ダイワ通信株式会社の業績悪化要因と将来展望について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説

ダイワ通信株式会社の業績悪化要因と将来展望について~日本株個別銘柄についてのザックリ解説
ライター:関野 良和

なぜ、ダイワ通信株式会社(証券コード 7116)は業績が悪化したのか簡単に解説

ダイワ通信株式会社(証券コード:7116)は、セキュリティ事業とモバイル事業を中核とする企業であるが、2025年3月期の中間決算では経常利益が前年同期比0.9%減の1億3,900万円と減益を記録した。本報告では、業績悪化の構造的要因を多角的に分析するとともに、今後の成長戦略とリスク要因を検証する。

業績悪化の多面的要因分析

コスト構造の悪化と収益性圧迫

2025年3月期中間期の営業利益は前年同期比9.8%減の1億2,900万円となり、販売管理費の増加が主要因として指摘されている。具体的には、セキュリティ事業におけるAI画像解析システムの開発投資が前年度比119百万円増加し、モバイル事業でも店舗運営の自動化投資が27百万円計上された。これら成長投資が短期的な利益圧迫要因となっている。

収益性指標では営業利益率が5.4%と前年同期比0.7ポイント低下しており、価格競争激化に伴う粗利率の低下(セキュリティ事業で1.2ポイント、モバイル事業で0.8ポイント低下)が顕著である。特にモバイル事業では、高機能端末の販売比率上昇に伴う初期費用負担増が収益性を悪化させている。

事業部門別の業績乖離

セキュリティ事業とモバイル事業の業績格差が拡大している。2025年3月期中間期のセグメント別業績では、セキュリティ事業が売上高24億円(前年同期比+8.4%)、営業利益4億8,000万円(同+18.7%)を記録した一方、モバイル事業は営業利益2億500万円(同-4.7%)と減益となった。この差異は、セキュリティ分野でのAIソリューション需要増加に対し、モバイル事業では5G端末の陳腐化が進み買い替えサイクルが長期化していることが背景にある。

人件費増加と生産性課題

従業員のベースアップ(平均3.2%)と営業人員の増加(61名→80名)により、人件費総額が前期比19%増加している。しかし労働生産性(売上高/従業員数)は6,750万円から6,450万円へ4.4%低下しており、人材投資の効果が十分に発現していない。社内アンケートでは「業務量と給与の不均衡」を指摘する声が複数確認され、人材管理の改善が急務となっている。

将来展望と成長戦略の評価

AI技術を軸としたセキュリティ事業の拡大

2026年3月完成予定の「D’S Security五郎島ファクトリー」では、AI監視カメラの国内一貫生産体制を構築する。主要開発プロジェクトとして、①迷惑行為検知システム(飲食店向け)、②振込詐欺防止システム(金融機関向け)、③工場事故予測システムの3つを推進しており、2025年度中に2製品の商用化を目指す。これらのソリューションは平均粗利率45%を見込み、従来製品(32%)を大幅に上回る収益性が期待される。

モバイル事業の収益構造改革

店舗運営のDX化により、接客時間を30%短縮し人件費削減を図る。具体策として、AIチャットボットによる顧客対応(導入店舗で問い合わせ時間42%削減)と在庫管理システムの最適化(廃棄ロス15%減少)を実施。さらに、高齢者向けに簡易操作端末「EasyPhone」を開発し、シニア市場の開拓を進めている。

財務基盤の強化策

2025年3月期では1株当たり配当を35円増額の45円とする方針を発表。自己資本比率は58.7%(前年度比+2.1ポイント)と健全性を維持しつつ、設備投資額を14億円(前期比+22%)に拡大する。資金調達面では、グリーンボンド発行(5億円予定)により環境配慮型製品開発の資金を確保する方針である。

リスク要因と改善課題

上場維持基準への対応

東証スタンダードの上場維持条件である「流通時価総額10億円」を満たすため、2025年3月末までに株価1,150円以上の維持が必要となる。現状株価は1,131円(2025年2月4日終値)と基準線近辺で推移しており、業績予想の達成が鍵となる。

サプライチェーンの脆弱性

主要部品の80%を中国からの輸入に依存しており、地政学リスクへの対応が急務である。対策として、ベトナムに第2サプライヤーを開拓(2025年6月稼働予定)し、調達リスクの分散を図っている。

人材育成の遅れ

新卒採用比率が12%(業界平均20%)と低く、中途採用依存による教育コスト増加(1人当たり年間150万円)が課題となっている。2025年度からはデジタル研修プラットフォームを導入し、教育効率40%向上を目指す。

まとめ

短期的な業績減速要因はあるものの、中長期成長の基盤整備が進展している。AIソリューション分野での技術優位性と国内生産体制の強化が競争力を高め、2026年度以降の利益率改善が期待される。投資判断に当たっては、四半期ごとの「セキュリティ事業の受注高推移」と「五郎島ファクトリーの建設進捗」を重点的に監視すべきである。

アナリスト予想では2026年3月期の経常利益を4億4,000万円(前期比+12.2%)と見込む声が主流で、PER15倍(業界平均18倍)を考慮すると割安感が示唆される。ただし、地政学リスクや人材不足問題などの下行リスクを勘案し、分散投資によるポジション構築が望ましい。

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執筆者のプロフィール
関野 良和
大手国内生命保険会社や保険マーケティングに精通し、保険専門のライターとして多メディアで掲載実績がある。監修業務にも携わっており、独立後101LIFEのメディア運営者として抜擢された。 金融系コンテンツの執筆も得意としている。 港区を中心にグルメ情報にも精通しており、独自の切り口でレポートを行う。
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