住友生命保険相互会社の保険についてのリリース/プレコンセプションケア領域での企業向けソリューションの共同開発に向けた実証実験の結果について
住友生命保険相互会社の保険についてのリリース/プレコンセプションケア領域での企業向けソリューションの共同開発に向けた実証実験の結果について
2022年4月から開始される不妊治療の保険適用拡大や、同じく4月から開始される不妊治療と仕事の両立に関する新しいくるみん認定制度「くるみんプラス」により、企業における従業員サポート体制も充実が進むと考えられます。
今回の実証実験を通じて蓄積されたノウハウの活用、協業したスタートアップ企業や関連団体との一層の連携強化によって、本ソリューションのサービスレベルの向上を図るとともに、企業や自治体とも連携した更に大規模な実証実験の実施を検討していきます。
また、実証実験の一環として実施した不妊治療と仕事の両立に関する社内アンケートを実施しましたので、調査結果を公表するとともに、今後は企業や自治体にも同様のアンケート実施への協力を求め、企業における不妊治療と仕事の両立に関する実態把握に努めていきます。
2021年11月1日から11月19日の約3週間にわたり、全従業員向けの知識付与や風土 醸成、早期啓発のためのイベント、不妊を不安に思う人などに寄り添うことを目的とした各種相談窓口(社外設置)を試験的に導入しました。
各取組みについては、実施直後と約1か月後(2021年12月8日から12月19日)にアンケートによる評価を行いました。参加者が高い満足を得たことが確認できたことに加え、意識の変化が一過性ではなく1か月後も継続していること、一定割合の人に1か月間で行動変容(パートナーとの共有・クリニック受診など)が起きていることが分かりました。一方で、本ソリューションに対する否定的な意見も若干寄せられており、不妊治療というセンシティブな領域での従業員サポートは、「個人の尊厳」や「選択の自由」「従業員間の公平性」に最大限配慮した形での導入が求められることを再確認しました。
具体的な実施内容は以下のとおりです。
※1 実証実験の詳細は以下のURLをご参照ください。https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2021/211101.pdf
a.不妊治療と仕事の両立に関するアンケート
不妊症や不妊治療の実態を把握するため、全従業員を対象とした匿名のアンケート調査を実施しました。個人が特定されない仕組みを構築することで、会社には伝えづらい要望や現状の困りごとなど、生の声を拾い上げることが出来ました。
b.オンラインセミナー
妊活全般の基本的な知識から、仕事と不妊治療の両立、妊活・不妊治療に対する職場サポート、女性特有の健康課題などをテーマにした多様なオンラインセミナーを開催しました。
c.卵巣年齢チェック&アドバイス
若年層を中心に、将来のライフイベントを自分ごととして受け止めてもらえるよう、希望者に対して、卵巣予備能(卵子の残り数)を測定する検査キットを配付しました。
d.妊活等に関する LINE 相談
不妊専門の看護師や臨床心理士、胚培養士などの専門家にLINEで相談できる無料相談窓口を導入し、希望者に無償提供しました。
e.妊活等に関する対面相談(オンライン)
LINE相談では話しにくい疑問、ストレスやキャリアについての不安などを専門家に相談できる、予約制のオンライン相談窓口を設置しました。
2.従業員アンケートの結果
◆調査結果の概要※2(調査結果の詳細はhttps://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2021/220323a.pdf をご参照ください)
※2当アンケートは、各企業において従業員向けに不妊治療と仕事の両立状況や不妊治療に対する関心や知識の度合いについての調査を行い、その結果を今後の制度導入に向けた検討材料にしていただくことを目的としています。そのため、全国平均との比較等を入れることにより、調査企業におけるデータ活用方法の理解の促進に努めています。また、今回の調査は住友生命に在籍する従業員を対象としており、不妊治療と仕事の両立ができず退職した従業員(以下「不妊治療目的での退職者」)が含まれていないため、全国平均との乖離が生じています。
〇不妊治療経験がある従業員向けの質問
- 不妊治経験者の割合は全国平均と同水準
住友生命の従業員の2割未満(16.6%)が不妊治療や検査の経験があり、不妊を心配したことがある人も含めると3割超(32.1%)になった。全国平均と比較すると、最近の傾向とほぼ同水準である。
- 不妊治療と仕事の両立が難しいと感じている人は全国平均よりも多い
仕事をしながら不妊治療に取り組むことが難しいと感じている人は多く、3割超(36.0%)が不妊治療や働き方を見直したと回答した。不妊治療目的での退職者が含まれていないことを勘案すると、実態は全国平均を上回る水準であると考えられる。
- 治療期間は1年未満が最も多く、全国平均よりも短いという結果に
不妊治療に取り組んだ期間は「1年未満」が約4割(39.5%)と最も多い。その理由として、「初期のステップや短い期間で妊娠できたため」「早いうちに治療を諦めたため」「退職して治療を継続した人が含まれていないため」といった理由が考えられる。
- 治療にかかった費用の総額は全国平均よりも低いという結果に
不妊治療に100万円以上かけた人は3割超(32.8%)となり、全国平均よりも低い水準となった。調査対象に不妊治療目的での退職者が含まれないことや、治療期間が1年未満と、治療ステップの初期段階の人が比較的多く含まれることが理由と考えられる。
- 半数の人が不妊治療をしていることを職場の誰にも伝えていない
全国平均と比較して、上司や同僚など職場で相談している人が多いことが分かった。一方で誰にも伝えていない人も約半数(48.4%)を占めた。
〇不妊治療経験がない従業員向けの質問
- 不妊治療経験がない人の不妊治療関連知識は高くないという結果に
不妊治療に関する知識について、基礎的な質問の正答率は高いとは言えない。会社として不妊治療と仕事の両立を支援するためには、職場全体での知識の向上が課題であることが分かった。
- 約8割の人が不妊治療していることを伝えてほしいと考えている
「伝えてほしい」と考える人の割合が企業風土醸成の重要な指標と考えられる。「伝 えてほしくない」と答えた人の中にも「接し方が分からないから」との理由もあり、社内教育の充実によって意向が変化する可能性がある。
◆有識者のコメント
東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座准教授
甲賀かをり先生
本年4月より不妊治療が保険診療となりました。経済面で恩恵に預かるカップルは多いかと思います。一方、不妊治療は、頻繁かつ不規則な通院を必要とします。今回のアンケートでも仕事の両立が困難と答えた方が多くいらっしゃいました。実際、私たち産婦人科医が日常診療を行っていても、金銭面の問題より、通院時間確保の問題で治療継続を断念される方が多い印象で、気の毒に感じることがしばしばあります。
本ソリューションにより、働く男女が不妊症治療と仕事の両立を拒む問題点を浮き彫りにし、企業や自治体の問題が「ソリューション」し、仕事との両立を理由に不妊治療を断念することがない社会を目指して欲しいです。期待しています。
*住友生命では、2022年4月の不妊治療保険適用拡大を踏まえ、「仕事と妊活」および「仕事と不妊治療」の両立について、一般の方向けにアンケートも実施しております。調査結果については以下のURLをご参照ください。
https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2021/220323.pdf