SOMPOホールディングス株式会社(8630)の業績が好調、株価も上昇している理由と将来の展望について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

SOMPOホールディングス株式会社(8630)の業績が好調、株価も上昇している理由と将来の展望について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

SOMPOホールディングス株式会社の業績や株価を考察、株の買い時を考える

SOMPOホールディングス株式会社(8630)は近年、顕著な業績向上と株価上昇を実現しています。2023年度に過去最高益を達成し、株価も大幅に上昇するなど、投資家から高い評価を得ています。本レポートでは、その要因を多角的に分析し、同社の成長戦略と今後の見通しについて考察します。

業績の飛躍的向上と上方修正

SOMPOホールディングスは2023年度に修正連結利益2,910億円と過去最高益を更新し、修正連結ROEも10.1%と中期経営計画の目標(10%超)を達成しました。さらに2025年3月期の第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比91.4%増の3466億円と大幅に拡大しています。

この好調な業績を背景に、同社は2025年3月期通期の経常利益予想を当初の3200億円から5500億円へと71.9%上方修正し、前期比12.7%増益、2期連続で過去最高益を更新する見通しとなりました。アナリストコンセンサスによる予想経常利益は587,377百万円(増益率20.4%)とさらに高い水準を見込んでおり、市場の期待の高さを示しています。

株価上昇の実績

SOMPOホールディングスの株価は2024年11月に上場来高値を更新しました。2014年3月の終値884円から2024年11月19日の終値3564円まで、10年間で約4.0倍に上昇しています。特に直近では、2024年の1ヶ月間で25%、1年間では82%という急上昇を記録しました。

業績好調と株価上昇の主要因

1. 海外保険事業の大幅成長

SOMPOの成長を牽引しているのが海外保険事業です。特に現中期経営計画期間において、海外保険事業のトップライン成長は年率+15%を達成し、グループ全体のトップライン成長を年率+8.0%に押し上げています。

海外保険事業のグロス保険料
2020年度: 9,354百万ドル
2023年度: 14,370百万ドル(着地速報)
年率成長率: +15%

海外保険事業は規模拡大や米国、欧州、カナダ、シンガポールにおける地理的拡大を進めており、グループの利益最大化に大きく貢献しています。

2. 国内保険事業の収益構造改革

国内損害保険事業においては、料率適正化や高損対策の強化などにより、火災保険の収益性が着実に改善しています。また、コロナ関連保険金支払いの剥落も業績に大きく貢献しました。2023年度は前年のコロナ禍による保険金支払いや自然災害の影響から回復し、国内損害保険事業は黒字転換を果たしました。

3. 資本効率の向上と政策株式削減

SOMPOホールディングスは政策株式の削減を積極的に進めており、2030年度までに上場政策株式を中心に、適正な競争を阻害する要因となりうる政策株式の保有ゼロを目指しています。

政策株式保有残高の推移
2010年度: 時価残高 8,460億円
2023年度: 時価残高 3,375億円
削減額: 5,427億円

この政策株式削減により資本効率が向上し、ROEの改善につながっています。修正連結ROEは2023年度に10.1%を達成し、2026年度にはIFRSベースで13~15%を目指しています。

4. 積極的な株主還元策

SOMPOホールディングスは11期連続の増配を実施しており、配当額は過去11年間で約6倍に増加しています。

配当額の推移
2014年3月期: 20円
2025年3月期(予想): 132円
増加率: 6.6倍

また、2024年度からは株主還元を強化し、修正連結利益の50%の基礎還元に加え、政策株式売却益(税後)の50%も追加還元とする方針を打ち出しています。この積極的な株主還元策が投資家から高く評価されています。

5. ウェルビーイング事業の拡大

SOMPOは保険事業だけでなく、ウェルビーイング事業を第三の柱として育成しています。具体的には、保険と健康を組み合わせた「インシュアヘルス」商品のラインナップ拡充・拡販による顧客基盤の拡大や、介護事業オペレーターとしてのノウハウを活用した新たな介護サービスの展開などを進めています。

少子高齢化により生じる介護や健康、老後資金の3つにまつわる「不」を解消していくための取り組みは、将来の成長ドライバーとして期待されています。

今後の見通しと課題

SOMPOホールディングスは2026年度の修正連結ROE(IFRSベース)はグローバルピア水準の13~15%、新中計期間の修正EPS成長率は年率+12%超を目標としています。また、2024年度の時価総額約3.8兆円を2030年度までに倍増させる成長ストーリーを描いています。

一方で、アナリストの予想によれば、今後3年間は収益が減少し、年率6.0%の減益が見込まれるとの見方もあります。この予測は、足元の好業績からの反動減を想定したものと考えられますが、株価バリュエーションに影響を与える可能性がある点に注意が必要です。

結論

SOMPOホールディングスの業績好調と株価上昇は、①海外保険事業の高成長、②国内保険事業の収益性改善、③政策株式削減による資本効率の向上、④積極的な株主還元策、⑤ウェルビーイング事業の拡大、といった要因が複合的に作用した結果といえます。

特に注目すべきは、海外事業の拡大によるグループの規模と分散の進展、そして株主還元の強化です。配当利回りは3.7%程度と業界平均を上回る水準となっており、株主にとって魅力的な投資先となっています。

今後も中期経営計画の目標達成に向けて、これらの成長戦略を着実に実行していくことで、企業価値のさらなる向上が期待されます。ただし、業績の先行きに対する慎重な見方も存在するため、今後の四半期決算の推移を注視する必要があるでしょう。

今後の展望

SOMPOホールディングスは「日本発の真のグローバル企業」へと進化することを目指しており、国内外損害保険事業の連携加速やウェルビーイング事業の拡大を通じて、持続的な成長を実現しようとしています。

2026年度の目標達成に向けて順調に進捗している現状を踏まえると、短期的な業績変動はあるものの、中長期的な成長トレンドは維持される可能性が高いと考えられます。投資家としては、四半期ごとの業績動向に注目しつつ、中長期的な成長戦略の進捗を評価していくことが重要でしょう。

SOMPOホールディングス株式会社の株に投資するための条件を指標などから考えてみた

SOMPOホールディングス株式会社(証券コード:8630)は国内最大手の保険会社グループの一つであり、国内損保事業を基盤としつつ海外保険や介護・シニア事業など多角的な事業を展開しています。本レポートでは、同社株式への投資を検討する際のポイントを整理します。

投資判断のための基本情報

事業構造と収益源

SOMPOホールディングスは、国内損保事業、海外保険事業、国内生保事業、介護・シニア事業を中心に展開しています。特に注目すべきは以下の点です。

  • 国内損保事業:グループの安定的なキャッシュフロー創出の中核
  • 海外保険事業:グループの成長ドライバーとして年率+15%の高成長を実現
  • 介護・シニア事業:社会課題解決型の第三の柱として育成中

財務状況の健全性

  • 格付け:S&P「A+(安定的)」、Moody’s「A1(安定的)」など高い格付けを維持
  • 財務健全性:ESR(エコノミック・ソルベンシー・レシオ)232%と強固な財務基盤
  • 2023年度業績:修正連結利益2,910億円(過去最高益)、修正連結ROE 10.1%を達成

投資魅力と成長ポテンシャル

1. 株主還元の充実

SOMPOホールディングスの株主還元は近年大幅に強化されており、以下の特徴があります。

  • 継続的な増配:11期連続の増配を実施、2025年3月期は132円(分割調整後)を予想
  • 高い配当利回り:予想配当利回り2.97%と市場平均を上回る水準
  • 追加還元策:政策株式売却益(税後)の50%を追加還元
  • 自己株式取得:積極的な自己株式取得を実施(2024年11月~2025年5月に上限1,550億円)

2. 成長戦略の明確さ

  • 海外事業の拡大:海外保険事業のトップライン成長率は年率+15%を達成
  • 資本効率の向上:政策株式の削減(2030年度までに保有ゼロを目指す)
  • 中期経営計画目標:2026年度修正連結ROE(IFRSベース)13~15%、修正EPS成長率年率+12%超

3. 事業ポートフォリオの進化

  • グローバル展開:米国、欧州、カナダ、シンガポールへの地理的拡大
  • ウェルビーイング事業:保険と健康を組み合わせた「インシュアヘルス」商品の展開
  • デジタル戦略:介護RDPなどデジタル活用による新たな価値創造

投資する際の考慮点

1. 業績変動要因

  • 自然災害リスク:異常気象による大規模自然災害の発生頻度増加の可能性
  • 海外事業の変動性:海外保険事業の高成長に伴うリスク要因の増加
  • 金利環境の変化:保険業は金利変動の影響を受けやすい特性がある

2. 投資タイミングの判断材料

  • 四半期業績:特に海外保険事業の収益動向に注目
  • 政策株式売却の進捗:2024年度2,000億円以上、中計3年間で6,000億円の削減計画
  • 株価バリュエーション:PER 10.8倍、PBR 1.46倍(2025年3月時点)

3. リスク要因

  • 規制環境変化:保険業界への新たな規制導入の可能性
  • 競争環境の激化:国内保険市場の成熟化による競争激化
  • 新規事業の不確実性:ウェルビーイング事業などの新規分野の成長性

投資戦略のポイント

長期投資向きの特性

SOMPOホールディングスは以下の特性から長期投資に適した銘柄と考えられます。

  • 安定的な配当成長:11期連続増配の実績は長期投資家に魅力的
  • 明確な中長期戦略:2030年度までの成長ストーリーが明確
  • 社会課題解決型ビジネス:介護・シニア事業など社会的価値と経済的価値の両立

投資タイミング

  • 決算発表後:四半期決算の内容を確認した上での投資判断が重要
  • 配当権利確定前:3月末(期末配当)、9月末(中間配当)の権利確定日を意識
  • 株価調整局面:PBR 1.0倍前後の水準は歴史的に見て投資妙味が高い水準

まとめ

SOMPOホールディングス株式会社への投資は、安定した株主還元と海外事業を中心とした成長戦略、そして財務健全性のバランスが取れた投資先として魅力的です。特に長期投資の視点では、継続的な増配と成長戦略の実行による企業価値向上が期待できます。

投資判断にあたっては、四半期ごとの業績進捗、特に海外保険事業の成長率や政策株式削減の進捗状況、自然災害の発生状況などをモニタリングすることが重要です。また、配当権利確定日を考慮したタイミングでの投資も検討の余地があります。

SOMPOホールディングスは、伝統的な保険業からグローバル企業へと進化を続ける過程にあり、中長期的な成長と株主還元の両面から投資対象として検討する価値がある企業といえるでしょう。

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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