積立NISAは”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?

積立NISAは”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”積立NISAはヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因と真相についてデメリットを掘り下げて解説します

積立NISAについてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。「積立NISAはやめたほうがいい」という声がネット上で散見されますが、実際のところその評価は正しいのでしょうか。デメリットと言われる点は本当の欠点なのか、それとも誤解から生じているものなのか、様々な角度から検証していきます。

積立NISAの基本概要と2024年からの変更点

積立NISAとは、少額から積立投資ができる税制優遇制度で、日本に在住していれば原則誰でも利用することができる制度です。通常、投資をして利益が出た場合、利益に対し20.315%の税金が課せられますが、積立NISAを通じて投資を行うと税金がかかることはありません。

2023年までの旧制度では、年間の投資可能額は上限40万円、非課税保有期間は20年となっていました。しかし、2024年からは「新NISA」がスタートし、つみたて投資枠として年間120万円まで拡大され、非課税保有期間も無期限になりました。

この制度変更により、積立NISAの魅力は大きく向上したと言われていますが、依然として「やめたほうがいい」という声も存在しています。その理由と真相について、詳しく見ていきましょう。

積立NISAが”やめたほうがいい”と言われる理由

1. 短期間での大きな収益は期待できない

積立NISAは長期的な視点での資産形成を目的とした制度であり、短期間で大きな収益を上げることが目的ではありません。投資信託で短期間に大きな収益を上げることは難しいと言われています。短期間で大きな収益を上げたい場合は、ほかの投資方法を検討する必要があるようです。

2. 投資先が限定されている

つみたてNISAで購入できる商品は、金融庁の基準を満たした約200本の投資信託・ETFのみです。基準を満たさない投資信託やETF、株式や債券などの金融商品は購入できないため、投資の自由度が制限されていると感じる投資家もいるようです。

ある意味では「選べる商品が少ない」というデメリットとも言えますが、反面、金融庁が安定的に長期運用できる商品を厳選しているという側面もあります。

3. 元本保証ではない

つみたてNISAでは、元本保証がないという点が挙げられます。つまり、投資した金額より少ない金額になってしまう元本割れのリスクが存在します。これは投資全般に言えることですが、「元本割れしないだろう」と思って始める初心者にとっては、”やばい”状況になる可能性もある点は理解しておくべきでしょう。

ロシア・ウクライナ関係悪化の影響を受けて、「一時期はマイナス17,000円程のときもあった」という口コミも存在します。このように、社会情勢の影響を受けて資産価値が変動することは避けられません。

4. 自分で判断しなければならないことが多い

つみたてNISAでは、「自分で銘柄選びや売却タイミングを決める必要がある」という点が挙げられます。投資の知識がない初心者にとっては、どの銘柄を選んだらよいのか、いつ売却すればよいのかという判断が難しいと感じることがあるようです。

5. 損益通算や繰越控除ができない

NISAは損益通算や繰越控除の対象外です。損益通算とは、複数の口座の利益と損失を合算(相殺)した利益で税金を計算することです。例えば「口座Aで40万円の損失、口座Bでは20万円の利益」があった場合、損益通算をしないと口座Bの20万円の利益に税金がかかります。

しかし、NISAでは損失が出ても、他の口座の利益と相殺することができないため、税制上の恩恵を受けられない場合があります。

6. 積立投資のみで一括投資ができない

つみたてNISAは、積立投資専用のNISAですので、一括での買付はできません。つみたてNISAで1年間に非課税で投資できる投資金額(非課税投資枠)は年40万円までですが、一度に40万円投資することはできず、定期的な積立が必要です。

一括投資をしたい人には向いていないというデメリットがあるようです。

7. 年間投資上限額に制約がある

2023年までのつみたてNISAでは、年間40万円までしか非課税投資できませんでした。月額に換算するとおよそ3.3万円です。月3.3万円以上投資したい場合、課税口座(特定口座または一般口座)を利用する必要がありました。

2024年からは上限が120万円に引き上げられましたが、それでも多額の資金を運用したい投資家には制約となる可能性があります。

積立NISAに関するよくある誤解

誤解1:「積み立て投資は年間120万円しかできない」

新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが設けられ、つみたて投資枠の利用限度額が年間120万円となります。これを見て「積み立て投資が年間120万円しかできないのか?」と思う人が多いようですが、これは勘違いです。

実際には、成長投資枠を使って積み立てをしても構いません。ですから、年間投資可能額の360万円をすべて積み立て投資に使うことも可能です。

誤解2:「つみたて投資枠での投資は毎月積み立てないといけない」

そういった規定はなく、最低でも年2回積み立てれば良いとされています。これは現在のつみたてNISAでも同じです。したがって毎月ではなく、年2回のボーナス時期だけの積み立てということも可能です。

誤解3:「つみたてNISAで投資できる元本は最大800万円まで」

「つみたてNISA」では、年間40万円まで投資信託などを積み立てで購入でき、その運用益は20年間「非課税」になります。これを見て「『つみたてNISA』で投資できる元本は、年間40万円×20年=800万円まで」と考えてしまう人がいるようですが、実際は最大1000万円までとなっています。

さらに、2024年からの新NISAでは非課税保有限度額が1800万円(うち成長投資枠は1200万円)まで拡大しています。

積立NISAのメリットと好評な点

1. 運用益が非課税

投資の利益が最長20年間非課税になるのが大きなメリットです。投資の利益には通常、20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAで投資して得られた利益は非課税なので、この税金がゼロになります。

2024年からの新NISAでは、この非課税期間が無期限になったため、さらに魅力が増しています。

2. 少額から始められる手軽さ

ネット証券を利用すれば月100円から積立投資が可能です。投資はまだちょっと怖いという方でも、100円からなら気軽に始められると好評のようです。

3. 長期投資による複利効果

つみたてNISAは長期間の積立投資を通じて複利効果を活かせるメリットがあります。長期間運用することで複利効果を味方につけ、効率よくお金を増やすことができるのです。

4. 金融庁が選んだ低コスト商品

「つみたてNISA」で投資できる商品は、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)のみです。商品が絞られている分、選びやすくなっています。また、金融庁のコスト基準によって信託報酬(運用管理費用)の低い商品が選ばれているため、長期的には有利に働く可能性があります。

5. 制度の延長と拡充

つみたてNISAで新規に投資できる期間は当初、2018年から2037年まででしたが、制度改正により2042年まで新規で積立投資できるようになりました。さらに2024年からの新NISAでは、つみたて投資枠の年間投資可能額が120万円に拡大し、非課税保有期間も無期限になりました。

積立NISAの実際の運用結果事例

2019年の運用実績例

ある投資家の例では、2019年に毎日100円ずつ5つの投資信託を積み立てた結果、累計買付金額は12万500円、2019年12月末時点の評価額は13万197円となり、トータルリターンは9,697円(利回り約8%)になったと報告されています。

銘柄ごとの収益を見ると、債券比率の高い保守型や安定型の投資信託に比べ、株式タイプの投資信託が大きく伸びています。特に「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は2万2,600円の投資に対して2万5,290円(+2,690円)と好成績だったようです。

長期運用の効果

2018年からつみたてNISAを始めた場合の例では、2023年2月末時点で「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は投資元本168万円に対して約74.5万円、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は投資元本159万円に対して約54.7万円の利益が出ているという例が紹介されています。

一方で、2022年1月から始めた場合は、2023年2月末時点で「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は投資元本42万円が約42.9万円、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は投資元本42万円が43.4万円と、わずかな利益にとどまっています。

これらの例は、つみたてNISAが短期ではなく長期で成果を出す投資であることを示しています。金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」でも、5年間での投資では元本割れがあるのに対し、20年の投資では元本割れの可能性が減ることが過去データから示されています。

積立NISAが向いている人・向いていない人

積立NISAが向いている人

  1. 長期投資をしたい人:つみたてNISAは20年という長期間の投資で成果を出す投資です。長期間にわたって資産を増やしたいという目標を持っている人に向いています。
  2. 少額から始めたい人:月100円からでも始められるため、少額から投資を始めたい人に適しています。
  3. 税制優遇を活用したい人:投資の利益に対して通常かかる20.315%の税金が非課税になるため、税制優遇を活用して効率的に資産を増やしたい人に向いています。
  4. 手間をかけずに投資したい人:一度積立設定をすれば自動的に投資が続くため、忙しい人や投資に時間をかけたくない人に向いています。

積立NISAが向いていない人

  1. 短期間で大きな成果を出したい人:つみたてNISAは長期間の投資で成果を出す投資です。短期間で大きな成果を出したい人には向いていないようです。
  2. 一括投資をしたい人:つみたてNISAは積立投資専用のため、一括投資をしたい人には向いていません。
  3. 株式などの幅広い商品に投資したい人:つみたてNISAで購入できる商品は金融庁の基準を満たした投資信託・ETFのみのため、個別株式などに投資したい人には向いていません。
  4. 短期間の相場変動に敏感な人:相場が下落すると一時的に元本割れすることがあります。短期間の相場変動にストレスを感じやすい人には向かないかもしれません。
  5. 余裕資金がない人:生活資金として必要なお金を投資に回すのはリスクがあります。まずは生活費の6カ月〜1年分の預貯金を確保してから始めることが推奨されています。

積立NISAを成功させるためのポイント

1. 適切な金融機関選び

手数料が低く商品数が多い金融機関を選ぶことが重要です。各証券会社によって取扱商品数や使い勝手が異なるため、自分に合った金融機関を選ぶことが大切です。

SBI証券や楽天証券などのネット証券は、コストの低さや取扱商品の多さから人気があるようです。

2. 適切な商品選び

信託報酬などのコストが低いファンドを選ぶことが長期的には有利に働きます。特にインデックス型の投資信託は信託報酬が低いため、長期投資に向いていると言われています。

3. 無理のない積立金額設定

家計にムリのない積立金額を設定することが継続の秘訣です。スタート時の勢いで無理な金額で積立を設定してしまうと、いざお金が必要になったときに対処に困ることになるかもしれません。

4. 長期的な視点を持つ

短期的な相場の上下に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが大切です。金融庁のデータによると、5年間での投資では元本割れもあるのに対し、20年間投資を続けると元本割れのリスクが大幅に減少します。

5. 定期的な見直し

投資環境や自分のライフステージの変化に合わせて、定期的に積立計画を見直すことも重要です。特に大きなライフイベント(結婚、出産、住宅購入など)があった場合は、積立金額の調整が必要になる場合もあります。

2024年から始まった新NISAについて

2024年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の2種類が用意されています。

つみたて投資枠の特徴

  • 年間投資可能額:120万円
  • 非課税保有期間:無期限
  • 購入方法:定期かつ継続的な買付
  • 投資対象商品:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託

成長投資枠の特徴

  • 年間投資可能額:240万円
  • 非課税保有期間:無期限
  • 購入方法:いつでも可能
  • 投資対象商品:上場株式・投資信託等

両者を合わせた非課税保有限度額は1800万円(うち成長投資枠は1200万円)となっています。

この新制度により、旧NISAの「つみたてNISA」や「一般NISA」と比べて非課税投資枠が大幅に拡大され、非課税期間も無期限になるなど、より使いやすい制度になりました。

まとめ:積立NISAは本当に”やめたほうがいい”のか?

積立NISAには確かに「短期間での大きな収益が期待できない」「投資先が限定される」「元本保証ではない」などのデメリットがあります。また、投資初心者にとっては「自分で判断しなければならないことが多い」というハードルも存在します。

しかし、こうした点は投資全般に言えることであり、積立NISAに特有のデメリットというわけではありません。むしろ、積立NISAは「運用益が非課税」「少額から始められる」「長期投資による複利効果が期待できる」といったメリットがあります。

さらに、2024年からの新NISAでは、つみたて投資枠が年間120万円に拡大され、非課税保有期間も無期限になるなど、より魅力的な制度になっています。

「積立NISAはやめたほうがいい」という声は、主に短期的な収益を期待する人や、自分で投資判断をするのが苦手な人からのものが多いようです。しかし、長期的な資産形成を目指し、基本的な投資知識を身につけた上で取り組めば、積立NISAは多くの人にとって有効な資産形成の手段になり得ると言えるでしょう。

最終的には、自分の投資目的やリスク許容度、投資期間などを考慮して、積立NISAが自分に合っているかどうかを判断することが大切です。短期的な収益よりも長期的な資産形成を目指す方には、積立NISAは検討する価値のある選択肢の一つと言えるのではないでしょうか。

参考情報

積立NISAについてさらに詳しく知りたい方は、金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」や、各証券会社のウェブサイトをご参照ください。また、2024年からの新NISAについては、金融庁の「新しいNISA」のページで詳細が解説されています。

投資は自己責任で行うものですので、十分な知識を身につけた上で始めることをお勧めします。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも検討してみてはいかがでしょうか。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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