愛眼株式会社(9854)の業績が好調、黒字化した理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説


愛眼株式会社の業績回復と黒字化への道程:詳細分析と展望
近年苦戦が続いていた愛眼株式会社(証券コード:9854)が、2025年3月期に黒字転換を見込んでいます。長期にわたる赤字体質からの脱却はどのように実現されつつあるのでしょうか。本稿では、愛眼の業績推移と黒字化に向けた取り組みについて詳細に分析します。
愛眼の業績推移と現状
愛眼は、眼鏡・サングラス・補聴器およびその関連商品の販売を主たる事業とする企業で、大阪市天王寺区に本社を置いています。「メガネの~愛眼」のCMでも知られる同社ですが、近年は厳しい経営環境の中で苦戦を強いられてきました。
直近の業績状況
2025年3月期第3四半期累計(2024年4月~12月)の連結経常損益は3,700万円の赤字となり、前年同期の5,000万円の黒字から赤字に転落していることが報告されています。直近3ヵ月の実績である2024年10-12月期(第3四半期)の連結経常損益も1,800万円の赤字(前年同期は100万円の黒字)となり、売上営業損益率は前年同期の-0.0%から-1.1%に悪化しているようです。
しかしながら、会社側が発表した第3四半期累計の実績と据え置いた通期計画に基づくと、2025年1-3月期(第4四半期)の連結経常損益は1億6,300万円の黒字(前年同期は1億0,900万円の赤字)に浮上する見込みとされています。この第4四半期での大幅な利益改善により、通期では黒字化が見込まれているのです。
過去数年間の業績推移
愛眼の過去数年間の業績を見てみましょう。
- 2024年3月期:売上高146億5,800万円、営業利益▲1億2,300万円、経常利益▲5,900万円、純利益▲1億8,100万円
- 2023年3月期:売上高141億9,800万円、営業利益▲4億7,500万円、経常利益▲3億8,500万円、純利益▲8億300万円
- 2022年3月期:売上高138億400万円、営業利益▲5億8,400万円、経常利益▲4億3,800万円、純利益▲6億9,000万円
- 2021年3月期:売上高135億6,200万円、営業利益▲5億2,200万円、経常利益▲4億4,700万円、純利益▲5億5,700万円
この推移を見ると、2021年3月期から2024年3月期まで4期連続で赤字が続いていますが、売上高は徐々に回復し、赤字幅も縮小してきていることがわかります。特に注目すべき点は、2023年3月期から2024年3月期にかけて経常損失が3億8,500万円から5,900万円へと大幅に縮小していることです。
黒字化への転換点と要因分析
愛眼の業績が回復傾向にあり、2025年3月期には黒字化が見込まれている背景には、いくつかの重要な要因があるようです。
1. 売上高の継続的な改善
2021年3月期以降、愛眼の売上高は4期連続で増加しています。特に2024年3月期第2四半期(2023年4-9月)においては、コロナの影響が顕著だった前年より大幅に売上高が伸びたことが報告されています。品種別では、メガネが99百万円増、サングラスが238百万円増、補聴器が207百万円増と、主要商品カテゴリー全てで売上増加が実現しているようです。
この売上増加傾向は、コロナ禍からの回復とともに、同社の販売戦略の成果が現れ始めているものと考えられます。2022年3月期の売上高138億円から2024年3月期の146億円台へと着実に増加し、2025年3月期通期の予想では更なる売上拡大が見込まれているのです。
2. 徹底した経費コントロールの実施
愛眼は近年、経費削減に積極的に取り組んでいるようです。2024年3月期第2四半期の報告によれば、広告宣伝費(△53百万円)や支払手数料(△6百万円)の削減、改装費用の圧縮など経費コントロールの徹底に努めた結果、販管費比率は67.3%となり、前年同期比で△5.6%改善しました。
経費面では増加要因として人件費(+21百万円)、販売手数料(+23百万円)などの運営コストの上昇があったものの、全体としての経費削減効果によって、営業利益は前年同期比より280百万円改善し、37百万円の黒字になったことが報告されています。
3. 効果的な営業戦略の展開
愛眼は「2024年3月期(64期)の基本方針」として以下の点を掲げ、営業力強化に取り組んでいるようです。
- 店舗特性に合わせたマーケティング施策の強化
- 業務の効率化と働き方改革による組織の活性化
- 顧客体験(CX)を軸とした愛眼ブランド力の強化
- アフターコロナの環境下での事業展開
- DX推進による店舗オペレーションの効率化
- 国家検定資格「眼鏡作製技能士」への切り替え
- ネット通販事業の強化
こうした多角的なアプローチにより、市場環境の変化に対応しながら競争力を高める取り組みが進められているものと思われます。
4. 商品ラインナップの最適化
愛眼は「お客様の暮らしを、より快適に、より豊かにする企業となることを目指し、安心の技術、納得の商品、気持ちに寄り添うサービスを提供します」という経営方針を掲げ、顧客体験価値の最大化を追求しているとのことです。
販売促進面では、お客様のニーズに的確に対応し、お客様視点を第一とする商品開発に注力し、素材・機能面において高品質でお客様満足度の高い商品の品揃えの充実を図っていると報告されています。これにより、単なる価格競争ではなく、価値提供による差別化を進めている様子がうかがえます。
5. 不採算事業の整理
愛眼は事業の選択と集中も進めているようです。海外眼鏡販売事業については、2024年8月20日付をもって清算が結了したことが報告されています。この事業の売上高は2024年1月に最終注文分を出荷して以降発生しておらず、セグメント損失は8百万円(前年同期はセグメント損失20百万円)となっていました。
不採算事業の整理によって、経営資源を収益性の高い事業に集中させる取り組みが行われているものと考えられます。
過去の黒字転換事例から学ぶ
愛眼の過去の業績を振り返ると、2016年3月期には赤字から黒字に転換した実績があります。当時は「眼鏡小売事業の販売単価の改善と補聴器販売の促進などが奏功し既存店売上高が伸長するとともに、経費面での広告宣伝費や改装経費などの支出の低減が寄与し、営業利益、経常利益ともに当初の業績予想を上回りました」と報告されており、8年ぶりに黒字化を達成したとのことです。
2016年3月期の連結経常損益は最終的に2億900万円の黒字となり、前期の3億4,100万円の赤字から大きく改善しました。この過去の事例は、現在進行中の業績改善策と多くの共通点を持っており、今回の黒字転換にも参考になっているものと思われます。
業界環境と競合状況
メガネ小売業界は、大手チェーンの「Zoff」を運営するインターメスティックなどとの競争が激化しています。例えば、インターメスティックは2024年12月期の業績予想として、売上高が前期比9.1%増の434.8億円、経常利益が同17.8%増の40.3億円と、増収増益の見通しを立てているとのことです。
このような競争環境の中で愛眼が業績を改善させていることは、同社の取り組みが一定の成果を上げつつあることを示しているのかもしれません。特に、高品質商品の提供や顧客体験の向上など、単なる価格競争に陥らない差別化戦略が奏功している可能性があります。
財務体質と将来の持続可能性
愛眼の財務状況を見ると、2024年3月期末時点で自己資本比率は86.00%と非常に高く、財務基盤は安定しているといえます。総資産140億7,900万円に対し、純資産は121億300万円を維持しており、資金繰りの面での懸念は少ないようです。
一方で、キャッシュフローの状況には注意が必要かもしれません。2024年3月期の営業キャッシュフローは▲87百万円、投資キャッシュフローは▲166百万円となっており、フリーキャッシュフローは▲253百万円と報告されています。黒字化に向けた取り組みの中で、キャッシュフローの改善も重要な課題となりそうです。
2025年3月期の見通しとチャレンジ
2025年3月期の業績予想については、2024年11月5日に下方修正が行われ、通期の連結経常損益は従来予想の2億6,400万円の黒字から1億2,600万円の黒字(前期は5,900万円の赤字)へと52.3%下方修正されました。
この修正は、第2四半期累計(2024年4-9月)の連結経常損益が当初予想の2億600万円の黒字から一転して1,900万円の赤字となったことに伴うものです。しかしながら、下方修正後も通期では黒字化が見込まれており、特に第4四半期(2025年1-3月)での大幅な利益改善が期待されているようです。
第3四半期までの状況を見ると、2025年3月期第3四半期累計(2024年4-12月)の連結経常損益は3,700万円の赤字となっており、通期で黒字を達成するためには第4四半期で1億6,300万円程度の黒字が必要となります。これは前年同期の1億900万円の赤字から大幅な改善を意味し、季節要因や経費削減効果の表れなど、様々な要因が寄与する必要があるでしょう。
黒字化実現への課題と展望
愛眼が持続的な黒字体質を確立するための課題としては、以下のような点が考えられます。
1. 粗利率の改善
2024年3月期第2四半期では粗利率が1.7%減少したと報告されており、収益性向上のためには粗利率の改善が重要な課題となるでしょう。高付加価値商品の販売強化やコスト効率の良い仕入れ体制の構築などが必要かもしれません。
2. デジタル戦略の加速
愛眼は「DX推進による店舗オペレーションの効率化」や「ネット通販事業の強化」を基本方針に掲げていますが、オンライン競合との差別化や実店舗との連携強化など、デジタル戦略の更なる進化が求められるでしょう。
3. 新たな顧客層の開拓
愛眼が長期的な成長を実現するためには、既存顧客基盤の維持・拡大に加え、若年層など新たな顧客層の開拓も不可欠です。「ねころりんシリーズ」など特徴的な商品の開発や、「子どもメガネ専門店『アイフィーあいがん』」のリニューアルなど、新たな顧客層を取り込む取り組みが重要になると思われます。
まとめ:持続的成長への道筋
愛眼は、長期にわたる赤字体質からの脱却に向けて着実に歩みを進めているようです。売上高の改善、経費コントロールの徹底、効果的な営業戦略の展開、商品ラインナップの最適化、不採算事業の整理などの取り組みにより、業績は回復基調にあるといえるでしょう。
2025年3月期の通期黒字化が実現できれば、それは同社の経営改革の大きな節目となるはずです。しかし、黒字化は目標の一つに過ぎず、持続的な成長のためには、引き続き市場環境の変化に柔軟に対応しつつ、差別化戦略を強化していくことが求められるでしょう。
高い自己資本比率という財務基盤の強みを活かしながら、顧客体験の向上、デジタル戦略の推進、新たな顧客層の開拓などに取り組むことで、愛眼は眼鏡小売業界における存在感を高めていく可能性があります。市場競争は厳しさを増していますが、同社固有の強みを活かした経営戦略の展開が、今後の業績に大きく影響するものと思われます。
今後の財務報告や経営計画の発表に注目しながら、愛眼の持続的成長への道のりを見守っていくことが重要であるといえるでしょう。
愛眼株式会社の概要
愛眼株式会社は、大阪府大阪市天王寺区に本社を置く眼鏡・コンタクトレンズ・補聴器などの販売を行うチェーンストアです。創業は1941年、設立は1961年で、80年以上の歴史を持つ老舗企業です。同社は近畿地方を地盤としながら全国展開を進めており、直営店やフランチャイズ店を含む約300店舗を運営しています。また、中国にも進出しており、グローバルな展開も行っています。
事業内容
愛眼株式会社の主な事業内容は以下の通りです。
- 眼鏡・サングラス・補聴器の販売:専門店として高品質な商品を提供しています。
- チェーン展開:「メガネの愛眼」「AIGAN」「SYZ」など複数のブランドで店舗を運営。
- アイスタイリングサービス:顧客のライフスタイルや趣味に合わせた眼鏡選びを提案する独自サービス。
- SDGsへの取り組み:目や耳の健康をテーマにした商品・サービス提供を通じて社会的価値を創出しています。
業界内でのポジショニング
眼鏡業界では、愛眼株式会社は市場シェア第4位に位置しており、ジンズHDやZoffなど大手競合と比較すると規模は小さいものの、地域密着型の経営が特徴です。特に近畿地方で強い地盤を持ち、シニア層や補聴器市場への対応力が評価されています。
強み
- 技術力:視力検査や眼鏡加工技術にこだわりがあり、顧客満足度で高評価を得ています。
- 無借金経営:財務基盤が安定しており、堅実な経営が特徴です。
- 地域密着型:地域に根ざした店舗展開と顧客サービスが強みとなっています。
- SDGs対応:健康や福祉に配慮した商品開発で社会的価値を提供しています。
弱み
- 競争激化:ジンズHDやZoffなど低価格路線の競合他社との価格競争が課題です。
- ブランド力不足:長い歴史があるものの、ブランド認知度や統一感に欠ける点が指摘されています。
- 成長鈍化:売上成長率や純利益推移が停滞しており、市場環境への対応力が求められています。
経営方針と展望
愛眼株式会社は、「安心の技術」「納得の商品」「気持ちに寄り添うサービス」を提供することを経営方針とし、お客様の暮らしを快適かつ豊かにすることを目指しています。また、新しい顧客体験価値を創出する取り組みとして、「アイスタイリングサービス」を展開し、顧客ニーズへの対応力向上に注力しています。
将来的には、補聴器市場やシニア層への対応強化、そして海外市場でのさらなる拡大が期待されています。しかしながら、競合他社との差別化戦略やブランド力向上が課題となっており、これらへの取り組みが成長に不可欠です。
働きやすさ
愛眼株式会社では育休・産休制度が整備されており、女性社員の取得率は100%と高い水準です。また時短勤務制度なども導入されており、働きやすい環境作りに注力しています。これらの施策は社員満足度向上にも寄与している一方で、人材育成や若手社員への支援体制強化が求められるとの声もあります。
まとめ
愛眼株式会社は地域密着型経営と技術力で一定の評価を得ている一方で、競争激化や成長鈍化という課題に直面しています。同社が持続的な成長を遂げるためには、ブランド力向上と差別化戦略、新規市場への積極的な進出が鍵となるでしょう。
愛眼の2016年3月期における過去の黒字化成功事例は、現在の状況にも多くの示唆を与えています。当時も販売単価の改善、補聴器販売の促進、経費削減などが奏功し、8年ぶりの黒字化を実現しました。現在の取り組みにもこれらの要素が含まれていることから、過去の成功体験が現在の経営戦略にも活かされているのではないかと考えられます。
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