ポンド円が”やばい”といわれているのはなぜ?

ポンド円が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”ポンド円はヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因について掘り下げて解説します

本当に”やばい”のか、ポンド円のデメリットとメリットから真相に迫る

ポンド円についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、「ポンド円はやばい」「ポンド円はやめとけ」といった警告的な声がインターネット上で見られるようになっています。一方で、スワップポイントの高さや取引機会の多さから、熱心な支持者も多い通貨ペアです。このような相反する評判の背景には何があるのでしょうか。今回は、ポンド円の特徴や最近の相場動向を踏まえながら、実際のところどのような通貨ペアなのかを検証していきます。

ポンド円の基本情報と特徴

ポンド円は、イギリスの通貨である「ポンド」と日本の通貨である「日本円」の組み合わせです。日本における2024年3月の通貨ペア別取引金額では米ドル/円に次いで2位にランクインしており、非常に人気の高い通貨ペアだと言われています。

ポンドは、かつて大英帝国時代から第二次世界大戦前後まで世界の基軸通貨でした。その後、英国経済の衰退とともに米ドルに基軸通貨の役割が取って代わられましたが、現在でも為替市場ではドル・ユーロ・円に次ぐ世界第4位の取引量を誇っています。

国際決済銀行(BIS)の調査によると、外国為替市場における通貨別取引高シェアは以下のようになっているようです。

  • 米ドル:44.2%(2022年)
  • ユーロ:15.3%(2022年)
  • 日本円:8.3%(2022年)
  • 英ポンド:6.5%(2022年)

このように、ポンド円はメジャー通貨同士の組み合わせであるため、取引の安定性や流動性の高さが特徴とされています。

ポンド円が”やばい”と言われる理由

1. 高いボラティリティによるリスク

ポンド円が「やばい」と評される最大の理由は、そのボラティリティ(価格変動)の高さにあるようです。業界では「暴れ馬」とも呼ばれるほど、価格の変動が激しい通貨ペアとして知られています。

松井証券のFXレポートによると、ポンド円は他の通貨ペアに比べて日々の値動きが大きく、短期間で含み損が急拡大してしまうリスクがあると指摘されています。特に重要なイベントが発生した際の値動きは極端になることがあるため、十分な注意が必要だと言われています。

2. 過去の急落事例

ポンド円の「やばい」動きを示す最も象徴的な事例として、以下のような歴史的な急落が挙げられています。

  • 2016年6月24日:英国でEU離脱(Brexit)の是非を問う国民投票が行われ、離脱が決定した際、ポンド円は1日で26.88円(高値:160.19円と安値:133.31円の差)も急落しました。
  • 2022年9月26日:トラス首相が大幅な減税策を発表したことを受けてイギリス財政への懸念が高まり、ポンド円は8.36円(高値:157.22円と安値:148.86円の差)急落しました。

これらの事例は、政治的・経済的イベントによってポンド円が如何に大きく変動しうるかを示しています。そのため、「やめとけ」という忠告が初心者投資家に向けられることもあるようです。

3. 取引上のリスク要因

SBI証券の注意喚起によると、ポンド円取引には以下のようなリスクがあるとされています。

  • 価格が急激に変動する可能性
  • スプレッド(売値と買値の価格差)が通常以上に大きくなる可能性
  • 注文レートと約定レートにかい離(スリッページ)が生じる、または注文が成立しない可能性
  • スワップポイントが不安定となり、売りと買いの双方のポジションに対しマイナススワップとなる可能性
  • 有事の際には、レバレッジの変更や為替レートの配信停止等緊急措置が実施される可能性

このように、ポンド円取引には通常の取引以上の注意が必要と言われており、「デメリット」が大きいと考える投資家も少なくないようです。

ポンド円の良い評判とメリット

一方で、ポンド円には多くの「おすすめ」ポイントもあります。リスクがある分、それに見合ったリターンの可能性も秘めているためです。

1. 高いスワップポイント

ポンド円の最大の「利点」として、高水準のスワップポイントが挙げられます。松井証券のレポートによると、イギリスと日本には2024年5月時点で5%以上の金利差が存在しており、この金利差を背景とした高いスワップポイントが享受できると評価されています。

DMM FXの評判に関する記事では、英ポンド&円ペアのスワップポイントが非常に高いことから、コンスタントに収益を得ているという利用者の声も紹介されています。

「英ポンド&円ペアばかりやっています。スワップポイントがとても高いからです。40代前半からFXを始めましたが、DMMでコンスタントに稼げているのはスワップポイントのおかげだと思っています。」(50代・男性)

2025年3月時点で、人気が高い通貨ペアの中でも英ポンドと円の通貨ペアは200円以上という高水準になっており、米ドルと円のペアの170円以上、ユーロと円のペアの150円以上を上回っているようです。

2. 取引のしやすさと流動性の高さ

ポンド円は「やばくない」取引環境も評価されています。ポンドが世界4位の取引量を誇る通貨であることから、流動性が高く、安定した取引が可能とされています。

流動性の高さは、売買先の見つけやすさにつながり、希望の価格で売買できる可能性が高まるメリットがあります。また、新興国通貨で起きやすい為替レートの急上昇や急落時のスプレッドの極端な開きも比較的少ないとされています。

具体的には、あるFX会社のデータによれば、ポンド/円のスプレッドが「0.8銭」以下で配信された割合は99.97%(2021年6月7日~2021年7月2日の実績)だったとのことです。これは取引コストが安定していることを示す指標と言えるでしょう。

3. 利益機会の多さ

ポンド円の高いボラティリティは、リスクの裏返しとして利益機会の増加にもつながります。松井証券のレポートでは、「ボラティリティが高いポンド円は、他通貨ペアに比べ利益を得る機会が増えるとも言え、一部の投資家から人気を集めています」と記載されています。

特に、スキャルピングやデイトレードなどの短期トレードを行うトレーダーにとっては、価格変動の大きさを活かした取引戦略が可能であり、「おすすめ」できる通貨ペアとされています。

最近のポンド円相場と今後の見通し

近年の動向

2024年5月27日の外国為替市場では、ポンド円が1ポンド=200円の大台を突破し、2008年以来約16年ぶりの円安・ポンド高水準を記録しました。この背景には、イングランド銀行(BOE)の利下げ開始時期が後ろ倒しとなり、日英の金利差が開いた状態が続くとの見方が広がったことがあるようです。

2020年以降、ポンド円は日本との金利差拡大を背景に上昇基調が継続しており、2024年4月には、一時2008年8月以来となる1ポンド200円台を回復しました。

2024年末には乱高下はあるものの前年に続き堅調な展開を継続したとされています。年初は178.75からスタートし、4月29日には200.57まで上昇しましたが、その後の円買い介入などにより5月3日には191.37まで急落。7月には208.11まで上昇した後、8月5日には180.10まで急落するなど、大きな値動きを見せたようです。

将来の見通し

松井証券のレポートによると、現在、市場ではイングランド銀行が2024年夏頃から利下げを開始するとみられています。イギリスが利下げに舵を切れば、日本とイギリスの金利差が縮小し、ポンド円の上昇はピークアウトすることが見込まれます。

しかし、イギリスの利下げペースが緩やかなものになる場合、大幅な円高ポンド安は見込まれず、円安基調(高値圏での推移)継続の可能性が高いと考えられているようです。

一方で、過去には悲観的な見通しも示されていました。2022年3月の時点では、「来年にかけて1ドル=90円台の円高が来るなら(時期はともかくそう考えています)ポンドもその下値を突破し、1ポンド=100円に接近する可能性がある」との分析もありました。しかし、実際にはその後も円安傾向が続いています。

インヴァストNAVIの2025年相場見通しによると、「英日金利差の縮小期待も、円買いは限定的か?」との見方が示されており、今後の動向については様々な見解があるようです。

ポンド円取引の注意点とアドバイス

以上のように、ポンド円は高いボラティリティと大きなリスクがある一方で、高いスワップポイントや取引のしやすさなど魅力も多い通貨ペアです。では、実際にポンド円を取引する際にはどのような点に注意すべきでしょうか。

1. リスク管理の徹底

ポンド円のボラティリティの高さを考慮すると、適切なリスク管理が非常に重要です。具体的には:

  • 資金に余裕を持ち、投資可能な範囲内で取引する
  • 損切りラインを明確に設定し、それを守る
  • ポジションサイズを適切に管理する
  • レバレッジを抑えめに設定する

これらの基本的なリスク管理策を徹底することで、「やばい」と言われるポンド円の急激な変動による大きな損失を回避できる可能性が高まります。

2. 情報収集の重要性

ポンド円は英国の経済情勢や原油価格に加えて、米ドルやユーロの動向も影響を与えやすいとされています。そのため、幅広い情報収集が欠かせません。特に以下のような要素に注目すると良いでしょう。

  • イングランド銀行(BOE)の金融政策決定
  • 英国の経済指標(GDP、PMI、CPI等)
  • 英国の政治情勢
  • 日本銀行の金融政策
  • 日英の金利差の動向
  • 世界的な地政学リスク

3. 取引戦略の明確化

ポンド円の特性を理解し、それに合った取引戦略を立てることが重要です。例えば、

  • 短期トレード:高いボラティリティを活かしたスキャルピングやデイトレード
  • 中長期投資:金利差によるスワップポイント収入を狙った戦略
  • 分散投資:ポンド円だけでなく、複数の通貨ペアに分散して全体のリスクを軽減

4. 不安定な時期の取引を避ける

SBI証券の注意喚起にもあるように、政治経済の情勢不安や金融政策の変更時など、相場が特に不安定になりやすい時期には注意が必要です。重要なイベント前後は、スプレッドが拡大したり、約定しづらくなったりする可能性があります。初心者の場合は、そうした時期の取引は「やめたほうがいい」かもしれません。

まとめ:ポンド円は本当に”やばい”のか?

ポンド円が「やばい」と言われる主な理由は、そのボラティリティの高さとリスクの大きさにあります。しかし、それは見方を変えれば大きな利益機会でもあり、適切な知識と戦略を持ってアプローチすれば、「おすすめ」できる通貨ペアでもあると言えます。

重要なのは、ポンド円の特性を正しく理解し、自分の投資スタイルや許容できるリスクレベルに合った取引を行うことです。高いスワップポイントを求める長期投資家にとっても、短期的な値動きを狙うトレーダーにとっても、それぞれの「利点」を活かした戦略が考えられます。

「やばい」という評判は必ずしも全面的に「やめとけ」という意味ではなく、その変動の大きさに対する警告と捉えるべきでしょう。適切なリスク管理と情報収集を行いながら、ポンド円の持つ潜在的なメリットを活かした取引を検討することが重要です。

最終的には、為替取引において「絶対に安全」または「必ず危険」な通貨ペアは存在せず、投資家自身の知識、経験、リスク許容度に応じた判断が求められます。ポンド円が「やばくない」取引となるかどうかは、投資家自身の準備と戦略次第と言えるでしょう。

FXや為替取引を始める際には、少額から試してみる、デモ取引で経験を積む、専門家のアドバイスを参考にするなど、段階的にアプローチすることをおすすめします。そして何より、常に最新の市場動向と情報を把握し、柔軟に戦略を調整していくことが成功への鍵となるでしょう。

ポンド円は確かに変動が激しく「やばい」面もありますが、それを理解した上で適切に取り組めば、魅力的な投資対象となる可能性を秘めています。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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