給付型奨学金ファンド「サステナブル奨学金」が運用を開始


新しい形の奨学金支援が始動~「サステナブル奨学金」が運用開始、10億円超の支援を集める
近年、大学や専門学校など高等教育の学費負担が家庭に重くのしかかる中、奨学金制度のあり方が再び注目を集めています。そんな中、2025年4月、三菱UFJ信託銀行と株式会社ガクシーによる新たな奨学金制度「サステナブル奨学金」の運用が正式にスタートしました。この取り組みは、寄付された資金を運用し、その運用益を原資として学生に給付型奨学金を提供する、日本初の仕組みです。
三菱UFJ信託銀行がファンドを運用し、給付業務を日本最大級の奨学金プラットフォーマーであるガクシーが担当することで、資金の流れから学生への支給までをスムーズに繋げる構造が実現しました。加えて、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)グループ6社による総額2億円の寄付も本年度中に予定されており、大きな社会的インパクトが期待されています。
運用益を活用した「持続可能な奨学金制度」
これまで日本の奨学金制度は、主に返済義務のある貸与型が中心でした。一方、「サステナブル奨学金」は、寄付された元本を取り崩すのではなく、その資金を運用して得た利益(運用益)を給付型奨学金に充てるという革新的な仕組みです。
このモデルにより、資金が一度限りで消費されることなく、長期的かつ安定的に奨学金の支給が可能になります。つまり、寄付した人の想いが時間を超えて持続的に学生支援へと繋がることになります。
ファンドの運用を担当する三菱UFJ信託銀行は、信託業務における豊富な実績を持ち、資産の安全性や透明性が高く評価されています。金融機関としての専門性を活かしながら、教育支援という社会貢献活動に取り組む姿勢は注目に値します。
給付事務を担うのは、日本最大級の奨学金プラットフォーム「ガクシー」
この奨学金の給付事務を担うのは株式会社ガクシーです。同社は、全国の奨学金情報約1万7000件を網羅した情報サイト「ガクシー」や、奨学金の申請・選考・支給業務を一元管理できる「ガクシーAgent」などを展開しており、多数の奨学金事業者と学生をつなぐプラットフォームとして信頼を集めています。
これまで、奨学金の情報は分かりづらく、学生や保護者が適切な制度を見つけるのが困難なことも少なくありませんでした。ガクシーの存在により、誰もが平等に情報へアクセスし、自分に合った支援を見つけやすくなる環境が整いつつあります。
寄付を通じた社会課題解決への挑戦
MUFGグループは、本サービスを通じて「教育格差の是正」という社会課題の解決を目指しています。グループのパーパスである「世界が進むチカラになる。」のもと、従来の金融業務にとどまらず、寄付やボランティアなどを通じた社会貢献活動を積極的に展開してきました。
特に注目すべきは、三菱UFJ信託銀行自身が1億円を寄付した点です。さらに、MUFG傘下の6社(三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券HD、三菱UFJニコス、三菱UFJアセットマネジメント、アコム)からも、本年度中に総額1億円の寄付が予定されており、支援の輪は広がりを見せています。
奨学金の未来と「サステナブル奨学金」の意義
日本では現在、大学生の約2人に1人が奨学金を利用しているといわれています。その多くが返済を前提とした制度であり、卒業後に数百万円単位の借金を背負う若者も珍しくありません。
「サステナブル奨学金」の仕組みは、こうした若者たちの経済的負担を軽減し、真に学びたい人が自由に教育を受けられる社会を目指す大きな一歩です。しかも、ただの慈善活動ではなく、資産運用を基盤とした持続可能な支援スキームである点が、これまでの奨学金制度とは一線を画します。
教育は未来への投資です。特に、技術革新や社会変化が急速に進む現代において、若い世代が安心して学べる環境の整備は、社会全体の活力にも直結します。
今後の展開と課題
今後、「サステナブル奨学金」がどのように拡大していくのか、全国の他の金融機関や企業がどのように連携を図るのかが注目されます。また、ファンド運用の成果や奨学金受給者の声などが蓄積されることで、その効果と社会的意義が一層明確になるでしょう。
一方で、資産運用のリスクや経済環境の変動など、不確定要素も存在します。こうした課題にどう向き合い、透明性と信頼性を保ちつつ制度を運営していくかが、今後の鍵を握ります。
それでも、今回のような企業・金融機関・スタートアップが連携した新たな社会的挑戦は、教育支援の未来に希望をもたらすものです。
