に違いが生じるだけです。

基準価額の水準は投資信託選びの判断材料にならないということを理解しておくことが重要です。

4. 分配金が多いファンドが良いというのは誤解

分配金が多いファンドがよいというのは誤解だと言われています。日本では毎月分配型投信が人気ですが、分配金が多いファンドイコール良い運用成績とは限らないのです。

年金生活者の人であれば毎月の分配金に意味があると思いますから、毎月分配型のファンドを否定するわけではありません。しかし、分配金が多いことと運用成績が良いことには相関はありません。分配金を支払うとファンドの基準価額はその分低下します。つまり、相場が動かなければ、ファンドの価値は分配金支払い分だけ減少します。

良いファンドかどうかは、分配金と基準価額の2つを合わせてリターンを計算してリスクと比較しなければわからないのです。

金投資信託の「やばくない」メリット

ここまで金投資信託の「やめたほうがいい」と言われる理由や投資信託に関する誤解を見てきましたが、金投資信託には様々なメリットもあります。以下では、金投資信託の「やばくない」メリットをご紹介します。

1. 少額から始められる

現物投資で金を購入するにはまとまった資金が必要ですが、金投資信託であれば少額から無理のない範囲で投資が可能です。投資信託は、最低数百円~数千円といった少額からスタートできるのが大きな特徴です。

これは、これから投資を始める方や、リスクを分散させたい方にとって大きな「利点」となります。まとまった資金がなくても、少しずつ資産形成を始められるのは金投資信託の大きな魅力だと言えるでしょう。

2. 保管の手間が省ける

金投資信託なら金を安全に保管する環境が不要なためコストを抑えられ、盗難や紛失のリスクを避けられます。現物の金を保有する場合、安全な保管場所を確保する必要があり、そのためのコストや手間がかかります。

また、現物の金は物理的な存在であるため、盗難や紛失のリスクも考慮する必要があります。金投資信託ならそうした心配をする必要がなく、安心して投資を続けられます。

3. リスク分散になる

金は現物に安定して高い価値があるため、リスクヘッジの目的で選ばれることが多い投資先です。株式や証券は社会情勢の変化で価格が下落する可能性がありますが、金はこうしたリスクが少ないと考えられています。

金は人類の長い歴史の中で安定して高い価値が認められてきた貴金属です。希少性が高いことや、物質として美しさや安定性があることから価値が高く、「安全資産」とも呼ばれています。

株式や証券とは異なり、金はそのものに高い価値があります。そのため、社会情勢が不安定になると世界的に金の需要が高まる傾向にあります。ポートフォリオにおいて金投資信託を組み込むことで、市場の変動に対するリスクを分散させる効果が期待できるのです。

4. 長期保有に向いている

基本的に、金は長期保有に適している資産です。短期間の売買で利益を出すよりも、長期保有によって徐々に値上がりすることで利益を出したい場合は、投資先に金を選んでも良いでしょう。

すぐに利益につながらなくても、安定的な資産形成が期待できます。金価格は短期的には変動することがありますが、長期的には価値を保持する傾向があるため、長期投資の視点からは「おすすめ」できる投資対象だと言えるでしょう。

金投資信託がおすすめな人の特徴

金投資信託には確かにデメリットがありますが、投資目的や投資スタイルによっては大きなメリットを得られる場合もあります。ここでは、金投資信託が「おすすめ」できる人の特徴をご紹介します。

1. リスク分散したい人

金は現物に安定して高い価値があるため、リスクヘッジの目的で選ばれることが多い投資先です。株式や債券などの金融資産とは異なる値動きをする傾向があるため、ポートフォリオ全体のリスクを分散させる効果が期待できます。

特に、経済危機や市場の混乱時には金価格が上昇する傾向があるため、株式などの他の資産が下落した場合のバッファーとして機能する可能性があります。リスク分散を重視する投資家にとっては、金投資信託は有効な選択肢となるでしょう。

2. 長期保有するつもりの人

基本的に、金は長期保有に適している資産です。短期間の売買で利益を出すよりも、長期保有によって徐々に値上がりすることで利益を出したい場合は、投資先に金を選んでも良いでしょう。

すぐに利益につながらなくても、安定的な資産形成が期待できます。インフレヘッジとしての側面も持つ金は、長期的な視点で見ると購買力の保全に寄与する可能性があります。

3. 少額で手軽に投資を始めたい人

これから投資を始める方には、少額で手軽に投資ができる金投資信託が向いています。現物の金を管理するコストを省けるのは、投資信託ならではのメリットだといえるでしょう。

初めての投資先として選ばれることが多いので、初心者でも安心につながります。少額から始められるため、リスクを抑えながら投資の経験を積むことができるのは大きな利点です。

まとめ:金投資信託は本当に「おすすめしない」のか?

ここまで金投資信託の様々な側面を検討してきましたが、最終的に金投資信託は本当に「やばい」のでしょうか。「おすすめしない」という評判は正当なものなのでしょうか。ここで改めて総合的な検証を行いましょう。

批判の多くは投資目的とのミスマッチ

金投資信託に対する批判の多くは、それが特定の投資目的(短期売買や配当収入など)に合わないことを指摘しているものです。しかし、長期的な資産保全や分散投資、インフレヘッジといった目的に対しては、金投資信託は十分に機能する可能性があります。

つまり、「金投資信託がやばい」というのは一面的な見方であり、投資目的に応じた適切な判断が必要だと言えるでしょう。

コストパフォーマンスの問題

手数料の高さも批判の一因ですが、これについても商品選びによって十分に対応可能です。信託報酬が低い商品を選ぶことで、コスト負担を軽減することができます。また、長期的な金価格の上昇が手数料を上回るパフォーマンスをもたらす可能性もあります。

さらに、新NISAなどの非課税制度を活用することで、税制面での優位性を確保することも可能です。

金投資信託を効果的に活用するためのポイント

金投資信託を効果的に活用するためには、以下のポイントに注意するとよいでしょう。

  1. 信託報酬の低い商品を選ぶ:同じ金関連の投資信託でも、信託報酬には差があります。Smart-iゴールドファンド(為替ヘッジなし)のように、比較的信託報酬の低い商品を選ぶことで、長期的なコスト負担を軽減できます。
  2. ポートフォリオの一部として組み入れる:金投資信託だけで資産形成するのではなく、株式や債券などと組み合わせて、ポートフォリオの一部として組み入れることで、リスク分散効果を最大化できます。
  3. 長期投資の視点で考える:金投資信託は短期的な値動きよりも、長期的な資産保全を目的として考えると、そのメリットを最大限に活かせます。
  4. 為替ヘッジの有無を確認する:金価格は通常ドル建てで表示されるため、為替の変動が投資パフォーマンスに影響します。為替ヘッジありとなしのどちらが自分の投資方針に合っているか確認しましょう。
  5. 投資目的を明確にする:金投資信託に何を求めるのか(リスク分散、インフレヘッジ、長期的な資産保全など)を明確にしてから投資を検討することが重要です。

金投資信託は確かに万人にとって最適な投資対象ではありませんが、投資目的や投資スタイルに合致する場合には、ポートフォリオに「おすすめ」できる投資対象となり得ます。手数料やインカムゲインの欠如といった「欠点」を理解したうえで、その特性を活かした投資を行うことが重要なのです。

結論として、金投資信託が「やめとけ」「おすすめしない」と言われる背景には、それぞれの投資家の目的や状況に合わないケースがあるということであり、一概に「やばい」投資対象だとは言えないということが分かります。自分の投資目的や投資スタイルに合った商品選びを行い、金投資信託の特性を理解したうえで投資することで、効果的な資産形成ツールとして活用することができるでしょう。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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