日銀利上げで住宅ローンの変動金利はどうなる?2025年以降の見通しと対策

日銀利上げで住宅ローンの変動金利はどうなる?2025年以降の見通しと対策
ライター:関野 良和

長年続いたマイナス金利政策が終わり日銀が利上げすることで住宅ローンの変動金利に及ぼす影響とは

2024年、日本の金融政策は大きな転換点を迎えました。長年続いたマイナス金利政策が終わり、日本銀行は利上げに踏み切りました。この動きは、多くの人々の生活に直接的な影響を与えることが予想されます。特に、住宅ローンを組んでいる方や、これから住宅購入を考えている方にとっては、非常に重要な問題となっています。

本記事では、日銀の利上げが住宅ローン、特に変動金利型ローンにどのような影響を与えるのか、2025年以降の見通しはどうなるのか、そしてどのような対策を取るべきかについて、詳しく解説していきます。

この記事を読むことで、以下のことがわかります。

  • 日銀の金融政策変更の背景と住宅ローンへの影響
  • 変動金利型住宅ローンの仕組みと金利上昇時のリスク
  • 2025年以降の金利動向予測と住宅ローン借入者への影響
  • 金利上昇に備えるための具体的な対策と注意点

日銀利上げで住宅ローンの変動金利はどうなる?2025年以降の見通しと対策

1. 日銀の金融政策転換と住宅ローンへの影響

マイナス金利政策の終焉と利上げの背景

2024年3月、日本銀行はついにマイナス金利政策を解除し、7月には0.25%の利上げを実施しました。この政策転換の背景には、長年の課題であったデフレからの脱却と、円安の是正があります。日本経済がようやくデフレ脱却の兆しを見せ始め、インフレ率が日銀の目標である2%に近づいてきたことが、この決断を後押ししました。

住宅ローン金利への影響

日銀の政策金利の引き上げは、銀行間で資金を融通し合う際の金利(短期金利)に直接影響を与えます。この短期金利の変動は、住宅ローンの変動金利にも波及します。具体的には、2024年10月から多くの金融機関で住宅ローンの変動金利が上昇し始めました。

<用語解説>
政策金利: 中央銀行が金融市場に供給する資金の金利のこと。日本では、無担保コールレート(オーバーナイト物)が代表的な政策金利として知られています。この金利の変動は、市中の様々な金利に影響を与えます。

2. 変動金利型住宅ローンの仕組みと金利上昇時のリスク

変動金利型住宅ローンの特徴

変動金利型住宅ローンは、市場金利の変動に応じて金利が変わるタイプのローンです。一般的に、固定金利型と比べて当初の金利が低いことが特徴です。しかし、その分、将来の金利上昇リスクを借入者が負うことになります。

金利上昇時のリスクと返済額の変化

金利が上昇すると、返済額も増加します。例えば、借入額5,000万円、返済期間35年の住宅ローンを変動金利0.38%で借りている場合、金利が0.1%上昇すると、毎月の返済額が約2,200円増加します。この増加額は一見小さく見えますが、長期間にわたって積み重なると、総返済額に大きな影響を与える可能性があります。

返済額の急激な上昇を防ぐ仕組み

変動金利型住宅ローンには、返済額の急激な上昇を防ぐ仕組みが組み込まれています。具体的には以下の2つがあります。

  1. 5年ルール:金利が変動しても、5年間は返済額が変わりません。
  2. 125%ルール:返済額の見直し時に、前回の返済額の125%(1.25倍)までしか増加しません。

これらの仕組みにより、短期的な金利上昇の影響は緩和されますが、長期的には返済総額の増加や返済期間の延長につながる可能性があります。

<用語解説>
元利均等返済: 住宅ローンの返済方式の一つで、毎月の返済額(元金と利息の合計)が一定になるよう設定される方式。金利が変動すると、返済額に占める元金と利息の割合が変化します。

3. 2025年以降の金利動向予測と住宅ローン借入者への影響

今後の金利動向予測

2025年以降の金利動向については、経済状況や日銀の政策次第で変わる可能性がありますが、多くのエコノミストは緩やかな金利上昇を予想しています。日本経済のインフレ率や景気動向、そして世界経済の状況などが、今後の金利決定に大きな影響を与えるでしょう。

住宅ローン借入者への影響

金利上昇が続く場合、変動金利型住宅ローンの借入者は以下のような影響を受ける可能性があります。

  1. 毎月の返済額の増加
  2. 返済総額の増加
  3. 返済期間の延長(場合によっては)

例えば、借入額5,000万円、返済期間35年の住宅ローンで、金利が0.4%から2.2%に上昇した場合、月々の返済額は約12.8万円から16.4万円に増加します。ただし、125%ルールにより実際の返済額は15.9万円に抑えられます。

固定金利型との比較

金利上昇局面では、固定金利型住宅ローンの魅力が相対的に高まります。しかし、変動金利型が固定金利型よりも不利になるには、さらなる金利上昇が必要です。一般的に、変動金利型が固定金利型よりも有利でなくなるには、6回以上の追加利上げが必要だと言われています。

4. 金利上昇に備えるための対策

繰り上げ返済の活用

金利上昇に備える最も効果的な方法の一つは、繰り上げ返済です。特に、借入れ開始から10年間は元金の返済が進みにくいため、この期間に積極的に繰り上げ返済を行うことで、将来の金利上昇リスクを軽減できます。

返済計画の見直し

金利上昇を見据えて、返済計画を見直すことも重要です。具体的には以下のような対策が考えられます。

  1. 返済額の引き上げ:可能であれば、現在の返済額を自主的に増やし、元金の返済を進める。
  2. 返済期間の短縮:可能な範囲で返済期間を短縮し、総返済額を抑える。
  3. 固定金利への切り替え:金利上昇リスクを避けたい場合、固定金利への切り替えを検討する。

資産運用との併用

低金利環境下では、住宅ローンの返済と並行して資産運用を行うことも一つの選択肢です。ただし、資産運用にはリスクが伴うため、自己の資金状況やリスク許容度を十分に考慮する必要があります。

<用語解説> 繰り上げ返済: 住宅ローンの返済において、予定されている返済額以上の金額を支払うこと。これにより、借入残高を早期に減らし、総返済額を抑えることができます。

5. 変動金利型住宅ローンの今後と対策

日銀の金融政策転換により、住宅ローンの金利環境は大きな転換点を迎えています。特に変動金利型住宅ローンの借入者は、今後の金利動向に注意を払う必要があります。

2025年以降も緩やかな金利上昇が予想される中、以下の点に注意しましょう。

  1. 定期的な返済状況の確認:金利変動や返済額の変化を定期的にチェックする。
  2. 繰り上げ返済の活用:可能な範囲で繰り上げ返済を行い、借入残高を減らす。
  3. 返済計画の柔軟な見直し:金利動向に応じて、返済額や返済期間の見直しを検討する。
  4. 固定金利への切り替え検討:リスク回避のため、固定金利への切り替えも選択肢の一つとして考える。
  5. 資産運用との併用:自己のリスク許容度を考慮しつつ、資産運用も検討する。

変動金利型住宅ローンは、依然として多くの借入者にとって魅力的な選択肢です。しかし、金利環境の変化に応じて、自身の返済計画を柔軟に見直していくことが重要です。金融リテラシーを高め、適切な判断と行動を取ることで、将来の金融リスクに備えましょう。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としている。 港区を中心にグルメ情報にも精通しており、独自の切り口でレポートを行う。
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