株式会社デザインワン・ジャパン(6048)の業績が悪化、赤字になり株価も低迷している理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

株式会社デザインワン・ジャパン(6048)の業績が悪化、赤字になり株価も低迷している理由と将来の展望~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

株式会社デザインワン・ジャパンの業績悪化と株価低迷の原因分析

デザインワン・ジャパン(証券コード:6048)は近年、著しい業績悪化に直面しており、赤字幅が拡大する中で株価も低迷しています。主力事業の停滞、子会社の収益性悪化、そして構造的な経営課題が相互に影響し合い、同社の経営状況は厳しさを増しています。本レポートでは、財務データや企業開示情報を精査し、同社の現状と業績悪化の本質的な要因について多角的に分析します。

業績悪化の全体像

赤字拡大の推移

デザインワン・ジャパンの業績は近年急速に悪化しています。2024年8月期の最終損益は、当初予想の1億4600万円の赤字から2億6000万円の赤字へと下方修正されました。前期(2023年8月期)の最終赤字2700万円と比較すると、赤字幅は大幅に拡大しています。営業損益も1億4400万円の赤字(前期は2500万円の黒字)、経常損益も1億4000万円の赤字(前期は5600万円の黒字)と悪化しており、収益構造全体が大きく毀損しています。

さらに懸念されるのは、この悪化傾向が一時的なものではなく継続している点です。2025年8月期第1四半期(2024年9月-11月)の連結経常損益は8600万円の赤字(前年同期は2900万円の赤字)と赤字幅が拡大し、売上営業損益率も前年同期の-5.1%から-23.8%へと急速に悪化しています。このような継続的な業績悪化は市場の信頼を大きく損ない、株価にも悪影響を与えています。

売上高の推移と収益性

売上高においても同社は減収傾向を示しています。2024年8月期の連結実績は22億6400万円で、前期比6.7%の減少となりました。特に2023年9月から2024年2月の第2四半期連結累計期間の売上高は11億3700万円と前年同四半期比7.7%減少し、営業損益は7500万円の損失(前年同四半期は5700万円の利益)に転落しています。

収益性の観点からも状況は深刻で、売上総利益は前期比16.8%減少し、売上総利益率の低下が明らかです。これは単なる売上高の減少だけでなく、収益構造そのものが悪化していることを示しています。

業績悪化の主要因

主力事業「エキテン」の低迷

デザインワン・ジャパンの業績悪化の最大の要因は、同社の主力事業である店舗情報口コミサイト「エキテン」の低迷です。「エキテン」は店舗が会員登録することで情報を掲載できるサービスですが、有料店舗会員数は前連結会計年度末比1,343店舗減少し、15,099店舗にまで落ち込みました。この会員数減少は直接的な売上高減少につながっています。

インターネットメディア事業全体の売上高は7億1600万円(前年同四半期比16.1%減)となり、セグメント利益も92千円の損失(前年同四半期は1億1300万円の利益)に転落しました。これは「エキテン」の競争力低下や顧客獲得・維持の困難さが増していることを示唆しています。

子会社の収益性悪化とのれん減損

業績悪化のもう一つの大きな要因は、子会社の収益性悪化とそれに伴うのれんの減損処理です。特に連結子会社のオコマリ株式会社においては、現在の事業環境を踏まえた事業計画見直しの結果、株式取得時に認識したのれんについて9200万円の減損処理を行い、特別損失として計上しました。

オコマリ株式会社は専門業者(遺品整理、片付け等)のマッチング・サイトを運営していますが、大口取引先からの紹介案件が低調に推移し、減収となりました。この状況は「当初想定していた収益の達成は困難」と評価され、のれんの減損につながりました。

また、DXソリューション事業においても、ベトナムのシステム開発子会社Nitro Tech Asia Inc Co. Ltd.を活用したオフショア開発事業が伸び悩んでいます。子会社の不振が全体の業績を圧迫している状況がうかがえます。

構造的なコスト問題

デザインワン・ジャパンは販売管理費の抑制に努めた結果、2024年8月期の販売管理費は前期比3.8%減少しましたが、売上高の減少と子会社の原価増加がそれを上回り、収益性は大きく悪化しています。さらに、本社移転に関わる一時的な費用発生も利益を圧迫する要因となりました。

構造的な問題として、売上減少に対してコスト構造を十分に調整できていないことが挙げられます。2024年9月-11月期の売上営業損益率が-23.8%という数字は、現在の事業規模に対して固定費が過大である可能性を示唆しています。

株価低迷の背景

業績悪化と市場評価

デザインワン・ジャパンの株価低迷は、上記の業績悪化を反映したものと考えられます。継続的な赤字拡大と下方修正の繰り返しは、投資家の信頼を損ない、将来の成長性に対する疑念を生じさせています。特に、2022年には「今期最終を一転赤字に下方修正」、2024年には「今期最終を赤字拡大に下方修正」と繰り返し業績予想を下方修正しており、経営陣の予測能力や事業コントロール能力に対する市場の不信感を強めています。

日本のスタートアップ企業に共通する課題

日本のスタートアップ企業には「初値天井」と呼ばれる現象がしばしば見られます。これは上場時の初値をピークとして、その後株価が低迷する現象を指します。2019年から2022年11月までにIPOした計369社のうち、初値よりも執筆時点の株価が低い企業は272社と全体の73.7%に達しており、これは日本の新興企業に共通する課題です。

デザインワン・ジャパンも例外ではなく、この「初値天井」の傾向に加えて業績悪化が重なり、株価低迷が長期化していると考えられます。上場後の成長戦略の実行や収益モデルの確立の難しさが表れています。

経営戦略の問題点と今後の課題

事業ポートフォリオ管理の失敗

デザインワン・ジャパンの業績悪化の背景には、事業ポートフォリオ管理の失敗があります。子会社を通じた事業の多角化を積極的に促進してきましたが、オコマリ株式会社の事例に見られるように、M&A後の統合管理やシナジー創出に課題があったと考えられます。株式取得時に期待した成長を実現できず、のれんの減損という形で損失が表面化しています。

また、主力事業の「エキテン」が低迷する中で、新規事業が十分に成長していないことも大きな問題です。HRソリューション事業は「量的な重要性が増した」として報告セグメントへ変更されましたが、全体の業績を補うほどの成長には至っていません。

収益構造改革の必要性

デザインワン・ジャパンが今後回復するためには、抜本的な収益構造改革が必要です。売上営業損益率が-23.8%という数字は、現在のビジネスモデルが持続可能でないことを示しています。コスト削減だけでなく、収益性の高い事業への経営資源の集中、または低収益事業からの撤退などの大胆な経営判断が求められるでしょう。

特に「エキテン」事業については、有料会員減少に歯止めをかける新たな価値提案や、収益モデルの見直しが急務となっています。インターネットメディア業界の競争は激化しており、差別化戦略が不可欠です。

結論

デザインワン・ジャパンの業績悪化と株価低迷は、主力事業「エキテン」の低迷、子会社の収益性悪化とのれん減損、そして構造的なコスト問題など複合的な要因によるものです。単なる景気変動や一時的な要因ではなく、ビジネスモデルの持続可能性に関わる本質的な課題が露呈していると考えられます。

今後同社が業績を回復させるためには、「選択と集中」による事業ポートフォリオの見直し、収益構造の抜本的改革、そして中核事業の競争力強化が不可欠です。市場からの信頼回復には、明確な成長戦略の提示とその着実な実行が求められるでしょう。投資家にとっては、これらの取り組みの進展を注視することが重要となります。

株式会社デザインワン・ジャパンについて

株式会社デザインワン・ジャパン(DesignOne Japan, Inc.)は、東京都新宿区に本社を構えるインターネットメディア企業であり、口コミサイト「エキテン」の運営を主軸とした事業を展開しています。同社は2005年に設立され、2025年現在では東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

会社概要

  • 設立: 2005年9月13日
  • 本社所在地: 東京都新宿区新宿2-16-6 新宿イーストスクエアビル
  • 資本金: 6億48百万円
  • 従業員数: 連結で177名(2024年8月時点)
  • 代表者: 高畠靖雄

事業概要

株式会社デザインワン・ジャパンの主な事業は以下の通りです。

1. インターネットメディア事業

同社の中心的なサービスは「エキテン」という口コミサイトの運営です。「エキテン」は店舗情報や口コミを提供するプラットフォームであり、飲食店、美容室、医療機関など幅広いジャンルの店舗が登録されています。2021年8月末時点で約519万店舗が掲載されており、累計口コミ数は約370万件に達しています。ビジネスモデルとしては、無料掲載店舗から有料掲載店舗への転換を促し、月額掲載料を収益源とするフリーミアムモデルを採用しています。

2. DXソリューション事業

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を目的としたサービスを提供しています。具体例として、紙媒体とウェブ広告効果を統合的に分析できるSaaS「DEECH」を展開しており、地域マーケティングのデジタル化を支援しています。

3. HRソリューション事業

ナイトワーク出身者向けの人材紹介サービス「昼ジョブ」を運営しています。このサービスは夜職から昼職への転職支援を行い、コロナ禍で注目を集めました。

4. ITオフショア開発

2019年にはベトナムのシステム開発会社Nitro Tech Asia Incを子会社化し、低コストかつ高品質なシステム開発サービスを提供しています。

業界内でのポジショニング

株式会社デザインワン・ジャパンは、日本国内における口コミサイト運営企業として一定の知名度を持っています。「エキテン」は地域密着型の情報提供プラットフォームとして、多くの中小企業や店舗が利用している点が特徴です。また、DX支援やHRソリューション事業など、多角的な事業展開も行っています。

強み

  1. 口コミサイト「エキテン」の規模: 「エキテン」は日本国内で最大級の口コミサイトであり、多くの店舗情報が登録されています。これにより、地域活性化や中小企業支援に貢献しています。
  2. 多角的な事業展開: インターネットメディア事業以外にもDXソリューションやHRソリューションなど、新たな市場ニーズに対応する事業領域を持っています。
  3. 安定した収益基盤: フリーミアムモデルによる収益構造が安定しており、大規模なストック型ビジネスとして機能しています。

弱み

  1. 競合他社との競争激化: 他の口コミサイトや広告プラットフォームとの競争が激しく、市場シェア拡大が課題となっています。
  2. 新規事業創出の遅れ: 新たな収益源となる事業が少なく、既存事業への依存度が高い点が課題です。
  3. 技術力低下: エンジニアの離職率が高く、それに伴い開発力が低下しているとの指摘があります.

展望

今後は、「エキテン」のさらなる拡充やDXソリューション事業の拡大による収益多様化が期待されます。また、人材紹介サービス「昼ジョブ」の需要増加も成長要因となる可能性があります。ただし、競合他社との差別化や技術力向上が重要な課題となります.

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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