株価の時価総額より流動資産が多い「ネットネット株」、「正味流動資産株」について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説


流動資産が時価総額を上回る「ネットネット株」の投資戦略
流動資産が時価総額を上回る銘柄は、投資家にとって特別な意味を持ちます。このような銘柄は「ネットネット株」や「正味流動資産株」と呼ばれ、バリュー投資の重要な手法の一つです。その魅力と見つけ方、実践方法について詳しく解説します。
ネットネット株とは何か
ネットネット株とは、企業の換金性の高い資産から負債を差し引いた正味流動資産が、その企業の時価総額を上回っている状態の株式を指します。これは「1万円札の入った財布が5000円で売られているような株」とも表現され、理論上、極めて割安な状態にあると考えられます。
バリュー投資の父と呼ばれるベンジャミン・グレアムが提唱したこの投資手法は、以下の式で表現されます。
(流動資産-総負債)×2÷3 > 時価総額
つまり、企業の正味流動資産の3分の2が時価総額を上回っていれば、その株式は割安と判断される基準を満たしています。
現代版ネットネット株の条件
個人投資家として40万円から累積利益4億円を達成したとされる「かぶ1000」氏は、グレアムの理論を発展させた独自のネットネット株選定基準を持っています。その条件は:
換金性が高い流動資産-総負債 > 時価総額
ここでの「換金性が高い流動資産」は以下のように定義されています。 現金および預金+受取手形および売掛金+有価証券+投資有価証券-貸倒引当金
この定義では商品や仕掛品などの在庫評価額を含めず、一方で投資有価証券を加えることで、より現実的な企業価値評価を試みています。
ネットネット株投資のメリット
この投資手法には以下のような特徴があります。
- リスクの低減: 資産価値がすでに株価を上回っているため、理論上は下値が限定的
- ミドルリターンの期待: バリュー株投資は地味ですが、長期的には企業の本質的価値に株価が収斂する傾向がある
- 市場の非効率性の活用: アナリストがカバーしない時価総額の低い銘柄ほど、割安に放置されている可能性が高い
成功事例と具体的銘柄
かぶ1000氏が2012年に投資して成功した例として「日新製糖(2117)」が挙げられています。この銘柄は流動資産の価値が時価総額を大きく上回っていただけでなく、配当利回りが4%台と高かったこともポイントでした。
また、2013年の東京オリンピック決定時に土地の含み益があることで注目され急騰した「ニッピ(7932)」も、資産バリュー株として評価された銘柄です。
投資実践のポイント
ネットネット株に投資する際の重要ポイントは以下の通りです。
- 時価総額の小さい銘柄に注目: 時価総額200億円以下の小型株は指数連動性が低く、市場全体の下落時に連動して売られるリスクが低い
- 分散投資の重要性: 1銘柄あたりの投資額は資産の20%以下に抑えるべき
- 現金の確保: 割安株を見つけたときに即座に行動できるよう、10〜15%程度は現金を残しておく
- バリュートラップの回避: 「万年割安株」に陥らないよう、株価上昇の火種となる材料(高配当など)の存在も重視する
- 業種選定の注意: 資産評価が難しい金融業や、変化の激しいIT関連などは避けるという判断もある
現在の日本市場における状況
東証上場の500社のうち、株価が保有資産から負債を差し引いた純資産を下回る企業が4割以上を占めているとの報告があります。これはPBR(株価純資産倍率)1倍割れの状態を指し、2018年末の2割台から大幅に増加しています。
企業側もこの状況に反応しており、例えば大日本印刷は中期経営計画で「PBR1.0倍超を目標」としています。
注意点と限界
ネットネット株投資には以下の注意点も重要です。
- 簿外債務の存在: 表面上の数字だけでは判断できない負債が存在することがある
- 資産評価の難しさ: 特に中小型企業の場合、土地・建物や設備の時価換算の目減り分や、未計上の退職金債務などを考慮する必要がある
- 詳細分析の必要性: 損益計算書の推移やバランスシートの詳細チェックなど、緻密な分析が求められる
まとめ:Z世代投資家に向けて
PBR1倍割れやネットネット株といった割安株は、短期的なトレンドに振り回されず、企業の本質的価値に着目する投資手法です。特に若いZ世代の投資家にとって、長期的な視点で資産形成を考える上で重要な考え方といえるでしょう。
ただし、単純に「流動資産>時価総額」という数値だけで判断するのではなく、企業の成長性や将来性、業界動向なども総合的に分析することが成功への鍵となります。また、一度に全資産を投入するのではなく、分散投資と継続的な学習を通じて、着実に投資スキルを高めていくことをお勧めします。
流動資産が時価総額を上回る銘柄探しは、Z世代の投資家が長期的な視点で取り組むのに適した、価値ある投資手法と言えるでしょう。
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