オルカンは”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?


”オルカンはヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因と真相についてデメリットを掘り下げて解説します
オルカン投資は本当に”やばい”のか?
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称「オルカン」についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。新NISAの開始に伴い、多くの投資初心者から支持を集めるオルカンですが、一方で「やめたほうがいい」という声も聞かれます。本記事では、オルカンを取り巻く様々な評価や誤解を検証し、実際のところどのような投資商品なのかを多角的に分析していきます。
オルカンとは何か?基本情報と特徴
オルカンとは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称です。この投資信託は、世界の株式市場の動きに連動することを目指し、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)に追従する形で運用されています。
2018年10月31日に運用が開始され、2024年3月14日時点で純資産総額は2兆7634億円、5年リターン(年率)17.66%という実績を持っています。さらに注目すべきは、「投信ブロガーが選ぶFund of the Year 2023年」で第1位を獲得し、2019年から5年連続の受賞を果たしているという点です。
オルカンが投資対象としているのは、日本を含む先進国23カ国と新興国24カ国、合計47カ国の株式市場です。約3,000もの株式で構成されており、一見すると非常に分散された投資先のように思えます。しかし、実際の構成比率を見てみると、アメリカ企業が全体の60%以上を占めているという特徴があります。
オルカンが人気を集める理由とメリット
1. 超低コストの運用手数料
オルカンの最大の魅力の一つは、信託報酬の低さです。現在の信託報酬は0.05775%と、同種の投資信託の中でもトップクラスの低さとなっています。例えば、似た名前の「eMAXIS 全世界株式」の信託報酬が0.66%であることを考えると、その差は歴然としています。
この信託報酬の差は長期投資において大きな影響を与えます。月5万円ずつ30年間投資した場合、信託報酬の差だけで約430万円もの差が生じる可能性があるとされています。さらに、オルカンには純資産総額が増えると投資家の負担が下がる「受益者還元型信託報酬」の仕組みも導入されており、今後さらにコスト面での優位性が高まる可能性もあるようです。
2. 手軽な世界分散投資
オルカン1本で世界中の株式に投資できるという手軽さも、大きな魅力となっています。特に投資初心者にとって、個別の国や地域、企業を選ぶ必要なく、世界経済全体の成長の恩恵を受けられるという点は非常に重要です。
多くの投資初心者が感じる「何を買えばいいのか分からない」という悩みを解決してくれる商品として、オルカンは支持されているようです。
3. 安定した運用実績
オルカンの運用実績も注目されています。2019年9月26日〜2024年10月4日のトータルリターンは年率18.99%となっており、日本株投資信託(約9〜10%)やバランスファンド(約7〜8%)と比べると約2倍の利回りが期待できるとされています。
この実績は、主に米国株式市場の好調さに支えられているところが大きいと言われていますが、長期的な資産形成を目指す投資家にとっては魅力的な数字であることは間違いないでしょう。
オルカンが「やめたほうがいい」と言われる理由とデメリット
一方で、オルカンに対しては「やめたほうがいい」という意見も少なからず存在します。以下では、そのような評価が生まれる背景について詳しく見ていきましょう。
1. 投資先の偏り
オルカンは「全世界株式」と名付けられていますが、実際の投資先を見てみると、アメリカへの投資割合が60%以上を占めています。さらに、その中でも組入銘柄は情報・技術、金融、ヘルスケア関連の3業種だけで全体の約半分を占めているとされています。
このような偏りは、「効率的な分散投資ができない」というデメリットにつながります。アメリカ企業の株価が大暴落するような事態になると、大きな損失になる可能性が高いと指摘されています。
また、新興国への投資は全体の10%程度しかないため、「成長を期待して新興国に投資したい人」にはオルカンは向いていないと言われています。
2. 為替リスクの存在
オルカンは海外株式に投資するため、為替の影響を大きく受けるというデメリットがあります。日本円を基準通貨として海外株式投資を行う場合、円安であれば為替差損が発生する可能性があるのです。
もちろん円高になれば逆の結果となり大きな利益になる可能性もありますが、近年の円安傾向を考慮すると、為替変動に注意しながら運用する必要があるようです。
3. 元本割れのリスク
オルカンはインデックスファンドとはいえ、あくまで株式に投資する商品であるため、元本割れするリスクがあります。いくら相場暴落に強いと言われていても、コロナショックや地政学的リスクなどにより資産が大幅に下落する可能性は常に存在しています。
実際に2020年2月17日から2020年3月17日の1ヶ月間で、オルカンの基準価額は31.15%下落したという記録があります。この暴落により、大損失が生じた方や元本割れした方も少なくなかったようです。
4. 短期間では利益が見込めない
オルカンを含む投資信託は、短期間での利益は見込めないというデメリットもあります。オルカンは20年や30年と長期間運用して初めて利益が安定するため、短期的に利益を出したい人には向いていないと言われています。
短期間で利益を狙う場合は、1つの銘柄に絞り、多額の資金を運用する必要がありますが、オルカンはさまざまな銘柄に分散投資を行うため、それぞれの銘柄の伸び率が異なり、短期的な大きな利益は期待できないようです。
オルカンに関する誤解とその真相
オルカンについては様々な誤解も広まっているようです。ここでは代表的な誤解とその真相について検証します。
誤解1:「オルカンは安定的に上昇する」
オルカンを低リスクな商品だと思っている人が多いようですが、これは大きな誤解です。実際には、オルカンが組み入れているのは株式だけであり、債券を組み入れた投資信託などに比べると、値動きは大きくなります。
過去20年のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの推移を見ると、1年で50%以上値上がりした年もあれば、50%以上値下がりした年もあるという事実があります。特に最近投資を始めた人は、上昇相場または下落してもすぐに回復する相場しか経験していないため、リスクを過小評価している可能性があるようです。
誤解2:「オルカンは構成銘柄の見直しが行われない」
「オルカンは国の調整をしてくれないから、将来の成長国の恩恵を受けられない」という誤解も存在するようです。しかし実際には、オルカンは各社の株式の時価総額に着目して、時価総額が大きい銘柄にはたくさん投資し、時価総額が小さい銘柄には少しだけ投資するというインデックスに沿って投資しています。
つまり、もし日本やインドなど他の国の会社の時価総額が大きくなれば、自動的にその国の割合が多くなるように見直されるのです。この見直しは四半期(毎年2、5、8、11月)毎に行われているとされています。
誤解3:「すべての人にオルカンが良い」
「新NISAではオルカンを買っておけばOK」という風潮がありますが、これも誤解の一つです。オルカンが適しているかどうかは、個人のリスク許容度によって大きく異なります。
リスク許容度とは「自分が損にどのくらい耐えられるか」の度合いであり、収入・資産・年齢・投資経験などによって変わります。また、客観的に見てリスク許容度が高いと思われる人でも、リスクに対して慎重な考え方をしている場合は、リスク許容度が低くなることもあるようです。
大切なのは、自分のリスク許容度に合った商品を選ぶということであり、オルカンが必ずしもすべての人に適した商品ではないという点は認識しておく必要があります。
年代別にみるオルカンとの付き合い方
オルカンとの付き合い方は、年代によっても異なるようです。特に50代後半以降の方については、リタイア準備・リタイア期に向けた考え方が重要になります。
50代の後半や60代に入ると、多くの人は定年退職などで定期収入がなくなり、老後の生活資金も必要になってきます。そのため、若い頃のように積極的に資金を入れる「上り坂」の投資ではなく、「下り坂」の投資に路線変更することが推奨されています。
具体的には、オルカンを持ち続けながらも、新規の積み立ては終了するということです。老後の暮らしに入れば、リスクの取り方をゆるやかにして、自分の中で投資への力の入れ加減を変えていく必要があるとされています。
オルカンの売却タイミングについて
オルカンの売却タイミングについては、「ライフイベント時」と「年に一度の取り崩し」が基本とされています。これは全ての年代に共通で、「必要なときに必要なだけ、一部を売却する」というシンプルな考え方が良いとされています。
例えば結婚費用、出産費用、教育費、マイホームの購入資金、介護リフォーム費用、老人ホームの入居一時金など、まとまった費用がかかるときに、その分だけを売却することが推奨されています。
重要なのは、オルカンを運用することは人生の目的ではなく、将来の自分が毎日を楽しく過ごすための「手段」であるということを忘れないことだとされています。
オルカンに向いている人・向いていない人
オルカンがすべての人に適しているわけではないという点を踏まえ、どのような人に向いているのか、向いていないのかを整理してみましょう。
オルカンに向いている人
- 長期投資を考えている人 オルカンは20年や30年と長期間運用することで利益が安定するため、長期的な資産形成を目指す人に向いていると言われています。
- 米国経済の成長に期待する人 オルカンは60%以上が米国株に投資されているため、米国経済の成長に期待する人にとっては効率的な選択肢と言えるでしょう。
- 手間をかけずに投資したい人 オルカン1本で世界中の株式に分散投資できるため、個別銘柄の選定や国・地域の配分を考える手間を省きたい人に適しています。
オルカンに向いていない人
- 元本割れを絶対に避けたい人 オルカンはあくまで株式投資であり、相場暴落時には大きく価値が下がる可能性があります。元本割れするリスクを許容できない人には向いていないようです。
- 短期的に利益を出したい人 オルカンは分散投資のため短期的な大きな利益は期待できません。短期間で利益を出したい人には、FXや株式などハイリスクハイリターンな投資の方が向いているとされています。
- 成長を期待して新興国に投資したい人 オルカンの新興国への投資比率は全体の10%程度と低いため、新興国の経済成長に期待して投資したい人には物足りない可能性があります。
オルカンのリスクを下げる方法
オルカンにはいくつかのリスクがありますが、それを下げる方法もあるようです。以下では、オルカン投資におけるリスク軽減策について見ていきましょう。
- 分散投資の拡大 オルカンだけでなく、債券や不動産(REIT)、コモディティ(金、銀、小麦、原油など)といった株式以外の資産クラスにも投資することで、リスクを分散させることができます。
- ドルコスト平均法の活用 定期的に一定額を投資する「ドルコスト平均法」を活用することで、相場の上下に関わらず平均的な価格で購入することができ、投資タイミングのリスクを軽減できるとされています。
- 長期投資の徹底 短期的な相場変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが、リスクを下げる上で重要だとされています。特にオルカンのような分散投資型の商品は、長期投資との相性が良いとされています。
オルカンについての専門家の見解
オルカンについては、金融の専門家からも様々な意見が出されています。ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦さんは、「オルカンを低リスクな商品だと思っている人が多く、心配」と警鐘を鳴らしています。
最近投資を始めた人は、上がる相場、または下がってもすぐ回復する相場しか体験していないため、リスクを過小評価している可能性があるとの指摘です。過去にはリーマン・ショックのように回復に5年以上かかる下落もあったことを忘れるべきではないとされています。
また、定年など自分が定めたゴールで運用額が最大になっていると信じるのも危険であり、タイミングによってはマイナスになる可能性もあることを認識しておく必要があるようです。
オルカンの”やばい”ポイントとその対処法
オルカンには「やばい」と言えるポイントもいくつか存在します。ここでは、そのようなポイントとその対処法について見ていきましょう。
1. 米国株一極集中のリスク
オルカンは全体の60%以上が米国株に集中しており、米国市場の動向に大きく左右されるという点は”やばい”と言えるかもしれません。このリスクに対処するためには、オルカンとは別に新興国特化型のファンドや日本株のファンドを組み合わせるなど、さらなる分散投資を検討することが一つの方法とされています。
2. 株式100%の高いボラティリティ
オルカンは株式100%で構成されているため、相場の変動に大きく影響を受けるという点も注意が必要です。この高いボラティリティに対処するためには、債券などのリスクの低い資産との組み合わせを検討したり、投資期間を十分に長く取ったりすることが重要とされています。
3. 為替リスクの存在
海外株式に投資するオルカンは、為替変動の影響を受けやすいという特徴があります。円安時には為替差損が発生する可能性もあるため、為替ヘッジ型の商品との組み合わせや、為替変動を考慮した資産配分の見直しなどが対策として考えられるようです。
オルカン投資の欠点を理解した上での活用法
オルカンには確かにいくつかの欠点がありますが、それらを理解した上で活用することで、より効果的な投資が可能になるとされています。以下では、オルカンの欠点を踏まえた上での活用法について見ていきましょう。
1. コア・サテライト戦略での活用
オルカンをポートフォリオの「コア」(中心)として位置づけ、その周りに特定の国や地域、セクターに特化した投資信託を「サテライト」として配置する戦略が効果的だと言われています。これにより、オルカン単体では得られない成長機会を捉えつつ、安定性も確保することができるとされています。
2. 年代やライフステージに応じた配分調整
若いうちはリスク許容度が高いため、オルカンの比率を高めに設定し、年齢が上がるにつれて債券などのローリスク資産の比率を高めていくという方法も推奨されています。ライフステージの変化に応じて、柔軟に資産配分を見直していくことが重要だとされています。
3. 定期的なリバランスの実施
市場の変動によって資産配分が当初の計画から乖離した場合には、定期的にリバランス(再調整)を行うことで、リスクをコントロールすることができるとされています。例えば、株式市場が大きく上昇した後は、オルカンの比率が高くなりすぎている可能性があるため、一部を売却して債券などに振り分けるといった対応が考えられます。
まとめ:オルカン投資の真相と向き合い方
オルカンは低コストで世界中の株式に分散投資できる魅力的な投資信託である一方で、投資先の偏り、為替リスク、高いボラティリティなど、いくつかのデメリットやリスクも存在することが分かりました。
「オルカンはやめたほうがいい」という意見の背景には、これらのリスクや「すべての人にオルカンが適している」という誤解があるようです。実際には、オルカンが適しているかどうかは個人のリスク許容度や投資目標、投資期間によって大きく異なります。
重要なのは、オルカンのメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、自分の状況に合った投資判断を行うことです。必要に応じて他の資産との組み合わせを検討したり、投資期間を十分に長く取ったりするなどの工夫をすることで、オルカンの持つリスクを適切にコントロールすることが可能になるでしょう。
最後に強調しておきたいのは、投資は目的ではなく手段であるということです。オルカンを含む投資商品は、将来の自分や家族がより良い生活を送るための道具に過ぎません。その点を忘れず、長期的な視点で冷静に投資と向き合うことが、結果的には最も賢明なアプローチなのかもしれません。
