東京海上ホールディングス株式会社(8766)の業績が好調、株価も上昇している理由と将来の展望について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

東京海上ホールディングス株式会社(8766)の業績が好調、株価も上昇している理由と将来の展望について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

東京海上ホールディングス株式会社(8766)の業績や株価を考察、株の買い時を考える

東京海上ホールディングス(8766)は近年、著しい業績向上と株価上昇を実現しています。2020年3月の終値1,650円から2024年5月には4,967円まで上昇し、約3倍もの株価上昇を達成しました。さらに直近では5,709円(2025年3月17日現在)まで上昇しており、上場来高値を更新し続けています。なぜ同社はこれほどまでに好調なのでしょうか。政策保有株式の売却、海外事業の成長、金利・為替環境の変化など、複合的な要因が絡み合っています。

業績の飛躍的向上

東京海上HDの業績は近年、驚異的な成長を遂げています。2024年3月期の純利益は前期比85.7%増の6,958億800万円と大幅な増益となりました。さらに2025年3月期も好調で、第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比3.4倍の9,379億円に急拡大しています。

特筆すべきは2025年3月期の通期見通しで、純利益予想は当初の8,700億円から上方修正され、初の1兆円到達が見込まれています。これは過去最高益を更新するものであり、損害保険会社として極めて高い水準です。

政策保有株式の売却による資本効率向上

業績好調の最大の要因の一つが、政策保有株式の積極的な売却です。東京海上HDは古くからの企業間関係維持のために保有していた政策保有株式を大胆に売却する方針を打ち出し、2029年度末までにゼロにする目標を設定しています。

2024年度だけでも、削減目標を上回る7,810億円分の株式を売却し、通期では9,125億円の削減を見込んでいます。2025年3月期の売却予定額も6,000億円と大規模です。この政策保有株式の売却は、単に売却益をもたらすだけでなく、資本効率の向上につながり、投資家からも高く評価されています。

海外事業の飛躍的成長

戦略的買収の成果

東京海上HDの利益の約6割は海外事業から生み出されています。これは2010年頃から地道に進めてきた海外企業買収戦略が実を結んだ結果です。

同社は、デルファイ(労働保険・福利厚生関連)、HCC(医療過誤特化)、ピュアグループ(高所得者向け個人保険)など、ニッチな分野に特化した保険会社を買収してきました。これらの企業は、大手保険会社が手をつけていない特定分野で高い競争力を持ち、値上げもしやすいという特徴があります。

2024年4-6月期の海外保険事業の純利益は前年同期比48%増の1,407億円と好調で、特に北米を中心に収益が大幅に伸びています。

円安と金利上昇の追い風

マクロ環境の変化も東京海上HDの業績を押し上げています。保険会社の特性として、保険料として集めた資金を運用して収益を得る仕組みがあります。近年の世界的な金利上昇、特にアメリカの高金利は、東京海上HDの資産運用収益の増加につながっています。

また、円安の進行も海外事業の円換算収益を押し上げる要因となっており、2024年度第2四半期末の円安進行だけでも約200億円のプラス効果がありました。国内事業でも円高進行による為替のマイナス影響が縮小し、業績にプラスとなっています。

国内損害保険事業の堅調な成長

国内損害保険事業も着実に成長しています。2024年4-6月期の正味収入保険料(損害保険事業の売上高に相当)は10%増の1兆2,984億円と好調でした。特に火災保険が堅調に推移し、賠償責任保険を含む新種保険の引き受けが伸びています。

自動車保険では修理単価の上昇という課題がありますが、全体としては自動車保険や火災保険の増収が見込まれています。

株主還元の積極化

業績の拡大に伴い、株主還元も強化されています。2025年3月期の年間配当予想は当初の159円から162円に増額修正されました(前期は123円)。これが実現すれば5期連続の増配となります。

2020年3月期から2025年3月期までの5年間で、東京海上HDの年間配当額は「1株あたり75円」から「1株あたり159円」まで、2.1倍に増加しています。これは業績の持続的な成長を示す指標として投資家に好感されています。

また、6,000万株または1,000億円を上限とした自社株買いも発表されており、総合的な株主還元策が株価上昇を支えています。

株価上昇の背景と今後の見通し

これらの要因が複合的に作用し、東京海上HDの株価は2020年3月の終値1,650円から2024年5月の終値4,967円まで3.0倍に上昇。さらに2025年3月17日現在では5,709円となっています。

特に政策保有株式の売却による資本効率向上が、PBR(株価純資産倍率)の上昇をもたらし、従来は1倍前後だったPBRが大きく上昇しています。これは投資家が東京海上HDの資本効率向上を高く評価していることを示しています。

結論:複合的な成長要因と将来への展望

東京海上HDの業績好調と株価上昇は、単一の要因ではなく、以下の複合的な要因によるものです。

  1. 政策保有株式の積極的な売却による資本効率の向上と売却益の貢献
  2. 2010年代から進めてきた海外事業への投資戦略が実を結び、収益の柱に成長
  3. 金利上昇と円安という外部環境の追い風
  4. 国内損害保険事業での堅調な成長
  5. 増配や自社株買いなど株主還元策の強化

これらの要素が総合的に作用し、東京海上HDは損害保険業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。今後も海外事業の成長と資本効率の向上を軸に、持続的な成長が期待されます。

東京海上ホールディングス株式会社の株に投資するための条件を指標などから考えてみた

東京海上ホールディングス株式会社(証券コード:8766)は、日本を代表する保険グループの持株会社です。投資を検討する際に重要となる条件や指標を、最新情報をもとにわかりやすくまとめました。

株価と市場評価

現在の株価と将来性評価

  • 現在株価: 5,580円(2025年3月14日時点)
  • アナリスト目標株価: 6,549円(2025年3月12日時点)
  • 株価上昇余地: 約20%(アナリスト予想平均による)
  • アナリスト評価: 「買い」推奨が主流(強気買い6人、買い2人、中立4人)

主要な投資指標

  • PER(株価収益率): 10.9倍(予想ベース)
    • 株価が1年間の予想利益の10.9倍という水準
  • PBR(株価純資産倍率): 2.18倍
    • 純資産(1株あたり)の2.18倍の価格で取引されている
  • 時価総額: 約11兆372億円
  • ROE(自己資本利益率): 15.80%(高い資本効率を示す)
  • 自己資本比率: 16.9%

配当情報と株主還元

配当の魅力

  • 予想配当利回り: 2.90%
  • 年間配当予想: 159円(中間79.5円、期末79.5円)
  • 配当トレンド: 5期連続増配見込み
  • 配当成長率: 2020年3月期から2025年3月期までの5年間で配当額は75円から159円に2.1倍に増加

株主還元策

  • 増配に加えて、自社株買いも実施
  • 株主優待制度はなし

業績見通しと成長性

業績予想

  • 予想経常利益: 1兆3,800億円(前期比63.8%増)
  • アナリストコンセンサス予想: 1兆4,416億円(前期比71.1%増)
  • 収益源: 海外事業が利益の約6割を占め、成長の原動力に

成長戦略の特徴

  • 海外事業の積極展開: 北米を中心に高い成長率を維持[検索結果から推測]
  • 資産運用方針: 日本在住のグループCIOと米国在住のグループCo-CIOが連携した資産運用体制
  • 政策保有株式の売却: 2029年度末までにゼロにする計画
    • 2024年度から3年間で政策株式残高を半減させる方針
    • 資本効率の向上に貢献し、投資家から高評価

株価パフォーマンス

長期トレンド

  • 2020年3月の終値1,650円から、2024年5月には4,967円まで約3倍に上昇
  • 上場来高値を更新し続けている傾向

投資判断のためのポイント

投資メリット

  1. 好調な業績: 経常利益の大幅な増加が予想されている
  2. 積極的な株主還元: 連続増配と自社株買いによる株主価値向上
  3. 海外事業の成長: 収益の多様化と成長機会の拡大
  4. 資本効率の向上: 政策保有株式の売却による資本効率改善
  5. アナリスト評価: 市場専門家からの高評価

考慮すべきリスク

  1. 金利・為替の変動: 海外事業比率が高いため為替リスクの影響を受けやすい
  2. 規制環境の変化: 保険業界の規制変更によるビジネスへの影響
  3. 自然災害リスク: 気候変動による大規模災害発生のリスク

結論

東京海上ホールディングスは、安定した配当成長と株価上昇トレンドを示しており、中長期投資先として検討する価値があります。特に政策保有株式の売却による資本効率の向上や海外事業の成長が今後の株価上昇を支える可能性があります。投資判断の際は、保険セクター全体の動向や金利・為替環境の変化にも注意しながら検討することが重要です。

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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