いであ株式会社(9768)の業績が好調、株価も好調な理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

いであ株式会社(9768)の業績が好調、株価も好調な理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

いであ株式会社の業績と株価が好調である要因分析:国土強靭化政策と高付加価値事業の展開

増収増益を続け、連続した過去最高益の更新と配当増額で注目を集めるいであ(9768)の業績と株価について、好調な理由を詳しく解説します。同社の事業内容や市場環境、財務状況など多角的な視点から、その強さの秘密に迫ります。

いであの事業概要と最近の業績動向

いであ株式会社は、環境コンサルタント事業、建設コンサルタント事業、情報システム事業、海外事業、不動産事業の5つの事業セグメントを持つ総合コンサルタント企業です。環境アセスメントや建設に関する計画・設計・調査、情報システム開発、海外での環境保全業務などを主な事業としているようです。

近年の同社の業績は非常に好調で、2024年12月期の連結業績は、売上高が前年同期比7.1%増の243億1,000万円、営業利益が16.6%増の32億5,400万円、経常利益が14.5%増の34億2,300万円、親会社株主に帰属する当期純利益が19.4%増の23億7,600万円となっています。これらの数値はいずれも過去最高を更新しており、業績が右肩上がりで伸びていることが分かります。

2025年12月期の連結業績予想についても、売上高250億円(前期比2.8%増)、営業利益33億7,000万円(同3.6%増)、経常利益35億3,500万円(同3.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益24億円(同1.0%増)と、引き続き増収増益を見込んでいるようです。これが実現すれば、2期連続での過去最高益更新となります。

業績好調の背景要因分析

政府の政策・予算配分との相乗効果

いであの業績が好調な背景として、まず政府の政策・予算配分との関連性が挙げられます。令和6年度補正予算および令和7年度予算政府案において、同社グループの強みを活かせる分野に重点配分されているとのことです。

具体的には、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が着実に進められており、気候変動による水害や土砂災害の激甚化対策のためのハード・ソフト一体となった流域治水対策、DXやAI等の新技術を活用した洪水予測やダム運用、人流・物流を確保するための道路ネットワーク整備、海岸・港湾の災害対策等が推進されています。

令和7年度政府予算案によると、一般会計総額は約115兆円となり、当初予算としては3年連続で110兆円を超え、過去最大となりました。また、公共事業関係費についても安定的な確保がなされており、これらの中にはいであグループの強みが活かせる事業が多く含まれていることから、同社をとりまく市場環境は堅調に推移すると見込まれているようです。

高付加価値業務の獲得と技術革新

いであは、AIやロボット技術の活用をはじめDXの推進による高付加価値業務の獲得と生産性向上に取り組んでいます。2024年12月期の好調な業績の要因として、大規模な海洋環境調査やAUV(自律型無人潜水機)の設計製作・運用支援業務、防災・減災関連業務などが増収に寄与したと報告されています。

これらの高付加価値業務は、同社の技術力とノウハウを活かした分野であり、単なる価格競争ではなく、技術的優位性による差別化が図られていると考えられます。特に環境調査や防災関連といった専門性の高い分野での強みを発揮しているようです。

財務状況の健全性

堅固なバランスシート

いであの財務状況も非常に健全です。2024年12月期末時点の総資産は前期末比8.6%増の374億5,200万円となっています。自己資本比率は76.7%と非常に高い水準を維持しており、負債比率が低く財務安定性が高いことを示しています。

ROE(自己資本利益率)も8.6%(前年同期は7.8%)と向上しており、資本効率が改善していることがわかります。これは株主資本を効率的に活用して利益を生み出せていることを示す指標であり、投資家にとって重要な判断材料となります。

現金創出力の強化

キャッシュ・フローの状況も大きく改善しています。2024年12月期の営業活動によるキャッシュ・フローは40億500万円の獲得(前期は1億6,000万円の使用)となりました。投資活動では11億6,000万円を使用し、財務活動では13億6,700万円を使用しました。結果として、現金及び現金同等物の期末残高は前期末比64.5%増の37億7,300万円と大幅に増加しています。

この強固な現金創出力は、今後の成長投資や株主還元の余力があることを示しており、企業価値向上につながる要素と言えるでしょう。

株主還元の充実

継続的な増配

いであの株主還元策も充実しています。特に配当金は継続的に増額されており、2023年12月期は65円、2024年12月期は100円、2025年12月期予想は118円と増配が続いています。

2024年12月期の配当総額は7億1,300万円、2025年12月期の配当性向は35.1%を見込んでいるようです。この水準は、株主への利益還元を重視した経営姿勢を表していると言えるでしょう。

魅力的な配当利回り

現在の株価水準での配当利回りは約4.07%程度となっており、低金利環境が続く中で魅力的な水準と言えます。この高い配当利回りが、株価を下支えする要因の一つになっていると考えられます。

株価動向と投資指標

株価の推移

2025年3月26日時点のいであの株価は2,895円、3月27日時点では2,896円となっています。具体的な株価チャートは検索結果からは詳細が分かりませんが、掲示板のコメントなどから「ボックス圏から上抜け」との記述があり、株価が上昇傾向にあることがうかがえます。

割安感のある投資指標

いであの投資指標を見ると、PER(株価収益率)は8.6倍、PBR(株価純資産倍率)は0.72倍となっています。一般的に、PERが低いほど、また、PBRが1倍を下回る場合は割安感があると言われることが多く、いではの現在の投資指標は相対的に割安感があると言えるかもしれません。

特にPBRが0.72倍というのは、理論上は会社を清算した場合の価値(純資産)よりも安い価格で株式を購入できることを意味しており、バリュー投資家にとって魅力的な指標となっているようです。

業績の詳細分析

四半期ごとの業績推移

いであの最近の四半期業績を見ると、特に2024年4-6月期(第2四半期)の連結経常利益は前年同期比49.6%増の12.5億円に拡大し、売上営業利益率は前年同期の14.7%から19.3%に大幅上昇していることがわかります。これは、高付加価値業務の増加や生産性向上の取り組みが実を結んでいる表れと言えるでしょう。

2024年度上期(1-6月)の連結経常利益は前年同期比27.6%増の25.2億円となり、通期計画の32.5億円に対する進捗率は77.6%に達したとのことです。この進捗率は5年平均の112.8%を下回っているものの、上期としては非常に好調な数字と言えそうです。

長期的な成長傾向

いであの売上高と純利益は、2014年12月期から2024年12月期の10年間で1.5倍に成長しており、10年平均成長率は売上高3.91%、純利益4.11%となっています。特に純利益の成長率が売上高の成長率を上回っていることは、収益性が向上していることを示しており、事業の質的成長が進んでいると考えられます。

いであの今後の成長戦略

第6次中期経営計画の始動

いであは2025年から3か年の第6次中期経営計画を策定し、経営の効率化と組織の一体化・効率化をより一層推進し、DXの推進等によるビジネスモデルの変革と生産性向上及び社内外の多様なプロフェッショナルの共創によるイノベーション創出等を通じて、事業領域や受注の拡大、適正な利益確保に努めていくとのことです。

この中期経営計画の進捗状況が今後の業績や株価動向に大きな影響を与える可能性があるでしょう。

期首受注残高の増加

2025年12月期の見通しについては、期首受注残高の増加および期内受注業務の売上増加見込みにより、増収増益を予想しているようです。受注残高が増加しているということは、すでに次期の業績の一部が確保されていると言え、業績予想の確度を高める要素となります。

まとめ:いであの投資魅力と今後の展望

いであ(9768)の業績と株価が好調な理由は、以下のようにまとめることができるでしょう。

  1. 国の政策との連動性:防災・減災、国土強靱化対策など、政府の重点政策分野と事業領域が合致しており、安定した需要が見込まれています。
  2. 高付加価値業務の展開:AIやロボット技術を活用したDXの推進により、高付加価値業務の獲得と生産性向上を実現しています。
  3. 堅固な財務基盤:自己資本比率76.7%という高水準を維持し、ROEも8.6%と向上しており、財務の健全性と資本効率の両立を図っています。
  4. 充実した株主還元:継続的な増配政策を実施しており、配当利回りも4%超と魅力的な水準です。
  5. 割安な株価水準:PER8.6倍、PBR0.72倍という投資指標は、業績や財務状況を考慮すると割安感があると言えるかもしれません。

今後の展望としては、第6次中期経営計画の進捗状況や、政府の防災・減災政策の継続性などが重要なポイントになると考えられます。また、AIやDXといった技術革新への対応力も、競争力維持のカギとなるでしょう。

いであは、環境保全や防災・減災という社会的に重要な分野で事業を展開しており、SDGs(持続可能な開発目標)や社会インフラの維持・強化という観点からも、今後も需要が続く分野と言えそうです。堅実な業績成長と株主還元の充実により、中長期的な投資対象として注目される企業と言えるのではないでしょうか。

ただし、公共事業関連の企業であるため、政府の政策や予算配分の変更リスクがあることや、災害の少ない年には需要が減少する可能性があることなど、リスク要因も存在することには留意する必要があるでしょう。

投資判断においては、個々の投資方針やリスク許容度に応じて、総合的に検討することが重要であると言えます。いであの今後の業績動向や株価推移については、引き続き注目していく価値があるのではないでしょうか。

いであ株式会社について

いであ株式会社(IDEA Consultants, Inc.)は、社会基盤整備と環境保全を専門とする総合コンサルタント企業です。1953年に創業し、1968年に設立された同社は、東京都世田谷区に本社を構え、資本金31億7,323万円、従業員数1,083名(2024年現在)を擁しています。

事業概要

いであ株式会社の事業は「社会基盤の形成」と「環境保全」を軸に展開されています。具体的には以下の内容を含みます。

  • 調査・分析: 河川計画、海岸保全計画、道路・交通・都市計画、災害復旧計画などの調査・分析。
  • 設計・管理: 環境影響評価、生物生息環境の保全・再生・創造、水辺のアメニティ設計など。
  • 環境技術開発: 環境DNA技術やAIを活用した洪水予測技術などの先端技術開発。

これらの業務の約86%が国や地方自治体からの受注であり、高い公共性が特徴です。

業界内でのポジショニング

いであ株式会社は国内建設コンサルタント業界で中堅クラスに位置付けられていますが、「建設環境分野」では売上高ランキング1位を維持しており、特定分野で強い存在感を持っています。また、技術力を重視したプロポーザル方式や総合評価落札方式による受注が全体の8割以上を占めており、低価格競争を避けながら付加価値の高いサービス提供に注力しています。

強み

  1. 一貫したサービス提供: 企画から調査・分析、設計・管理までワンストップで対応できる体制を構築しており、外注に頼らず品質管理を徹底しています。
  2. 技術力と研究拠点: 全国に4つの研究拠点(静岡、神奈川、大阪、沖縄)を持ち、それぞれが独自分野で技術開発を行うことで他社との差別化を図っています。
  3. 公共性と信頼性: 官公庁との取引が多く、高い公共性と信頼性を維持しています。また、環境教育や地域貢献活動にも積極的に取り組んでいます。

弱み

  1. 組織風土の硬直化: 長年の歴史がある反面、組織風土が硬直化しているとの指摘があります。これにより若手社員の成長環境や柔軟な対応力に課題がある可能性があります。
  2. 海外展開の弱さ: 海外事業への進出は限定的であり、他社と比較して国際市場での競争力が劣る点が弱みとして挙げられます。

今後の展望

いであ株式会社は、防災・減災対策やインフラ老朽化への対応など、日本国内で高まるニーズに応える形で成長を続けています。また、AI技術や環境DNA技術など先端分野への投資にも力を入れており、新たな市場機会を模索しています。一方で海外展開や組織改革による柔軟性向上が課題となっており、それらへの取り組みがさらなる成長につながるでしょう。

いであ株式会社は、安全・安心な社会基盤整備と持続可能な環境保全を支える企業として、日本国内外で重要な役割を果たしています。

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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