ヤスハラケミカル株式会社(4957)の業績が好調、株価も好調な理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

ヤスハラケミカル株式会社(4957)の業績が好調、株価も好調な理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

ヤスハラケミカル株式会社:業績と株価の好調要因に関する詳細分析

ヤスハラケミカル(4957)は近年、業績と株価の両面で注目すべき好調さを示しています。2025年3月期第3四半期までの経常利益は前年同期比で2.1倍に拡大し、すでに通期計画を上回る実績を挙げています。同時に株価も2022年末の501円から2025年3月28日には994円へと約2倍に上昇しており、投資家からの関心が高まっているようです。本稿では、同社の業績と株価が好調である背景と要因について、さまざまな角度から詳細に分析・解説していきます。

ヤスハラケミカルの企業概要

ヤスハラケミカル株式会社は、天然テルペン樹脂製造において国内シェア9割を占める化学メーカーです。東証スタンダード市場に上場しており、1959年に設立された歴史ある企業です。本社は広島県府中市に位置し、従業員数は232名(2024年3月現在)となっています。

同社の事業は主に「テルペン化学製品」「ホットメルト接着剤」「ラミネート品」の3つのセグメントで構成されています。特にテルペン化学製品は全体の売上高の約74%を占める主力事業となっています。テルペンとは植物から得られる天然由来の有機化合物で、同社はこれを原料とした化学製品の製造・販売で国内唯一のメーカーとしての地位を築いています。

直近の業績分析

2025年3月期第3四半期までの業績

2025年3月期第3四半期累計(4-12月)の経常利益は前年同期比2.1倍の15.7億円に急拡大しています。この数字は通期計画の14.3億円に対する進捗率が109.9%となっており、すでに通期計画を上回る実績を達成しています。

特に注目すべきは直近3ヵ月(2024年10-12月期)の業績で、経常利益は前年同期比3.8倍の8.1億円に急拡大しています。また、売上営業利益率も前年同期の9.2%から12.8%へと大幅に改善しており、収益性が大きく向上していることがわかります。

2024年3月期の通期業績

2024年3月期の通期業績は以下のようになっています。

  • 売上高:131億9200万円(前期比11.02%増)
  • 営業利益:6億8100万円(前期比228.99%増)
  • 経常利益:11億7300万円(前期比87.68%増)
  • 当期純利益:5億8300万円(前期比12.86%減)

当期純利益は減少していますが、売上高、営業利益、経常利益は大幅に増加しており、全体として好調な業績を示していると言えるでしょう。

2025年3月期の通期業績予想

会社側が発表している2025年3月期の通期業績予想は以下の通りです。

  • 売上高:143億9200万円(前期比9.1%増)
  • 営業利益:15億4500万円(前期比2.3倍)
  • 経常利益:14億3300万円(前期比22.2%増)
  • 当期純利益:10億1700万円(前期比74.4%増)

これらの数字から、2025年3月期も引き続き増収増益が予想されていることがわかります。特に営業利益は前期比2.3倍という大幅な増益予想となっています。

株価の推移と現状

ヤスハラケミカルの株価は過去数年間で着実に上昇しています。年末の終値で比較すると、以下のように推移しています。

  • 2020年末:562円
  • 2021年末:549円
  • 2022年末:501円
  • 2023年末:603円
  • 2024年末:844円

2025年に入ってからも株価は上昇を続け、2025年1月24日には1,129円の高値を記録しています。2025年3月28日時点での株価は994円となっており、2022年末と比較すると約2倍に上昇していることになります。

株価指標を見ると、PER(株価収益率)は8.9倍、PBR(株価純資産倍率)は0.43倍となっています。PERは一般的な基準から見ると比較的低く、PBRも1倍を下回っていることから、バリュエーション面ではまだ割安感があるとも考えられるでしょう。

業績好調の背景要因

1. 製品・事業構成の強み

ヤスハラケミカルの業績好調の背景には、同社の製品・事業構成における強みがあると考えられます。同社は天然テルペン樹脂製造で国内シェア9割を占めており、この分野でのリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。

特に、自動車用品用途のテルペンフェノール樹脂や変性テルペン樹脂が好調に推移していることが業績拡大の一因となっているようです。また、電子部品用途の水添テルペン樹脂も堅調に推移していると報告されています。

テルペン化学製品は全体の売上高の約74%を占める主力事業であり、この事業の好調さが全体の業績を牽引していると考えられます。同社の製品は粘着剤・塗料、香料、自動車用品などの分野で使用されており、これらの市場の需要拡大も業績好調の背景にあるのではないでしょうか。

2. 経営戦略と取り組み

ヤスハラケミカルは「収益性改善、新規開拓、グローバル展開」を中長期的経営方針として掲げ、積極的に取り組んでいます。特に収益性改善については、高収益製品の売上増加や工場の合理化の推進により、利益を創出する収益構造の確立を目指しているようです。

また、同社は「人のチカラ」を重視した経営を行っており、社員の意識改革や自律型人材育成に積極的に投資しています。このような人材育成への取り組みが、企業の競争力強化につながっている可能性があります。

さらに、IT化の推進にも取り組んでおり、短期的には営業業務関連のIT化による業務効率化、中期的には管理業務関連のIT化、長期的には生産業務関連のIT化を計画しています。これらの取り組みにより、業務効率の向上やコスト削減が進んでいると考えられます。

3. 研究開発への注力

ヤスハラケミカルは研究開発活動に積極的に取り組んでおり、2024年3月期の研究開発費は3億4000万円となっています。同社の研究開発活動は「天然物由来のテルペンを活かせる高付加価値分野を創造し、ニッチ分野のトップを目指す」という基本戦略のもとで行われています。

具体的には、電子材料分野、環境・ヘルスケア関連分野、モビリティ関連分野を成長分野と捉え、これらの分野に向けた研究開発を進めています。また、環境配慮型製品の開発にも力を入れており、バイオマスであるテルペンを生かした環境ニーズへの対応を強化しています。

このような研究開発への注力が新たな付加価値製品の創出につながり、業績拡大に寄与しているものと思われます。

4. 環境への取り組み

ヤスハラケミカルは環境問題にも積極的に取り組んでおり、省エネ・省電力対策を重要なテーマとして位置づけています。同社は省エネ活動として、各工場での省エネ担当者を集めた会議を定期的に開催し、改善テーマの水平展開を図っています。

2021年度のエネルギー原単位は、計画的な集中生産などにより前年度比2.7%減少したとの報告もあります。このような環境への取り組みが、企業イメージの向上や持続可能な成長につながっている可能性があります。

5. グローバル展開

ヤスハラケミカルは国内市場だけでなく、海外市場への展開も進めています。地域ごとの情報としては、日本、アジア、北米、欧州が挙げられています。特に自動車用品用途のテルペンフェノール樹脂および変性テルペン樹脂は、輸出を中心に好調に推移しているとの報告があります。

このようなグローバル展開の進展が、売上高の拡大や収益性の向上につながっていると考えられます。

財務状況と企業の健全性

ヤスハラケミカルの財務状況を見ると、2024年3月期末時点での自己資本比率は73.1%と非常に高い水準にあります。これは同社の財務基盤が安定していることを示しています。

また、同期末時点での現金及び現金同等物の残高は52億6500万円となっており、十分な手元流動性を確保していると言えるでしょう。有利子負債は48億6500万円と前期末比27.92%減少しており、負債の圧縮も進んでいるようです。

ROE(自己資本利益率)は2.96%、ROA(総資産利益率)は2.09%となっています。これらの数値はまだ高いとは言えませんが、業績の改善に伴い今後向上していくことが期待されます。

今後の見通しと課題

ヤスハラケミカルの今後の見通しについては、会社側が発表している2025年3月期の通期業績予想を見ると、売上高143億9200万円(前期比9.1%増)、営業利益15億4500万円(前期比2.3倍)、経常利益14億3300万円(前期比22.2%増)、当期純利益10億1700万円(前期比74.4%増)と、大幅な増収増益が予想されています。

しかし、会社側の予想によると、2025年3月期第4四半期(1-3月期)の経常損益は1.4億円の赤字(前年同期は4億円の黒字)に転落する計算になるとのことです。これは第3四半期までの好調な業績の反動や季節要因などが影響している可能性がありますが、今後注視すべき点と言えるでしょう。

また、長期的な視点では、同社が成長分野と位置づけている電子材料分野、環境・ヘルスケア関連分野、モビリティ関連分野での展開がどのように進むかが重要になると思われます。特に環境配慮型製品の開発や持続可能な社会への貢献は、今後の企業価値向上のカギとなるでしょう。

ヤスハラケミカル株式会社について

ヤスハラケミカル株式会社は、1947年に創業した広島県府中市に本社を置く化学メーカーです。同社は、松やオレンジの皮から採れる植物精油「テルペン」を主原料とする化学製品の製造・販売を行い、環境に優しい再生可能な資源を活用した事業展開で知られています。

会社概要

  • 創業: 1947年
  • 資本金: 17億8,956万円
  • 従業員数: 約235名(2023年時点)
  • 売上高: 118億8,300万円(2023年3月期)
  • 本社所在地: 広島県府中市高木町1071番地
  • 主要事業所: 福山工場、鵜飼工場、新居浜工場、東京事務所。

事業概要

ヤスハラケミカルの主力製品は以下の通りです。

  1. テルペン樹脂: 接着剤や粘着剤、自動車部材などに使用される高品質な樹脂。特に「水添テルペンフェノール樹脂」や「高軟化点グレード樹脂」は世界で唯一同社が生産しています。
  2. ホットメルト接着剤: 溶剤を使用しない環境配慮型接着剤で、産業界で幅広く利用されています。
  3. ラミネートフィルム: 光沢性や耐久性に優れた製品。
  4. 化成品: 香料原料や洗浄剤など、多様な用途に対応。

同社は、再生可能な植物由来の原料を用いることで、化石燃料依存を減らし、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献しています。また、研究開発にも注力し、高付加価値製品の供給を通じて産業と生活の向上を目指しています。

強み

  1. 環境配慮と持続可能性
    • テルペンという再生可能資源を活用し、石油由来製品との差別化を図っています。
    • 環境負荷が低く、高品質な製品が国内外で高い評価を得ています。
  2. 技術力と独自性
    • 世界で唯一の製品(例:水添テルペンフェノール樹脂)を生産する技術力。
    • 長年培ったテルペン化学のノウハウと豊富なデータ蓄積による柔軟な顧客対応。
  3. グローバル展開
    • 海外市場への進出も積極的で、中国などでは高品質製品としてブランド力が認知されています。

弱み

  1. 原材料調達リスク
    • テルペン類の全量輸入依存により、為替変動や国際市場価格の影響を受けやすい点が課題です。
  2. 価格競争と収益性への影響
    • 原材料費やエネルギーコストの高騰が続く中、価格転嫁には限界があり、収益性が圧迫されています。
  3. 国内市場依存度の高さ
    • 国内需要の伸び悩みが課題となっており、新興国市場でのさらなる拡大が必要です。

業界内ポジショニング

ヤスハラケミカルは、テルペン化学分野で世界的リーダーとして認知されています。特に環境配慮型製品の開発と供給では他社との差別化に成功しており、高品質・高付加価値な製品群は国内外で信頼されています。ただし、競争激化や原材料調達リスクへの対応が今後の課題といえます。

まとめ

ヤスハラケミカル株式会社は、「自然と科学技術の融合」を掲げ、持続可能な社会づくりに貢献する企業です。環境意識が高まる中、その独自技術と再生可能資源活用への取り組みは大きな強みとなっています。一方で、外部環境変動への対応力強化が求められており、グローバル市場でのさらなる成長が期待されます。

まとめ

ヤスハラケミカル(4957)の業績と株価が好調である背景には、天然テルペン樹脂製造での圧倒的なシェア、高付加価値製品の拡販、経営戦略の着実な実行、研究開発への積極的な投資、環境への取り組み、グローバル展開の推進など、複合的な要因があると考えられます。

特に2025年3月期第3四半期までの業績は前年同期を大きく上回り、すでに通期計画を超過する実績を挙げています。この好調な業績が評価され、株価も2022年末と比較して約2倍に上昇しています。

今後も同社が掲げる「収益性改善、新規開拓、グローバル展開」という中長期的経営方針のもと、持続的な成長を実現できるかどうかが注目されます。特に電子材料分野、環境・ヘルスケア関連分野、モビリティ関連分野という成長分野での展開がどのように進むかが、今後の業績と株価の動向を左右する重要な要素になるのではないでしょうか。

投資家の皆様にとっては、自己資本比率が高く財務基盤が安定している点や、PER、PBRなどのバリュエーション指標からはまだ割安感があるとも考えられる点などが、投資判断を行う際の参考になるかもしれません。ただし、第4四半期の業績予想には注意が必要であり、今後の決算発表や業績動向を注視することが重要です。

ヤスハラケミカルは天然物由来のテルペンという特徴ある原料を活かした事業展開を行っており、この独自性が同社の強みとなっているようです。今後も高付加価値分野の創造やニッチ市場でのトップを目指す戦略を続けることで、さらなる成長が期待されます。

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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