JTG証券がグラナイトシェアーズ社運用の米国個別株に連動するブルベアETF10銘柄の取り扱いを開始

JTG証券がグラナイトシェアーズ社運用の米国個別株に連動するブルベアETF10銘柄の取り扱いを開始
ライター:関野 良和

【JTG証券が新たに取り扱い開始】個別米国株に連動するブルベアETF10銘柄、今注目の“攻めと守り”の新戦略

米国株の値動きがさらに激しくなる中、新たな選択肢が登場

2025年4月9日、JTG証券(Jトラストグローバル証券株式会社)は、米グラナイトシェアーズ社が運用するブルベアETF10銘柄の取り扱いを開始しました。このETF群は、個別の米国企業9社の株価に連動し、日々の値動きに対して2倍の利益を狙う「ブル型」、もしくは反対の値動きで利益を狙う「ベア型」で構成されています。

取り扱い開始の背景には、2025年1月に再就任したトランプ大統領による通商政策の転換があります。4月2日には全世界への一律関税導入が発表され、市場では貿易戦争の再燃や米国財政の不安拡大が懸念されています。こうした不確実性の高まりにより、短期的な市場変動を捉えるブルベア型ETFのニーズが増加しています。

JTG証券はこれまでもエヌビディアなど一部の人気ハイテク株に連動するETFを取り扱っていましたが、今回の追加により、より多様な投資家ニーズに応える体制を整えたことになります。

今回取り扱い開始となったETF銘柄一覧(ブル型9銘柄+ベア型1銘柄)

ティッカー 銘柄 対象企業 特徴
AMDL 2倍ロングAMD アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD) 日次変動率の200%を目指す
BABX 2倍ロングBABA アリババ(BABA) 中国のEC大手
CONL 2倍ロングCOIN コインベース(COIN) 仮想通貨取引所
CONI 1倍ショートCOIN コインベース(COIN) ベア型(-100%)
CRWL 2倍ロングCRWD クラウドストライク(CRWD) サイバーセキュリティ企業
FBL 2倍ロングMETA メタ(旧Facebook) SNSの巨人
MULL 2倍ロングMU マイクロンテクノロジー(MU) メモリ製造
PTIR 2倍ロングPLTR パランティア(PLTR) データ解析
TSMU 2倍ロングTSM 台湾セミコンダクター(TSMC) 世界最大の半導体製造受託企業
UBRL 2倍ロングUBER ウーバー(UBER) モビリティサービス企業

これらはすべてNASDAQ GM市場に上場されており、米国の取引時間中に自由に売買が可能です。

ブルベアETFとは?初心者のためのわかりやすい解説ガイド

ブルベアETFは相場の値動きを活かした投資商品です。株式市場の変動を倍率化したり、逆向きに動かしたりするその特徴から、近年人気が高まっています。この記事では、投資初心者の方でも理解できるよう、ブルベアETFの基本から活用法まで詳しく解説します。

ブルベアETFの基本概念と仕組み

ETFとは何か?

ETF(上場投資信託)は、株式市場に上場している投資信託のことです。通常の株式と同じように取引所で売買でき、特定の株価指数や資産に連動するように設計されています。その中でも「ブルベアETF」は特殊な値動きをするETFです。

ブル型とベア型の違い

ブルベアETFには大きく分けて「ブル型」と「ベア型」の2種類があります。

ブル型ETF(レバレッジETF)は、連動する指数の変動率の倍数(多くは2倍や3倍)で動くように設計されています。例えば、日経平均株価が1日で5%上昇した場合、ブル型2倍ETFは10%上昇します。同様に、指数が5%下落した場合は10%下落します。

ベア型ETF(インバースETF)は、連動する指数とは反対方向に動くように設計されています。例えば、日経平均株価が5%上昇した場合、ベア型ETFは5%下落します。逆に指数が5%下落した場合は5%上昇します。

名前の由来

「ブル(Bull)」と「ベア(Bear)」という名称は市場用語に由来します。ブルは雄牛が角を下から上へ突き上げる仕草から「上昇相場」を、ベアは熊が前足を振り下ろす仕草から「下落相場」を表しています。つまり、ブル型は上昇相場で強く、ベア型は下落相場で強いETFという意味が込められています。

ブル型ETF(強気型)の特徴と活用法

少ない資金で大きなリターンを狙える

ブル型ETFの最大の魅力は、少ない資金で大きなリターンを狙えることです。例えば100万円の資金がある場合、通常のETFでは指数が20%上昇すれば20万円の利益ですが、ブル型2倍ETFなら同じ条件で40万円の利益を得られる可能性があります。

活用例

例えば「米国株が短期的に上昇する」と予想する場合、S&P500に連動するブル型3倍ETF(例:SPXL)を買うことで、S&P500の3倍のリターンを狙うことができます。

ただし、下落時のリスクも同様に大きくなります。指数が10%下落すると、2倍のブル型ETFでは20%、3倍のブル型ETFでは30%の損失になる可能性があります。

ベア型ETF(弱気型)の特徴と活用法

リスクヘッジとしての活用

ベア型ETFの大きな特徴は、相場が下落している時に価値が上がることです。これを活用すれば、保有している株式の価値下落をカバーするリスクヘッジが可能になります。

空売りを使わないリスクヘッジ

従来、相場下落に備えるには個別銘柄の空売りや先物売りなどが必要でしたが、ベア型ETFなら「買い」の取引だけでリスクヘッジができます。これは信用口座が不要で、初心者にも取り組みやすい利点があります。

下落相場での積極的な利益追求も可能

単に持ち株のリスクヘッジだけでなく、「相場は下落する」という見通しがある場合、積極的にベア型ETFを購入して利益を狙うこともできます。例えば「NASDAQ100が下落する」と予想する場合、NASDAQ100の値動きの3倍逆に動くSQQQなどのETFを購入する方法があります。

ブルベアETFのメリット

リアルタイムの取引が可能

ブルベアETFは通常の株式と同じように取引時間中にリアルタイムで売買できます。値動きに合わせて素早く対応でき、同日中に買付・売付を行う「日計り取引」も可能です。

豊富な種類の中から選べる

S&P500やNYダウなどの有名指数だけでなく、様々なセクターや国、個別株に連動するブルベアETFが存在します。自分の投資戦略に合った商品を選べる自由度が高いのも魅力です。

利用しやすさが向上

従来のブル・ベア型投資信託と比較すると、ETFとして上場したことで販売手数料がなくなり、通常の上場株式と同じ売買手数料のみで取引可能です。買いたいときに買い、売りたいときに売れる手軽さも特徴です。

注意すべきポイント

日々の変動率に対して倍率が適用される

ブルベアETFは「日々の」変動率に対して倍率が適用されます。そのため2日以上離れた期間で比較すると、単純に指数の変動の2倍や3倍にならないことがあります。

特に相場が上下動を繰り返すボックス相場では、指数自体は最終的に上昇していても、ブル型ETFの上昇率は単純計算の2倍にならず、予想より小さくなることがあります。

長期保有には不向き

この特性から、ブルベアETFは長期保有に向いていません。相場動向を見極めながら短期的に取引を行い、適切なタイミングで手仕舞うことが重要です。

想定と逆の相場展開になった場合のリスク

ブル型ETFを保有中に相場が下落した場合や、ベア型ETFを保有中に相場が上昇した場合は、通常のETFよりも大きな損失となります。相場の方向性を見誤った場合のリスクは非常に大きいことを理解しておく必要があります。

初心者が始める際のアドバイス

少額から始める

ブルベアETFは値動きが大きいため、最初は少額から始めて、その値動きの特性を実際に体感するのがおすすめです。

損切りルールを設定する

下降トレンド途中での逆張り買いを避け、明確な損切りルールを設定してそれを守ることが重要です。

相場の流れをよく観察する

短期的な相場の方向性をしっかり見極め、その時々の状況に応じた商品を選ぶことがブルベアETF取引成功のカギとなります。

ブルベアETFのまとめ

ブルベアETFは、少ない資金で大きなリターンを狙えたり、下落相場でもリスクヘッジや利益追求ができたりする魅力的な投資商品です。しかし、そのレバレッジ効果やインバース効果により、想定外の大きな損失を被るリスクもあります。

初心者の方は、まずは少額から始め、その特性をよく理解した上で取引することをおすすめします。相場の方向性をしっかり見極め、短期的な投資スタンスで取り組むことで、ブルベアETFの特性を活かした投資が可能になるでしょう。

なぜ今ブルベアETFなのか?—市場変動に備える投資戦略

現在の米国株式市場は、トランプ再選後の政策不透明感と世界的な金利動向に大きく左右されています。特に関税導入により、グローバル企業の利益率への圧迫懸念が強まり、短期的な価格変動が激しくなることが予想されます。

そのような状況において、ブルベアETFはポートフォリオのリスクヘッジや市場に素早く対応するツールとして注目されています。上昇を見込む銘柄にブル型ETFで「攻め」、下落が予想される局面でベア型ETFで「守る」、という戦略が可能です。

注意点とリスク:誰にでも適しているわけではない

ブルベア型ETFはその仕組み上、以下のような点に注意が必要です。

  • 日次リターンに連動する設計のため、2日以上の保有では原資産の2倍/−1倍とならないことがある。
  • 株価が大きく上下動を繰り返すと、実際の株価の値動きとは異なる結果になる「ボラティリティ・ドラッグ」と呼ばれる現象が起こる。
  • 短期売買向きのため、中長期投資には不向き。
  • コスト面では、先物取引や日々のリバランスに伴う経費がかかる。

さらに、この商品はNISA口座の「成長投資枠」では利用できません。ETFごとの詳細や契約書面を事前によく確認することが大切です。

JTG証券が目指す新たな投資機会の提供

JTG証券は、2022年にJトラストグループの一員となり「海外投資」「ベンチャー支援」「ウェルスマネジメント」の3つの柱で再スタートを切りました。今回のETFラインナップの拡充は、海外市場での積極的な投資を志す投資家にとって大きな一歩といえるでしょう。

投資初心者には少々ハードルの高い商品ではあるものの、相場を読む力や経験を活かせる中上級者にとっては、ボラティリティが高まる局面での強力な武器となるはずです。

グラナイトシェアーズ(GraniteShares)について

グラナイトシェアーズ(GraniteShares)は、2017年に設立されたアメリカ・ニューヨークを拠点とする投資運用会社です。同社は主にETF(上場投資信託)の作成と管理を専門としており、革新的で低コストな金融商品を提供することで知られています。

主な特徴

  1. シングルストックETFの強み
    グラナイトシェアーズは、特定の個別銘柄(例:エヌビディア、テスラ、アップルなど)に連動する「シングルストックETF」を多く取り扱っています。このタイプのETFは、特定銘柄の1日の値動きの2倍や逆方向のパフォーマンスを目指すもので、短期的な市場変動に対応した投資が可能です。
  2. 低コストと革新性
    同社は低手数料を維持しつつ、従来の投資枠組みを超えた革新的なETF商品を提供しています。これにより、投資家が効率的かつ柔軟に市場変動へ対応できる環境を整えています。
  3. グローバル展開
    米国だけでなく、イギリスやドイツ、フランス、イタリアなど主要な証券取引所で事業を展開しており、多様な国際的顧客基盤を持っています。
  4. 急成長する運用資産
    2024年時点で同社は100億ドル以上の資産を運用しており、短期間で大きく成長している企業です。特に人気のあるエヌビディア連動ETFなど、一部商品は高い売買代金を記録しています。

主な提供商品

  • ブル型ETF: 株価が上昇すると予想する場合に利用されるレバレッジ型ETF(例:エヌビディアやテスラの日次変動率の2倍を目指すもの)。
  • ベア型ETF: 株価が下落すると予想する場合に利用される逆方向のレバレッジ型ETF。
  • コモディティ関連ETF: 商品先物市場へのエクスポージャーを通じて長期的な資本増加を目指すものも提供しています。

投資家へのメリット

グラナイトシェアーズは、短期的な市場変動を活用したい投資家や特定銘柄への集中投資を希望する投資家にとって魅力的な選択肢です。また、低コスト運用と幅広い商品ラインナップにより、多様なニーズに応えることが可能です。

このようにグラナイトシェアーズは、革新的かつ柔軟性の高い金融商品で急速に注目を集めている投資運用会社と言えます。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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