ローム株式会社(6963)が赤字に、業績が悪化して株価も下落したのはなぜ?~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

ローム株式会社(6963)が赤字に、業績が悪化して株価も下落したのはなぜ?~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

ローム株式会社の業績が悪化し赤字転落、株価も大幅に下落した原因と株の買い時を探ってみた

業績悪化の主要要因

EV市場の減速と需要減退

ロームの赤字転落は、電気自動車(EV)向けパワー半導体の需要減速が最大の要因として指摘されています。EV市場の成長鈍化により、特に中国市場や日本国内の生産台数減少が影響を与えています。従来の需要予測を下回る売上減が生じ、自動車向け半導体売上高は前年度比0.5%減の2283億円に留まりました。認証試験不正問題に伴う国内自動車メーカーの減産も追い打ちをかけ、欧州市場での堅調さを除き、全体的に需要減速が顕著です。

産業機器向けの在庫調整長期化

FA(ファクトリーオートメーション)機器向け半導体需要も低迷を続け、売上高は前年度比19%減の602億円と予想を下回りました。中国景気の低迷が背景にあり、在庫調整が予想以上に長期化している状況が業績圧迫要因となっています。

SiC投資の見直しと設備投資減速

SiC(炭化ケイ素)半導体事業への投資計画の見直しが進められています。2021年からの7年間計画で5100億円の投資予定が4700〜4800億円に減額され、宮崎の新工場稼働開始が2025年に延期されるなど、設備投資計画が縮小されています。需要減速を受け、先行投資フェーズから需要追随型の投資戦略への転換が図られています。

今後の展望と対応戦略

コスト削減と生産体制の最適化

固定費削減が急務となり、今後3年で年200〜300億円の圧縮を目標に掲げています。主な手段として:

  • 生産拠点の再編と外部委託拡大
  • ファウンドリー(外部製造)活用の拡充
  • 人員数適正化(採用見送りを含む)

ただし、半導体業界で人件費競争が激化している中、人員削減については慎重な姿勢を示しています。

技術競争力の強化

8インチSiC基板の量産化を加速し、取れ数向上によるコスト競争力強化を図っています。6インチから8インチ化で取れ数が1.78倍以上増加し、歩留まり向上でさらに効率化が進んでいます。新世代品の投入サイクルを2年ごとに加速させることで、性能面での差別化を維持する戦略です。

経営提携による事業基盤強化

東芝との半導体事業提携が具体化し、1年後のアナウンスを目指す動きが進んでいます。デンソーとの共同開発も検討中で、既存の提携関係を活用した技術連携が期待されます。

中期経営計画の修正と挑戦

2021年度に策定された中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」では、2030年までにグローバルメジャーを目指す目標が設定されていました。売上高6,000億円以上・営業利益率20%以上などの財務目標も掲げられていましたが、現状の業績悪化で達成時期が後ろ倒しになりつつあります。

特にSiC事業では、2025年度売上高1100億円の目標が2026〜2027年度へ延期され、製造能力強化のタイムラインも1年程度遅れ込む見込みです。ただし、宮崎工場の設備導入は需要増加時に柔軟に対応可能な体制を整備している点が進行状況の特徴です。

競合他社との比較と課題

同業他社との比較では、リネサスエレクトロニクスやトレックスなどが下方修正を発表しており、半導体業界全体の景気後退が背景にあります。ロームは高配当を維持している点が特長ですが、業績基盤の脆弱性が株価下落の要因となっています。

今後の成長を左右するのは、EV市場の回復ペースとSiC事業の需要実現速度です。需要増加に伴う生産能力強化の柔軟性と、コスト競争力の維持が勝負の分かれ目と言えるでしょう。

ローム株式会社の業績・株価が復活するための条件を考えてみた

業績悪化の要因と根本的課題

EV市場の需要減速と自動車産業の減産

ロームの業績悪化の最大の要因は電気自動車(EV)向けパワー半導体の需要減速にあります。特に中国市場のEV需要減速と国内自動車メーカーの認証試験不正問題に伴う減産が直撃でした。従来の需要予測を下回る売上減が生じ、自動車向け半導体売上高は前年度比0.5%減の2283億円に留まりました。欧州市場の堅調さを除き、全体的な需要減速が顕著で、従来の成長戦略が揺らぎました。

産業機器市場の長期的な在庫調整

FA(ファクトリーオートメーション)機器向け半導体需要も低迷を続け、売上高は前年度比19%減の602億円と予想を下回りました。中国景気の低迷が背景にあり、在庫調整が予想以上に長期化している状況が業績圧迫要因となっています。産業機器市場の回復は来期以降と予想されますが、需要減速の持続性が懸念材料です。

SiC投資戦略の見直しと設備投資縮小

炭化ケイ素(SiC)半導体事業への投資計画の見直しが進められています。2021年からの7年間計画で5100億円の投資予定が4700〜4800億円に減額され、宮崎の新工場稼働開始が2025年に延期されるなど、設備投資計画が縮小されています。需要減速を受け、先行投資フェーズから需要追随型の投資戦略への転換が図られています。ただし、需要増加時に対応可能な柔軟な設備構成は維持されています。

復活に向けた必須の戦略要素

コスト構造の最適化と生産効率化

固定費削減が急務となり、今後3年で年200〜300億円の圧縮を目標に掲げています。具体的には:

  • 生産拠点の再編と外部委託拡大
  • ファウンドリー(外部製造)活用の拡充
  • 人員数適正化(採用見送りを含む) ただし、半導体業界における人件費競争激化の背景を踏まえ、人員削減については慎重な姿勢を示しています。

技術競争力の強化と製品ポートフォリオの拡充

8インチSiC基板の量産化を加速し、取れ数向上によるコスト競争力強化を図っています。6インチから8インチ化で取れ数が1.78倍以上増加し、歩留まり向上でさらに効率化が進んでいます。新世代品の投入サイクルを2年ごとに加速させることで、性能面での差別化を維持する戦略です。

経営提携による事業基盤強化

東芝との半導体事業提携が具体化し、1年後のアナウンスを目指す動きが進んでいます。デンソーとの共同開発も検討中で、既存の提携関係を活用した技術連携が期待されます。特にSiCパワー半導体分野での協業が成長の鍵となり得ます。

中期経営計画の再構築と財務安定性

貸借対照表の健全化とキャッシュフロー管理

中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」では、2030年までにグローバルメジャーを目指す目標を設定していましたが、現状の業績悪化で達成時期が後ろ倒しになりつつあります。特にSiC事業では、2025年度売上高1100億円の目標が2026〜2027年度へ延期され、製造能力強化のタイムラインも1年程度遅れ込む見込みです。キャッシュ創出力向上と資本効率改善が経営陣の優先課題となっています。

経営陣のリーダーシップと組織改革

2025年4月に東克己新社長が就任し、抜本的な構造改革を断行する方針です。特にSiC事業の推進と安定的な利益基盤構築が期待されています。松本前社長の退任は、非常事態下での早期交代による組織刷新を目的としたもので、製造マネジメントの強化が求められています。

市場環境の変化への適応力

EV市場の回復ペースと需要実現タイミング

今後の成長を左右するのは、EV市場の回復ペースとSiC事業の需要実現速度です。需要増加に伴う生産能力強化の柔軟性と、コスト競争力の維持が勝負の分かれ目と言えるでしょう。特に中国市場のEV補助金政策の動向や欧州市場の需要動向が注目されます。

競合他社との比較と差別化戦略

同業他社との比較では、リネサスエレクトロニクスやトレックスなども下方修正を発表しており、半導体業界全体の景気後退が背景にあります。ロームは高配当を維持している点が特長ですが、業績基盤の脆弱性が株価下落の要因となっています。パワー半導体分野での技術優位性を維持しつつ、民生機器や産業機器分野での多角化が重要です。

株価復活のための不可欠な要素

需要回復による売上高の回復

EV市場の回復により自動車向け半導体の需要増加が必須です。特に中国市場のEV補助金削減後の需要動向や欧州市場の堅調さが鍵となります。産業機器分野の在庫調整終了後、FA機器向け需要の回復も重要です。

SiC事業の需要実現と製造効率化

SiCパワー半導体の需要増加が現実化することで、8インチ基板の量産化によるコスト削減効果が発揮されます。取れ数向上と歩留まり改善が生産性向上の鍵となります。宮崎工場の柔軟な設備構成が需要増加時に対応できるかが焦点です。

経営陣の意思決定スピードとリスク管理

新社長体制下での構造改革の迅速な実行が求められます。工場再編や固定費削減策の効果が早期に現れるかが業績回復の分かれ目です。外部委託拡大やファウンドリー活用による生産体制の柔軟性強化が生産効率の向上に直結します。

持続的成長のための総合戦略

ロームの復活には以下の要素が不可欠です。

  1. EV市場の回復待ち姿勢からの脱却:需要減速下でも民生機器や産業機器分野での高付加価値製品の拡充
  2. SiC事業の製造効率化と需要実現:8インチ基板の量産化と歩留まり向上によるコスト競争力強化
  3. 経営陣のリーダーシップと組織改革:構造改革の迅速な実行と製造マネジメントの強化
  4. 経営提携による技術基盤強化:東芝やデンソーとの協業で技術優位性の維持
  5. 財務安定性の回復:固定費削減とキャッシュフロー改善による資本構成の適正化

これらの要素が相互に連動し、需要回復と自社の製造効率化が同期して進展することが、ロームの業績・株価復活の鍵となります。特にSiC分野での製造能力と市場需要のタイミングの一致が最大の課題と言えるでしょう。

ローム株式会社の株に投資するための条件を業績・指標などから考えてみた

現状認識とバリュエーション評価

ローム株式会社は現在、業績面で厳しい状況に直面しています。2025年3月期は経常損失10,000百万円(前年比114.5%減)が予想されており、赤字転落による業績悪化が顕著です。株価は2025年3月14日時点で1,549.5円前後で推移しており、PBRは0.64倍と純資産価値を下回る水準にあります。

アナリストの平均目標株価は1,630円で、現在株価からの上昇余地は7.34%程度と予想されています。証券アナリストの評価は「中立」(レーティング平均3.3)が多数を占めており、強気4人、やや強気1人、中立3人、弱気3人と意見が分かれています。

このような状況下でローム株に投資を検討する際の条件を整理します。

業績回復のタイミング見極め

EV市場と産業機器市場の需要動向

投資判断の最重要条件は、自動車向け半導体と産業機器向け半導体の需要回復時期です。特にEV市場の成長鈍化がローム業績に大きな影響を与えています。

自動車向け半導体は売上高の50%以上を占める主力事業であり、EV市場の補助金削減や中国市場の成長減速などが業績悪化の主因となっています。産業機器向け半導体も前年比19%減と大幅な減少を示しており、中国市場の在庫調整の長期化が懸念されています。

投資条件として、EV市場における新たな成長要因の出現や、産業機器分野の在庫調整終了の兆候を見極めることが重要です。

構造改革の進捗と収益構造の転換

コスト削減と生産効率化

ロームは今後3年で年間200〜300億円の固定費圧縮を目標に掲げており、この実現性が投資判断の鍵となります。具体的な方策としては、生産拠点の再編、外部委託拡大、ファウンドリー活用の拡充などが計画されています。

2025年4月からは東克己新社長体制となり、構造改革を断行する方針が示されています。SiC事業の推進と安定的な利益基盤構築を重視する新体制での改革進捗が投資条件の一つといえるでしょう。

成長戦略の収益化タイミング

SiCパワーデバイス事業の競争力強化

ロームはSiCパワーデバイスの世界シェア30%を2030年までに目指していますが、投資計画は当初の5100億円から4700〜4800億円に減額されています。宮崎工場の稼働開始も2025年に延期されるなど、当初計画からの遅れが生じています。

投資判断条件としては、8インチSiC基板の量産化による製造効率改善と、これによるコスト競争力強化の進展が重要です。6インチから8インチ化で取れ数が1.78倍以上増加する効果が現れるタイミングが投資適期となる可能性があります。

戦略的提携の進展

東芝との半導体事業提携が具体化する見通しであり、1年後のアナウンスを目指す動きが進んでいます。デンソーとの共同開発も検討されており、これらの提携による事業基盤強化が期待されます。

投資条件として、東芝のパワー半導体事業との統合進展や、シナジー効果の顕在化を見極めることが重要です。

財務安定性と株主還元

バランスシートとキャッシュフロー

自己資本比率は65.3%と高く、財務基盤は依然として健全です。しかし、大規模な設備投資によるキャッシュアウトとSiC事業の収益化遅れによる営業キャッシュフローの悪化が懸念されます。

投資条件としては、設備投資計画の縮小によるキャッシュフロー改善の見通しや、資本効率向上への取り組み(ROE改善)を確認することが重要です。

株主還元の継続性

配当利回りは3.18〜3.22%と比較的高い水準を維持しています。同業他社と比較しても高配当が特徴ですが、業績悪化による配当の持続性については注視が必要です。

投資条件として、高配当政策の継続可能性と、業績回復に伴う株主還元強化の可能性を評価することが重要です。

投資判断のための重要指標

投資タイミングを判断するための重要指標として以下の点に注目すべきです。

  1. 四半期ごとの受注動向:自動車向けおよび産業機器向け半導体の受注回復兆候
  2. SiC事業の収益化進捗:8インチ基板の量産体制確立と歩留まり改善状況
  3. 固定費削減の効果:四半期ごとの販管費率や営業利益率の改善
  4. 東芝との提携進展:具体的な協業発表や事業統合のアナウンス
  5. PBR水準の推移:0.6倍台という割安水準からの改善兆候

結論:投資タイミングの条件

ローム株式会社への投資を検討する上での条件は、「EV市場や産業機器市場の需要回復」「構造改革の進捗による収益性改善」「SiC事業の競争力強化と収益化」の三点が最も重要です。

現状のPBR0.6倍台という純資産を下回る評価は、将来のキャッシュフロー悪化見通しを反映していますが、構造改革が奏功し業績回復の兆しが見えれば、株価の大幅な上昇余地が期待できます。

具体的な投資条件としては、四半期決算での営業損益改善、受注回復の兆候、そして東芝との事業提携の具体化などが重要なトリガーとなるでしょう。中長期的視点では、SiCパワーデバイス事業の進展と競争力強化が成長回復の鍵を握っています。

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最終更新日:2025年3月12日

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としており、グローバルマクロの視点から幅広いアセットクラスをカバーしているが、特に日本株投資に注力をしており、独自の切り口でレポートを行う。 趣味のグルメ旅行と情報収集を兼ねた企業訪問により全国を移動しながらグルメ情報にも精通している。
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