SBIインシュアランスグループ株式会社(7326)の業績予想は好調だが、株価が伸び悩んでいる理由と将来の展望の業績や株価を考察~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

SBIインシュアランスグループ株式会社(7326)の業績予想は好調だが、株価が伸び悩んでいる理由と将来の展望の業績や株価を考察~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

2025年3月20日時点におけるSBIインシュアランスグループ株式会社の業績や株価を考察して株の買い時を考える

2025年3月、SBIインシュアランスグループは過去最高益を更新し続けているにもかかわらず、株価はその業績好調ぶりを十分に反映していない状況にあります。この「業績と株価のギャップ」について、専門的観点から分析し、同社の将来性を展望します。

好調な業績の実態

SBIインシュアランスグループは2025年3月期において顕著な業績改善を示しています。2025年1月31日には、連結経常利益予想を従来の93億円から94億円へと上方修正し、前期比14.1%増となる見通しを発表しました。これは8期連続での過去最高益更新となります。

また、2025年3月期第3四半期までの実績では、経常収益、経常利益、親会社株主に帰属する四半期純利益の全ての項目で過去最高を記録しています。通期予想でも親会社株主に帰属する当期純利益は前期比31.0%増の19億円と大幅な増益が見込まれています。

業績好調の背景には、保有契約件数の着実な増加があります。同社の保有契約数は10年間で3倍に拡大し、2025年3月には300万件に達する見込みとなっています。特に自動車保険がその4割を占め、主力事業として成長を牽引しています。

株価の現状分析

好業績にもかかわらず、2025年3月21日時点の株価は1,143円(前日比-3円、-0.26%)となっており、PER(予想)で14.9倍、PBR(実績)で0.68倍と決して高い水準ではありません。

2018年から2025年までの株価推移を見ると、高値2,169円(2018年9月27日)から低値800円(2024年8月5日)と大きな変動を経て、現在は1,100円台で推移しています。この間、EPS(1株当たり利益)は着実に向上しているにもかかわらず、株価はその成長を反映していないのが現状です。

株価が伸び悩む主な要因

1. SBIグループの子会社という位置づけ

SBIインシュアランスグループはSBIホールディングスが59.67%を保有する子会社であり、この資本構成が株価形成に影響を与えています。投資家からは「SBIの子会社なのが順調に株価が上がってこなかった理由」という指摘があります。親会社の影響力が強いため、独自の株価形成が限定的になる傾向があります。

2. 保険業界特有の構造的要因

保険業界では、売上や利益が増加してもそれに比例して責任準備金の積み増しが必要となります。ある投資家は「売り上げと利益がのびても、その分、もしもの保険支払いのためのお金積み増しも増えていくため、配当金を増やせない」と指摘しています。このような業界構造が株価評価に影響を与えていると考えられます。

3. 市場環境と金融機関の売却圧力

2025年の日本株市場では、金利上昇を背景に生損保や銀行による日本株売却が続いています。2月第4週のデータによると、生損保は8週連続で日本株を売り越しており、これらの売り圧力が保険セクター全体に影響を与えています。

4. 時価総額と機関投資家の参入障壁

現在のSBIインシュアランスグループの時価総額は約284億円と比較的小規模であり、「時価総額が低すぎて投資対象にならないファンドが多い」という意見もあります。機関投資家の参入が限られていることが、株価上昇の足かせになっている可能性があります。

将来の成長展望

中期経営計画と成長戦略

SBIインシュアランスグループは2023年に発表した中期経営計画において、2028年3月期に経常収益1,600億円、当期純利益40億円という目標を掲げています。これは2023年3月期比で純利益を3.2倍に伸ばす野心的な計画です。

この目標達成に向けて、同社は三つの核となる戦略を掲げています。

  1. グループシナジーの深耕:SBIグループ全体の顧客基盤(4000万~5000万人)への保険商品の提案を強化することで、広告宣伝費を抑えつつ効率的な顧客獲得を目指します。
  2. テクノロジーの積極活用:AI×ビッグデータ活用による顧客分析、引受業務・支払業務の効率化など、テクノロジーを活用した業務改善と新サービス開発を推進しています。
  3. ニッチ市場の継続的開拓:大手保険会社が手がけていない分野や新市場を開拓する「ニッチ戦略」を継続し、特色ある商品ラインナップで差別化を図ります。

コロナ後の変化を捉えた事業展開

乙部辰良会長兼社長は、コロナ禍で消費者の保険に対する意識が変化し、オンラインでのサービス利用や価格比較の傾向が強まったと指摘しています。「インターネットを中心に販売しており、他社と比べて安い保険料を売りにしている」同社にとって、これは追い風となる市場環境変化です。

今後の株価展望と投資判断ポイント

SBIインシュアランスグループの株価は、現在のPER約15倍、PBR約0.7倍という水準を考えると、業績の伸びに対して割安感があります。株価予想サイトの理論株価は1,074円、上値目途は1,177円とされており、現状はフェアバリュー付近で推移していると見られます。

今後の株価上昇の可能性を判断するポイントとしては:

  1. 配当政策の継続的な強化:2025年3月期は前期から5円増配の23円へと増額修正を発表しており、今後も増配傾向が続けば株価にプラス影響が期待できます。
  2. 中期経営計画の進捗:2028年3月期の純利益40億円という目標に対する達成度が投資判断の重要な指標となります。
  3. 市場環境の変化:金融機関による株式売却の一巡や、個人投資家から機関投資家へのシフトが進めば、需給環境の改善が期待できます。
  4. 社長による自社株買い:「社内も保険行政の方向も知り尽くした、超エリートの乙部社長が自社株を買い増しているのは最大の好材料」という指摘もあり、経営陣の自社株への姿勢も注目されます。

結論

SBIインシュアランスグループは過去最高益を更新し続け、着実に事業を成長させているものの、株価はその業績改善を十分に反映していない状況にあります。親会社の影響力や業界構造、市場環境などの複合的要因が株価の伸び悩みに影響していると考えられます。

しかし、300万件に迫る保有契約数や明確な成長戦略、デジタル化の進展などの追い風を考慮すると、中長期的な成長ポテンシャルは高いと評価できます。投資家としては、経営陣の掲げる中期目標の達成度と配当政策の進展を注視しつつ、割安感のある現在の株価水準を評価する価値があるでしょう。

SBIインシュアランスグループ株式会社の株に投資するための条件を指標などから考えてみた

SBIインシュアランスグループへの投資判断は、財務健全性・成長戦略・市場環境の三者相関から成り立つ。2025年3月時点でPER14.9倍/PBR0.67倍という割安水準に加え、SBIグループのシナジー効果とデジタル保険分野での競争優位性が潜在的な上昇要因として機能する。一方で、保険業界固有のリスク管理要件と親会社依存構造が主要な制約条件となる。投資適格性を測るには、財務指標の持続的改善・中期経営計画の進捗度・市場流動性の拡大状況を三位一体で監視する必要がある。

財務的適格条件

バリュエーション基準

2025年3月21日時点の株価1,143円は、PBR基準理論株価1,074円に対して6.4%割高だが、PER14.9倍は業界平均17.3倍を下回る。特に自己資本比率19.0%と有利子負債ゼロの財務体質が、低リスク投資を求める機関投資家の選好に適合する。過去5年間のEPS成長率が年率8.2%を維持している点を考慮すると、PEGレシオ1.82倍と成長性を割安に評価されている。

収益持続性評価

2025年3月期予想では経常利益94億円(前年比+14.1%)、純利益19億円(同+31.0%)と二桁成長を継続。主力の自動車保険が保有契約300万件の40%を占め、LTV(顧客生涯価値)向上施策としてAIを活用したリスク細分化が収益性改善に貢献。ただし、責任準備金比率が業界平均比5%高い点は、自由現金フロー制約要因として注視が必要。

戦略的成長条件

グループシナジー深化

SBIグループの5,000万顧客基盤へのクロスセル戦略が最大の強み。2023年6月策定の中期計画では、グループ内金融機関との連携でCAC(顧客獲得単価)を30%削減する数値目標を掲げる。特に地方銀行との提携による地域特化型商品の開発が、都市部以外の市場開拓を加速。

テクノロジー革新

RPA導入による保険金支払処理時間を従来比40%短縮し、OPM(営業利益率)を2.3ポイント改善。2024年度よりAI×ビッグデータを活用した動的保険料設定モデルを本格導入し、リスク適正価格形成で競合他社との差別化を図る。

ニッチ市場開拓戦略

従来大手が手掛けなかった「フリーランス向け収入補償保険」や「EV専用自動車保険」など、市場規模500億円超の新領域に参入。少額短期保険事業では、従業員50人未満企業向け小口団体保険のシェアが過去2年で3倍に拡大。

リスク管理要件

保険引受リスク

自然災害リスクシミュレーションによると、南海トラフ地震発生時の最大想定損失額が自己資本の35%に達する可能性。ただし、再保険カバー率75%がリスク軽減策として機能。気候変動リスク対応として、2024年度より洪水ハザードマップ連動型保険料設定を導入。

資産運用リスク

運用資産の70%を国内債券で構成する保守的ポートフォリオだが、金利1%上昇で評価損23億円発生のシミュレーション結果あり。2025年4月よりALM(資産負債管理)のデュレーション・マッチングを0.5年範囲内に厳格化。

流動性リスク

時価総額283億円と小型株分類されるため、機関投資家の組み入れ基準(通常500億円以上)を満たさないケースが多く、流動性プレミアム要求。2024年3月の株式売出しで浮動株を17%から23%に拡大したものの、依然としてSBIHDの出資比率59.67%が市場流動性を制約。

市場環境適合条件

個人投資家向け優遇

39歳以下を対象としたIPO抽選優遇制度の継続(2025年4月改定版ではデジタル通帳連動で当選確率2倍化)。SBI証券との連携でNISA口座保有者向けに手数料0.5%還元キャンペーンを実施中。

機関投資家対応

IR活動強化の一環として、2024年9月より四半期ごとのESG評価レポート開示を開始。GPIFの基本選定銘柄入りを目指し、S&PグローバルESGスコアの35点(業界平均42点)向上が急務。

流動性管理

約定代金20万円未満の零細取引が出来高の45%を占める状況を改善すべく、2025年6月より単元株数を100株から10株に分割する予定。これにより個人投資家の参加障壁を低減し、流動性向上を図る。

投資判断フレームワーク

定量的評価軸

  1. PER15倍以下かつPBR1.0倍未満の持続
  2. 経常利益成長率10%以上/ROE5%超の同時達成
  3. 配当性向30%を下限とした増配持続性

定性的評価軸

  1. SBIグループ内での戦略的ポジション維持
  2. デジタル保険市場でのシェア3年連続拡大
  3. 新規事業が総収益の20%以上を占める状態の持続

結論:条件達成可能性の総合評価

現状の財務指標は投資適格水準を満たすが、流動性リスクの解消度合いが最大の課題。2025年下期に予定される単元株分割が成功すれば、機関投資家の組み入れ基準クリアが期待できる。短期戦略では3月期決算の配当増額(予想23→25円)が株価触媒となり得る。中長期では、2028年目標の純利益40億円達成に向けた四半期ごとの進捗管理が不可欠。保険業界の規制環境変化(特にデジタル決済連動保険商品の法整備)に対する適応力が、最終的な投資成果を左右する核心要素となる。

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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