火災保険が”やばい”といわれているのはなぜ?

火災保険が”やばい”といわれているのはなぜ?
ライター:関野 良和

”火災保険がやばい”と口コミや評判で言われている原因と真相について解説

火災保険が”やばい”と言われることについてネットの口コミや評判から真相を掘り下げてみました。近年、火災保険に関する不安や懸念の声がSNSや口コミサイトで広がっているようです。「火災保険に入っても保険金が支払われない」「火災保険料が急激に値上がりしている」「火災保険を使った詐欺が横行している」など、様々な噂や情報が飛び交っています。これらの噂は本当なのでしょうか。また、火災保険が抱える真の課題とは何なのでしょうか。本記事では、火災保険が”やばい”と言われる背景と真相について、様々な角度から検証していきます。

火災保険を取り巻く現状

火災保険は住宅や家財の保護に欠かせない保険商品として多くの方が加入しています。しかし近年、この火災保険を取り巻く環境に変化が起きているようです。火災保険の保険料は上昇傾向にあり、2022年10月には過去最大となる平均10.9%の引き上げが行われたと言われています。また、保険期間も短縮される傾向にあり、かつては36年契約も可能でしたが、2015年には最長10年に短縮され、2022年度後半以降は最長5年になる見込みとのことです。

こうした変化の背景には、自然災害の増加や保険金支払いの増大などの要因があるようです。たとえば2018年の台風21号では1兆678億円、2019年の台風15号では4656億円、台風19号では5826億円もの保険金が支払われたとされています。このような巨額の支払いが相次ぐことで、保険会社の経営にも影響が出ているようです。

火災保険が”やばい”と言われる主な理由

1. 不払いや支払い拒否の問題

火災保険が”やばい”と言われる大きな理由の一つに、保険金の不払いや支払い拒否の問題があるようです。インターネット上では「不払いワーストランキング」なるものが存在し、保険会社ごとの苦情件数などが公表されていると言われています。

保険金が不払いになる主な理由としては、以下のようなケースが挙げられています。

  1. 損害の原因が経年劣化と判断された場合 火災保険で対象となる損害は主に自然災害によるものです。住宅の経年劣化による損傷は、火災保険の対象外とされているようです。
  2. 重過失・法規違反・故意で発生した損害 契約者の故意や重大な過失によって生じた損害は、保険金の支払い対象外となるケースが多いと言われています。
  3. 地震・噴火・戦争で損害が発生した場合 地震や噴火による損害は、一般的な火災保険では補償されず、別途地震保険に加入する必要があるようです。
  4. 自然災害が多発した場合 自然災害が多発すると、保険会社の支払い負担が増大し、審査基準が厳しくなる傾向があるようです。
  5. 保険金の申請期限が超過した場合 保険金請求には期限があり、それを過ぎると請求できなくなることがあるようです。

東京海上火災保険、損害保険ジャパン、あいおいニッセイ同和損害保険などの大手保険会社でも苦情件数が多いと報告されています。ただし、これらの会社は契約数も多いため、一概に悪い評価とは言えないかもしれません。

2. 保険料の急激な値上がり

前述のとおり、火災保険料は近年急激に値上がりしています。2021年1月の値上げに続き、2022年10月には平均10.9%の値上げが行われたと言われています。この値上げの背景には、複数の要因があるようです。

  1. 自然災害の増加 近年、大型台風や集中豪雨などの自然災害が増加していると言われています。全国の1時間あたりの降水量50mm以上の大雨は、30年前と比較して約1.4倍に増加しているようです。
  2. 保険金支払いの増加 自然災害の増加に伴い、保険金の支払いも増加しています。この支払い増加が、保険料引き上げの大きな要因となっていると考えられます。
  3. 再保険料の値上がり 保険会社も自社のリスクを分散するために「再保険」に加入しています。自然災害の多発により、この再保険料も値上がりしているようです。
  4. 異常危険準備金の減少 保険会社は巨大災害に備えて「異常危険準備金」を積み立てていますが、近年の多発する自然災害によりこの準備金が大きく減少していると言われています。

こうした状況を受け、保険会社は保険料の引き上げや保険期間の短縮などの対応を余儀なくされているようです。

3. 火災保険を利用した不正請求・詐欺の横行

火災保険が”やばい”と言われるもう一つの側面として、火災保険を利用した不正請求や詐欺行為の増加があるようです。特に問題視されているのが「火災保険スキーム」と呼ばれる手法です。

  1. 火災保険スキームとは 「火災保険を活用して現金がもらえる」「給付金が返ってくる」といった触れ込みで、コンサルタントなどと称する業者が広めているビジネスモデルと言われています。
  2. 申請サポート業者の存在 「火災保険コンサルタント」「申請代行サービス」「申請サポート」などと呼ばれる業者が、火災保険の申請をサポートする名目で活動しているようです。
  3. 不正行為の実態 中には、経年劣化による損傷を台風による損傷と偽って申請したり、わざと家を損傷させて保険金を請求したりするような不正行為を指南する業者も存在するようです。
  4. 法的リスク このような不正請求に関与した場合、契約者(住宅所有者)も詐欺罪で逮捕されるリスクがあるようです。また、保険会社のブラックリストに載り、今後の契約にも影響が出る可能性があると言われています。

これらの不正行為が横行することで、審査が厳格化し、正当な請求までもが影響を受ける可能性があると懸念されています。

4. 補償内容の理解不足と契約管理の問題

火災保険に関するもう一つの問題点として、多くの契約者が保険の補償内容を正確に理解していなかったり、契約を適切に管理できていなかったりする状況があるようです。

  1. 火災保険の補償範囲の誤解 火災保険は「火災」だけでなく、落雷、ガス爆発、風災、雪災、水災、盗難、漏水など、幅広い損害を補償しているにもかかわらず、その内容が十分に知られていないケースが多いようです。
  2. 契約情報の管理不足 火災保険は契約期間が長いため、どこの保険会社と契約しているのか分からなくなってしまう人も少なくないようです。特に昔は35年などの長期契約も可能だったため、契約情報を失ってしまうケースがあるようです。
  3. 契約更新の見落とし 住宅ローンの返済が終わると火災保険の契約も終了することが多いですが、そのまま更新を忘れて無保険状態になってしまうケースもあるようです。

こうした理解不足や管理の問題が、火災保険に対する不信感や「やばい」という印象を強める一因になっていると考えられます。

火災保険の真相と実態

これまで火災保険が”やばい”と言われる理由について見てきましたが、次に火災保険の真相や実態について掘り下げてみましょう。

1. 火災保険の本来の価値

火災保険は住宅所有者にとって非常に重要な保険であり、その補償範囲は広いものとなっています。

  1. 幅広い補償内容 火災保険は名前の通り火災による損害を補償するだけでなく、落雷、ガス爆発、風災、雪災、水災、盗難、物体の衝突、漏水など、様々な事故や災害による損害を補償しています。
  2. 住宅の資産価値の保全 住宅は多くの人にとって最大の資産であり、火災保険はその資産を守るための重要な手段となっています。
  3. 精神的安心 万が一の災害時に経済的な保障があることで、住宅所有者に大きな安心を提供しています。

2. 不払いの実態

火災保険の不払いについては、様々な噂がありますが、実態はどうなのでしょうか:

  1. 不当な不払いの事実 火災保険の不当な不払い問題は、実際には大きな問題になっていないようです。2005年に報道された40億円の不払い問題は、実は生命保険の話であり、火災保険の不払いではなかったとされています。
  2. 不払いの正当な理由 火災保険が不払いになるのは、家屋の損傷理由が経年劣化であったり、不正行為により破壊されたりした場合が主なようです。これらは保険約款に基づく正当な理由による不払いと言えるでしょう。
  3. 審査基準の厳格化 近年、自然災害の増加や不正請求の横行により、保険会社の審査基準が厳しくなっている傾向はあるようです。これにより、過去には支払われていたような軽微な損傷に対する保険金が、現在では支払われないケースもあるかもしれません。

3. 火災保険申請サポートの実態

火災保険申請サポート業者については悪質な業者の存在が問題視されていますが、すべてが悪質というわけではないようです。

  1. サポート業と代行業の違い 「火災保険申請代行」は弁護士資格が必要な業務であるのに対し、「火災保険申請サポート」は資格不要で、申請書類の記入や給付金額の交渉などを除く作業をサポートする業務とされています。
  2. 正当なサポートの存在 純粋に損傷箇所の調査や資料作成の手伝いを行うだけのサポート業者も存在し、そうした正当な業務自体は違法ではないとされています。
  3. 手数料の相場 火災保険申請サポートの手数料は、一般的に成功報酬型で給付金の27.5%〜40%程度と言われています。申請代行(弁護士)は30%〜40%、申請サポートは27.5%程度が相場のようです。

4. 保険会社の対応と取り組み

火災保険を取り巻く厳しい環境の中で、保険会社はどのような対応をしているのでしょうか:

  1. リスク管理の取り組み 保険会社は責任準備金や再保険を活用してリスク管理を行っています。特に巨大災害に備えた「異常危険準備金」を積み立てて、支払い能力を確保しようとしています。
  2. 約款の改定 2023年10月1日からは大手各損害保険会社において火災保険約款の改定が行われたようです。これは不正請求への対応や、リスク管理の強化を目的としたものと考えられます。
  3. 適正な審査の実施 不正請求を防止するため、保険会社は損害調査や審査を厳格に行っていると言われています。これは正当な契約者を守るための取り組みでもあるようです。

消費者として知っておくべきこと

火災保険が”やばい”と言われる状況を踏まえ、消費者として知っておくべきことをまとめてみましょう。

1. 適切な火災保険の選び方

  1. 補償内容の確認 火災保険選びでは、自分の住宅環境に合った補償内容を選ぶことが重要です。特に地域の特性(台風が多い、雪が多いなど)を考慮して、必要な補償を選びましょう。
  2. 保険料の比較 複数の保険会社の見積もりを取り、保険料を比較することをおすすめします。一括見積もりサービスを利用すると効率的に比較できるようです。
  3. 信頼性の確認 保険会社の支払い能力(ソルベンシー・マージン比率)や信用格付けなどを確認することも一つの方法とされています。

2. 火災保険の正しい利用法

  1. 契約内容の理解 火災保険に加入する際は、約款をしっかり読み、どのような場合に保険金が支払われるのか、どのような場合に支払われないのかを理解しておくことが重要です。
  2. 契約情報の管理 保険証券は紛失しないように適切に保管し、契約内容や保険会社の連絡先などを常に把握しておくことが大切です。
  3. 正当な保険金請求 被害を受けた際は、まずは保険会社に連絡し、適切な手続きを踏んで保険金を請求することが重要です。不正な請求は法的責任を問われる可能性があることを認識しておきましょう。

3. 不当な不払いへの対処法

もし保険金請求が不当に拒否されたと感じた場合の対処法についても知っておくと良いでしょう。

  1. そんぽADRセンターの利用 損害保険に関する紛争解決機関である「そんぽADRセンター」に相談することができるようです。
  2. 鑑定人の変更要請 損害鑑定を行う鑑定人に疑問を感じた場合は、保険会社に鑑定人の変更を要請することも一つの方法とされています。
  3. 担当者の変更要請 保険会社の担当者の対応に問題がある場合は、担当者の変更を要請することも検討できるようです。
  4. 弁護士への相談 不払いに納得がいかない場合は、弁護士に相談することも一つの選択肢です。

4. 悪質な申請サポート業者への注意点

火災保険申請サポート業者に依頼する際の注意点も押さえておきましょう。

  1. 業者選びの基準 訪問販売や電話勧誘で契約を迫ってくる業者には注意が必要です。実績や評判をよく調べてから依頼することが重要とされています。
  2. 不正請求の危険性 「経年劣化でも保険金が下りる」などと説明する業者は避けるべきでしょう。不正請求に加担すると、自身も詐欺罪に問われるリスクがあることを認識しておく必要があります。
  3. 契約書の確認 業者と契約する際は、特定商取引法に基づく記載がされているか、クーリングオフの説明があるかなどをしっかり確認することが大切です。

火災保険を取り巻く今後の展望

火災保険を取り巻く環境は今後どのように変化していくのでしょうか。いくつかの可能性を考えてみます。

1. 保険料のさらなる上昇の可能性

気候変動の影響で自然災害が今後も増加する可能性があることを考えると、火災保険料はさらに上昇する可能性があると言われています。また、再保険料の高騰も継続すると予想されており、これも保険料上昇の要因となり得るでしょう。

2. 補償内容や契約期間の見直し

保険会社は経営の持続可能性を確保するため、補償内容や契約期間の見直しを進めていくと考えられます。すでに最長契約期間は短縮される傾向にありますが、今後は補償範囲の縮小や免責金額(自己負担額)の引き上げなども検討される可能性があるようです。

3. 不正請求対策の強化

不正請求による保険金詐欺の増加を受け、保険会社は調査体制の強化や、AIを活用した不正検知システムの導入など、不正請求対策を強化していくと予想されます。これにより、正当な請求についても審査が厳格化する可能性があると言われています。

4. 新たな保険商品の開発

従来の火災保険に代わる、よりリスクに対応した新たな保険商品の開発も進む可能性があります。例えば、特定の災害のみを補償する保険や、より細分化されたリスク評価に基づく保険料設定など、多様な選択肢が提供されるようになるかもしれません。

まとめ:火災保険は本当に”やばい”のか

ここまで、火災保険が”やばい”と噂される理由やその真相について詳しく見てきました。改めて整理してみましょう。

火災保険が”やばい”と言われる主な理由には、不払いや支払い拒否の問題、保険料の急激な値上がり、不正請求・詐欺の横行、補償内容の理解不足などがありました。これらの問題は確かに存在し、消費者にとって懸念材料となっているようです。

しかし、その真相に目を向けると、火災保険自体は住宅所有者にとって非常に重要な保険であり、多くの場合は正当に機能していると言えるでしょう。不払いの多くは経年劣化など正当な理由によるものであり、保険料の上昇も自然災害の増加など客観的な要因に基づくものであることが分かりました。

火災保険が”やばい”という印象は、一部の悪質な業者による不正請求や、保険内容の理解不足、SNSなどでの誤った情報の拡散によって強められているところもあるようです。

消費者としては、正確な情報に基づいて火災保険を選び、契約内容をしっかり理解し、適切に利用することが重要です。また、不正請求や詐欺的な勧誘には十分注意し、疑問点があれば保険会社や公的機関に相談することをおすすめします。

火災保険は、適切に利用すれば住宅と家族の安全を守る大切な「盾」となります。噂や偏った情報に惑わされず、正しい知識を身につけ、自分に合った火災保険を選ぶことが何より大切ではないでしょうか。

ネットの情報を総合的に判断し、火災保険が”やばい”と噂される原因および理由と真相について、できる限り客観的にまとめてみました。ただし、保険契約は個々の状況によって異なりますので、実際の加入や請求に際しては、専門家や保険会社に相談することをおすすめします。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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