ビットコインは”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?

ビットコインは”やめたほうがいい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”ビットコインはヤバイのでやめたほうがいい”と口コミや評判で言われている原因と真相についてデメリットを掘り下げて解説します

ビットコインに関する様々な意見や評価についてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、仮想通貨の代表格であるビットコインは「やめたほうがいい」という声がある一方で、将来性を評価する意見も多く見られます。この記事では、なぜビットコインが批判されるのか、その批判は正当なものか、そして誤解に基づいていないかを多角的に検証していきます。

ビットコインが「やめたほうがいい」と言われる主な理由

ビットコインに対する否定的な見解には、いくつかの共通した理由があるようです。それらを詳しく見ていきましょう。

価格変動の激しさ(ボラティリティ)

ビットコインがやめたほうがいいと言われる最も一般的な理由の一つは、その激しい価格変動です。株式とは異なり、ビットコインには値幅制限がないため、一日で価格が大きく上下する可能性があります。

たとえば、2021年には1ビットコインが約777万円まで高騰しましたが、2022年には約200万円台まで暴落しました。また、2023年のビットコインは年初の約200万円から年末には約450万円まで上昇し、約155%の上昇率を記録しました。このような激しい変動は、短期間で大きな利益を得る可能性がある一方で、大きな損失をもたらすリスクもあるのです。

株式投資には「ストップ高」「ストップ安」という値幅制限が設けられていますが、ビットコインにはそのような制限がなく、極端な場合、1日で価値が半分以下になる可能性もあると言われています。

ハッキングや詐欺被害のリスク

ビットコインは、ハッキングや詐欺被害の危険性があることも、「やめたほうがいい」と言われる大きな理由の一つです。実際に2024年には、国内仮想通貨取引所のDMMBitcoinから、482億円相当のビットコインがハッキングされた事例があります。

仮想通貨は、税制面だけでなく法律の整備もまだまだ不十分であることから、金融庁に登録のない悪徳業者も存在するようです。また、ビットコインに関する詐欺件数は年々増加しており、国民生活センターへの相談も増えていると報告されています。

Mt.GOX事件以降も、盗難・流出事件は月に1回程度のペースで発生していると言われており、セキュリティ面での懸念は依然として残っています。

レバレッジ取引による大損リスク

価格変動の幅が大きい仮想通貨には、レバレッジ取引という方法もあり、これがやばいほどの大損につながるリスクがあります。レバレッジとは、実際に口座に預けた資金を担保として、その金額よりも大きな規模の取引ができる仕組みのことです。

例えば、口座に50万円を預けていて2倍のレバレッジをかけた場合、最大で100万円の取引ができます。これにより多くの利益を狙える一方、相場がポジションの反対に動いてしまうと、追加で証拠金の入金が必要になる「追証」や、証拠金不足により強制決済される「ロスカット」により、資産があっという間になくなってしまうリスクもあるようです。

最悪の場合、相場が大きく動いてロスカットが間に合わず、不足分を入金しなければならない「追証ロスカット」が発生し、借金を背負う可能性もあると指摘されています。

複雑な税金制度

税金の仕組みが複雑な点も、仮想通貨投資はやめたほうがいいと言われる理由の一つとなっています。

会社員の場合、年間20万円以上の売買益があると、仮想通貨で得た利益は雑所得に該当し、確定申告の対象となります。株式投資で得た売却益や配当収入は「金融所得課税」に分類され、税率は一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)であるのに対し、暗号資産投資で得た利益は「雑所得」に分類されるため、最大税率は55%(所得税45%、住民税10%)になります。

また、仮想通貨は取引所の売買で得た利益以外にも、仮想通貨で仮想通貨を購入した場合やステーキング報酬を得た場合など、様々なケースが課税対象となるため、計算が複雑です。運用バリエーションを増やすほど、税金の計算が複雑になり、「利益が発生しているのに、計算が面倒だから」という理由で放置してしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生するデメリットがあります。

取引所の倒産リスク

仮想通貨取引所自体が倒産するリスクも、投資をやめたほうがいいと言われる理由の一つです。過去には取引所が破綻し、利用者が資産を失った事例もあります。このリスクは、仮想通貨市場がまだ発展途上であることと関連しているようです。

ビットコインに関する誤解

一方で、ビットコインに関しては多くの誤解も存在しているようです。以下に主な誤解とその真実を見ていきましょう。

誤解1:匿名性が高く犯罪に使われやすい

ビットコインはしばしば、完全に匿名で取引ができるため犯罪者に利用されやすいと誤解されています。しかし実際には、ビットコインのトランザクションは仮名で行われてはいるものの、完全な匿名ではありません。

すべてのビットコイン取引はブロックチェーン上に記録され、だれでも公開台帳で確認できます。この透明性により、犯罪者の活動には痕跡が残り、法執行機関はブロックチェーン分析を積極的に利用して違法行為を追跡しています。

「シルクロード」のような闇サイトの摘発後もビットコインは生き残り、「犯罪の匂い」は薄れてきていると言われています。実際に、ビットコインを導入する店が増えていることは、まっとうな取引に使われている証拠だという見方もあります。

誤解2:本質的な価値がない

ビットコインには本質的な価値がなく、具体的な裏付けのない投機資産だという批判も見られます。しかし、ビットコインの本質的な価値は、非中央集権的でボーダレスな貨幣としての機能にあるという考え方もあります。

その限られた供給量、検閲への耐性、そして価値の保管としての可能性が、ビットコインの本質的価値であると捉えることができます。実際、アメリカ財務省も「デジタルゴールドとしての役割がある」と発言しているようです。

ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は、ビットコインを「デジタル商品」と位置づけ、法的優位性、政治的優位性、倫理的優位性、財務的優位性があると主張しています。また、ビットコインは「無原罪懐胎」から始まり、誰も所有権を主張せず、誰にも支配されず、金儲けを期待することもないという特性が、倫理的な存在にしていると述べています。

誤解3:環境に悪影響を与える

エネルギー集約的なマイニングプロセスにより、ビットコインは環境に悪影響を与えるという批判もありますが、これも一面的な見方である可能性があります。ビットコインのエネルギー消費量を従来の金融システムや家庭用電化製品と比較すると、実際にはブロックチェーンネットワークのエネルギー消費量は、ほとんどの従来の金融システムよりも少ないとする調査もあるようです。

2021年にGalaxy Digitalが発表した調査レポートによると、世界主要銀行100行が利用するデータセンターのエネルギー消費量は、Bitcoinネットワークの2倍を超えていると報告されています。また、マイニングでは再生可能エネルギーの利用も進んでいるとのことです。

誤解4:技術専門家向けで一般人には難しい

ビットコインは技術に詳しい人間だけがアクセスできる複雑な技術だと思われがちですが、実際には多くのBitcoinウォレットや取引所の使い勝手はここ数年で大幅に向上しています。ユーザーが使いやすい商品や利用マニュアルも増えており、初心者も含めて多様なユーザーが暗号資産にアクセスしやすくなってきていると言われています。

誤解5:簡単に儲かる

ビットコインで簡単に儲かるという考えも誤解の一つです。価格変動の振り幅が大きいため、実際には儲けるのは容易ではないとされています。短期的にはいくらか利益が出るかもしれませんが、投資に回せる大量の余剰資金がない限り、既存の株式市場で「成長株」を狙うほうが一般投資家向きかもしれないという意見もあります。

ビットコインの肯定的側面

ビットコインには批判や誤解がある一方で、肯定的に評価される側面も多く存在します。

デジタルゴールドとしての役割

ビットコインは発行上限が2100万BTCと決められており、既存の貨幣のように発行量が無制限ではありません。この希少性から、ビットコインはデジタルゴールドとしての役割を担っているとされています。

セイラー会長は、米国で戦略的ビットコイン準備金に関する大統領令が発せられたことにより、ビットコインの「デジタルゴールド」としての地位は強固なものとなったと主張しています。さらに、金は人類の歴史の中で富や繁栄を象徴してきたが、現代ではデジタルであることが、アナログの10倍の価値を持つとの独自の見解も示しています。

技術的特性とセキュリティ

ビットコインを支える非中央集権的なシステムでは、帳簿をネットワーク参加者全員で共有し、不正があれば他の参加者が指摘できるような仕組みを採用しています。具体的には、約10分ごとに取引をまとめてブロックとして記録しており、過去のデータを書き換えると後のデータが不正になるため、改ざんが発覚しやすい構造となっています。このようにして、ビットコインは高いセキュリティを実現しているようです。

また、ビットコインは非中央集権型のネットワークを採用しており、これによりユーザー間での直接的な送金が可能となっています。従来の金融システムでは、送金を行う際に必ず銀行や決済サービスなどの管理主体を経由する必要がありますが、ビットコインはそのような主体を介さずに取引が完了できる利点があります。

市場の成熟と機関投資家の参入

ビットコインは、一部の主要国・地域で現物ETF(上場投資信託)として承認されるなど、機関投資家にも認知されつつあるようです。市場が成熟し機関投資家の導入が進むにつれ、価格変動幅は徐々に低下していると言われています。

また、ビットコインの売買回転率(売買代金÷時価総額で算出)は、一般的な上場株式と比較して非常に高い数値になっていることから、流動性が高く、投資対象として注目されています。

将来性と可能性

KPMGの報告によれば、ビットコインは通貨に用いる資産としては「金」よりも優れている面もあり、広く決済に利用されるためには、ユーザーの受入れおよび規制等の環境整備が必要であるものの、経済成長をもたらすトークン市場を前に当局の姿勢も変わりつつあるようです。

また、トークン経済圏の基軸通貨となり得るビットコインの蓄積や流動性がその国における企業の競争力に大きく影響する可能性があるとも指摘されています。

ビットコイン投資が向いている人・向いていない人

このような特性を持つビットコインですが、どのような人に向いているのでしょうか。また、どのような人はやめたほうがいいのでしょうか。

ビットコイン投資が向いていると考えられる人

  1. リスクを理解し、受け入れられる人: ビットコインの価格変動リスクを理解し、それを受け入れられる人には向いているかもしれません。
  2. 長期投資を考えている人: 短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資できる人には適している可能性があります。
  3. 分散投資の一部として考えている人: 全資産をビットコインに投じるのではなく、ポートフォリオの一部として配分を考えている人には、リスク分散の観点から検討の余地があるでしょう。
  4. テクノロジーに関心がある人: ブロックチェーン技術やデジタル資産の可能性に関心があり、その発展を支援したいと考える人にとっては意義があるかもしれません。

ビットコイン投資が向いていないと考えられる人

  1. 投資初心者: 価格変動が激しいため、投資初心者が大金を投じてビットコインに投資するのは、やめたほうがいいと言われています。
  2. 安定した収入を求める人: 短期的な利益や安定した収入を求める人には、価格変動が激しいビットコインは向いていないでしょう。
  3. 資金に余裕がない人: 余剰資金ではなく、生活に必要な資金や借入金でビットコインに投資するのは、大きなリスクを伴います。
  4. 税金の知識が不足している人: 仮想通貨の税制は複雑であるため、確定申告や税務に関する知識が不足している人にとっては、管理が難しい可能性があります。

結論:ビットコインは本当に「やめたほうがいい」のか?

ビットコインが「やめたほうがいい」と言われる理由には、価格変動の激しさ、セキュリティリスク、レバレッジ取引の危険性、税金の複雑さなど、確かに検討すべき重要な点が含まれています。これらのリスクや欠点を理解せずに投資することは、大きな損失につながる可能性があります。

一方で、ビットコインに関する誤解も多く、完全な匿名性や犯罪利用、環境への悪影響などについては、実態と異なる面もあるようです。また、デジタルゴールドとしての役割や、ブロックチェーン技術の革新性、市場の成熟など、肯定的な側面も無視できません。

結論として、ビットコインが「やめたほうがいい」かどうかは、個人の投資目的、リスク許容度、知識レベル、資金状況などによって異なります。一概に「やめたほうがいい」とも「始めるべきだ」とも言えないでしょう。

重要なのは、十分な知識を身につけ、リスクを理解した上で、自分の状況に合った投資判断をすることです。また、投資する場合でも、余剰資金の範囲内で、ポートフォリオの一部として適切な配分を考えることが賢明かもしれません。

ビットコインは革新的な技術であると同時に、まだ発展途上の投資対象でもあります。その両面を理解し、慎重に判断することが、将来後悔しない選択につながるのではないでしょうか。

参考資料

本記事は、様々な情報源を参考に作成しました。ただし、仮想通貨市場は急速に変化するため、最新の情報を常に確認することをお勧めします。また、本記事は投資アドバイスではなく、投資判断は自己責任で行ってください。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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